荀シン(何故か変換できない)が恋姫的世界で奮闘するようです   作:なんやかんや

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最後まで行こうとしたけど力尽きたので途中までで……


洛陽会談

迫り来る袁紹軍を前に洛陽は組織だった抵抗もできずに陥落した。

と言うよりも、洛陽の防衛を宦官より命じられた将軍たちは公然とその命令に背き、袁紹軍を洛陽内部へと招いた。

曹操が皇帝崩御の混乱の中、洛陽を脱出するまでの僅かな時間に行った仕込みの結果である。

 

そして、洛陽の城壁を潜り、禁中へまっすぐに向かう袁紹軍を前に、宦官達は打つ手が何一つとして残されていなかったのだ。

この事態に弑逆の罪人として槍玉に挙げられた宦官達は右往左往するのみであった。

そして、一部の逆上した宦官達は何を考えたのか事態を更に悪化させる行動に出た。

十常侍達の一部が人知れず禁中から消えたことによる混乱も相まって、禁中の外を知らない宦官達に冷静な判断を下せる者はいなかったのである。

 

精鋭に囲まれて禁中へと入ろうとする袁紹達の前に晒されていたのは、塩漬けにされて干からびた審配の首が鳥に啄まれる姿であった。

想像もしていなかった事態に顔を蒼白にして立ち尽くす袁紹。

 

友若は思わず臍を噛んだ。

次の袁紹の行動が容易に予想できたからである。

袁紹の性格であれば怒り任せに復讐を命じるだろう。

そして、あらゆる制限を取り払われた軍というのは、簡単には止まることができない。

袁紹軍と禁中を守る兵士達の圧倒的な戦力差を考慮すれば、禁中を灰燼にするまで殺戮が続くといった事態になりかねない。

 

それは、それだけは避けなければいけないと友若は考えた。

漢帝国という国家は友若にとってみればあと10年と少しで滅びるはずの亡国でしかない。

だが、それでも袁紹が禁中を焼き払い、漢帝国に幕を引いた存在となってしまうことは回避する必要があった。

 

次世代の覇者になるはずの曹操、劉備と孫……某が漢王朝に対してどういう立場を取るかは分からないものの、漢帝国を滅ぼした人間を無視することはできないはずだからだ。

 

漢の後継を自認するのであれば、漢王朝を滅ぼした存在を打ち破ることは自らの正当性を示すために必要となる。

 

一方で、漢王朝を否定する立場を取る場合、その国を滅ぼした存在の功績は無視できなくなってしまう。

その存在――袁紹のことだが――を差し置いて曹操達が天下を取るということは、つまるところ何らかの形での袁紹の排除を伴うことになるだろう。

 

いずれにせよ、袁紹はこれ以上漢帝国に関わるべきではないというのが友若の考えである。

そういうことは、十年後に訪れるであろう戦乱の世を勝ち抜くはずの曹操とか劉備、もしくは孫某がやれば良いと友若は思っていた。

……あるいは、無謀にも天下を望む愚者か、が。

 

「麗羽様!」

 

完全に茫然自失状態にある袁紹に向かって友若は声を上げた。

 

「ご命令を! 禁中へと立ち入り今回の事変を引き起こした宦官達を全て捕らえよと!」

「え……ええ……こんな……怜香さん、どうして……」

 

袁紹は友若の言葉に上の空で答えた。

その視線は真っ直ぐに晒し首となった審配に向けられている。

友若は唇を噛み締め、視線を背後へと逸らす。

 

袁紹と同じく驚愕に顔を染めた文醜や顔良、そして兵士達がそこには居た。

そして、禁中を厳しい視線で見据える曹操や荀彧もまたそこに。

 

友若は努めて曹操達を視界の外に追いやると叫けぶ。

 

「麗羽様のご命令だ! 第一軍は禁中へと踏み入り、皇帝陛下弑逆の罪人である宦官達を全て捕らえよ!」 

 

若干の動揺は見られたものの、兵士達は友若の言葉に従って動き始める。

 

友若が袁紹を真名で呼んだ事により、兵士達はそれを当然のことだと思い込んだ。

すなわち、近いうちに友若が袁紹と結ばれ、袁紹支配下の兵士達の主となるのだと。

 

「ただし! 禁中にはこの難を逃れた皇族がいらっしゃる可能性もある故、一切の殺害を禁ずる! また、緊急事態とはいえ、禁中で略奪など不埒な真似をするものには私の名において厳罰に処す! 繰り返す! 禁中において一切の殺害、略奪を禁ず! 宦官達も全て生け捕りにするのだ! 以上、すみやかに行動を開始せよ!!」

 

友若は声を枯らさんばかりに叫んだ。

時間は敵であった。

袁紹が我を取り戻して怒りのままに殺戮を命じるよりも先に事を終わらせる必要があるからだ。

幸いにして、袁紹の私兵達は曹操が率いていた兵士達と比較しても意外なほど優秀である。

銀行制度を維持するために、一銭足りとも過不足なく金銭搬送の護衛を行っている彼らならば、今回のような要求の厳しい任務もこなせるはずだと友若は思う。

少なくとも、そこらの野盗のように金目の物目当てでヒャッハーすることはないだろうと。

 

「――荀大老子」

 

凛とした声が友若の耳に届いた。

 

「……曹西園八校尉殿、何でしょうか?」

 

友若はなるべく顔を顰めないよう意識しながら曹操に答える。

曹操と荀彧。

友若にとってこの二人はあらゆる面で関わりたくない相手である。

できることなら、生涯無関係でいたいと友若は思っている。

だが、状況を考えれば、そうも行かないのが現実であった。

友若の戦略上、曹操達と争わない関係を保つことは必須である。

 

そして、その重要性を心の底から理解しているのは友若以外にいないのだ。

他の人間に曹操達との交渉を任せれば、勢いでうっかりこのバケモノ達と敵対するという事態になりかねない。

そのため、友若はこのバケモノ達と向き合わなければならなかった。

彼女たちの牙がこちらに向く事のないように。

 

「私の兵士達も宦官の捕縛に向かわせたいのですが、よろしいでしょうか」

 

笑みを浮かべながらの曹操の言葉に友若は思わず全身の血流が逆行したかの様な心地がした。

友若にはその笑い方が獲物を前にした空腹な肉食獣以外の何物にも見えなかった。

 

「ええ、もちろん!」

 

ハイヨロコンデー! と言わんばかりに友若は即答する。

迂闊に返答を遅らせれば、空気の読めない同僚が訳の分からない理屈を元に曹操に噛み付く恐れもあった。

功績に飢えているだろう目の前の怪物の牙が自分達以外に向いてくれれば、とりあえずは万々歳だ。

飢えた狼ほど厄介なものはないというのに、この曹操という少女の姿をした何かはそんな可愛らしいものでは全くないのだから。

 

――宦官終わったな……

 

友若はそんなことを思い、散々自分達を貶めてきた宦官達に対して軽い同情さえ覚えていた。

 

友若は宦官や豪族を始めとしたこの帝国の権力者に対して関心が薄い。

と言うよりも、友若は殆どの場合、自分より劣っているとはっきり判断した相手に対して興味を持つことができないのだ。

 

それは、曹操や荀彧といったバケモノを除けば、自分が最も優秀だと思いたい友若の屈折したプライドの裏返しであった。

相手を知らなければ、前世の知識という他には無い優位性の分だけ、いくらでも自らの優位性を信じられる。

友若が客観的に他者に劣っている分野があったとしても、それは単純に機会に恵まれないからだけだという理屈によって。

 

だからこそ、宦官達が行ってきた誹謗中傷や逆賊の指定に対しても、曹操と孫堅・孫策が敵に回った事を除けば、友若は別段思うところは無いのである。

 

加えて、宦官達が餌として曹操の腹を満たしてくれれば、袁紹や自分はそれだけ安全になるはずである。

少なくとも、血を見たいとか交渉の余地がない理由で殺されるという事態にはならないはず、と友若は期待した。

 

妹を始めとしたトラウマに向き合うようになりつつある友若であるが、バケモノに対して肥大し続けてきた恐怖を克服したわけではない。

曹操らの言動を解釈する場合、友若はどうしても必要以上に最悪の事態を考えてしまうのであった。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

友若の命じた通り、禁中は無血で制圧された。

武装した兵士達を前に禁中に残っていた宦官達や官吏達は抵抗することなく降伏したのである。

友若にとっては幸いな事に、袁紹が我に返った時、事の大勢は決していた。

そして、友若は、宦官達はこの場で斬り殺すよりも、しかるべき取り調べを行い罪を明らかにした後に処刑し、その罪と所業を天下に明らかにするべきだ主張した。

我に返った当初は、怒りのままに、宦官達を皆殺しにしろと叫ぶ袁紹であったが、友若の必死の静止に渋々矛を収めたのである。

 

だが、それで万事解決というわけにはいかなかった。

制圧が完了した禁中、そのどこを探しても次期皇帝の正統後継者の資格を持つ皇太子達の姿はなかったのである。

そして、皇帝を弑逆した大罪人である十常侍の姿も。

 

もっとも、友若にとってそれは想定済みの事態であった。

前日にあの曹操が禁中から宦官達が逃亡する可能性について言及し、わざわざ自らの兵を割くことすらしているのだ。

あのバケモノがそんな結論に達した以上、宦官達が逃亡していなかったほうが友若にとっては驚きであっただろう。

 

そして、宦官たちの事をよく知る曹操達や許攸達も宦官達の逃亡をある種当然の事として受け入れた。

漢帝国の権威に寄生していた十常侍達の生き汚さは彼女たちにとって織り込み済みのことである。

だからこそ、逃亡を試みる宦官達を補足するために無数の哨戒を放ったのだ。

 

まず間違いなく突発的に発生した皇帝の崩御、そして袁紹軍の電撃的な進軍を鑑みれば、宦官達の逃亡に事前準備の余裕はなかったはずである。

当然、安全に逃げようと思えば逃走路は限られる。

そして、想定される逃走路には既に網を張っている以上、十常侍の身柄拘束と皇太子達の確保は時間の問題であった。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

曹操軍と袁紹軍の首脳部全員が予想した通り、昼下がりには皇太子と十常侍達宦官を確保したとの情報が早馬により伝えられた。

皇太子達を確保したのは夏侯淵達率いる騎兵である。

 

「よくやりましたわ!」

 

この知らせに最初袁紹は素直に喜んだ。

 

「卑劣な宦官達に連れ去られた皇太子様をお救いできるとは華琳さんの部下もなかなかやるではありませんか」

 

逆賊である宦官討伐の為に手を組んだ曹操は既に完全に味方であるというのが袁紹の認識である。

そして、持ち前の自尊心と現状の認識から袁紹は当然自分が曹操の上にあるものと確信していた。

 

隣に座る友若にしてみれば血の気が引くほどの上から目線の袁紹の発言。

その言葉に曹操は笑みを浮かべた。

 

「ええ、春蘭、秋蘭達は上手くやってくれた。無事、皇太子様……次期天子様をお救いすることができて本当に良かったわ。宦官達はどうやら商隊に偽装していたみたいね」

 

伝令から詳細を聞いていた曹操はそう言うと、袁紹とその隣に座る友若に視線を向けた。

友若の全身の毛は逆立った。

 

「な、なるほど、文官に加え優れた武官とは、猛徳殿は素晴らしい部下をお持ちですね」

 

とりあえず、明らかに友好的ではない笑みを浮かべる曹操に友若はヨイショをしようとした言葉を向ける。

 

「あら、ありがとう。貴方程の人物に認められるなんて……これ以上ない栄誉ね」

「そ、それほどでもありませんよ」

 

対する曹操はますます笑みを深めたものの、目はまるで笑っていなかった。

曹操を持ち上げようとした友若の試みは全くの裏目に出た様子である。

袁紹を挟んで着席している許攸は呆れた表情で友若を見ていた。

 

「まあ、華琳さんの言葉もよくわかりますわ」

 

袁紹が自信満々な――もっとも、何時も彼女はどこから来るのかわからない自信に満ちあふれているが――様子で喋り出した。

友若は嫌な予感を覚えたが、袁紹は友若が行動を起こすよりも先に言葉を続ける。

 

「確かに華琳さんの部下が優秀とはいえ、私の下には桂林さんや黄蘭さん、猪々子さん、斗詩さん達を始めとしてもっと優秀な方々が沢山いますもの。その筆頭たる桂林さんに認められて光栄に思わないはずがありませんわ」

 

――鉄板の上で土下座をしたら許してくれるかな……

 

袁紹のあまりの発言に友若は思わず空想の世界に意識を飛ばす。

その世界では、灼熱の鉄板の上で土下座をする友若を前に曹操が親指を下に向け首を斬る動作をしていた。

その隣に控える荀彧は涙を浮かべながら友若を睨みつつ、曹操に愛用の鎌を差し出している。

 

――許されないですか、そうですか……

 

カランと何かが床に落ちたような音に友若の意識は現実の世界に戻ってきた。

 

「っ! 申し訳ございません」

 

友若が周囲を見やると荀彧が床から木簡を拾っているところだった。

その瞳は揺れており、誤って床に木簡を落としてしまっただろう状況も合わせ、荀彧が何らかの理由で動揺状態にあるようにも見受けられた。

あるいは、何か企みごとのための演技か、と友若は口の中で呟いた。

そんな荀彧の様子を横目で見た曹操は軽くため息を付くと友若に視線を向ける。

 

「まあ、一部麗羽の言うとおりではあるわね。私が知るかぎり誰よりも優秀な文官である荀大老師殿に部下を褒められて悪い気がしないのは事実よ」

 

先程までの肉食獣のような笑みを消した曹操はそのように言った。

続けざまに曹操は一瞬横目で荀彧の方を見やると袁紹を見据える。

 

「それはそれとして、麗羽、貴方達真名の交換をしたのね? 荀大老師殿は誰とも真名の交換をしていないと言うことで有名だったと思うのだけれど」

「あら、華琳さんったら気になりますの?」

 

袁紹は目を輝かせながら身を乗り出した。

もともと、自分語りや自慢話の大好きな袁紹である。

昨今は身内の不幸があり、袁紹なりに自重していたものの、幽州では今まで誰も知ることのなかった友若の真名を得た経緯を問われれば答えないわけがない。

 

「麗羽様、それよりも――」

「ええ、興味が有るわね」

「そうですの! まあ、こういうことはあまり人に言うものでは無いのですけれど、華琳さんにそこまで言われてしまっては私としてもお答えしないわけには参りませんね」

 

友若は慌てて袁紹の言葉を止めようとしたが、曹操が乗り気な様子を見せたことで慌てて口をつぐんだ。

先ほど、友若は下手におべっかを使おうとして曹操の機嫌を軽く損ねたばかりである。

今後、曹操と袁紹及び友若自身の身の安全を保障する盟約を内密に結びたいと考えている友若にしてみれば、曹操の機嫌は出来る限り良い状態にしておきたいところである。

羞恥心は犠牲になるかもしれないが、死ぬほどでは無い、と友若は腹をくくった。

 

「あれは、ちょうどこの前の満月の夜の日のことでしたわ。あの日の夜、私は桂林さんと一度お話をする必要があると思いまして、桂林さんの元を尋ねましたわ。その頃、どうも桂林さんはあの卑劣な十常侍達に対して弱腰になっているようでしたから。まあ、今回のようなことがあって、十常侍は許すべきではなかった事ははっきりしましたけど……」

 

袁紹は数瞬、言葉を探すかのように目を彷徨わせながら口を噤む。

 

「まあ、そんなわけで、私は桂林さんにどういうつもりかと尋ねたのですわ。そうしたら桂林さんが神妙な顔をして、黄蘭さんや猪々子さん達と天下安寧とどちらが大切かなんてそんなことを言い出しまして。それで私はこう答えたのですわ。黄蘭さんや猪々子さん達が大切なのはあたりまえですわ、と。そして、天下安寧などというものは黄蘭さんや猪々子さん達、そして桂林さんが私に協力していただければ簡単に成し遂げられるに決まっておりますわ、と答えましたの」

 

袁紹の言葉に友若もまたあの夜の日のことを思い返していた。

仲間と天下のどちらを優先するのかという友若の問に対して袁紹は一切の迷いを見せずに仲間を取った。

そんな袁紹に友若は生まれて初めて己が仕えるべき主を見た。

 

「そんな私の答えに桂林さんは感激して私にこれまで誰にも明かすことなかった真名を預けたのですわ」

 

友若にとって真名を預けるということは、袁紹に生涯を仕えるという誓いであり、また贖罪でもあった。

袁紹に天下を取らせることはできない。

曹操を始めとしたバケモノを前に友若に勝ち目は無い。

袁紹の言葉を守ることは友若にはできるとは思えなかったし、また、彼は最初から守るつもりがなかった。

それでも、袁紹や彼女が大切にしている周囲の人間が無事な未来を掴みとってみせるとあの日、友若は誓ったのである。

 

「なるほど……」

 

曹操が呟くように言った。

 

「その後、真名の交換をした桂林さんったら興奮してしまいまして、私を抱きしめるとそれはそれは情熱的な接吻をしまして、私の服の中に手を入れると――」

「れ、麗羽様っ!? それ以上はここで話すような内容ではありません!」

 

袁紹が濡れ場の様子まで話しだした事に、友若は慌てて止めに入った。

そんな友若に袁紹は不満そうな顔を見せる。

 

――そ、そんなに自慢したいの、このあーぱー姫!? そもそも人様に話すような内容じゃないよね!?

 

あの時、前後不覚に陥るほどの興奮状態にあった友若の行動が知られてしまえば周囲にドン引きれかねない。

曹操と孫堅が敵として攻めてくると知ったときと同じくらい友若は動揺していた。

 

「桂林さん、いいではありませんか。別に減るものでも――」

「減りますから! 人の尊厳とか大事なものがなくなりますから!」

「……仕方ありませんねえ。桂林さんがそこまで言うのでしたら」

 

渋々と引き下がる袁紹に友若はほっとため息を付き、周囲を見やった。

曹操を始めとして袁紹の直近の発言は聞かなかった事にしているようである。

 

「ヒッ」

 

だが、視線を曹操の横にやった時、友若は小さく悲鳴を漏らした。

荀彧が言葉で表現できないような顔で友若を見ていた。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

話が無駄に脱線したこともあり、袁紹達と曹操達の話し合いは一度遅い昼食を取るために中断されることになった。

皇太子の扱いをどのようにするかを決めるためには相当時間がかかるだろうとほぼ全員が予想していたためである。

何しろ、皇太子を手に入れたほうがこの国の中枢を握ることになるのだ。

普通、簡単に譲れるものではない。

また、皇太子の扱いが決まったとしても、今後の国政の方向性をどうするか、どの官位を誰に与えるのかといった話から、洛陽にどれだけの兵を残すのかといったところまで、議論すべき議題は無数にあるのだ。

話し合いが深夜まで及ぶ可能性もある以上、丁度良いところで休憩ということになったのである。

 

席を立とうとした曹操に友若は声をかける。

 

「曹、孟徳殿、……ご、ご一緒にお食事でもいかがでしょうか?」

「あら、逢瀬のお誘いかしら?」

「え、ええ」

 

曹操の隣を決して視界に入れないよう注意しながら友若が答えると、曹操はクスリと笑った。

 

「ええ、いいわよ。私もちょうど貴方と話し合いたいと思っていたところだから。当然、二人きりなのでしょう?」

「は、はい、とうぜん、とうぜんですよ。あはは……」

 

無駄に明るい声で答えると、友若は背後に控える伝令に先に退席していた袁紹達に朝食に同席できなくなったと伝えるように命じる。

そんな友若を曹操は真っ直ぐに見つめていた。

 

――荀友若、彼の目的はもしかしたら……

 

曹操は頭を軽く振ると脳裏に浮かんだ考えを打ち払う。

その想像の先にある恐怖を曹操は努めて無視していた。

 




次最終話『華琳ちゃんポエム』、そしてエピローグです。
このタイトルだけはわりと最初から決まってました。
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