IS 〜機械人形の見る世界〜   作:もずく

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こんにちは、もずくです。
思いつきで書いてるだけの小説なので、過度な期待はなさらぬよう。


プロローグ

人は、人と人の交わりによって生まれて、人と人の愛を受けて育って、人と人の交わりによって傷ついて、人と人の交わりによって成長する。

その存在が、女性から生まれたのならば、だが。

強化人間として、鉄の子宮から生まれた俺には何ら関係のないことだ。

俺は他人の体細胞と、最新鋭の機械によって生まれ、人と人の殺し合いを学んで育って、人と殺しあって傷ついて、その殺し合いによって成長してきた。

もしもあの天才気取りのマッドサイエンティスト共に再び相見えるのなら、ザマァ見ろ、とでも言ってやりたい。

 

【side ???】

 

「藤原 銀慈、ですか。 …本当に信用できるんですかね?」

 

私ーーー 織斑 千冬は、IS学園の職員室で後輩である山田君と、ある資料を見ていた。

藤原 銀慈、男性IS操縦者の護衛として、IS学園に入学することになった者だ。

インフィニットストラトス、ISと呼ばれるそれは、私の知り合いである馬鹿によって作られたマルチフォームスーツだ。

宇宙開発のために作られたそれは世界の常識を覆したが、結局のところ宇宙開発に使われることはなく、かといって条約により戦争にも使われることなく、競技として定着していた。

そして、ISには致命的欠陥がある… 女にしかISに乗ることができない、という事だ。

しかし例外が出てしまった。

織斑 一夏、私の弟だ。 政府はこいつの存在を重視し、他国からの勧誘や抹殺から守るため、1人の護衛を寄越すといった。

それがこの資料の男、藤原 銀慈。

銀の髪を短く切り揃え、赤い目をした体格の良い男だ。

 

「問題はないだろう、政府が直々に選んだ人物だ。 それに拒否権はないだろうしな。」

 

「確かにそうですが…」

 

「問題ない、明日に顔合わせに来るそうだ。 もしも問題点があれば全力で拒否するさ。」

 

そう言って、コーヒーを一口飲む。

カップを受け皿に置いて、資料をめくる。

 

「それしても… 人工合成遺伝子、か。」

 

「ええ、壮絶な出生ですね。」

 

「それに記号は… 遺伝子強化試験体C-0038…」

 

「? その記号に意味があるんですか?」

 

首を傾げる山田君を見ながら、かつての教え子の事を思い浮かべる。

銀髪に赤目、確かに共通点がある。

 

「いや、ドイツ軍にいた頃にこいつの姉を見たのだ。」

 

「姉、ですか。」

 

「ああ、体格はとてもそうは思えないがな。 …さて、もう勤務時間外だ。 私は帰る。」

 

「そうですか。 では、私も今日は上がります。」

 

資料をファイルの中に戻して、職員室を出る。

それにしても明日は忙しくなるな。

 

【side 銀慈】

 

「織斑 一夏、か。」

 

俺はビジネスホテルの一室で資料を読んでいた。

俺が今日から護衛任務につく男だ。

常識を打ち破り男の身にしてISを動かした男。

 

「ブリュンヒルデの弟、それも関連しているのか…? いや、それは任務には関係ないか。」

 

資料をテーブルの上へ投げ捨て、ベッドに倒れ込む。

俺が機械だろうが、パーツを休めるために休止は必要だ。

俺にはそれが睡眠にあたる。

 

「彼も不幸な物だ。 ISなぞ動かしたばかりに面倒ごとに巻き込まれる羽目になるとは… いや、年頃の男としては幸運なのか?」

 

精密に作り上げられた俺のAIには、人間の欲求が存在する。

もちろんそれを一時的にシャットアウトする事も出来るが、任務中以外にはそれをする意味がない。

ベッドから降りて、壁際に立て膝で座り込んで目を閉じる。

この体ならば、寝違えなんぞ起こりはしない。

 

「明日は護衛対象とブリュンヒルデとの顔合わせか… 面倒ごとは避けたいんだがな。」

 

俺はそのまま眠りに落ちた。

 

☆★☆

 

朝の5時、脳内で定められた時間ぴったりに目を覚ます。

十分にCPUを休ませたので、眠気などはない。

そのまま立ち上がり、スーツに着替え、灰色のネクタイを取って首に巻く。

鏡に映る自分の姿を見て、身嗜みに乱れはない事を確認して、警棒をスーツの中にしまって部屋の外に出る。

 

「おはようございます。」

 

「ああ、おはようございます。」

 

頭を下げるホテルの従業員に会釈をして、ホテルの外に出る。

寒い、という感覚を無視出来る私だが、2月の空はどこか寒そうな雰囲気がある。

 

「確か彼の家は…」

 

脳内のデータを除き、護衛対象の家を探す。

少し歩くと、護衛対象の家の前に着いた。

今日は土曜日だ。 受験を終えた学生である彼は家にいるだろう。

インターフォンを鳴らして、応答を待つ。

 

『はい。』

 

インターフォン越しに男の声が聞こえた。

彼が織斑 一夏で間違いないだろう。

 

「おはようございます。 君の護衛になった藤原 銀慈です。」

 

『あ、はい。 今開けるんで待っててください!』

 

少し待つと、目の前の扉が開いた。

 

「どうも、おはようございます。」

 

「ありがとう。 入っても?」

 

「あ、どうぞ。」

 

彼に促されて家の中に入る。

靴を揃えて廊下を歩く彼の後をついていく。

 

「じゃ、じゃあ少しここで待っててください。」

 

「ああ。」

 

居間に通されて、机の前で正座して待つ。

家の様子を見ると、よく掃除のされた部屋であることが伺える。

ブリュンヒルデは殆どこの家に帰ってこないというので、彼が掃除をしているのだろう。

 

「お待たせしました。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

彼が盆に乗せて、緑茶の入った湯飲みと急須と茶菓子を持ってきた。

それを受け取って、一口緑茶を飲む。

きちんと急須で入れられた良い茶だ。

 

「では、仕事についての話をさせていただきます。」

 

「あ、はい。」

 

「それと、私には敬語でなくても構いません。」

 

「え? でも年上じゃないんですか?」

 

「資料が正しければ同い年です。」

 

「えー… じゃ、じゃあ、よろしく。 えーと、藤原さん? も敬語で良いぞ?」

 

「いえ、私はこのままで構いません。」

 

「俺が落ち着かないんだ、タメ口にしてくれ。」

 

どうするか、別に護衛対象に敬語を使うことなどは指令書には書かれてないから構わないか。

 

「では、よろしく頼む。 織斑さん、これで構わないか?」

 

「おう! あと呼び方も一夏でいいぞ?」

 

「ならばそうさせて頂く。 そちらの方も藤原や銀慈で構わない。」

 

「んじゃ、銀慈、改めてよろしく! 」

 

爽やかな笑みと共に差し出された手を取り、握手をする。

 

「では、仕事の話に移らせて頂く。 まず、お前も知っている通りに俺の仕事はお前の護衛をすることだ。」

 

「ああ、それについてはわかってる。」

 

「で、今日ここに来たのはその詳しい内容についての話だな。」

 

「っていうと?」

 

一夏は首を傾げたあと、一口緑茶を飲む。

 

「主に単独での抹殺や、他国からの勧誘を防ぐために俺がいる。 また、学園においてのお前のサポートも任されている。」

 

「成る程… って抹殺!?」

 

「抹殺、だ。 IS学園には女尊男卑的な思考にかぶれた女が大量にいる。 それらが『男の癖にISに乗るなんて。』等の理由でお前を殺そうとする恐れがある。」

 

「そ、そうか…」

 

自分の状況を恐れてか、一夏は顔を青くする。

 

「まあ、そうはさせないが。」

 

最後にそう付け加えて緑茶を飲む。

む、無くなってしまった。

 

「もう一杯飲むか?」

 

「では、いただく。」

 

頷きながら急須に手を伸ばそうとすると、彼が急須を手にとって私の湯飲みに注いだ。

 

「ありがとう。」

 

「おう。」

 

熱い緑茶を飲もうとした時、玄関から極小さな物音が聞こえた。

 

「退がれ、一夏。」

 

「え? なんでだ?」

 

「玄関から物音がした。」

 

立ち上がりながら警棒を取り出し、伸ばし切って鍔を開く。

廊下を歩く足音からも伺える、間違いなくこの相手は強者だ。

そして、今の扉が開いた。

 

「シィッ!!」

 

同時に、面を被った女が殴りかかってくる。

早い、しかし俺は足元のテーブルを左足で蹴り上げ、さらに前に蹴りだす。

 

「ほう!」

 

女は声を上げながら、テーブルを避けて右手でその足を掴む。

 

「隙あり!!」

 

振り下ろす机を左手で受け止め、空いている手に握る警棒を右上から左下へ、袈裟斬りの要領で振り下ろす。

が、相手はその警棒を持つ俺の手を左手で掴む。

相手の握力によりギリギリと手首が閉まる。

 

要求(リクエスト)、痛覚遮断。ー

 

承認(アプルーヴ)、痛覚遮断実行。ー

 

痛覚遮断の要求を出すと、機械音声が頭に響いて痛覚が無くなる。

すぐさま右手を振り上げ、斜めに足を振り下ろす。

相手は右手のテーブルを手放しながら身をかわす。

その足を地に下ろすことなく、もう一度振り上げる。

奴は左足を上げ、膝で蹴りを防ぐ。

 

力が拮抗し、鍔迫り合いになる。

 

「なかなかやるな。」

 

「あんたもな!」

 

面の下に不敵な笑みを浮かべているであろう相手に言い返し、次の手を仕掛けようとした瞬間…

 

「ストップ! 2人ともストップ!!」

 

「どうした、一夏。」

 

「そいつ俺の姉さんだから! 不審者じゃない!」

 

一夏に言われて、敵の方を振り返る。

するとそいつは面を外しながら言う。

 

「悪いな、お前が護衛役に相応しいか試させてもらった。」

 

「…あなたがブリュンヒルデか。 初対面の相手にいきなり戦闘とは、戦乙女(ブリュンヒルデ)の名に恥じぬ凶暴さだな?」

 

「だから悪いと言っているのだ。」

 

ブリュンヒルデはこっちを見ながら不敵そうに笑った。

その顔には有無を言わせないような威圧感がある。

 

「…ハァ、それで、結果は?」

 

「合格だ、花丸をやってもいい。」

 

「そりゃあどうも。 …んで、あなたにも仕事の話をしておきます。」

 

「ああ、そうだな。 詳しく話しておいた方がいいだろう。」

 

俺とブリュンヒルデがその場に座り込もうとした時に、一夏が口を開いた。

 

「取り敢えず… この部屋の惨状をなんとかしろ!」

 

「「あ…」」

 

部屋の中は激しい戦争のせいで、確かに惨状になっていた。

この後、俺は部屋の片付けをしてからビジネスホテルに帰った。

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