短編読み切り集(仮)   作:0ひじり0

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どうも、ひじりです。
始めましての方ははじめましてですねー♪

今回はたまたまテレビで剣道をしてて思い付いたネタになります。

では、どうぞ!


青龍の刀(オリジナル)

「始めっ!!」

 

私は死合いがしたい。

 

パンッ!パシッ!

 

血肉が喜びに声を上げてその命を削り合うような。

 

ガッ!ガスッ!

 

今日の人はどうだろうか。

 

キュッ、ガッ!

 

「……。」

 

トッ…パシィン!!

 

嗚呼…この人もダメだった。

 

私の竹刀が相手の頭を綺麗に捉えて打ち抜く。

しかし、旗は上がらない。

 

「…棄権します。」

 

審判が私の進言を受理して試合が終わる。

お互いに礼をして下がる。

 

私…【東 双葉(あずま ふたば)】は15歳の中学3年の女子だ。

そして、私は剣道をしている。

昔から剣道が大好きで一筋なのだが一つ問題がある。

先程の試合で分かったかもしれないが、私は声出しをしない。

理由はちゃんとあって昔の合戦…そう、戦国時代などならわざわざ自分が斬る所を教えるなど愚の骨頂だろうに。

 

私は我が儘を聞いてもらっている恩師【雨音 南(あまね みなみ)】の所に戻る。

 

「どうでしたか?」

 

「…ダメでした。」

 

「そうでしたか…仕方ありませんね。」

 

「いつもすみません。」

 

「いいんですよー。では、帰りましょうか。」

 

私が頭を下げて謝るが雨音先生は嫌な顔一つせずに頭を撫でて許してくれる。

そして、立ち上がり会場を後にする。

 

――――――――――

 

大会の次の日何時ものように朝早くに学校行って鍛練を始める。

此処の学校は田舎で剣道部…あ、私一人だから同好会か。

まあ、そんな私一人の同好会だけど道場はちゃんとあって雨音先生の説得で使わせてもらってる。

本当に雨音先生には頭が上がらない。

 

バンッ!

 

「たのもー!!!」

 

「こら、茜ちゃん!」

 

そんな道場にいきなりの来客が現れる。

いや、まだ朝の6時なんですが…。

 

「あ、本当に居た。」

 

「当たり前でしょ!」

 

突然現れた女性は見た目は雨音先生と同い年くらいかな?

何時ものほほんとしてる雨音先生が珍しく怒ってるから仲はいいのかもしれない。

 

「雨音先生…この方は?」

 

「あっ!双葉ちゃんごめんなさいね。この人昔からこんなんなの。」

 

私の問に雨音先生は女性を押さえ込みながら私に謝る…って言うか雨音先生…柔道か何かしてたんですか?

お連れの方が落ちそうですよ?

 

「ぐっ…ふっ、み、みなみ…ヤバイ、お、ちる…。」

 

女性が雨音先生の腕をペシペシと叩いてやっと腕を離してもらっていた。

 

「ゲホッ!ゲホッ!雨音…殺す気なの!?」

 

「知りませーん。茜ちゃんが悪いんだから。」

 

なんか夫婦漫才見てるみたいで砂糖吐きそう。

 

「コホン!それで…私に何かご用ですか?」

 

そろそろ鍛練を再開したい私は咳払いをして止まっている会話を再開する。

 

「いやー用はあるんだけどまずは自己紹介。あたしは【宮北 茜(みやきた あかね)】って言うからよろしくね♪」

 

「東 双葉です。」

 

強引に私の手を取ってブンブンと振りながら握手をされる。

正直、痛い。

 

「それで宮北さ「茜でいーよ。」では、茜さんはどういったご用件で?」

 

「試合しよう!」

 

「は?」

 

ニカッと子供の様な笑顔で笑う茜さんは元気よく提案をする。

なるほど…昔からこの人に付き合ってた雨音先生の苦労がかいま見えますね。

 

「むぅ…。」

 

「……何か怒ってます?」

 

雨音先生に助けを求めようとそっちを見るとハムスターの如く頬を膨らませており、私達を恨めしそうに睨む。

いやいや…なんでですか。

 

「はぁ…とりあえず試合は構いませんが公式・非公式合わせても【試合は】勝ったことがありませんから期待はしないで下さい。」

 

「やったー♪」

 

はぁ…早く鍛練したいな…。

 

――――――――――

 

「ルールは突き無しの一本勝負…始め。」

 

雨音先生のゆるーい掛け声と共に試合が開始される。

なんか締まらないな。

 

「んふふー♪始めてから負けなしの茜ちゃんにかてるかなー?」

 

さらりと自慢をされるが気にしない。

…………私も死合いなら負け無しだし。

 

トン…ヒュン。

 

茜さんが軽く前に踏み込んで面を放つ。

かなり速いがなんの迷いの無い軌道が逆に読みやすい為竹刀で受けようと構える。

 

「……にひっ♪」

 

「っ!?」

 

今まで見えていた軌道がぶれる様に消えて私は気付く。

先程まで弧を描いていた竹刀は先程より速く左に倒れており、私の胴に狙いすまされている。

 

「くっ…。」

 

パァァン!!

 

「どおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

そのまま茜さんが私の左をすり抜ける様に打ち払う。

乾いた音が道場に響き渡る。

 

「……あー決まったと思ったのになー。」

 

「かなり危なかったですが…ギリギリセーフです。」

 

茜さんがこちらに振り返り、私は胴を守るために構えた竹刀を元に戻して少し距離を取る。

 

「あれに反応するとなねー。」

 

笑顔を見せる茜さんだが目は笑っていない。

その目は私を打ち負かす…いや、これは私を殺す気だ。

 

「…ふふっ。」

 

「双葉ちゃん?」

 

楽しい。

全く…これは嬉しい誤算だ。

こんな楽しいのは生まれて始めてで…きっとあの人としたらもっと楽しいんだろう。

 

「あは…あはははは。」

 

「お、おー…い。」

 

「あは…すみません…。さぁ、再開しましょうか。」

 

戸惑う茜さんを余所に大笑いしてしまった私は試合を再開させる。

 

「う、うん。」

 

「次の一閃で当たっても当たらなくても私は棄権しますね。どうせ当たっても一本になりませんし。」

 

私は左足を引いて体を開く。

そのまま竹刀を納刀する様に腰にさして茜さんを見ずに目を閉じる。

要は居合いの構えだ。

 

「…あたし、舐められてる?」

 

「いえ、居合いは私の一撃必殺の最後の手ですから。」

 

「ふーん…ま、付き合ってあげるよ。あたしの本気で。」

 

「ありがとうございます。」

 

茜さんが息を吸って吐く。

私もその呼吸に合わせて息をする。

 

そしてまた吸って…息を止める。

来る。

 

キュッ、ヒュン!

 

「めええええぇぇぇぇんっ!!」

 

茜さんの怒号が道場全体を震わせる。

凄い気迫だ。

並みの者ならただ前に立つだけでも足がすくむ程に恐怖するだろう。

私はその気迫をじっと受け流す。

そして、茜さんの全てを乗せた竹刀が目にも止まらぬ速さで降り下ろさせる。

 

「………。」

 

余計な力は動きを鈍くし、狙いをぶれさせる。

だからその動きにいる最高で最速の力だけでいい。

後は何も考えずに竹刀が行きたいところに振り抜くだけだから。

 

ヒュッ!スパァァン!!

 

嗚呼、終わってしまった。

今回は一番楽しくて終わって欲しくなかったな。

 

結果としては私の棄権負け。

茜さんの竹刀は私には届かずに空を切った。

そして、私の竹刀は茜さんの胴を捉えて打ち払った。

もう少し詳しく話すと茜さんの竹刀が私の面を捉える直前に私は僅かに残された隙間を縫う様に竹刀をすり抜けながら腰の竹刀を解き放って胴を打つ…ただそれだけの話。

 

――――――――――

 

「いやー強いねー。」

 

「いえ、試合は私が負けましたよ。」

 

私の言葉にニヤリと笑う茜さんは私の背中をバンバンと叩く。

 

「試合ならね。でも…【死合い】なら別の話だよねー。」

 

「……そうですね。」

 

茜さんは気付いたのか。

なんて勘の鋭い人なんだろうか。

 

「はいはい。そこまでですよ。」

 

手を叩いて雨音先生が場の空気を和ませる。

うん。この人は何でこんなに可愛いのか不思議になる。

 

「ねぇ、南。この子ウチの高校に誘っていい?」

 

「誘うのは構いませんが無理矢理はダメですからね?」

 

「サンキュー♪」

 

茜さんは嬉しそうに私を抱き締める。

力強いよ。この人。苦しい。

 

「双葉ちゃん!ウチの高校に来なよ!!」

 

「むぐぐっ!!」

 

「茜ちゃん!双葉ちゃん息できてないよ!!」

 

「ありゃ?あはは。ごめんごめん。」

 

「ぷはぁ!死ぬかと思いました。」

 

うむぅ…雨音先生といい、茜さんといい。

何でこんなに胸の発育がいいのか…羨ましい。

 

「一つ質問いいですか?」

 

「いいよ!何でも聞いて聞いて!」

 

どんとこいと言わんばかりに両手を広げる茜さんに警戒しながら私は質問する。

 

「強い人はいますか?」

 

そう、それが一番大事なのだ。

その質問に茜さんは胸を拳で叩きながら答える。

………叩いた拍子に激しく揺れた…妬ましい。

 

「いるよいるよー♪それに双葉ちゃんと同い年で今年入る子がすっごく強いよー♪」

 

「そうですか。なら入ります。」

 

「因みにその子の名前は【西野 燈(にしの あかり)】ちゃん!!まだまだ荒削りだけどきっと双葉ちゃんと同じくらい強くなるよ!」

 

なるほど…それは気になりますね。

でも、問題がありますね。

 

「雨音先生…いいですか?」

 

「お姉ちゃん…。」

 

「…へ?」

 

雨音先生が頬を膨らませてそっぽを向く。

実は私の両親は2年前に事故で他界し、駆け落ちで結婚した両親だから親戚にも頼れなかったが何でも母にとても良くしてもらったと言って雨音先生が引き取ってくれたのだ。

 

「…ここは学校ですが?」

 

「むぅぅ!今はいいの!」

 

「はぁ…。」

 

いつもは優しい雨音先生だがこうなってしまったらもうお願いを叶えるまではテコでも動かない。

 

「にひひっ♪」

 

そこ!茜さん!笑わない!

 

「わかりました…「あ、敬語も無しでね?」はいはい。」

 

叶えたとたんにケロッとしてるし。

また、負けた。この人にはかなわないな。

 

「お姉ちゃん…茜さんの高校に行ってもいい?」

 

「はわわ~♪うん!うん!いいよ♪」

 

何でこんなに可愛いのか永遠の謎だね。

 

「じゃあ、そうと決まれば勉強だね♪お姉ちゃんがマンツーマンで教えてあげるからね♪」

 

「うん。お姉ちゃんありがとう。」

 

「お礼は受かってからね?」

 

雨音先生…わかりました。

ちゃんとお姉ちゃんって呼ぶから頬を膨らませないで。

お姉ちゃんはウインクをしてそう言う。

 

「にひっ♪待ってるからね?」

 

「はい。必ず行きますので安心してください。」

 

そう言い合って握手をして茜さんとは別れた。

 

――――――――――

 

―数ヵ月後―

 

「今日から高校生ね。」

 

「そうだね。」

 

あれからお姉ちゃんとマンツーマンで猛勉強をして茜さんの高校に無事合格した私は今日から高校生だ。

 

「それよりお姉ちゃん。わざわざ引っ越しなんてしなくても良かったのに。」

 

「何言ってるの。双葉ちゃんは何時も朝練するのに自転車で片道1時間半近く掛かるのにダメよ。」

 

「いや、バスとか寮とかあるし。」

 

「寮!?双葉ちゃんはお姉ちゃんと離れて暮らしたいの!?」

 

…………めんどくさい。

お姉ちゃんのこう言うところは本当にめんどくさい。

 

「わかったから。泣かないで。」

 

「よよよ…。」

 

「古いねまた…。」

 

珍しくボケを続けるお姉ちゃんを余所に横目で時計を見ると時間ギリギリだ。

もうこんな時間だし出ないと。

 

「時間がヤバイからもう出るね。」

 

「あ、私は遅刻…。」

 

「自業自得だよ。じゃあ、いってきます。」

 

「うぅ…いってらっしゃい…。」

 

お姉ちゃんを置いて家を出て走って高校に向かう。

 

さて、どんな強い人が居るか楽しみだ。

柄にもなくテンションが上がった私は笑みをこぼしてしまう。

そこの曲がり角で永遠の好敵手(ライバル)と出会う事になるとは露とも知らずに。

そして、それは一生涯忘れる事が出来ないほどに衝撃的な出会い方をする事になるとは。

 

―fin.




読んでいただきありがとうございました!

いやー擬音って難しいですね(汗)
上手く書けてるかかなーーり不安です…。

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