ウマ娘の人気もっとでないかなー。
では、どうぞ。
そのウマ娘が生を受けた場所は徳島県の美馬にあるなぎさ牧場だった。
ウマ娘を育てるブリーダーとしてはまだまだ若手で実績もそれほどないがそこのウマ娘達は生き生きしており、皆が笑顔で和やかな所だった。
「ありゃーこれまたこんまい(小さい)ウマ娘が産まれたのー。」
彼は此処の牧場主兼調教師の原田 隆三(はらだ りゅうぞう)だ。
彼はまだ若いときにウマ娘達に触れあいいつか自分もウマ娘を育てたいと思い定年と共にこの牧場を設立した。
「そうですね。でも、こんまいって言っても青毛の艶も良いですし、タフさはあると思いますよ。」
隆三の隣で喋る彼は三木 将太(みき しょうた)。
彼は昔から隆三に可愛がられており、実の祖父の様に慕っており、此処の厩務員になったのもウマ娘が好きなのもあるが隆三の手伝いをしたい為であった。
「?」
そしてその二人から見下ろされている彼女がこの物語の主人公であるヘスティアだ。
彼女は小柄で毛色は青毛であった。
性格は大人しく穏やかだが、怖がりで自分よりも小さい犬や猫にも威嚇されれば逃げ出してしまうようなウマ娘だ。
「あらま。この子犬に舐められて気絶しおったぞ。おじくそ(弱虫)やのー。」
「まあまあ、まだ子供ですから。」
「まあ、伸び伸び元気に育ってくれたらそれでいいけん。気にせんけんどな。」
「あはは。お爺ちゃんぽいですね。」
二人はヘスティアに沢山の愛情を注いで育てた。
彼女は二人の愛情に応えるように元気に育ったが小柄な体格と弱虫な性格は治らずトレーニングでも競り合いや後ろから迫られる形になると怖がって途端に失速してしまう。
「んー…脚のキレは良いんやけんどなー。」
「そうですねぇ…。」
二人は併せでトレーニングをしていたヘスティアを見て溜め息を吐く。
「あ、あの…ごめん、なさい…。」
ヘスティアは申し訳なさそうに謝り、その場で小さくなるが二人はそんな彼女を見て笑う。
「ええけん。ええけん。」
「そうだよ。ティアが楽しく走れたらそれで僕達は満足なんだから。」
将太はヘスティアの頭を撫でてなだめているとそこに一人のウマ娘が近付いてくる。
「ティア。」
「あ、お姉ちゃん♪」
ヘスティアは彼女に走りよって抱き付く。
「あらあら。ティアは甘えん坊さんね。」
彼女はハイイロ。
体格は普通より大きめで大人の女性を連想させる体つきで毛色は芦毛だ。
腰ほどに伸びたグレーの毛を頭の後ろで一本の三つ編みにしてしている。
性格は穏やかで優しく皆から慕われる姉や母の様に慈愛に満ちた笑みが絶えないがレースではまくって他のウマ娘を置き去りにする程の実力をもった彼女はヘスティアの憧れの存在だ。
そして現在この牧場で初めてSWBC(スーパー・ワールド・ブリーダーズ・カップ)を制したウマ娘で。
次のWBCターフに向けての調整中のだ。
「お姉ちゃん…今日もダメだった…。」
「そうなの。やっぱり怖い?」
「…うん。」
ハイイロはヘスティアを抱き締めて頭を撫でる。
ヘスティアが気持ち良さそうに目を細めると彼女は微笑む。
「そっか。」
「うん。」
そこでハイイロはあることを思い付く。
彼女はヘスティアは自分以上に素質があり、いつか自分を越えて世界で活躍すると確信している。
「お姉ちゃん良いこと思い付いちゃった。」
「良いこと?」
「ええ。今度は一緒に走りましょ。」
「うん…わかった。」
ハイイロはヘスティアを引っ張る様に前を走り、ヘスティアはハイイロの背中を見て楽しそうに追いかける。
ヘスティアにとってハイイロと走る時間は大好きでいつもこの背中を見て走って来たのだ。
時折、彼女から香る花のような甘く優しい香りがヘスティアの鼻腔を擽り笑みが溢れる。
「ティア。」
「なぁに?お姉ちゃん。」
二人は芝の生い茂るトラックを走りながら話をする。
「貴女は速くなる。私よりね。」
「本当?」
「ええ。だからね…貴女に合った走法を教えるわ。」
「今ままじゃダメなの?」
「ダメじゃないけどこっちの方が貴女の能力を最大限発揮出来ると思うわ。」
ハイイロは速度を落としてヘスティアに並ぶとそれを教える。
「うん…うん…ええ!?」
「フフッ…大丈夫。貴女ならきっと出来るわ。」
「む、無理だよぉ…。」
「大丈夫。私を…何より貴女自身を信じてやってみて、ね?」
驚くヘスティアにハイイロはコロコロと笑いまた速度を上げる。
今はレースで言う第三コーナに差し掛かった所だった。
そこはハイイロの仕掛けるタイミングでもあり、彼女はグングン加速してヘスティアを10…20…30馬身と離して行き30馬身離してゴールまで300メートルの所でハイイロが第四コーナを曲がり終わり最後の直線に入る。
「ヘスティア!今!!」
ハイイロは叫ぶ。
彼女はウマ娘としてはもう絶頂期を過ぎ後は衰退を辿るだけだ。
しかし、彼女は何の心配してなかった。
それは彼女…ヘスティアの存在があったからだ。
ヘスティアはハイイロにとって妹でもあり、夢でもあった。
そんなヘスティアがレースに出れる様になっていつか世界で活躍する姿を夢見て…いや、世界を制した事のあるハイイロからしたらヘスティアはいとも簡単に世界を制してトップとして長い間君臨するだろう。
だからハイイロは自分の全てをヘスティアに託す様に叫ぶ。
自分を越えてほしいから。
「やあああぁぁぁぁ!!」
【直線一気】
それは一番後ろから他の全てのウマ娘を抜き去る【追い込み】を越えるスピードと瞬発力重視の走法だ。
それはその名の通りにレースの最終の直線のみに全てをかけて走り抜くのだ。
この走法は他のウマ娘がトップスピードで走ってる中でその全てを越えて抜かなければならない為に並みのウマ娘がすればまず勝てるものではなく、異常なまでに優れたスピードとたった数歩でトップスピードまで上げれる瞬発力を併せ持たなければなせない。
そしてヘスティアはそれをもって生まれた。
ヘスティアとハイイロの距離はみるみる内に狭まりラスト50メートルで3馬身まで迫った中でハイイロは確信する。
『ああ、私の目に狂いはなかった。』
「やあぁぁ!!」
「はあぁぁ!!」
ヘスティアが追い上げるがハイイロも世界で活躍するウマ娘だプライドもある。
ハイイロの使う【まくり】はゴール直前で失速するのが本来の姿なのだが彼女は違う。
異常なまでのスタミナと執念に似た勝負根性で一度落ちたスピードを最後の最後でまた速度を上げてしまうのだ。
その他のウマ娘とは一線を画する【まくり】で世界に名を馳せたのだ。
二人が横並びになった瞬間がゴールだった。
ゴール坂がないこのトラックでは結果がわかるもの等は無かったがSWBCを制したハイイロに迫るヘスティアの凄さは写真等の記録が無くとも容易に想像出来る。
「はぁ、はぁ…どうだった、かしら?」
「ん、はぁ…はぁ…わかん…ないよぉ…。」
二人は走り終えて肩で息をしながら話すがヘスティアその場で寝っ転がり大の字になる。
「はぁ、ふぅ…わからないけど…後ろに誰も居なかったから…怖くなかった。」
「んっ、はぅ。そっか。」
大の字のヘスティアの頭の横で座り彼女の頭を持ち上げて膝枕をするハイイロは微笑んでそのまま頭を撫でてやる。
「…風が気持ちいー…けど、ちょっと眠たいかも…。」
「いっぱい走ったら疲れたのね。いいよ。少しだけ寝ても。」
「ん…おねぇーちゃーん。」
「なぁに?」
「ありがとぅ…大好きぃ…。」
「私も大好きよ。」
「えへへ…すー…すー…。」
ヘスティアは目を閉じると直ぐに夢の世界に旅立ってしまう。
ハイイロの側に居るからか安心しきった笑みを浮かべて彼女に甘える様に頬を寄せる。
そんなヘスティアを見てハイイロは彼女の愛らしさに笑う。
「おやすみなさい。私の女神。」
ヘスティア…新ウマ娘戦まで後1ヶ月に迫った日の出来事だった。
―To be continued
読んでいただきありがとうございました。
はい。今回の新ウマ娘のハイイロですがこの子も自分がスタホ3にて育てた馬の擬人化になります。
戦績などはヘスティアに敵いませんがなかなか走ってくれた子になりましね。
では、また次回お会いしましょー♪