Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」   作:必殺遊び人

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バゼット編は三話完結を目指してます。
なので少し詰め込み過ぎな感は否めませんが、その分今話はいつもより長い話になってます。

視点の移動が激しいので、読みづらかったら教えていただけると助かります。
どうにか工夫しますので!!

それではどうぞ!!



21話とかとか~♪ 2way バゼット編 覚醒する魔法少女

 

 

 クロは目の前にいる女をやばいと思った。

 理由ならこの状況だけで十分だ。

 だってそうだろう。崩壊た屋敷から現れた見知らぬ女。これで警戒しない奴はよほど頭がお花畑に違いない。

(魔力はある程度あるわね。これなら多少戦闘になっても大丈夫・・・・・・・――っ!!?)

 反応できたのは偶然だった。

 イリヤの前まで迫っていた女の拳と、クロの『干将・莫耶』が衝突する。

 ――いきなり何を!? そう問おうとしてクロの腕がわずかにきしむ。女は、真豪事なき英霊の、しかもランクは低いとは言え宝具の防御を押し切ろうとしていた。

「――ッ!!・・・・・・嘘!!?」

 相手の力にクロは驚きを隠せない。

「っく!! このッ!!」 

 クロは女を弾き飛ばす。

 それでも。腕のしびれが止まらない。

「侵入者用の警報が鳴らなかったので関係者だと思い攻撃しましたが、どうやらあたりの用ですね。次からは手加減しなくて済みそうだ」

「なによそれ」

 思わず顔がにやける。

 今ので手加減? しかも、感で攻撃してきた? こんな子供相手に?

 笑えない。ああ、笑えない。

 これなら通り魔の方が数百倍かわいいだろう。

「なに!?? なんなのあの人!?」

 いつものごとく頭がお花畑なイリヤ相手に、クロは言った。

「あれは敵よ」

 敵? なんの? そうイリヤが聞く前にクロが叫ぶ。

「早く転身しなさ!! あれは本気でやばいのよ!」

 攻撃を食らったからこそ分かる。あの威力はくらえばただじゃすまない。もし、ただの肉体でそれを食らったりしたら、最悪死ぬ。

 そこまで理解したからこそ、クロは焦っていた。

 イリヤは日常と魔術、二つの世界の切り替えが遅い・・・・・・と言うか混合させてる節がある。もちろんそれが悪いとは言わない。むしろイリヤの周りからしたらいい事だっただろう。なぜならおかげでイリヤとクロは殺し合いをしないで済み。美遊との関係も良好だ。

 良いとこどり、と言えば聞こえが悪いが。自身の関係のある時、好きな時に魔術の世界へと足を踏み出すイリヤは、よくも悪くも自身の足でしか踏み出さない。

 知らぬうちに、理不尽に巻き込まれることをほとんど想定していないのである。

 だから周りが教えるしかない。今この状況は危機なんだと。すでに魔術の世界なんだと。

 そんなクロのその焦りは、結果的に最悪な形に行き着いた。

 イリヤの方へ目をそらした一瞬、彼女はクロへと迫っている。

「(加速のルーンを足に!!)――やばッ」

 反射的に防御ができたものの。その体は宙へと浮く。

 

 『次からは手加減しなくて済みそうだ』

 

 忘れていた。女はそう言っていたはずなのに。そして。

 クロの体は吹き飛ばされ。

 

 流れるように。女の二撃目がイリヤへと迫った。

 

 大きく後方へ弾き飛ばされたクロだが、黙ってそれを見ているわけがない。ダメージを食らったわけはないのだ。とは言え腕は痺れて動かない。ならば。

「『全投影連続層写(ソードバレルフオープン)』」

 クロの背後に浮かびあがる無数の剣が、女へと放たれた。

 それは、もし士郎が行うなら、四工程以上必要な行為。複数の宝具を投影し、連続的に射出する。言葉だけなら簡単だが、それには凄まじい集中力が必要だ。なぜなら慣れていない宝具の投影だけでもいざ知らず、投影後の制御までおこなっているのだから。

 だがクロはそれをほとんど反射の域。ノータイムで繰り出した。

 もちろん、彼女が英霊を宿していたのも理由の一つだろう。だがそれだけじゃなかった。それは魔力でのごり押し。

 魔力の喪失がそのまま命へと直結するクロならば、まず行うはずのない愚行。

 それでも。

 

 ――イリヤに手を出そうというのなら(・・・・・・・・・・・・・・・)!!

 

 クロは迷うことなくそれをする。

 

 

『ねぇクロ? 私がお姉ちゃんでいいよね。ううん私がお姉ちゃんであるべきよ』

『何言ってんの? 姉で求められるのは包容力に気遣い、責任力とか無数にあるのよ? あなたは何一つないじゃない。結論から言って、姉であるべきはこのあたし』

『クロなんて、お兄ちゃんに甘えてばっかじゃない!! 私はそんな人物姉とはみとめませーん』

『は!!? そんなこと言ったらそんな慎ましい胸しか持たないイリヤなんか姉とは認めないわよ!! そもそも正確な生まれはあたしの方が――』

『あーー!! クロが言っちゃいけないこと言った!! 大きさなんてほとんど変わらないはずなのに!!!』

『なら勝負でもする? どうせあたしが勝つけどね』

『受けて立とうじゃない!!!』

 

 

「まだ勝負はついてないのよ・・・・・・。まだ引き分けたままなんだから!! だから――」

 

 

『どっち美遊?? どっちの方が教室に入るの早かった!!』

『あたしの方が早かったわよね!? てか転身してまで互角って、それはもう私の勝ちじゃないの?』

『存在チートが何言ってんの!?』

 

 

「あたしの家族に!!」

 転移。クロは女の背後へと移動した。

「手を・・・・・・出すなーー!!!!!!」

 前方からは無数の剣。背後からクロの斬撃。見るからに隙など無い攻撃に、女は。

「面白い策ですが・・・・・・。あなたを潰せばそれで終わりだ」

 ボゴッっと、鈍い音を立てながら、クロの腹部へと拳がつき刺さった

「・・・・・・かッ・・・・・・はっ・・・・・・!!」

 今度こそ本当にクロは吹き飛ばされた。

 腹部への激痛と、後方への強いベクトルを感じながら、クロは視界に映るそれを見て、女が何をしたか把握した。

「・・・・・・ま、さか・・・・・・!!」

 女の体には数本の剣が刺さっていた。

「軌道さえわかっていれば、よけるのはたやすい。ただ、問題はその数でした」

 体に刺さる剣を何でもないように貫きさり。

「だからあえて受けることにした。よほど腕がいいようですね。『ほとんどが致命傷になるところ』へ飛んできた。なら話は簡単だ」

 カランカラン、と女に刺さっていた剣が地面へと落ちる。

「致命傷になるそれだけ避ければ良い。それさえ避けてしまえば、後は痛いだけで済む程度になる。幸い『ほとんどが致命傷に向かって来ていた』ので、残りは数本で済みました」

 その言葉を聞き、クロはありえないと首を振った。

 人は自身に瞬間的に脅威が近づけば、必ず回避から思考に浸る。それは、判断力を低下させ。次の選択しである防御まで影響を及ぼす。

 だが女は、その過程がないほど瞬間的に最適解を導いた。その冷静さは、所見殺しのクロの転移に反応できたことからも明白だ。

 だがクロは知らない。彼女の持つ武器を。それさえ知っていれば今回の事も理解できたはずだ。 

 簡単な話だった。彼女の武器は基本的に後出しだ。しかも、あいての全力の技が発動しなければ使うことがかなわない限定なもの。だからだろう。要するに、彼女はその程度の脅威には慣れていたのだ。脅威に対して冷静に対処する。それができなければ彼女の武器は武器として機能しない。理不尽な武器は理不尽な使い手を持って初めて真価を発揮する。今回のそれはその副次結果にすぎなかった。

 

「ほう、まだ立ちますか。少し感心しました」

 転がってる瓦礫にてをつきクロは立ち上がった。

「こ、の程度攻撃、立てないほうが驚きよ・・・・・・」

 軽い挑発。

 だが、彼女からしたら粋がった子供以外の何者でもない。

(硬化のルーンに加速のルーン・・・・・・。ルーン魔術はそこで知識があるわけじゃないけど、これはそんな単純な魔術じゃない)

「そうですか。なら今度は少し強めに行きましょう。私はあちらの少女に用がある」

「少し強めに・・・・・・ね。そうゆうこと、理解したは。あなたのそれはルーン魔術の重ね掛け。何重にも同じルーンを重ねて刻むことによって、実質・・・・・・物質の限界値まで無限に力を上げる。全く、理不尽すぎる魔術ね」

「――ッ。よく気づきました。なるほど、まったくの素人と言うわけではないようですね。まあ隠していた訳ではないので問題はありませんが・・・・・・どちらにせよ」

 そして。

 女は動いた。

 クロも構える。

「そろそろ終わりにしましょう」

 

 ともに人の枠を超えた化け物。その一端を使い、理不尽な暴力を振りかざす。

 

 

 

 イリヤは二人の戦いを見ている見ているしかできなかった。

 だが、それはイリヤが原因ではない。

「ルビー! どうしたのルビー!! 早く転身しないとクロが・・・・・・!!」

「・・・・・・・・・・・・」

 ルビーは答えない。否、答えられない。ルビー自身、どうするべきか答えが出せないのだ。この場でルビーだけが知ってる事実、それがイリヤに戦闘させることを拒んでいる。

 しかも、ルビーの考える可能性をクロに肯定されてしまった。

 それは英霊を宿すクロですら敵わないという事実。もちろん相性はある。見るからにクロと彼女の相性は最悪だった。クロにはイリヤと言う守る対象がいることも大きいだろう。

 ただこの場で確かなことは『バゼット・フラガ・マクレミッツには敵わない』と言う事実だった。

 しかも、見るからに、ルヴィア達は彼女に敗北した後なのだろう。最悪、凜や美遊すらあの瓦礫の下にいる可能性もある。

「ねぇルビー! どうしちゃったのいったい!!?」

 イリヤのその叫びに答えたのはルビーではなかった。

 

「ペンタグラムに鳥の羽。どうやらそれがゼルレッチ卿の特殊魔術礼装のようですね。なぜあなたが持っているのカわかりませんが抵抗しなければ身の安全は保障しましょう」

 

 なんで気づかなかったのか。先ほどまでの戦闘音がきれいさっぱり消えている。

 土煙の中から姿を現すそれに、イリヤはかろうじて声を出す。

「あなたは・・・・・・なに?」

 それに答えたのは、彼女ではなくルビーだった。

「彼女は・・・・・・バゼット・フラガ・マクレミッツ。私たちが行ってきた、カード回収。その前任者です。・・・・・・おかしいと思いませんでしたか? 私たちが回収任務を始めた時最初から二枚のカードがありました。それを仕留めたのが・・・・・・彼女です」

 アーチャーとランサー。

 見たこともない相手ではどれだけの強さか分からないが。今まで英霊と戦ってきたイリヤはその強さがある程度は想像できた。

 しかも、複数人で回収を行ってきたイリヤたち対し、バゼットは一人。

 クロを圧倒したその戦闘能力からもその実力は確かなものだった。

「そう、カード回収は本来私が行っていました」

 ルビーが引き継ぐように、

「しかしそれは、正式に凜さんたちが引き継いだはず。なぜ今更あなたが・・・・・・!」

「なに、上の方でパワーゲームがあっただけです。・・・・・・先ほど、屋敷の方から四枚のカードを回収しました。しかし足りません。あなたがそれを持ってると言うのなら渡しなさい。でなければ強制的に回収を執行します」

 それを聞いて、ルビーは自分がなにをすべきか悟った。

 カードを渡せば引き下がってくれる。もちろんイリヤがルビーを持っている事実は伝わるだろう。それはルビーにとってイリヤとの契約解除と同義だった。それでも、イリヤの命が助かるのなら安いものだと。

「イリヤさん、彼女の目的がカードだというのなら――」

 しかし、その言葉を遮るように、ルビーのふざけた未来をぶった切るように。

「ルビー、転身をお願い」

「――! 今のイリヤさんには勝算はありません! ここはカードをわたすべきで「ルビー!!」――ッ」

 カードと命わかりきった二択を用意されてなお。

 イリヤは、ルビーの言葉を遮った。

「ねぇルビー私、今すごく怒ってる」

 静かだが、確かな怒気をはらんで。

「カード? 確かに奪われるのは気に入らない、でも”今は”そんなものどうでもいい。そんなことより、上のパワーバランス? そんなふざけた理由で・・・・・・! その程度の理由で!! 私の家族を攻撃したあいつの!! クロをあんな目にしたあいつの!! 命令なんか聞くことなんかできない!!!」

 恐怖はある。それでも。

「私は良いよ。私は自分からこの力を手にしたんだから。・・・・・・でもクロは違う。やっと、クロは生活を知ったんだ。家族を知ったんだ。笑顔を知ったんだ。それを!! こんな魔術(ばか)な理由で奪われるなんて、絶対に認めなんかしない!!」

 ――だから。と、そう続けて。

「ルビー、力を貸して」

 イリヤは言った。

「私一人じゃ絶対勝てない。でも、ルビーと一緒なら。絶対に負けない」

 イリヤの言葉に呆れながらも、ルビーは心底嬉しかった。

 だって、こんな少女(ばか)にこそ、ルビーは自分を使ってほしかったのだから。

「わかりましたよイリヤさん、だったらさくっと勝って終わりにしましょう」

 ステッキを持ったイリヤの手から、それは全身へと広がっていく。

 魔法少女として何度も着たその姿。

 けど今回は違う。今回だけは、誰に言われるわけでもなく、なんとなく流れで着たのでもなく。

 自分の意志でそれを着たのだ。

 

「かかってきなよ魔術師さん。遊んであげる」

 

 魔法少女はそう言った。

 

  

 

 静かに、イリヤの敵は語りだす。

「先ほどの少女の力あれは間違いなくアーチャーのものでした」

 イリヤスフィールも馬鹿じゃない。

 クロを圧倒したバゼット相手に、無策に突っ込むようなことはしない。

「そしてあなたはゼルレッチ卿の礼装を使う。何やら事態は教会の認識以上に混とんとしているようですね」

 しかし、忘れていないだろうか。イリヤスフィールは、魔法少女しては一流だということを。

「しかし、なんであれ私の仕事は変わりません」

 バゼットのグローブに幾何学的な文字が吸い込まれる。

 硬化魔術を強化。拳が光る。

 

「さぁ始めましょうか」

 バゼットがイリヤへと迫った。

 

 拳を引きながら迫るバゼットを見てイリヤは飛んだ。

 しかしそれは空中へ逃げるのではなく。ジャンプするような感覚で軽く浮いただけ。本来なら空中では身動きがとれなくなるそれは、イリヤにとっては最良の手だった。

 イリヤは自身の身体能力をよく理解していた。いかにルビーを使っているとはいえ、自分程度ではバゼット相手に肉弾戦で勝負にならないことも。頭の命令から、肉体をを動かすまでが遅すぎる。単純に自分の体を使うという行為になれていない。

 だからこそ、その移動法を魔力限定にした。

 イリヤはイメージによって一瞬で空を飛ぶことに成功したことがある。つまり、避けるというイメージをそのままアクセスできる空中移動の方が、確実だと考えたのだ。

 わずかに足を浮かせてるだけ。それなのに、イリヤの反応速度は大幅にアップした。

 

 砲弾並みの速度で迫るバゼットの拳をイリヤは避けた。地に足がついているなら、体を反らすことで精一杯のそれを、体全体で。

 それによって、体制を崩されることもなく、確実に敵の側面をとったイリヤは近距離で攻撃することに成功した。

「『放射(シュート)』!!」

 いくら出力が弱いとは言え、当たればダメージ必須のこの距離を。

「小賢しい」

 バゼットは突き出した腕の遠心力で、横なぎ打ち落とした。

 イリヤの出力ではバゼットの拳に通用しない。 

「――ッ! だったら!」

 魔力弾を地面に放ち視界を塞ぐ。

「『斬撃(シュナイゼル)』!!」

 見えなくとも当たる。煙を引き裂きながら。それは真っすぐバゼットへと進む。

「無駄です」 

 一蹴。魔力の刃を握りつぶす。

「・・・・・・」

 イリヤはそれを見ても何も思わない。これぐらいは予想できた。だから。これを踏まえて確実に勝てる次の一手を。

 瞬間。イリヤは飛んだ、今度は文字通り空中に。遠距離戦に切り替えたわけではない。単純に『こちらの方がよく見える』から。

「『斬撃(シュナイゼル)』+『トリプル』!!」

 魔力の刃が分裂した。ただの放射(シュート)を散弾としたように魔力の刃を複数放つ。

「無駄だというのが分からないのですか」

 でもそれすらも届かないのであろう。だから――。

「――なッ!??」

 驚きの声を上げるバゼットに、

 

「うん。無駄だと思うよ。その拘束された手足でよけるのは」

 

 イリヤは静かに口にした。

 物理保護壁による拘束。空中に固定し、本来であるならば敵の攻撃に対する防御に使うそれを、腕と足の周りに作り、身体を固定する。

 凜達ですら難しいあろうそれを、イリヤはイメージだけでものにする。

 細かい計算など必要ない。『魔法少女は飛べるんでしょ?』あの時と変わらない。妄想を極限まで昇華させたイメージの具現化。魔力をイメージ通りに再現するルビーと言う魔術礼装は、イリヤと最高以上に相性が良かった。

 そして。

 ステッキを前に突き出しながら。イリヤは勝利宣言を行った。

「『最大爆砲(フルバースト)』!!!!」

 瞬間的に行う放射(シュート)でも、威力無視の散弾でもなく。一定時間魔力をためての、イリヤの最大出力。

 斬撃(シュナイゼル)爆砲(バースト)、二つの脅威が、動けないバゼットへと向かっていく。

 

 

 放った魔力の爆音を聞きながら、イリヤはそれを眺めていた。

「ルビー、どう思う?」

「私にもわかりません。しかし、警戒はしておくべきだと思います」

 倒したという確信はあった。それでも、バゼットが倒れるイメージがイリヤには湧かない。

 数秒後。土煙が晴れる。

 そこは隕石でも落ちてきたのかと思うほどのクレーターが出来上がっていた。それを見て、イリヤの心配は杞憂だと考え始める。あれで倒せなかったらあいつは人間じゃない。 

 安堵の表情を受けべるイリヤの顔が、徐々に曇り始める。

「・・・・・・。――なッ!!!」

 バゼットの姿がどこにもない。消し飛んだということありえない。

「なら・・・・・・どこに!?」

 この時イリヤは気づくべきだった。

 

 ――自分は何を悠長にしているのだと。

 

 そして、それに気付いた時はすでに遅かった。

「隙だらけです」

 背後から。イリヤが振り向くよりも早く。

 バゼットは拳を振りぬいた。

「――っぐ!! ・・・・・・あがぁ・・・・・・!!」 

 脇腹に突き刺さる拳を感じた直後。イリヤは地面へと真っすぐたたきつけられた。

 

「ああ、あああああああああああ!!!」

 

 地面にたたきつけられた痛みよりも、脇腹の痛みが治まらない。

 呼吸ができない。骨がきしむ。かろうじて呼吸ができても、それが痛みを助長する。

 痛い痛い痛い痛い。

 そこへ。

「先ほどの攻撃。確かに凄まじい威力でした。さすがはゼルレッチ卿の魔術礼装と言ったところでしょうか」

 バゼットはイリヤを見下ろしながら、上から目線で評価する。

「拘束が二重であれば回避も防御も不可能だった。大したものです」

 痛みを堪えながら、

「・・・・・・な、んで。飛んでた、わた、しの・・・・・・背後か、ら・・・・・・?」

 かろうじて話せるようになったイリヤは、先ほどの攻撃がなんでできたのか分からない。

「それも含めて評価します。恐らく、私が飛んでも届かない距離、『なおかつ』もしもの何かしらの手段で拘束を抜けられた時、私が避けられない距離にいたのでしょう。しかし・・・・・・だからこそ届くことができた」

 それを聞いて、イリヤは完璧なまでに敗北を理解した。

 おそらく周りの木々やら、何らか魔術を使って移動したのだろう。彼女実力を把握しきれてるつもりで何も把握しきれていなかった。

 あれでも手加減していたのだろう。それすら見破れなかったのだから。 

 自身のカードケースに手を伸ばすバゼットをイリヤは止めることができなかった。腕が動かない、視界がぼやける。今まで味わったことない痛みに、体が脳からの命令を拒んでいる。

「やはりカードを持っていましたか。これで残り二枚。いいえ、先ほどの少女のも合わせると一枚ですか・・・・・・」

 が、その時。

 

「誰のカードを奪うって?」

 

 クロの蹴りがバゼットを吹き飛ばす。

「まー、一発ぐらいはやり返さないとね。対して効いてないのでしょうけど」

「・・・・・・く、ろ?」

「――ッ、先ほどの少女ですか」

 クロの予想通り、バゼットは何でもないように立ち上がる。

「立ちなさいイリヤ。一枚もカードを渡しちゃだめよ!」

 この時間稼ぎになんのいみがあるかは分からない。それでも、悪あがきと知ってなお、

「思ったより早く目が覚めましたね」

「あんなボディーブローくらったら誰でも起きるっつーのよ」

 

 クロはバゼットへと向かっていった。

 

 

「そう、だよね。・・・・・・あんな奴に、わたせないよね・・・・・・」

 地面を這いずりながら進むイリヤにルビーは、声を上げる。

「イリヤさん動いてはダメです!! 治療に専念しなければ最悪命に危険が――!!」

「それは・・・・・・ダメ。せっかく、クロが足止めしてるんだから・・・・・・! 私がこんなこと・・・・・・で負けて、ちゃ・・・・・・!!」

 前に進んでいるのかすら分からない。

 たった一発しかくらっていないのに、これほどのダメージを受けたことが思いのほか驚きだ。

 笑みすら痛みを引き出すというのに、思わず笑ってしまう。

 だって。

「・・・・・・届いた。カードに届いた」

 その手に、カードが確かに握られたいる。しかし――

「子供にしてはよくやりました。が、カードから手を放しなさい」

 バゼットの足が、イリヤの手を縫い付けた。

 骨に直接触られているような、声にならない痛みがこみあげてくる。

 クロももう動けない。

「い、嫌だ・・・・・・!!」

「手加減しているのがまだわかりませんか。その気になれば骨を踏み砕くこともできるのですよ」

「そ、それでも、絶対に離したりなんかしない・・・・・・!!!」

 キッとバゼットをにらみつけるイリヤの目には確かに力があった。

「なら!! 覚悟を決めなさい・・・・・・!」

 バゼットの足が振り下ろされる。

 怖い。それでも、絶対に話すもんかと。イリヤはカードを握る手に力を入れた。

 

 

 

 バゼットは、足を振り下ろす瞬間。

 視界の端でそれをみた。

(これは!! もうひとつの魔術礼装!! ――しまッ!?)

 青い光がバゼットを襲う。

 完全に防御したわけでない、しかしダメージがない。おそらく、牽制程度の一撃だったのだろう。

「次から次へと・・・・・・!!」

 バゼットに攻撃してきたのはまたしても子供。

 ただ、青い魔術礼装を手に持ったもうひとりの魔法少女。

 その少女は、バゼットなど気にも留めない様子で、倒れている少女の手をとった。

「ごめんね、美遊。私も、クロも勝てなかった・・・・・・守れなかった。せっかくみんなで集めたカードなのに・・・・・・! 一枚しか守れなかった!!」

 涙を流していた。それほど悔しかったのだろう。痛みでは決して流さなかった涙を、美遊を前にして耐えられなくなってしまった。

「大丈夫」

 ただ一言。

「まだ私がいる。私が残ってる」

 カードを手に持った少女は、確信の言葉を持って。

「私が倒す。イリヤ達は、私が守る!! 『――――』!!!」

 直後、口にした言葉によって、少女は光へと包まれた。

 

 バゼットがそれを認知した時には、すでに目の前にそれはいた。

「うッ!! ・・・・・・ぐ!!」

 防御は間に合った。ルーンの強化もしていた。それでも。

 押し切られる。

 反射的に後ろへ飛んだバゼットは、初めて自身から身を引いた。避けるならば前に出て叩き落す。そんな戦闘を行っていたバゼットが、初めて背後へと下がったのだ。

 再度。バゼットを押し切った光が、攻撃を仕掛ける。

(やはり、抑えきれない!!)

 弾き返すのがやっと。いや、本来それができるだけで十分すぎるほどだった。光の正体が、星が輝く夜空を背後に姿を現す。

「桁違いの突進力。そうか・・・・・・! それが! ライダーのクラスカードの力!」

 白い輝き。真豪事なき幻獣『ペガサス』。

 幻獣の召喚とその騎乗。ライダーの能力。その一端。

「なるほど。確かに強力です。それに――」

 バゼットの思考が終わる前に、少女と幻獣は流星のごとく白い光となって。バゼットへと迫る。

 だが、何度も同じ手でやられるほど、バゼット・フラガ・マクレミッツは甘くない。

 ルーンをさらに重ねる。二重、三重。そして、

 二人が衝突する。

 その攻防は互角。だが、バゼットをしてはじき返すことがやっと。

 対してむこうは、未だに本気ではない。宝具ですらなく。ただ幻獣を使い突進しているだけ。さらには空で見下ろす少女へ、バゼットは攻撃するすべがない。ただ、それよりも。

「・・・・・・仮説はありました。礼装を媒介として英霊の力を召喚できるのならば、人間自身をも媒介できるのではないかと、しかし、カードの魔術構造は極めて特殊で複雑。教会ですら完全に把握しきっていない。それを、いともたやすく・・・・・・」

 圧倒的優位の中少女は口にした。

「一つだけ答えて。ルヴィアさん達の姿が見えない。どこへ行ったの」

 この質問は悪手だった。

 バゼットが相性最悪のライダー相手に、確実に勝つ道筋を作ってしまった。

「彼女たちなら、瓦礫の下です」

 その言葉に、少女たちが息を呑む。最悪の可能性が最悪へと変わったのだ。

 ――そう、と。少女は静かに口にした。

 

「なら、手加減は――しないッ!!」

 

 バゼットは認識する。

 ――宝具の発動を確認。――『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』アクセスを容認。

「この時を待っていた!」

 彼女が持ち歩いていた銀色の筒から、”現存する宝具”『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』が姿を現す。

 『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』それは、バゼットが用いる迎撃礼装。相手の攻撃より後に発動しながら、時間を巻き戻し、発動前に心臓を貫くそれは、心臓を貫かれた状態では攻撃は行えないという矛盾点の構築により、相手の攻撃をキャンセルするというもの。

 さらには、心臓を穿たれた相手は、攻撃を放つことによって自身が死ぬという、事実上、切り札の封印を余儀なくされる。しかし、本来バゼットがフラガラックを発動するには相手の切り札たる攻撃が必要になる。それはつまり、相手に切り札を使わせるほどに追い詰めなければならないということであり、先ほどの状況では、少女が宝具を使う可能性は低かった。

 だからこそ、少女がなんの疑問を抱かず宝具を使う状況を作り上げた。

 怒り。復讐による本気の力。

 誘導さえしてしまえば、少女は迷うことなく宝具を使うと。

 

「『後より出て先に断つもの(アンサラー)』」

 

 その詠唱により、黒い球体状だった『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』は幾何学的な模様を周囲に浮かべながら、その形を一つの剣へと変えていった。

 そして、

 

「『騎英の手綱(ベルレフォーン)』!!!!!」

 

 少女が宝具を発動したのと同時に、バゼットは自身の勝利を確信した。

 

「『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!!』」

 

 その瞬間、二人の時間が止まり。遡る。そして。

 『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』が地面に落ち、発動を終えると同時に、先ほどまで天空に漂っていた少女も地に落ちた。

「なに、が・・・・・・起きたの・・・・・・?」

 地面から起き上がった少女を見って、バゼットは首を曲げるも、

「なるほど。幻獣をを使っての宝具のためか、あなた自身が貫かれたわけではなかったようですね」 

 納得するように呟いた。

 バゼットが周囲を見渡すも、すでに立ち上がれるものはいない。

(万策尽きた、か)

「――美遊ッ!! 後ろ!!」

(遅い)

 辛うじて立ち上がった少女の腹に、バゼットは拳をえぐりこませる。

「「美遊!!」」

「・・・・・・がぁッ・・・・・・はッ!!?」

 子供を相手にしても、すでにバゼットは容赦しない。

 『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』を使い死ななかっただけでも御の字だろう、と。

「さて、最後はアーチャーのカードのみですが、おとなしく渡してくれる気になりましたか」

 よろよろと立ち上がるアーチャーのカードを持ってるであろう赤い服の少女を見て。

「ざーんねん。渡したくても渡せないのよね。カードは私の中にあるんだから」

「なるほど。どういった理屈かは分かりかねますが、黒化英霊と同じ状況と言うわけですか」

 そのまま。――でしたら。とそう続けて。

 

「抉り出すまでです」

 

 

 

「――!!」

 その言葉にクロの表情が凍る。

 さっきのは最後の希望だった。クロの中にあるといえば、諦めてくれるかもしれないと。しかし、そんな希望すらはかなく散った。

(殺される。殺さなくちゃ殺される・・・・・・!! でも――)

 クロは死と言うものを知ってる。

 だからこそ、相手を殺す選択肢が出てこない。殺されると分かってなお、答えを見つけ出すことができない。

 突如。ドンッと、バゼットに一つの砲弾が放たれた。

 威力は弱く。簡単に打ち落とされるそれは。

「イリヤさん何をしているんですか!?? 今は治療に専念しないと!!」

 ルビーの言葉を無視するようにイリヤはよろよろと起き上がる。

「やらせない・・・・・・」

 その目はバゼットを見ていなかった。いや、正確には判断すらできなかった。それでも

「私の妹は、何が何でもやらせない・・・・・・!! だって・・・・・・絶対に守るって決めたんだから!! 絶対に傷つけさせないって誓ったんだ・・・・・・か、ら」

 しかし、壊れた人形のようにプツリとイリヤは倒れこむ。

「イリヤ!!」

 クロの声が聞こえているかも怪しかった。

 完全なる肉体の限界。

「最後までよくやる。だが、これでおしまいだ」

 拳を握りしめたバゼットが、それをクロへと振りかざす。

 防御に行動を移せない。回避へと足が動かない。

(やだ。やだよ・・・・・・!!)

 

「誰か・・・・・・助けて・・・・・・」

 

 届くはずのない声。

 それでも。

 

 泣きそうな顔で発したその小さな声は、確かに届いた。

 

 始めに気付いたのはバゼット。

 それは人ではなく剣。自身に向かってくる二振りの剣のそれに気づいた。

 そんなもので倒せる彼女ではなく、簡単に後方へよけられてしまう。

「そろそろ、援軍も尽きたと思ったのですが・・・・・・」

 クロの前に現れた二本の剣。交差するように突き刺さるそれは『干将・莫耶』。

 しかし、それはクロが投影したものではない。

 

 トンと『干将・莫耶』の柄に少年は降り立つ。

 

「こんなに怒りを覚えたのは久しぶりだ。さて、これをやったのはどこのどいつだ?」

 

 少年は、軽く周囲を見渡すと、怒気を含ませながらそう言った。

 それを見て、クロは、そして美遊も、声を聞いているだけのイリヤですらも、安堵の表情と涙を浮かべている。

「それについては私がやりました。あなたも邪魔だてしますか?」

 バゼットを見たその少年は、驚いた表情をした後、すぐに納得したような顔をする。

「なるほどな。・・・・・・わかってると思うが俺は心底機嫌が悪い・・・・・・が、今ならまだ見逃してやる」

 すべてを理解しているように、

「カードを置いて帰るか選ばせてやる。今なら魔術教会を敵に回してもいい気分なんだよ。バゼット・フラガ・マクレミッツ」

 ああ、すべてを知っていたからこそ自身に怒りを抱いて。 

「見逃す・・・・・・ですか・・・・・・。カードの事も知ってるとなるとあなたもやはり関係者だというわけだ。しかし、私の事を知ってるのは解せませんね。あなたは何者ですか」

  

 その問いに、士郎はふざけたように口にした(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「『正義の味方』だ、クソッたれのな」

 

 遅れてしかやって来れないヒーロー(・・・・・・・・・・・・・・・・)、それを揶揄するように、彼は自身をそう呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 




 呼んでくださった方ありがとうござます!!

 今回はなるべく原作通りに展開しながら少し中身をいじくった感じに仕上げました。
 
 
 少し報告があります。
 
 近作品は、作者があまりプリズマイリヤを深くしらないで書いております。Fateの魔術についてもあまりよくわからないで勢いで書いてしまっています。
 もちろんいろいろ調べながら書いていますし、アニメも見たうえで書いてはいますが、詳しい方はところどころ違和感があるかもしれません。
 ですので、間違いや、明らかにおかしいところは、感想で教えていただけると助かります!
 
 例えば今話のバゼットのルーン魔術の重ね掛けなどはアニメを見たうえで自身で設定した魔術なっています。あえて設定を変えてる部分も確かにありますが。原作主義者の型には大変申し訳ございません

 それでも問題ないという方は、この作品をよろしくお願いします

 それでは、今話もありがとうございました!!
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