Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」   作:必殺遊び人

22 / 23
 まずは初めに、また時間空いてしまって申し訳ありません。
 久しぶりに書いて書き方忘れていて時間かかってしまいました・・・・・・笑。
 
 バゼット編は三話構成のはずだったのですが、想いの他長くなってしまったので四話構成に変えました。

 以前貰った感想から、思いついたネタなので結構頑張ったかもしれません。

 ちなみに話数と次の話数には結構いろんな作品の戦闘シーンやら見どころシーンのネタをほおりこんでます。そういったところも楽しんでいただけると幸いです。

 それではどうぞ!!


22話とかとか~♪ 2way バゼット編 正義の味方(前編)

 

 

 

 士郎がそれに気づいたのは偶然だった。

 空にはすでに太陽はなく、電灯の光が足元を照らす。少し遅いとはいえ、普段と変わらない学校の下校中。

 不自然すぎる光――否、自然すぎるぎる光を空に見た。

 その光は白く、しかし、輝くだけにはとどまらず炎のように揺らめいてすらいた。

「嘘だろ・・・・・・ッ! あれは、宝具!??」

 なぜ? と考える間もなく士郎は気づいた。カード回収が終わり、クロの一件も落ち着いた今、宝具が使われる場面なんて一つしかなかい。

 そこまで思考をして、士郎は飛んだ。正しくは跳躍。ただ、間違ってもジャンプなどと表現することができない距離を飛行した士郎は、そのまま屋根やら電柱を当然のように足場にして、その体を宙へと蹴り上げる。

 周りに人の目があったかどうかの確認すらしていない。いや、それをする余裕すら今の士郎にはなかった。

(間に合えっ・・・・・・!!)

 

 時間にして数秒。

 士郎がその場に着いた時、まず目に入ったのは瓦礫と化した屋敷と、燃える木々。

 ご近所として見慣れたはずの大きな屋敷は、見る影もなく崩れ去っていた。

「・・・・・・・・・・・・ッ!?」

 だが、次の瞬間その程度のもの(・・・・・・・)は士郎の視界から消えた。いいや、その表現は正しくないだろう。それは、ただ純粋に、士郎の目が他の一点にくぎ付けになっただけ。

 遠目ですらはっきりと見えた。

 クロに迫る女の拳。

 認識すると同時、今度は士郎がその場から消え――。

 

「『正義の味方』だ、クソッたれのな」

 

 ――女の前へと現れた。

 

 

 

 

 スーツ姿のグローブを拳につけた女。バゼット・フラガ・マクレミッツは目の前の少年、衛宮士郎をまっすぐと見つめる。

「あなたのおっしゃる通り、私は教会から遣わされたものです。さらに言えば、カード回収前任者でもあります」

 士郎は動かない。

 バゼットもそのまま続けた。

「・・・・・・ですので、それを邪魔するというのなら容赦はしません。あなたの後ろにいる少女をこちらに渡しなさい。でなければあなたも同様に排除します。――そこに転がってるステッキ保有者のように」

 バゼットは、ちらりと視線を後ろへ向けると、イリヤや美遊のことだと言うように指を指した。

 有り体に言ってそれは挑発だった。

 バゼットは魔術師として幽囚なほどに優秀だ。『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』があるからとか、封印指定執行者であるなどとはまた別に、単純に魔術師として優秀だった。

 魔術師として優秀。それはつまり、一般人とはかけ離れた世界にいるということ。凜やルヴィアと同じでありながら同じでなく、士郎や衛宮切嗣ともまた違う。完全なまでに魔術師としてその世界に生きるもの。

 であるならば、優先するべきはバゼットにとって任務であり、士郎の言い分など聞く必要がないのだ。

「あなたも手を引いた方が賢明です。そこの青い方の少女はたまたま死ななかった(・・・・・・・・・・)とは言え、重傷です。あなたも同じ目にはあいたくないはずです」

 故に――。

 

『俺は今機嫌が悪い』

 

 ――それを利用しない理由がない。

 相手が全力さえ出せば、バゼットには一撃で終わらせることのできる”それ”がある。 

 そして。

 バゼットの思惑通り士郎はキレた。

 地面を蹴り上げ、一直線に士郎はバゼットへ飛んだ。

 表現するなら弾丸のようだった。体を地面と平行に飛行し、螺旋的に体をひねりながら――回転しながら迫る姿はまさに銃弾。

 バゼットが構える間も与えず、士郎は肉薄する。

 単体で聞けばそれは、金属が何かに弾かれる音だった。ただ、螺旋的に繰り出したその剣激は、竜巻のごとく勢いを増していく。

 連続的に鳴り響く轟音。

 バゼットの拳と士郎の『干将・莫耶(かんしょう・ばくや)』が衝突する。

 

 宝具『干将・莫耶(かんしょう・ばくや)』には、お互いに引き合うという性質がある。それは磁石のようであり、特徴の一つと言えるだろう。普段ならばその性質を利用してブーメランのように扱い、相手の死角から攻めるのが本来の戦い方であり士郎の十八番だ。が――今回は違った。

 互いの引き合うと言う性質を利用し、『武器の距離を一定に保つ』。それによってまるで何かに固定されたように、『干将・莫耶(かんしょう・ばくや)』は動かない。否”弾かれない”。

 結果。

「・・・・・くっ!」

 バゼットの拳が弾かれる。

 パワーや技術ではなかった。自身の予想とは反した結果にバゼット自分の攻撃に疑問を持ってしまったのだ。故の敗北。

 そして腕が弾かれたという(・・・・・・・・・)一瞬あるのなら。士郎は次の手を容易に打てる。

 

「おい、こっちだぞ」

 

 音源は下。方向は背後。士郎はあえて声を出す。黒と白。迷うことなく士郎は二本の剣を突き出した。

 

 士郎はキレていた。が、それはあくまで冷静に・・・・・・。つまるところバゼットは失敗した。

 士郎は本来戦闘を好まない。温厚でありお人よし。その性格ゆえに全力が出せない・・・・・と言うことはないが、尻上がりなのは確かだった。その前提を、完全に破棄させてしまったのだから。 

 

 士郎の声に反応したバゼットは、振り向かずに士郎へ拳を振り回す。まるでブリッジに移行する途中のような。体制はいびつ、格闘家が見たらただ拳を振り回している小学生以下。そんな評価をされそうな攻撃だった。

 しかし、次の瞬間バゼットの体が浮いた。腕の回転を利用して足で体を蹴り上げたのだ。先ほどの士郎のように水平に。ただし、連撃を目的とした士郎とは違い、回転を勢いに加えての一撃。

 先に出した拳を避けられたのを確認し、士郎が避けられないタイミング、体重が完全に足に乗るその瞬間にそれを振り下ろす。正真正銘破壊の一撃。 

 轟音を生み。二人を中心に地面へ亀裂走る。

 二人は距離をとった。何事もなかったように初期位置へと。

 さきほどの攻防が嘘だったかのような静寂。

 ただ、何もかもが同じなわけがなかった。 

「お兄ちゃん!! そんな・・・・・・うそ・・・・・・でしょ?」

 声を出したのは士郎の背後にいたクロ。声を震わせながら、その目は、ある一点に固定されていた。

「はぁはぁ・・・・・・はは。腕一本程度、とは言えないかもな」

 クロの泣きそうな声に、士郎は引きつった笑みを浮かべる。

 ああ・・・・・・ああ、とクロは見ているものが信じられないと言うように・・・・・・。

 目尻には涙を浮かべへたり込む。

 なぜなら。士郎の左腕。その肘から先。

 

 それが吹き飛んでいたのだから。

 

 

 

 その光景の先。バゼット・フラガ・マクレミッツは膝をつく。

「・・・・・・ぐぶぅ――ッ!?」

 口から洩れる血の味を確認しながら、バゼットは先ほどの攻防に軽い恐怖を覚えた。

(あの少年、自分の腕を犠牲にして私に一撃を・・・・・・!!)

 おそらく、とバゼットは思考する。

 

 戦闘時に声を出す。その理由は連携であったり、気合を入れたり、心理戦だったりと様々ある。数ある理由の中から先の士郎のそれを分類するなら心理戦と言うのが一番近いだろう。

『おい、こっちだぞ』

 背後からの声にバゼットは反射的に攻撃した。そこだけを見るなら、声を出した士郎が間抜けであり、的確に絶大な一撃を当てることに成功したバゼットが上手だったのだろう。

 だが、今回のそれはそれだけでは終わらせてはいけない。

 士郎は分かっていたのだ。バゼットに対して、例え背後をとろうと不意を突こうとその攻撃は届かないということを。

 

 バゼットの最も恐ろしいところはこちらの攻撃に対して絶対が存在しないことだ。

 完全に不意を突こうが野性じみた感で防がれる。いくら攻撃を入れようと不死身であるかのように立ち上がる。全力の攻撃を放ったとしてもそれを防ぐ礼装がある。

 そんな概念じみた不死身性。それこそがバゼット・フラガ・マクレミッツであり、強者である理由だった。

 だからこそ、士郎はその概念の外側から攻めた。

 攻撃を繰り出す前に居場所を教え、急所ではなくとりあえず当たる場所へ攻撃を迫り、全力ではなくごく普通一撃を叩きこんだ。

 弱点やら破壊力で勝負するのではなく、バゼットと言うキャラクターの裏を突く。

 もとは読者だったからこそ、転生者であったからこその士郎の作戦。

 作戦というよりも博打に近い。

 しかし、だからバゼットは気づけなかった。気づかなかった。

 自身の力が誰かしらの設定、思考によって生み出されたなど、この世界の人間が思いつくはずがないのだから。

 

 とは言え、やはり士郎のほうが重傷だ。 

 攻撃が来ることも分かっていた。にも関わらず、過去バーサーカーの攻撃すら読んで見せた士郎がかわせない攻撃。

 早いとかそうい言った類ではない。そもそも、士郎も”最初”は避けたのだ。それをみたバゼットは、強引にうでを士郎の方向へねじ込んできた。

「そんなことすれば体が悲鳴を上げるだろうに・・・・・・。そこが化け物なんだよな彼女は」

 コンマの攻防をそこまで把握し、かろうじてとは言え防御して見せた士郎もまた化物じみているが、そこに無自覚なところがまた彼らしいと言えるだろう。

 士郎は自身の左腕を止血しながら、あきれるように、ただ――。

「確実に一撃は入れたぞ」

 ルヴィアの魔術を持って傷をつけられなかった敵を、英霊の力を持って勝負にならなかった敵を、最高の魔術礼装を退けた敵を。

 士郎は確実に上を行った。

 

 士郎の声に反応するように、バゼットは立ち上がる。

「確かに・・・・・・一撃は貰いました。思いの他ダメージが大きいのも認めましょう。だが、それで終わりです。あなたはすでに満身創痍であり、私はまだ十分に戦闘を行える。カード回収と言う勝負においてあなたは負けたのです」

「・・・・・・ああ、確かにその通りだ。全く持て言い返せない。けど勘弁してほしい、あくまで俺の力で一発入れてやりたかったんだ」

 その言葉に、バゼットは訳が分からないというように顔をしかめる。

「それはつまり、自分以外の力を使えば私には負けないと? 外側からの力・・・・・・あなたも宝具にしろ何かを持っているということでしょうか?」

 バゼットの思考は冷静だった。彼女が知る中でも、他人が開発した魔術や礼装を毛嫌いする魔術師は多い。士郎がそのタイプなのだと判断するのにそう時間がかからない。

 それを聞いて、声を上げたのはクロだった。

「待ってお兄ちゃん! あいつ相手に宝具は――」

「大丈夫だよクロ」

 優しい声で、その言葉を士郎は遮った。

「『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』・・・・・・だったか。因果を逆転させる「切り札殺し」。時を逆行して放つ先制の一撃。全く持って馬鹿げてた武器だ」

「知っているのであれば話は早い。そう、それが私の持つ礼装。つまり、すでにあなたに勝機はありません。あなたがどんな切り札を持っていようが、その強度は関係ない。事実、宝具を持ってそこの少女は私に負けた」

 何も間違っていなかった。

 一撃で必殺な武器など、バゼットの前では自殺行為。士郎がすでに戦えないというこの状況では、バゼット対するすべはない。

「いえ、それ以前の問題ですか。あなたもわかってているはずです。あなたでは私に勝てないと」

「・・・・・・」

 言うまでもなく、先の攻防でバゼットを仕留められなかった時点で、今のままのでは士郎に勝機はない。

「確かに、とっさの判断力。精神面。戦闘経験。戦闘時に要求される数多くのそれが、先程の少女達よりも遥かに高いことは認めましょう。・・・・・・しかしそれだけです。耐久性。速度にパワー。根底を担うそれらがまるであなたには足りていない。魔術の補強もあるようですが。それすらエーデルフェルト嬢のほうが圧倒的でした。総合力ではあなたは彼女達の中で最も低い」

「・・・・・・」

 士郎は答えない。

 なぜならその通りだったからだ。士郎は今いる中で一番弱い。英霊を宿してるクロはもちろん。カレイドステッキを持っているイリヤや美遊よりも。

 今まで主に英霊と戦っていたのは士郎であるが、その実、英霊を圧倒していたかと問われればそうではない。

 ライダー相手にとどめを刺したのは美遊であるし、キャスターも美遊のサポートがあって初めて戦うことができた。セイバーの時はアーチャーの足をひっぱる形にもなっていたし、さらに言えば勝利で来たのはアーチャーが投影した『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』があってこそ。バーサーカーにはそもそも攻撃を通した回数すら数えるほどしかない。

 負けはないが勝ちもない。試合に勝って勝負に負ける。

 それが今の士郎の実力なのだ。しかし――。

 

「それで終わりか?」

 

 衛宮士郎は問いかける。

「俺がお前に勝てない理由はそれで全部なのか? ・・・・・・もしそうだとしたら、お前は俺に絶対勝てないぞ」

 嘲笑すら交えて。 

「ダメージ回復なんて考えずに速攻で俺を倒しに来るべきだった。倒せる相手だと油断して、『傲慢』に説教なんかしなければ勝てる可能性は十分にあった・・・・・・。――礼装だろうが、宝具だろうが好きに使え。その程度で『正義の味方』は越えられない」

 今だけその名を借りた。

「『異界同調_開始(クロス・オン)』」

 偽物として。

 

 士郎の手に、一つの剣が現れる。

 

 

 

 無意識に、クロは士郎の剣を解析しようとしていた。

(あれ・・・・・・解析できない? あの時と同じだ・・・・・・・でも・・・・・・)

「すごくきれい」

 思わず口に出してしまうほどに、その剣の装飾は美しかった。

「『さてさてさーて』」

 士郎が口にした。それだけのはずなのに、クロはそれに違和感を覚える。まるで、複数の人間が同時に声を上げたような。

 けれどもすぐに、クロはその違和感の正体を見た。

「なぁバゼット。何もカウンターを十八番にしてるのはお前だけじゃないんだぜ」

 今度の音源は一つ。ただ音源が士郎からではなかった。クロのはるか前方。バゼットの背後から。

「例えば」

 また別の方向から。

「俺みたいにな。まぁ・・・・・・正確には俺のではないんだけどさ」

 今度は士郎が。

 同時に、ズサリと。複数の足跡が耳に響いた。

「――これはッ・・・・・・」

 気付いたのはバゼット。

 その光景に今度はクロが息を呑む。バゼットを囲む複数の影。それが同時に声を上げる。

 

「『あがいてみろよバゼットちゃん。まぁ、俺もキレてるから自分の能力解説ぐらいしかハンデは上げられないぜ?』」

 

 複数の衛宮士郎が、姿を現す。

 

 

 

 神器《ロストヴェイン》。七つの大罪団長『メリオダス』が持つそれは。士郎の記憶をもとに限界する。

「なるほど。今度は数の暴力と言うわけですか。幻影の類ではないことは分かりますが。この程度で私に勝てると? それこそ私に勝てる根拠足りえな――」

「『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』」

 遮るように士郎は口にする。

「時間を逆行し相手の心臓を貫くそれは、『ゲイ・ボルグ』とは違い、結果を残すのではなく物理的に心臓を貫いたという事実を作る」

「・・・・・・」

「つまり、同時に複数人に使用することはできない」

 そう。これこそが逆行剣『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』の弱点。とは言え、そもそもバゼットが『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』を使わざる負えない相手が少ない上に、それをしても確実に誰か一人が死ぬという事実が、それを弱点と称してしまうには余りにも大きい穴だった。

 しかし、それがすべて分身であるのであれば、その条件はクリアされる。

 神器《ロストヴェイン》その能力は、自身の分身生成。分身が増えるほどに戦闘力が二分化させるという欠点があるものの、『事実は小説より奇なり(バビロン・オブ・ワード)』が魔力を消費しないことを考えれば、そこは問題足りえない。

「忠告しておくと、『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』の使用はおすすめしない」

 忘れてはいけない神器《ロストヴェイン》の所持者はメリオダスということを。

「『フルカウンター』。自身に向けられた魔力を倍以上にして跳ね返す。・・・・・・俺が知る限りの最上のカウンターだ。誰か一人に『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』を使った時点で”対象以外の俺がお前に放つ”。魔術という概念に縛られている以上『フルカウンター』からは逃げられない。つまり・・・・・・これで『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』は使えない」

 『事実は小説より奇なり(バビロン・オブ・ワード)』によって得た知識によって、衛宮士郎は本来の所持者の技すらモノにする。

 完全なる『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』封じ。

 だが。

 

「それで終わりですか?」

 

 今度はバゼットが士郎へ問う。

 

「あなたが私に勝てる理由はそれで全部ですか? ・・・・・・もしそうだとしたら、なめられたものです」

 意趣返しのつもりなのだろう。

 先ほど士郎が言ったセリフをそのまま返した。だが事実だ。『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』を攻略した程度でバゼットに勝てると思っているならそれはおつむが弱すぎる。

 しかし。

 

「んなわけねーだろ。バーカ」

 

 嘲るように、今度は士郎が口にする。

 それを証明するように、複数の士郎が同時に声を上げる。

「「「『異界同調_開始(トレースクロス・オン)』」」」

 士郎の能力『事実は小説より奇なり(バビロン・オブ・ワード)』では普段の投影魔術とは違い、複数の剣を同時投影することができない。自身に剣の持ち主の性質を落とし込むという性質上、複数の投影は自身の体を蝕むことになっていしまう。それはまるで、青信号のまま赤信号の結果を残すようなもの。矛盾を無視やり体で証明させようとして、無事で済むわけがないのだ。

 だからこそ、分身生成と言う能力を持つ神器《ロストヴェイン》は、士郎と限りなく相性が良かった。

 分身それぞれが別々の剣を投影する。

「お前はさっき言ったな・・・・・・。耐久性。速度。基礎能力が俺には足りないと」

 足りないそれを、他から借りる力が士郎にはある。

「英霊相手では確かにそれは致命的だ。実際精々渡り合える程度にしかならなかったしな。ただ・・・・・・事お前相手に関しては、その前提は弱点足りえないぞ」

 あらゆる世界の剣を投影する士郎の選択肢は、ほぼ無限と言っても差し支えない。もちろんバゼットに通用する物というと、数は限られてくる。

 しかし、士郎の知識には存在する。剣にその能力が宿り、無数の剣が存在するのの世界を。《斬魄刀》と言われるその剣は、そのすべてがチートと称して間違えない剣だということを。

 一人の士郎が言った。

 

「『卍解』」 

 

 顕現。――――『大紅蓮氷輪丸』。

 表現するのであればそれは氷の龍だった。氷雪系最強の称号を持つそれは士郎の体へ翼を授ける。氷龍の手足。そして翼。

 

「構えろバゼット。気を抜くとすぐ死ぬぞ」

 

 冷たい声で、衛宮士郎は口にする。

 

 

 次の瞬間。士郎はバゼットの視界から消える。

「――ッ!! このっ!」

 キーン、と言う甲高い音の元凶は、拳と刀の衝突だった。

 そこは流石と言うべきだろう。『瞬歩』と言う未知の移動法を前にして、感だけを頼りに真横から剣を突き出した士郎に反応して見せたのだ。バゼットの化け物性がうかがえる。しかし――。

「なっ・・・・・・!!? これはッ――」

 パキパキ、と・・・・・・防御に回した拳が凍る。 

 反射的にバゼットは距離をとる。

「いい判断だ。あのまま全身氷漬けになるとこだったからな。でも――」

 その光景に士郎は笑みを浮かべべながら、休むことなく剣を振るう。

 ――この程度じゃ終わらない、と。

  

 士郎の剣をよけながらバゼットは思案する。

(このままでは――ッ!!)

 剣を避けるだけならば問題ない。だが、士郎の剣を振るたびに空気が氷結したように氷がまき散らされる。

 氷を操れると仮定するなら、それに触れるのも危険だろう。

(恐らく、より広範囲を凍らせることもできるでしょう。後ろにいる少女を気遣っているのでしょうが――ッ! ・・・・・・これは?)

 思わず意識がそらされるほどにその光景は異常だった。

 視界に映るそれは花びら。

 バゼットへ舞うように落ちるそれは、季節外れの桜の花びら。

 舞い落ちるそれに触れた瞬間。スーっと。

 皮膚が斬りさかれた。

「――!!!!」

 これはいったい? と、バゼットの思考へ答えるように士郎が呟く。

 

「『散れ――千本桜』」

 

 花びらが、生きているように蠢く。

「きをつけろよ。花びら一つ一つが剣だからな・・・・・・それ」

 その言葉をトリガーに、千にも及ぶ剣激がバゼットへ向かう。

 

 それを見て、バゼットは動かなかった。動けないのではなく動かない。

 諦めたわけではない。ただ思い出しただけ。

 敵の言葉に惑わされ、未知の攻撃を恐れるように回避する。そんなものがバゼット・フラガ・マクレミッツか? いいや違う。それを蹴散らすだけの力があるから自分はバゼット・フラガ・マクレミッツなのだと。

 だから、ほんの少し威力を上げよう。グローブが無限に連続的に光をあげる。ほんの少し殺す気で戦おう。いままでの数十倍の殺気が暴風となって撒き散らされる。

 もし、バゼットの心の内を知る者がいたのなら、きっとこう思ったことだろう。

 ――笑わせてくれる。ほんの少し? 違うだろ。それを人は全力って言うんだよ、と。

 そして、バゼットの見つめる先。

 吹雪がそのまま色づいたように彩る千の花弁が、バゼットを巻き込んだ。

 

「が・・・・・・はっ!!?」

 

 しかし。その声を上げたのは士郎。

 一撃だった。そして一瞬だった。

 千本桜を拳一振りで蹴散らし。士郎が次の攻撃を仕掛ける前に拳が士郎を貫いていたのだ。

 やられたのは分身だった。だが、分身だから大丈夫と片付けるにはいささか厳しい。

 士郎は気づいたのだ。彼女のそのかわりように。

 バゼットは今まで手を抜いてた。

 その理由は様々だった。気まぐれだったり、余裕だったり、ポリシーだったり。

 だが、その枷が外れてしまった。

「あーあ。バゼットの本気を体感することになるとはな。仕方ない、ここからは俺も本気でやるしかないか」

 士郎は呟く。

  

 それは、本来であれば見ることのなかった戦い。

 異世界の力を再現するイレギュラー――衛宮士郎。

 不死身の化け物――バゼット・フラガ・マクレミッツ。

 

 二人の戦闘を前に、世界が緊張するかように静けさだけがこの場を支配した。 

 

 唐突に。歌が聞こえた。

 

「『花風ミダレテ花神啼キ』」

 

 歌を歌った。

「『天風ミダレテ天魔嗤ウ』」

 双剣を持った士郎が歌う。

「『花天狂骨』」

 それは合図。続くように、今度はまた別の歌が聞こえる。

「『倒れろ』」

 魔術で言うその短い詠唱のような言葉は、剣を解放するためのもの――。

「『面を上げろ』」

 始解と言われるその行為は――。

「『舞え』」

 一つ一つの剣に宿る、ただ一つの能力の開放。

「「「『逆撫』『侘助』『袖の白雪姫』」」」

 三つの刀が本来の姿を現した。

 そして。さらにもう一つ。

 

「『卍解――天鎖斬月』」

 

 士郎が選んだ刀は五つ。

 

 大気が揺らめいた。

 見えない力が渦を巻いた。

 

 一人は肴でも飲むかのように胡座をかいたまま。 

 一人は遊ぶように刀を回し。

 一人は空へ立つようにバゼットを見下ろしながら。

 一人は美しい刀を撫でるように構え。

 一人はまっすぐ敵の顔を見つめた。

 

 けれども同時に。

 

 その影はバゼット・フラガ・マクレミッツへと動きだした。 

 

 

 

 




 今話も読んでくださった方ありがとうございます!

 皆さんは七つの大罪をご存知でしたでしょうか? 今2期が絶賛放送中なので知らない方は是非見てくれると嬉しいです!!
 
 それはそれとして、今話だけで二作品のクロスしてしまっています。もはや何が何だか分からなくなっている方もいるかもしれません。
 それに関しては誠に申し訳ありません。
 
 今話のクロス作品は、先に言った『七つの大罪』とジャンプ作品の『BLEACH』になって射ます。なるべく有名どころをとって、アニメでも放送されたものを限定に出しました。
 一気に6,7本新しい剣が出てきて「ふぁぁ!?」っとなった方もいるかもしれませんが、感想で言っていただければ、自分が知っている限りの解説や、作品の見直しなんかも行っていきたいと思っています。
 ご理解のほどよろしくお願いします。

 それでは次回話をよろしくお願いします。ありがとうございました!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。