Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」 作:必殺遊び人
時間が空くと今話は分からなくなるかと思い、バゼット編は終わらせてからと考えていたので、予定通りに進めてよかったです。
なんかこんなにバゼット強いっけ? みたいな感じだったり。
BLEACHの能力これで当てたっけ? みたいな感じなので、間違っていたり違和感があると教えていただけると助かります。
それではどうぞ!!
美遊は痛む体を無理におこし、イリヤの元までやってきた。
それは少しでも士郎の役にたとうと、イリヤを戦闘範囲外に逃がすため。
しかし、そこで気づいた。
「なに・・・・・・これ・・・・・・っ??」
体が宙に浮いていた。いいや違う。これはまるで――。
「面白いだろ?」
士郎の声が聞こえた。
「まるでゲーム世界のように、上下逆さまになる。この斬魄刀の範囲内にいるものをすべて巻き込む究極の視覚催眠」
そう。これはまるで天地が入れ替わったようなのだ。
夜空に浮かんでいたはずの月を下に見て、燃える屋敷が空に浮く。
夜であったためか、暗闇の床へ座るような不思議な感覚。
「ようこそ、逆さまの世界へ」
士郎のその声だけが、美遊には届いた。
空中に立っているという異常にとらわれながらも、バゼットは冷静だった。
(視覚の支配ですか・・・・・・。天地が入れ替わったように見える程度なら脅威になりえない。・・・・・・つまり、それ以上の何かがあると考えるべきですね)
「いいのか? 暢気に考え事しといて」
まるで考えいる時間を与えないと言うように、一人の士郎が斬りかかる。
それを見て、バゼットも反射的に拳を出す。
特徴的な刀だった。
刀身の先がコの字に折れ、斬るというよりも刈り取るといったように・・・・・・。
ゾワリ、と。
「――!!??」
直感的にバゼットは自身の拳をひっこめた。
(この悪寒は一体・・・・・・? 少し様子を見るぐらいがちょうどいいでしょう)
答えを先に言うならば、その選択は正しかった。
『侘助』と言われるその刀は、
斬った対象を重くする。逆に言えば斬られなければ脅威足りえないということなのだから。
技量だけ問うのであれば、先ほど、広範囲氷結攻撃を捌いて魅せたバゼットが、ただの刀を避けられない道理はない。
しかし――。
「避けた気になってんじゃねーよ。『逆撫』の効果が
それはあくまで普通の条件下での話だ。
ズサリと、バゼットの足が切り裂かれた。
「なッ・・・・・・!!」
鋭い痛み。と同時に、バゼットの斬られた足が重しでも巻いてるかのように重くなる。
「ヒントを言うとな、上下左右、ちなみに見える方向なんかも逆だぜ。どこからどこまでが逆でどこからどこまでが本当なんだろうな」
ヒントになっていなかった。
あえてブラックボックスの中身を見せることによって、余計な情報をつぎ込むように、バゼットの思考力を奪っていく。
そして、ここで手を休めるほど、士郎は優しくも仏でもない。
「『
見えた位置は前方だった。しかし音源は逆。視界に映るものが、すべて逆さま。
とは言え、距離はあった。反応も間に合うはずだった。しかし。
一瞬で、すべてが凍った。
(しまった! 腕を・・・・・・!!)
直線的に広範囲。バゼットの腕を巻き込んできた氷の山。
ルヴィアの屋敷、小さな小学校ぐらいありそうなその土地を、対角線に凍らせたのだ。
馬鹿げていた。英霊やらの宝具ならそれも納得できたはずだ。だがこれ違う。ただの刀。ただの魔術使い。そんな少年が行っていい・・・・・・行い得る所業ではなかった。
(反応しきれない・・・・・・っ!)
もし、何が悪かったと問われれば立ち位置が悪かったと言うほかないだろう。限定的な方向へを瞬時に凍らせる『袖の白雪姫』は『氷輪丸』とは違い、味方を巻き込む心配が半減する。たまたま今回は攻撃の範囲内にイリヤ達がいなかったということだ。
「しかし、こんなものすぐに壊せる程度のものです!!」
とらえられたのは片方の腕。ならば、もう一方の腕で破壊するまで。
例えそれで、凍らされた腕が粉々に飛び散ろうとも、このまま身動きができないよりははるかにましだと。
悪魔との取引に気軽に応じる。自身の腕では天秤は傾かない。
迷うことなく拳を振り下ろそうとするバゼットへ。
「いやいや、ダメだろ。体は大切にしないとさ」
自身の腕を犠牲にした男とは思えない声で――気軽さで、士郎はバゼットの
「ぐぶっ・・・・・・ッ!!」
「『花天狂骨』遊びは影鬼。氷の中に影ができてるぜ? うかつだったな。あ、悪いな、これはまだ能力解説してなかったっけか?」
――剣で切り裂くというおまけつきで。
影の中から攻撃する――否、移動するそれは、バゼットの拳をあざ笑うように回避する。
圧倒的士郎の有利。誰が見てもそうだと思える状況だった。しかし。
パリーン!! とバゼットが凍らされた腕で氷を砕いた。
力任せで、強引な脱出。単純に力をいれて、振動をもって破壊したのだろう。
「マジかよ・・・・・・。そんなやわな氷じゃないんだけどな」
自然的にできるそれと違い。《斬魄刀》で作られた氷は不順物質を含まない超硬度な氷なのだ。普通ならば無理からぬこと。それを容易にこなしてしまえる人物が目の前はいる。
「なるほど厄介です。今わかるだけでも、剣それぞれに特殊な能力が秘められていることぐらいしかわかりません。・・・・・・しかし、少しはしゃぎすぎたのではないですか?」
「・・・・・・は?」
その疑問はどっちに対する疑問だったのだろうか。
バゼットの質問に対する疑問なのか、それとも――。
(う、そだろ!? あいつの視界にはすべてが逆さに映ってるはず。攻撃を当てることはおろか俺らがどこにいるのかすら分かるはずが!!)
「すべてが逆さま・・・・・・でしたか? 今の攻撃位置からすると、上下左右、見えている方向以外にも、対象の見えてる形、実際の攻撃場所まで逆さと言ったところでしょうか・・・・・・。面白い仕掛けですが、それまでです。聞こえる音や、気配まではどうやら逆さにできないようですね。あくまで視界に影響させる催眠ということですか」
「クソったれ――!!」
それを聞いた士郎の行動は早かった。
確かに、『逆撫』の攻略法はそれで正解だ。対処法もそれで正しい。しかし、動いていない敵ならまだしも、縦横無尽に動き回る標的相手に、瞬時に気配やら場所やらを計算することは不可能に近い。
「『花天狂骨』――色鬼。赤!!」
「確かに、高速で動き回る敵を補足することは難しい。しかし、攻撃する瞬間であるのであれば・・・・・・!!」
バゼットの視界には何も映っていなかっただろう。あくまで殺気がした場所へカウンターを放っているだけなのだから。
だが、士郎には見えていた。自身の顔面に完璧にカウンターを入れるバゼットの拳が。
(しま・・・・・・っ!!)
結果を言うならば、その拳はかすっただけ。完全に軌道をとらえた拳を避けた士郎を称賛すら与えたかった。しかしながら。
今の色は赤、血の量を逆手にとり、一撃で終わらせようとしたのがあだとなる。
色鬼は、指定した色がより自分に多い、つまりは弱点となる色を指定した場合、その色への攻撃が爆発的な威力になる。そして、今回の色の指定はどちらも、広範囲にその色、要は血を纏っていた。
つまるところ、かすっただけ――にもかかわらず、士郎の頭は吹き飛んだ。
圧倒的に見えた展開は僅か数秒で崩された。
しかし。
「なめるなよ・・・・・・なめんじゃねぇええええええええええええ!!!」
二人の士郎がバゼットへ迫る。
受ければ、全身を氷漬けにされる『氷輪丸』。重さを倍にされる『侘助』。
足がすでに『侘助』によってきられてるバゼットでは回避すら難しいはずだ。
しかしながら……。
まるで、もう通用しないと言うように、二人の士郎がバゼットの拳に貫かれる。
その光景を見て士郎は笑う。なぜならそれすら誘導。それすら犠牲。力をためるための時間稼ぎ。
わかっていた。近接戦闘ではどうやらバゼットには敵わないということは。
そもそもただでさえ神器《ロストヴェイン》によって強化魔術ですら何十分の以下まで性能が落ちているのだ。最大硬度まで強化したバゼットの拳にかかれば士郎の体など紙切れにも等しいだろう。
だからこそ、士郎はこれで終わらせる。
バゼットはみた。
黒く揺れるそれを。炎ではなかった。いや、そもそも物理的な何かですらないのかもしれなかった。ただの力それが具現化したような。いいや、この際そんなことはどうでも良かった。
バゼットが構えた、それど同時に。
士郎は剣を振り下ろす。
「『月牙――天衝』!!!!!!」
それを言い表すものとして、最も適切だと思ったのは斬撃だった。
さっきほどイリヤの
先ほどの様な概念的な外側からの攻めとは違い、正真正銘の破壊の一撃。
風でも切り裂いているのか、轟音と共に迫ってくるそれをバゼットは拳を構えて対峙する。
ただ拳を突き付ける。
圧倒的な力のそれに、さらに上の力でねじ伏せる。
そんなことを考え、体へ力を入れた瞬間。その異変に初めて気づいた。
(か・・・・・・体が、う、動かない・・・・・・!!!)
士郎が何かしたのか? いいや違う。すぐにバゼットは答えを知る。
「血を流し過ぎたということですか! まさか体の限界がこんなに早く・・・・・・!?」
その時、バゼットはある道筋に気付く。
(おかしいとは思っていた。このタイミングで大技を使う意味。無限に分身を作れるのであれば、一発に固執する必要などありはしない。・・・・・・つまり――)
ここに来てその思考は初めて士郎に追いついた。
――戦況の確認。
(無駄に思える特攻も、(『なめるなよ・・・・・・なめんじゃねぇええええええええええええ!!!』)あの言葉も、この大技も。わたしの精神を揺さぶり、私の状態を確認するだけのもの)
敵の悪手に思わず呆れて油断した。敵の冷静さをなくした怒りの御声に緊張の糸がわずかにほどけた。
限界を認識出来ていない体に、緊張の糸を保ち疲れを誤魔化している体に、わざわざそれを教えるための一幕。
事実。バゼットの体はボロボロだ。
多くの血を流し、剣の斬り後は熱を持ったように熱い。足は自身のものではないように重く、凍傷にでもなっているのか、拳を握るのでさえ軽くつらい。
(仮にもし、これに耐えうる力が私に残っているようなら、今度は違う武器を作り出すだけ、終わるのであればそれでよしということ。全くなるほど・・・・・・戦闘経験値の差を身に染みたのは初めてです)
視界の奥では、笑みを浮かべる士郎の姿が確認できる。
「でしたら、私に取れる手段はこれしか残っていない!! ――『
それは詠唱。
バゼットの持つ最高の礼装。『
「出すのか。それを」
士郎は冷めた声で聞いた。
「ええ、どうやら私にはこれしか残っていないようなので」
黒い斬撃に対抗するように、白い本流をまき散らしながらそれを構え、そして。
「『
時が巻き戻る。
士郎の技が消失したように消え失せ。それが発動する前まで時間が戻る。
そして、バゼットから放たれた短剣『
回避は不可。狙いは秘中。
技を出した時点で、この結果は確実となった。
しかし。
「忠告はしたはずだけどな」
片腕を失い。神器《ロストヴェイン》を構えながら、士郎はその間へと体を潜り込ませた。
士郎には見えていたのだ。逆行するその瞬間を。
正確には逆行自体は認識できなかった。ただ、無防備に技を発動しようとする分身の自分へ、バゼットが攻撃する瞬間を目撃しただけ。それでも。
剣が飛来する、僅かな時間があるのであれば。
「『
キーンッ、と。甲高い音とともに、『
魔力による攻撃の全反射。
バゼットの魔力で編まれた、敵の心臓を貫くといった性質を残しながら。もちろんバゼットが技を発動する前に、士郎が『
『
そして。
「残念だよ。こんなことで幕切れとはな」
士郎は、地面に倒れ伏したバゼットを見てそう言った。
そこにあるのは静寂のはずだった。静寂であるべきだった。
しかし。トクンと。小さな鼓動が木霊した。それは誰の耳に届くわけでもなく、されども次の瞬間、その音は大きくなり、連続的になりつつづける。
(・・・・・・条件、クリア)
その音は、死んだはずのバゼットからなる音だった。
それはバゼットのもう一つの秘術。自身の心臓が心停止して瞬間に発動する、人体蘇生魔術。恐らく、宝具クラスであろう魔術。
(蘇生、終了・・・・・・!!)
瞬間。
ガバっ、と。倒れ伏していたはずの女が起き上がる。
もし、それを目にしたものがいたのならば、キョトン、という表現が一番近かったのかも知らない。なぜなら死んだはずだったからだ。心臓を貫かれたはずだからだ。
何が起こっているのか理解が及ばない。
女は、そんな周りの思考を置き去りにするように一瞬で士郎に詰め寄った。そしてそのまま。
士郎へと拳を振り下ろす。
おそらく、これこそがバゼットの狙いだったのだろう。あの状況では何をしても自身の敗北は覆らないと悟っていたのだ。
だから、この瞬間をだけを目指し。この一撃を入れるためだけに、バゼットは『
士郎の言葉を忘れていたわけではなく、士郎の言葉が嘘などと言う僅かな可能性にすがったわけでもなく。ただ愚直に、一撃を入れるための作戦を実行したのだ。例えそこに、自身の命を差し出すことになろうとも。
(届く!!)
バゼットは確信した。
不意も突いた。これ以上ない最高の条件。にもかかわらず。
「知ってたよ。そんなことは」
そんな言葉が耳に届いた。
(まさかっ! ありえない、これはまるで――)
瞳が交差する士郎の目を見て、バゼット初めて恐怖を覚えた。
――すべてを予知していたかのような。
その通りだ。ここまでが士郎の思考。計算。
転生者である士郎はバゼットの蘇生術式すら知っていた。バゼットの強さも知っていた。戦い方も知っていた。そのキャラクターの思考も知っていた。
であるならば、後はパズルを組み替えるようなもの。
言葉巧みに誘導し、限定的な力で状況を操り、ある一点に持っていく。
言葉をもって、武器をもって、感情をもって、常に戦況を操り続けた。
「勝ったと思ったか?」
そんな言葉が聞こえた。
士郎もわかっていたのだ。普通に戦っても勝てないということは。だからここまでやった。やるしかなかった。
「なら、それは油断だろ」
バゼットに”絶対の負け”を認識させ、その上で倒す。
拳を振り下ろすそれに、カウンターを合わせるように剣を振り下ろすそれが見える。
達人同士によくあるスローモーションに見えるという状況なのだろうか。
バゼットの目には不幸にも、士郎の剣が先に入ることがわかってしまった。
「・・・・・・なるほど、これは勝てませんね」
まるで決まったていたシナリオのように、勝負する前に負けていた。状況は終始士郎が操り、バゼットはその枠を出ることができなかった。先程士郎の作戦を看破したことでさえ、士郎にとっては筋書き通り。結局のところ、バセットは自分の意思で動いているように見えて、士郎の思想どうりにしか動けていなかった。
交差する剣と拳。
そこへ。
「そこまでよ。二人とも」
「「――っ!!」」
その声に反応し、二人は同時に距離をとる。いや、声と言うよりは攻撃にだろうか。二人が先ほどいた場所には、声の主――凛が放ったであろうガンドが撃ち込まれた。
「遠坂・・・・・・?」
「悪いわね衛宮君。あなたの勝利を邪魔したようで。でもね、もうこれ以上戦う理由はないはずよ。お互いボロボロ。もはやなんで戦っていたのかすらわすれたんじゃない? 二人とも」
まるで友達の家にでも遊びに来たような感覚で、凛は二人の間に入る。
「遠坂家のものですか。あなたの介入で助かったことには礼を言います。しかし、カード回収と言う任が課せられている以上、私の目的は果たされません」
バゼットとらしい物言いだった。だが、それに声を上げたのは士郎だ。
「違うよ
もう戦う気はないのだろう。毒気を抜かれても言っていい。
剣を消し、すべてが終わったように首を振る士郎に、バゼットは。
「勘違いしないでいただきたい。あなたたちの言い分など私が聞く必要は「勘違いするなよ」――?」
「遠坂が何も手札がない状態でここに来るわけがないって言ってんだ。だろ、遠坂?」
その問いにニヤリと、凛は軽い笑みを浮かべると。――その通りよ。となぜか勝ち誇ったように口にした。
そのまま、何やら地図見たい紙をバゼットに見せると。
「見えるかしらこの空白の部分」
「――? それは・・・・・・!! いえ、まさか!」
「理解が早くて嬉しいわ。正確には立方体だけれど、まぁなんにせよ。カードはまだすべて出そろったわけではない」
それは地脈図。
定期観察で見つかった新しいカードの存在とその証明。
「カード回収が任務ならこれもそれに含まれているんじゃないかしら?」
その言葉にバゼットは思わず唇を噛んだ。
なぜならカードが存在する場所は、この世界ではない別虚数軸。そのためにはカレイドステッキが必要不可欠だ。ステッキがただの礼装ではなく、意志があると言うことを踏まえると、今ここでカードをすべて奪った相手に力を貸すとは到底思えない。
故に、今とれるバゼットの選択肢は、
「ここは手を引くことにします。何やら認識外の事が多々起こっているようなので状況整理の時間とでもしましょうか」
一時的な撤退。
「ちなみに、カードの場所は海底。準備に時間がかると思うから、できしだい連絡するわ。・・・・・・それと、あなた傷の手当は大丈夫なの? 衛宮君にこっぴどくやられたようだけど」
「それを言うなら、そこの彼の方が傷は深いでしょう。それに私は問題ありません。性格は難ありですが腕のいい医者を知っています。・・・・・・いえ、今は保険医でしたか?」
言うまでもカレンの事だろう。
士郎の顔が微妙に引きつっている。
「それでは、失礼します」
そう言って、バゼット・フラガ・マクレミッツは去って行った。
「はぁーあああ。本当に失礼な訪問だったわね、失礼と言うより迷惑なって感じかしら」
「すげえいいタイミングだったよ遠坂。もう少しでほんとに殺すところだった。今後のためにもバゼットはいてもらったほうが良い。・・・・・・まぁなんにせよ、全員無事でよかった」
「あのねぇ、その状態で無事とか・・・・・・あなた、あそこで涙を浮かべてる妹たちに向かってい言えるわけ?」
「――え?」
士郎が振り向くと、ステッキを杖に立っている美遊とクロに支えられながら涙を浮かべるイリヤがいた。
「うっ・・・・・・ぐすっ。ごめんね、お兄ちゃん。私強くなるっていったのに、またお兄ちゃん一人に任せちゃって。私、わたし・・・・・・」
「あっ、いや・・・・・えーとまてまて大丈夫だ。これぐらいきっと遠坂が魔法で直してくれると思うから! ちちんぷいぷいだから 何とかなるから!! ――から・・・・・・だから、ごめんな。泣かないでくれ」
手を頭を伸ばし、微笑みを向ける士郎に、イリヤは小さくうなずく。
「ちちんぷいぷいって・・・・・・そこはかとなく馬鹿にされて気がするんだけど・・・・・・。それはそれとして、ルビー、サファイヤ。二人の容態はどう? こっちで必要なことはある?」
「問題ありませんよー。気を失っていたことが幸いしましたね。ほとんどの傷は完治しました! さすがに疲れまではとれませんが」
「美遊様の方もほとんど完治しています」
「私も問題ないわ。ズキズキするけど我慢できないほどでもないし、そのうち治るわよ」
三人とも、ホコリやら血やらで汚れているが、傷の方は問題ないらしい。
「それならよかったわ。念のため明日見ると思うけど今日はもう帰りなさい。美遊も、向こうでルヴィアが待ってるわ」
その言葉に、三人はほっとしたように息を吐く。
「まあ少し考えれば、ルヴィアがそう簡単に死ぬわけなかったわね。今日は疲れたし家に帰るわ。イリヤいくわよ」
「えっえっ? お兄ちゃんは?」
「悪いなイリヤ、俺はちょっと遠坂と話があるんだ。カードがもう一枚出たらしいからその話をな。だからそんな悲しい顔するなよ。お姉ちゃんだろ?」
「そういうことよ。ほらほらもう自分で立てるでしょ。いつまでも私に寄りかからないの、私の方が重症なんだから」
――恐らくクロは察している。今の士郎の現状を。
「ありがとう、クロ」
――それでも、クロは自身が何もできないことを知ってるから。
「凛。頼んだわよ」
――頼むしかなかった。
「まかせなさい。あなたたちもありがとね」
そのまま、クロとイリヤは家へと帰り、美遊はルヴィアの元へ走って行った。
「もう我慢しなくていいわよ。衛宮君」
「ああ助かる。はぁー・・・・・・・・・・・・」
何かをためるように息を吸い、
「うがぁぁぁあああああああああああああああぁぁっがぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!!」
吐き出すように絶叫する。
額には汗が無限に湧き出てくるようだった。
苦しくないわけがなかった。痛くないわけがないのだ。
それを、ただの気合のみで覆い隠していたのだ。
「まったく。妹の前ではほんとに強がりよね、あなたもルヴィアも。無駄にかっこいいんだから。・・・・・・・とりあえず、説教は次起きてからにするわ。もう寝なさい。辛いんでしょ」
凛の言葉に苦しそうに笑みを浮かべながら、
「はは、説教か・・・・・勘弁願いたいが、ダメなんだろうな。・・・・・・あっやば、い・・・・・・・もう無理みたいだ。俺の体頼んだ。とおさ、か・・・・・・・・・・・」
そのまま。
士郎は糸が切れたように倒れ伏した。
今話も読んでくださった方ありがとうございました。
今話はバゼット負けを認識させるをコンセプトに書き上げてみました。
「これは負けても仕方ない」「勝たなかったな」など、不死身性を持つキャラクターにはこういった勝ち方が一番いいかと思ったからです。
自己満足すぎましたかね? 皆さんの意見も是非聞いてみたいです。
~独り言~
複数の剣を同時に紹介しながら、戦闘に組み込むって超難しいですね!?
何とかしっくりきて落ち着く形にできて一安心です。
それはそうと、魔術で吹き飛んだ腕って直せるんですかね? 全く知らないのでヤバヤバです。
(まー無理やり直すけれども)
次話の投稿はまた少し悪と思いますが、気長にまってくださると助かります(多分一ヶ月以内に出したいです)
ありがとうございました!!