-松並木-
「学園祭に向けての資材運搬は大変ですね」
砲手席に座る明美が言ってくる。もうすぐ私達の学校は学園祭となるため、その準備期間なのだ。その為、授業は休業で生徒も教師も学園祭の準備を行っている。私達も戦車を使って家具などの運搬を手伝っている。
後ろに注意して朱里は左折し、国道1号線を渡って往還通りに入った。
「学園艦まであと少しだから、頑張って」
-生徒会室-
「会長、この書類も承認をお願いします」
生徒会室では各部活やクラスなどの出展内容を書類にまとめて、生徒会長の認可を貰う為に並んだ生徒で一杯となっている。
「はあ、いつも書類作業は一杯だけど、この時期になると本当に大変ね」
判子を次々と押しながら、翔子は言う。
「会長の承認も大変なのは分かるけど、予算を決めるこっちも大変なのを理解して欲しいな」
財務担当の生徒たちは悲鳴をあげながら各活動の予算を決めていく。
「まあ、それもそうね」
翔子はそれだけ言い、また判子を押す作業に戻った。
「失礼、会長。資材運搬は終わったわよ」
「ああ、ありがとう池田。すまないね。本来は資材運搬はこっちでやらなければならないのだが、生憎私はここを動けず、他の者も手が一杯なんで頼んでしまってね」
「いえ、構いません。うちはこれといった用意はありませんから」
私はそう言って生徒会室を出ようとするが、会長に引き止められた。
「すまないが、もう一つだけ頼まれて欲しい。舞阪総合病院は分かるだろう?」
「ここから艦尾方向に4km程行った所にある大型病院ですか?」
「そうよ。そこに私の近所の子が交通事故で入院しているの。その子の様子を見てきて欲しいの。それに彼女、戦車が大好きだから」
「それじゃあ、彼女も元気になったら戦車道を」
その時、翔子は暗い顔をしたが、直ぐに表情を戻し
「多分ね」
そう答えた。
「御免ね、準備とか任せる事になって」
「いえ。配置やコースを検討等が現在の仕事なのでそれ程大変ではありません」
格納庫で私は明美と話していた。ここには戦車道部が所有する機材が全て揃っている。ちょっとした体育館よりは大きい設備である。
「それじゃあ、あとの事は任せるわ」
私はハンバースナイプに乗り込み、エンジンを掛ける。アクセルを踏み込み、学校の敷地内を出て病院へと向かった。
-舞阪総合病院-
学園艦はすぐさま寄港することが出来ない為、殆どの病気を治療する為に規模に応じた数の総合病院が作られている。舞阪の学園艦は総合病院を一つだけ建てられている。
「翔子さんの紹介ですか」
私を案内してくれているのは担当医の沢木医師である。
「彼女は交通事故でご両親を亡くされまして、彼女も肺を損傷しています」
「え?。それじゃあ」
「一応、呼吸の補助器具をつけていますが、そう長い時間は生きられないでしょう。残念です。まだ未来ある若者なのに、こんなに早く死の宣告をしなければいけないとなると、心が痛みます」
沢木医師は本当に残念そうな顔をする。そして病室の前で立ち止まった。
「こちらが彼女。相沢雪穂さんの病室です」
そう言って医師は扉を開けた。