-舞阪総合病院-
私は扉をくぐり、病室に入る。中のベッドには起きた状態の少女が居た。隣には電気式呼吸器と心電図モニタが置かれている。
「誰?」
少女、相沢雪穂はこちらを見て言う。
「田辺翔子会長の代理できました。戦車道部の池田麻美です」
「せ、戦車道!?」
雪穂は驚いてベッドから出ようとするが、直ぐに苦しんで胸の辺りを押さえる。
「だ、駄目です相沢さん。肺を損傷しているんだから、無理に起きちゃあ」
担当医が慌てて雪穂を落ち着かせる。そして、ベッドに寝かされる。
「御免なさい。見ての通り、私は今は立ち上がることもできないの」
「ああっ、楽にしてくれて構いません」
「田辺会長は何て?」
「様子を見てくるように言われただけです」
「そう。私は貴女の事を聞いています。池田流戦車道の後継者。家を飛び出し、自分の池田流を流す人。と」
「まだ正式な後継者にはなっていませんけどね。あくまでも後継候補です。それにしても、会長も案外お喋りなんですね」
私は笑顔になる。学校じゃあ、殆ど事務的な会話ぐらいしかした事がない。そもそも、会長がそんなにお喋りな人ではないのだ。
「多忙な人ですからね。ゆっくりしている所を見た事がありません。でも、ほぼ毎日顔を出してくれているな。来れない時は、貴女みたいに代理がきますけど」
私はその後暫くは何気ない会話を楽しんだ。
「ねえ、貴女は戦車道が好きなのよね?」
「うん。戦車もそれを使った武道の戦車道も大好きです」
「今度、写真をあげる。私達の学校が保有する現在の車両から歴代の車両までの全部の写真を。あと、他の学校からも取り寄せれるだけ送らせるね」
「わあ、ありがとう!!」
私は椅子を立ち上がり、扉の所に行く。
「それじゃあ、また今度。写真は近いうちに持ってくるわ」
「うん。待っているね」
「そう言う訳だから、写真を送って欲しいのよ。そっちが持っている戦車の写真を全部」
『何であんたなんかに送らなきゃいけないのよ!?』
私は富士女子の原の所に連絡していた。他の所は快く受けてくれたが、ライバルの原はそう簡単に受けてくれそうになかった
『第一、機密資料もあるのよ』
「それは外してくれても構わないけど、そこを何とか。将来の戦車道人口に一人プラスすると思ってさあ」
『近い将来死ぬと決まっている人間に送れる訳ないでしょう。ちょっと、待って。どうしたのよカレン?え?何?』
「保留にしないと丸聞声だよ」
『うっさーい!!。分かったわよ。送ってあげる』
そう言って電話が切れた。
「何だったのかしら?」
そしたら再び着信が入った。画面を見ると、島田カレンと表示されている。
「もしもし?」
『説得は苦労しましたよ。貸し一です』
「説得は感謝するけど、一体どんな手を使ったの?」
『そう言うわけで舞阪産のシラスをお願いします』
「話が見えないんだけど」
『受けてくれたらシラスを送ってあげると言ったら二つ返事で引き受けてくれましたよ』
「シラスを釣りに出したのね。まあ、シラスで済むんならいいわよ」
『それじゃあ、よろしくお願いします』
そう言って電話が切れた。
「何だ、原はシラスが好きなのね。なら、今度から渋ったらシラスを釣りに出そうかしら」
-戦車道部部室-
「あら、メールが来てますね。な、何ですかこの量は!!。容量オーバーでフリーズしちゃいましたよ」
朝、朱里がパソコンが操作していると驚きの声をあげた。
「どうしたの?」
私は画面を覗き込む。
「いえ、朝のメールチェックで各校のメールと画像をチェックしたんですけど、富士女子だけ圧縮ファイルでして、開いたら50GBでメールに使っている容量をオーバーしちゃいました」
「あの小学生並のチビ。これじゃあ、軽いテロだわ」
そう言って私はパソコンを操作するが、重くて動作が遅く、何とかメールに掛ける容量を拡大させて対処した。