-舞阪総合病院-
「わあ、凄い数です」
雪穂は私が持ってきた写真を見ながら興奮する。
「89式中戦車、Ⅵ号戦車、ブラックプリンスに7TP。マニアックからマイナーまで、凄い数」
「詳しいのね」
「はい。将来は絶対に戦車道を履修したいので」
目を輝かせながら言ってくる。
「それじゃあ、楽しみね。舞阪女子を継いでくれて」
伝統も続かなくては意味を成さないので、継ぐ人間がいてくれるのは嬉しい。
「今度、私達の学校で学園祭があるの。各校が多数の展示品を提供してくれるし、私達は私達で展示と体験搭乗を予定しているの。良ければ、来る?」
「はい。でも、難しいです。外出許可が最近は下りにくいので」
容態が悪化している為、雪穂は最近殆ど外出許可が出ていなかった。
「そう。残念ね」
「でも。出たら絶対にいきます」
「なら、その時は迎えに来るからね」
「ええ。ありがとうございます。回線がパンクしたのは予想外でしたが、助かりました」
『それは何よりです。その子が喜んでくれたのを含めて』
私は病院を出て、ハンバースナイプのボンネットに腰をあずけて電話をしていた。相手は富士女子の島田カレンだった。
『隊長も渋りましたが、貴女が送ってくれたシラスを今は食べてますよ』
「シラスで釣れるとは知らなかったわ。今度から渋ったらシラスを釣りに出そうと思ったわよ」
『良いんじゃないですか?』
「あんたね。試合の勝敗もそれで釣るわよ」
『隊長がそんな物で勝ちを捨てたならその程度の人だったと思うだけです。けど、貴女はそんな事をしないと分かっているので』
「信用してくれてありがとう。勿論、そんな事はしないわよ。決勝では本気でやるわ」
私は笑いながら言う。相手も笑った様子だった。
『貴女が決勝まで来れればの話ですけどね』
「絶対に行ってやるわよ。そっちこそ、途中で敗退は勘弁ね」
そう言って電話を切る。すると、再び着信音が流れた。画面の相手表示には『三条明美』と表示される。
「もしもし、どうしたの?」
『たった今、ブダペスト高校からの展示品が到着しましたが、凄いのがありますよ』
「写メで送って」
私は電話を切り、写メが送られてくるのを待つ。暫く待つとメールが着信した。
「これはまた、凄い展示品を送るわね、あの学校は」
写っているのはダナ自走榴弾砲、プラガ自走対空砲、OT-64、Tー72、2K12、SK105、Pandur
「本当に金のある学校ね。相当数揃えているわ」
他には自校で使っているトゥーランシリーズなどの戦車が写っている。
「ミリオタなら歓喜する装備品を持ってきて。私達と戦争する気なの?」
そう言うこちらも、マーク戦車やロールスロイス装甲車などの第一次大戦装備からチャレンジャー2、AS-90などの近代装備まで格納庫奥に眠っている車両を全て引っ張り出している。
-戦車道ショップ おおかはら-
「今年も学園祭が近づいてきました。今年はどうします?」
私は猫に囲まれながら、大河原さんに聞く。
「例年通りでいいよ。その時位しかもう動かす時も無いからな」
隣の倉庫に置かれているシャーマンファイアフライVCを毎年展示、体験搭乗に使わせて貰っている。今年も許可が出た。
「毎年、そっちの学校は多数の装備品が来るからな。ミリオタ達は歓喜しながら行っているよ。そこでしか見られない珍しい兵器もあるからな」
「航空部も、多数の飛行機も格納庫から引っ張り出していました。普段はグライダー機ばかり乗っているのに、この時ばかりはお祭り騒ぎで昔の戦闘機や今の戦闘機に乗りますよ」
「まあ良いじゃないか。学園祭。お祭りなんだから。昔のお祭りは本当に無礼講でな。未成年者も飲酒したものだ」
「問題発言はいいので、この猫を何とかしてください」
私は猫に囲まれて身動きがとれない。2匹の猫は私の足を殴ってくる。
「懐かれているんだよ。そういえばどうする?。エイブラムスは?一番最初に生産されたのが回ってくるんでな。ここで止めといて、そっちへ流せばいいのか?」
「出来るのならぜひお願いします」
「はいはい。それじゃあ止めとくよ。それとな、学園祭。賑やかになるかもな」
「え?」
大河原さんはそれだけ言い、棚の荷だし作業に入ってしまった。
-戦車道部部室-
「準備は進んでいます」
私と明美、朱里と麻衣は部室の机に地図を出して睨めっこしている。
「格納庫前に各校が送ってくれた装備品を展示します。既に到着したブダペストとミンスクは全ての装備品に偽造用ネットを被せて配置しました」
ミンスク高校からも多数の装備品が届けられている。怪物皇帝戦車からウラジミール戦車、他にも自走砲や自走ロケット砲まで、とにかく数が多いロシア・ソ連製兵器を多数運び入れている。
「航空部も今年は多数展示するそうなので、場所の調整は上手くやりませんと」
「そこは会長が調節してくれたわ。艦首向かって右側に広大な空き地があるでしょ?そこを会長が使えるようにしてくれたから私達はそちらにも展示できます」
車両科と戦車道部の輸送科チームが資材や装備品の運搬に駆り出されている。私達は会場のセッティングを担当している。何処に何を置くのかなどを検討・決定するのが仕事だった。
「とりあえず輸送科チームに連絡して校門からの道左側に沿って私達の学校の展示する車両を並べさせて。右側には航空部が並べるだろうから」
「はい」
準備は着々と進められた。