-大河原-
「やはり、無理ですね」
帰るなり手帳を確認するが、電話で聞いたとおり解読は不可能だった。
「それで、自殺だと考えたというわけか」
大河原さんはこちらが渡したパンター戦車の操作パネルの写真を見ていた。
「確かにこれだとエンジンは始動状態で間違いないが、そうなると何故排気ガスを吸ったかだな」
「もともと初期型のパンター戦車は多くの欠陥を抱えていたんです。それで火災の原因を突き止めることはできますが、排気ガスの方が。パンター戦車が置かれていたのがガレージなので、密室状態で排気ガスが充満したか」
「あるいは意図的に吸ったか、か」
「もう一度、調べてみます。大河原さんは何とかコンピューター解析ができる人にこのメモをあたってくれませんか?」
「分かった。こっちはこっちであたってみるよ」
自宅に帰るなり、パンター戦車を調べる。焼け焦げているが原型は保っているのでこれまでも調査をしていたが今回はより細かく調査した。
「やってるのね」
入り口のところに池田が立っている。
「ちょうど良かった。排気系統に穴が開くってありえるか?」
「え?穴?。確かに、暖気のし過ぎで走行風によって冷却されなければあり得ると思うけど」
「車内に穴があってな。そこから排気ガスが入ったとしたら?」
池田を砲塔内に入れ、砲塔下の所にある穴を指差して見せる。池田は驚いた表情になる
「もし仮にこれが火災前に開いていたとしたらここから排気ガスが入ったんだろうな」
「自殺の可能性もあるって言いたいの?ナターシャに限って」
砲塔内から出て椅子に腰掛ける。コーヒーメーカーに入っているコーヒーを淹れて池田に渡す。
「まだ確証は無いが、今までの調査などからそうじゃないかと思ってる」
池田はそれを聞くなりコーヒーカップを落とし、割れた。ガレージの床にコーヒーが広がっていった。
「ご、ごめんなさい。でも、嘘よね?」
「後で片付けるからそのままで良いよ。あと確証は無いと言ったろ。ただ今日届いた遺品の中にあるメモ帳。あれを解析できれば何かわかると思ってる」
「もう、消防とかが調べたんじゃないの?」
「公式に火の不始末と発表してるからね。自殺と断定されでもしなきゃ、メモの内容まで調査はしないよ」
コーヒーカップを置き、池田の方に向き直った。
「ナターシャがどんな思いだったのかは分からないが、彼女の真相を俺は受け入れるつもりだ」
夜、再びパンター戦車を調べていると電話が鳴った。一時中断して携帯の画面を見ると相手は大河原さんだった。
「もしもし?」
『ああ、佐藤か?調査結果が出た。直ぐに来れるか?』
「分かりました。直ぐに向かいます」
外に駐車しているパッカード12に乗りエンジンをかけて発進させる。時間外のため陸に行くのに料金がかかったが無事に店まで着いた。
「大河原さん、どうでした?」
「解析結果がメールで来た。見てみろ」
そう言ってパソコンの画面をこちらに向けてきた。
『私の戦車道をするきっかけを作った人は今日卒業してしまった。もっと彼に教えて貰いたかったのに、彼はもう居ない。私はすべてを失った気分になった。最後に、彼に・・・』
「これは、まさか」
「遺書ともとれる。恐らく、彼女はそのつもりで書いたんだろう」
最後まで書ききれていない。つまり既にエンジンをかけて排気ガスが車内に入ってきていたんだろう。
「何でだよ!?続けろよ、戦車道を。あんなに楽しんでたのに」
その時、店のドアが開いた。
「彼女は貴方に依存してたのよ。そして、追いつこうとしてた」
入ってきた池田が言う。
「そんな人がいなくなったら・・・。私は違うと信じていた!!。あの火災の事を聞いて、事故だと信じてた。偶然の、不幸な事故だと。でも、そのメモに書かれているのが本当なら」
俺は大河原さんに背を向けたまま
「大河原さん、ドラゴンワゴンを明日まで借ります」
「あ、ああ」
そう言って店を出て、駐車場にあるドラゴンワゴンに乗り込んで学園艦に戻った。
-豊橋 市営墓地-
翌日、ドラゴンワゴンに焼け焦げたパンター戦車を積んでナターシャの眠る墓地まで来た。
「お前さんとも色々とあったな。最後は御免な。残るという選択肢をとらなくて」
ウインチでパンター戦車を下ろし、うまく墓地の横に止めることができた。
「安らかに眠れ、ナターシャ」
そう言ってパンター戦車の砲身に花の輪をかける。そしてドラゴンワゴンに乗り込み、発進させた。
中途半端かもしれませんが、ここで『過去を断ち切れ』は終了です。
脚本を書いてくれた方、ありがとうございました。