ガールズ&パンツァー 東海の覇者 番外編   作:橘花

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過去の因縁です 1

40年前

 

 

「突っ込め!!」

 

シャーマンファイアーフライに乗る大河原は、宿敵の暴走族である『鼎巻組』(かなえまきぐみ)が構築した戦車陣地に突っ込み、勝利した。

 

『全国戦車暴走族選手権、優勝は東海戦車倶楽部の勝利』

 

その瞬間、試合会場は歓声に包まれた。40年前に行われていた裏の戦車道大会。戦車暴走族が集まって行われる大会に出場していた大河原修率いる戦車暴走族『東海戦車倶楽部』が優勝したのである。

 

「くそ!!、くそ!!、くっそ!!」

 

負けた鼎巻組の隊長である鼎巻達也は路面を叩く。手からは血が滲んでいた。

 

「絶対、絶対に勝ってやる!。何十年掛けてでも、勝ってやる!!」

 

拳を大河原に向けながら言った。

 

 

 

現在 戦車道ショップ『大河原』

 

「まあ、昔はそんな裏の戦車道大会なんてのもあったんだよ」

 

常連の一人、斉藤に昔話を語る大河原は感傷に浸りながら話していた。

 

「そんな裏の大会があったんですね」

 

「まあな。でも、それが連盟に漏れたらしくてな。それ以後、戦車道ほぼ完璧に女子が行う武道になってしまって訳だ」

 

すると、エンジン音が聞こえてきて店の前に停車した。

 

「ハンバー・スナイプ?。フロントには4つ星がありますけど」

 

「舞阪女子だな」

 

大河原さんがそう言ったとき、私達は店内に入った。

 

 

「どうも、大河原さん」

 

「おう、一回戦の勝利おめでとう」

 

「ありがとうございます。ただ、履帯の脆弱さがでてしまったので。今後は機関砲対策も考えないといけないかもしれません」

 

「残念ながら、防弾の履帯はないからな。20mmじゃあ耐えられんよ」

 

私は溜め息をつく。改めて、ヴェステルプラッテが強敵だったのだと痛感したのだ。だが、同時に池田流の改善点も少しずつ分かってきたので、その意味では良い試合だった。

 

「まだまだ、池田流は完成した流派では無いので。試行錯誤を続けている段階です」

 

池田流は待ち伏せ攻撃での包囲殲滅が基本的な戦闘教義となっている。しかし、市街地での包囲殲滅にはまだまだ改良が必要だった。

 

「まあ、お前さんが池田流を継いだんだ。どうしようと、勝手だ」

 

大河原さんはそう言ってくれた。中学卒業と同時に池田流を継ぐ事が決定した私は、自分の手で池田流を完成させようと考えていた。5代に渡って受け継がれた池田流は少しずつ形態を変えながら現在に至っている。

 

「完成させようとは思っているのですけれど。これだという決定打が無いんです」

 

そこへ、再びエンジン音が聞こえてきた。外を見ると、ハンヴィーが停車した。降りたのは白髪の老人と黒服のサングラスを掛けた長身の男性である。

 

「邪魔するぞ」

 

老人とは思えないほどの威圧感のある声であり、私は少し気圧された。

 

「その声は鼎巻か。いい加減諦めたらどうだ?お前も俺も連盟から永久出場資格剥奪を喰らって、試合はできないだろう」

 

「あくまでも、それは俺とお前だ。俺の孫まで出場資格剥奪は無い」

 

「孫?」

 

「そうだ。40年掛かったぞ。息子夫婦の子供に女の子が産まれた時には俺は歓喜した。5歳から戦車道を教えて今まで育て上げた」

 

「5、5歳からって」

 

私は同情する。それじゃあ、幼少時代もまともに遊べなかっただろうに。っと、するとまたまたエンジン音が聞こえてくる。しかも複数。

 

「紹介しよう。我が孫の鼎巻楓と、新生『鼎巻組』だ」

 

店の前の道路に戦車が6台停車する。そして、先頭のパーシングからピンクの髪をポニーテイル状に纏めた少女が顔を覗かせる。会話の流れから、彼女が楓だろう。

 

「パーシング?違うわね、長砲身。スーパーパーシングにM36、それにM3中戦車。溶接モデルだからA3型?」

 

「詳しいな、お嬢さん。その通りだ。大河原、これが新生『鼎巻組』の戦車よ。さあ、そっちの戦車を見せろ」

 

「生憎、家は女の子に恵まれなくてな。それにあの試合以後は東海戦車倶楽部も解散した。俺も今じゃあ戦車道ショップの店長をやっている身だ」

 

「じゃ、じゃあ。一体俺は誰と戦えば?」

 

大河原さんは考え込む。

 

「まあ、俺はこいつらなら任せられる」

 

そう言って大河原さんは私を指名した。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。やるしても場所は?」

 

私は何とか逃れようとするが、そう甘くなかった。

 

「心配は要らない。こいつが用意してくれる」

 

そう言って今度は見知らぬ男の方を見て言った。

 

「え、えっと、貴方は?」

 

「はあ、こんな形で自己紹介を促すとは、大河原さんも案外酷いですね。まあ、いいです。私は民間軍事企業『ブラック・フォース』の幹部、斉藤幸男です」

 

「民間軍事企業?。あの傭兵を各地の戦場に派遣する?」

 

「よく勘違いされますが、現在の傭兵の主任務は現地軍の訓練や補給などの後方支援が主な仕事です。戦闘に巻き込まれる事はそうそうありません」

 

「で、そのブラック・フォースが今度太平洋に新しい演習場を作っていてな。明日、完成披露式典だそうだ。そこのオープンセレモニーのイベントとして彼女らを戦わせるのはどうだ?オープンセレモニーなら連盟も煩く制約してくる事もないだろう?」

 

「まあ確かに。オープンセレモニーを盛り上げられるのならこれ以上無いですからね」

 

そんなこんな参加する当の私を無視して話は進んだ。結局、私達は明日太平洋上に築かれたブラック・フォースの総合演習場完成披露式典のオープンセレモニーで鼎巻組と戦う事となった。

 

 

-戦車道部部長室-

 

「はー。」

 

帰るなり、事情を皆に説明し終え、私は部室入って溜め息をついた。

 

「つまり、私達はその演習場の完成披露式典で観客を盛り上げる為に戦えと言う訳ですね」

 

部屋に居る明美はお茶を注れて持って来てくれた。

 

「うん。そうなるね。色々と大河原さんには恩があるから、手伝いたいけど。でも私闘はあまりすきじゃないのよね」

 

あくまでも試合なので、いざ始まったら全力で戦うだけだけれど。

 

「それで、なんであくまでも一会社の所有なのに、招待されているのは各国の政財界に軍幹部などとお偉方が殆どを占めているわけ?」

 

「この演習場建設には一会社だけで完成させられる訳ないでしょ。この演習場建設に伴って生まれる新技術を海面上昇が地球規模の問題となっている世界で生かそうと考えている国は大勢あるのよ」

 

何といっても4000m級の深海を埋め立てる最先端の海洋土木技術が使われるのだ。まず、捨石を敷き詰めて均して基礎を造り、その上に半永久耐久コンクリートをブロック状にして積み上げて海と人工の陸とを遮断する。内側を土砂や廃棄物などで埋め立て陸地を造るを繰り返して島を拡大していく。

 

その過程で大きな技術進歩がなされた。海水に含まれる塩化ナトリウムに反応して固まるコンクリート、永久に錆びる事の無い金属、4000m級の深海でも機能する精密機器。それに島には当然人工の山なども建設される為、今まで計画だけで実行されなかった数千メートル級の人工山を作り上げる技術。他にも島に自生していく木や花などの植物にはバイオ技術の実験を兼ねた物が使用されている。

 

それだけでなく、この巨大な人工島は軍の新たな演習用地としても各国の軍幹部が注目して援助された。

 

様々な思惑が交差したが、それらの技術を見返りに世界中の国や軍、それに財閥が援助して造られたのがブラック・フォースの演習場と言う訳である。

 

「壮大な計画ですが、錆びる事の無い金属はこの学園艦にも使用されていますからね」

 

この学園艦にも演習場を造る過程で開発された錆びる事の無い鉄鋼が使用されている。私達の身近にも役立っているのだ。

 

「うん、まあそんな訳だから。明日、迎えの船が横付けされるの。既に航海科に書類を提出しているから大丈夫だ。機材だけでも左舷のデッキに移動させておいて」

 

「了解しました」

 

明美はそう言って部屋を退出した。私は明美が注れたお茶を飲んで一息ついたのだった。




ハンバー・スナイプのフロントに4つ星があるのはモンティ仕様車です。

モントゴメリー将軍が愛車にしたイギリスのスタッフカーです。


スーパーパーシングは通常のパーシングにドイツ戦車の装甲板を増加装甲として装備し、更に主砲を71口径90mm砲に換装したタイプです。

M36などのアメリカ戦車駆逐車は現地にて天井を取り付けたタイプがあるため、一応は戦車道のルールを満たしているので登場させました。
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