「煙幕弾、発射!」
煙幕を抜けるギリギリの所で追加の煙幕弾を発射した。
「全車、ジグザグ走行を維持して前進。先ずは観測戦車を探します」
砲塔から私は顔を出し、双眼鏡で観測している戦車を探す。
「相手は背の高いM3中戦車で探している筈。一体何処に?」
その時、周辺に着弾があって煙幕が少し晴れる。
「M36!?。不味い、転進」
再び着弾し、部隊は混乱する。
『こちら戦車駆逐隊。舞阪女子を捕捉し、追跡中』
「了解。こちらも移動する」
鼎巻楓はスーパーパーシングで移動しながら連絡を受ける。僚車のスーパーパーシングと着弾観測車のM3中戦車も追従する。
「追い詰めろ」
「各車、砲身を後ろに向けてください」
舞阪女子は砲身を後ろに向け、狙いを定める。
「M36の弱点は主砲防盾下です。そこならショットトラップを起こして撃破出来ます。落ち着いて、そこを狙ってください」
麻衣が徹甲弾を装填し、明美が狙いを定める。
「照準良し」
「発射!!」
発射した砲弾は狙い通り、主砲防盾下に命中した。砲弾は狙い通りに防盾の傾斜にしたがって車体上面に命中。白旗が挙がった。
「撃破ですね」
「でも、こっちもやられた」
「え?」
「3号車から応答がない」
麻衣がヘッドセットを外して報告する。その3号車は先ほどの攻撃の少し前に撃破されてしまったのだ。
「どうします?」
「このまま走って。とりあえず、身を隠せる遮蔽物の少ない岩場を抜けて森に入ります。ジャングルと言ってもいいほどの密林が、前にあるものね」
正面には昼間なのに日の光が地上に届かないほどの密林が広がっている。そこに入ってまずは相手を撒く必要があるのだ。
「煙幕弾装填。装填後、直ちに発射」
麻衣が煙幕弾を装填し、明美が間を空けずに発射する。煙幕弾は何とジャクソンに命中し、命中したジャクソンの周囲に煙幕を立ち込めさせた。
「ありゃりゃ、あのジャクソンの操縦手、運転をミスらなければいいけど」
私がそう言った時、煙幕弾を直撃したジャクソンは岩の出っ張りに乗り上げて擱座してしまった。
「履帯も切断されて、暫くは動けないわね」
残り1台。しかし、貴重な煙幕弾をこれ以上ここで使用したくない為攻撃をかわしながら密林を目指す。
「左右に広がると擱座の恐れがあるので。単縦陣でついてきてください」
私達のセンチュリオンを先頭に2号車のセンチュリオン、4、5、6号車のコメットが続く。
「密林突入。ヘッドライト点灯」
ヘッドライトを点け、尾灯も点ける。
「後ろのジャクソンもついてきています。流石に一台じゃあ事故りませんね」
「朱里、少し気をつけてね。麻衣、徹甲弾を装填」
「了解」
麻衣が砲弾ラックから徹甲弾を取り出し装填する。
「明美、右横の木の左半分を撃ち抜いて」
「了解」
丁度いい太さの木を探す為に私は砲塔から顔を出す。時々ジャクソンが攻撃してきているけど、命中はない。走りながらの命中率は低いので、慎重に私も探す。
「あった」
そう言って私は手持ちのレーザーポインターを取り出し、目標の木に照射する。
「明美、あの木を狙って」
「了解」
明美は砲塔を旋回させ、狙いを付ける。そして、微調整にして発砲した。
「命中です。でも、中々倒れませんね」
「直ぐに倒れちゃあ困るわよ」
私は砲塔から顔を出して、機関銃で狙いを付ける。そして、6号車が通り過ぎたところで連射した。
「お願い、タイミングよく倒れて」
弾が何発も命中し、木がバキバキ音を立てながら倒れ始める。そして、タイミングよくジャクソンの目の前に倒れた。そこにジャクソンが突っ込み、横転する。
「下は水分が少ないから硬いわよ」
「流石です」
ジャクソンから白旗が挙がったのを確認する。これで、5対4。
「やられたですって!?」
追撃中だったスーパーパーシング2台とM3中戦車は擱座していたジャクソンと合流し、密林に入ろうとした所で追撃していたジャクソンから連絡が入った。
『はい。彼女たちは木を倒して私達を仕留めました』
それを聞いて無線を切った。
「あの役立たず。戦車が木に負けていいと思ってるの」
悪態をつく楓は再び無線のスイッチを入れる。
「良い?。あいつらがどんな手を使っても、私たちは勝たなくちゃならないのよ。組長の顔に泥を塗る奴は今日限りで破門。良いね?」
「了解」
「盛り上がってますね」
観戦セット組まれているステージの少し離れた場所に停車しているセミトレーラー内部では無数の画面に戦いの風景が映し出されている。この島に設置されている無数のカメラから映し出された映像を全てチェックしているのだ。
「そうだろう。やっぱり、彼女達を戦わせて良かっただろう」
斉藤の隣には大河原さんが居る。斉藤は葉巻を咥えて火を点けた。
「それにしても、貴方も人が悪い。確かに良い宣伝がないかと相談したけど、まさかこんな戦いを仕組むとは」
「俺の所にも突然電話が掛かってきて、話を聞いて驚いたよ」
そして、何とその更に横には鼎巻組の組長、鼎巻達也がそこに居たのだ。
「しかし、貴方は何十年経ってでも勝ってやるって言ってませんでした?」
「負けたよ、最後にはね」
「え?」
「俺は今、大手戦車道ショップの社長だ。全国に多数のチェーン店を抱えるな。戦車道試合を禁じられた後、俺は戦車道ショップを開いてな。今じゃあ、売り上げてこいつの店に勝ってるよ」
鼎巻は大河原さんを指差しながら言った。
「ああ、なるほど。じゃあ、一応は勝ったんですね」
「けど、あの試合前に言っちまってな。『負けた方は勝った方の言う事を一生聞く』と。だから、今もこいつには頭が上がらない」
「経緯はどうあれ、今我が社の演習場が軍事演習として適した土地であると言う事が証明されつつある。この島の実験には丁度いい材料となっている訳です。その事について感謝していますよ、大河原さん」
「おう。俺も色々とそっちの会社には世話になっているからな。これぐらいの事はしてやるよ」
「本当に、人の悪い人ですよ」