ガールズ&パンツァー 東海の覇者 番外編   作:橘花

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過去の因縁です 4

密林を抜け、住宅区画へと入った。中央にシンボルと思しき時計塔がある地中海地域をイメージして設計された、白い家が立ち並んでいた。

 

「何処も無人ですね。そりゃ、軍の演習場ですから当然ですけど」

 

「それにしても、金を掛けているわね」

 

どれも高級住宅だった。プールからヘリポートまで備えられている。

 

「市街戦の演習場なら、地中海地域をわざわざイメージする必要が無いのにね。もしかして、ここは幹部の保養地も兼ねているのかもね」

 

その時、私は良い事を思いつく。

 

「そうだ。ここを決戦場にしよう。それで、多少壊してあげましょう」

 

「いいんですか?そんな事して?」

 

明美が言ってくるが、私は無視して無線を掴んだ。

 

「各車、適当な家屋に潜んでください。そして、敵が来たら一気に仕留めましょう」

 

『了解』

 

 

 

「密林を抜けるわ。全車警戒」

 

密林を抜けて追ってきた楓は警戒を促す。暗い場所から明るい場所に移動したときに目が一瞬だがブラックアウトする。その時を狙われれば対処できない。

 

「待ち伏せしてないのね」

 

密林を抜けても、敵からの攻撃が無かった。そして、坂を下りた先に住宅区画が見えた。

 

「あそこね。待ち伏せしているの場所」

 

双眼鏡を覗いて敵を入念に探すが、見つけられない。

 

「仕方が無いわね。プロジェクト・イホーディよ」

 

後ろに積まれている箱の中から大量の照明器具を取り出す。それを2台のスーパーパーシングの正面に設置していく。

 

「これで、向こうから私達を見ることはできないわ。M36、前進して敵をあぶり出しなさい」

 

命令を受けたM36が前進を開始し、住宅地へと向かって走っていく。M3は丁度良い観測地点に移動して双眼鏡で観測体勢を取る。

 

「照明、点灯開始」

 

スーパーパーシングの正面に設置されている照明器具が点灯する。こうすることで、離れた位置に居る舞阪女子は光と同化したスーパーパーシングを目視で確認する事は出来なくなる。

 

「光が空の色に同化して、私達を隠してくれるわよ。何処から飛んでくるのか分からない砲撃に恐怖しなさい」

 

 

 

「M36だけですって?」

 

車庫に潜んでいる私達は住宅区画入り口に配置している5号車から連絡を受けていた。

 

『はい。残りは確認できません。M3とスーパーパーシング2台が確認できません』

 

「分かったわ。ありがとう」

 

無線を切って考える。敵は一体何をするのか、と。

 

「どういうつもりでしょうか?たった1台で入ってくるなんて」

 

「他の場所からも発見の報告がないんでしょう?」

 

私は他の車両と無線で交信していた麻衣に聞く。麻衣はこちらを向いて首を振るだけだった。

 

「でも、ほっとく訳にもいかないしね。麻衣、全車に伝えて。仕留めますと」

 

「了解」

 

麻衣は頷いて交信を始める。私は朱里の方を向いて

 

「エンジン始動。敵を仕留めます」

 

「了解」

 

朱里がそう答えたと同時にセンチュリオンのエンジン音が車庫内に響き渡る。車庫のシャッターを降ろしているが、今更上げに行く気もない。

 

「前進!!」

 

朱里がアクセルを踏み込み、シャッターを破壊して道路に出る。

 

「居た。攻撃用意!!」

 

出た直後に敵を発見する。相手はこちらが予想外の所から出てきた為に混乱している様子だった。

 

「発射!!」

 

命令を受けて明美が発射した砲弾はM36の車体正面に命中し、白旗が挙がる。

 

「良し!!」

 

ハッチから顔を出して撃破を確認した私は周囲を探す。しかし、やはり敵は何処にもいない。

 

「敵は何処に?」

 

次の瞬間、この住宅地中央に佇む時計塔が爆発して上部が木っ端微塵に吹っ飛ぶ。

 

「な、何が起こったの!?」

 

木の破片が降り注ぎ、辺り一面を木の粉が舞う。

 

 

 

『外れました。時計塔が邪魔で直撃しませんでした』

 

「ちっ。確りと観測しなさい!!」

 

楓は無線機を叩きながら言う。砲手は次弾の為の微調整を始めた。

 

 

 

「やられたわね」

 

近くの車庫に再び身を潜めた私達は動けなくなった事実と直面したのだ。

 

「敵は恐らく、間接射撃を使っていると思われます。しかも、こちらは市街地で移動に制限がかけられている場所にいますので、こちらが不利です」

 

最初の間接射撃は開けた岩場なので動ける場所は多く、機動も読みづらかった。しかし、移動に制限がかけられる市街地に対しての間接射撃は有効だった。

 

「朱里はここに居て。明美と麻衣は私と一緒に偵察」

 

「了解」

 

明美が答え、麻衣が頷いてハッチから外に出る。

 

「それじゃあ朱里、やばくなったら移動しても構わないから」

 

「了解」

 

私も戦車を降りて移動する。

 

「麻衣、無線機を貸して」

 

「ん」

 

麻衣が背中に背負っている無線の受話器を渡してくる。

 

「全車、その場に待機。しかし、数人の偵察を出してください。敵の居場所を突き止めないと狙い撃ちにされます」

 

 

 

「敵を見失った?」

 

『はい。完全に見失いました』

 

「役立たず!!。いい?今から私達でバカスカと街に撃ち込むから、その節穴の目をよーく凝らして探しなさい」

 

『りょ、了解しました』

 

「それじゃあ、撃ち方はじめ!!」

 

スーパーパーシングは砲撃を開始する。砲弾が着弾した家屋は少しずつ破壊されていく。

 

 

 

「こりゃ、修繕費は馬鹿にならんな」

 

セミトレーラー内部で試合を観戦した斉藤達は映し出される破壊されていく市街地を見ていた。

 

「派手に壊しますね」

 

斉藤がそう言った時、再び砲弾が着弾した家屋は完全に崩壊した。

 

「まあ、私が使う予定の場所は・・・」

 

その瞬間、斉藤が保養施設として使う予定だった家屋も木っ端微塵に破壊された。

 

「跡形も無くなりましたね」

 

斉藤は驚きながらも言葉を繋いだのだった。

 

 

「なりふり構わずに発砲してるわね」

 

壊されている時計塔の登れるところギリギリまで登った場所で捜索を続けるが、発見できない。

 

「一体何処から撃っているの?」

 

「隊長、見つけた。道路左の丘にM3中戦車。観測戦車と思う」

 

麻衣が言った場所に確かにM3中戦車が居た。

 

「了解。朱里に連絡して。時計塔の前に戦車を止めてと。明美は降りて、砲撃して」

 

「了解」

 

明美はロープを手すりに引っ掛け、螺旋状の階段を飛び降りて一気に地面に降り立った。そして、恐らくはまたシャッターを壊して出て来たセンチュリオンに乗って砲撃準備をする。

 

『準備完了です』

 

「了解。距離1200って所ね」

 

『了解しました。いつでもいけます』

 

「発射」

 

発射した砲弾は放物線を描きながら跳び、吸い込まれるようにM3に命中して撃破した。

 

 

 

『こちら観測車。やられました』

 

「了解」

 

 

 

「残り、2台」

 

『隊長、こちら6号車です。さきほど、赤外線で観測したら敵が映りました。照明です。車体正面に照明を取り付けられています』

 

「やられたわ。まさか、プロジェクト・イホーディを使うとわね」

 

『何ですか?その、プロジェクト・・・・』

 

「プロジェクト・イホーディ。第二次大戦中、連合軍が採用した対Uボート戦術の一種よ。翼の端に照明を取り付け、空の色と同化した戦闘機が浮上中のUボートを急降下で仕留めるのよ」

 

『なるほど。確かに、同化しています』

 

「さて、種が分かれば簡単。一気に仕留めに行くわよ」

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