part1 椰子乃&康多
「かえりの あいさつ」
『さよーならー』
康多の号令に全員が応え、半数以上の者が教室を出て行く。
部活がない僕はすぐに帰れるのだが、学校にいる方が楽しいので帰らない。それに今外は雨が降っている。
かさを持っているとは言え、ギリギリまで粘りたいところだ。
「椰子乃〜、ナミヤ雑貨店、返せー」
康多が椰子乃を呼ぶ。
「はい。面白かったよ」
椰子乃が康多に本を渡す。
そう言えば、椰子乃たちの合唱部は明日の朝から沖縄行くんだっけ?
「椰子乃、アマゾンでも頑張れよ!!」
「アマゾンじゃないし!!」
ゴスッ
「うおっ」
「まあまあまあまあ、落ち着きなさい二人とも。二人ともアマゾンでピラニア食べて頑張ってきなさい」
ゴツン!!
「いってててててて」
ガスッ
「ぐはっ」
二人を止めようとしたら、二人から攻撃された……。
しかし、三人とも笑っているのは事実だ。
ここにはドM兼ドSしかいないのか?
「さて、と」
雨も小止みになってきたし帰るかな。
ガラガラガラ、ドンッ
教室のドアを閉めたところで椰子乃の声が聞こえてきた。
「ねえ、康多……」
「なんだ?」
「合唱コンクールの九州大会、金賞もらえたら、付き合ってくれない……?」
「付き合ってなんになるんだ?」
また康多の必殺技だ。
椰子乃は答えきれるのだろうか。
「康多と一緒にいれば、もっと自分を知ることができると思うの」
「なぜ……そう思う?」
顔には出していないが康多は動揺している、そう思った。
「なぜって、私が好きだから」
「……。本音を言っちまえば俺も椰子乃のこと好きなんだよなぁ」
「じゃ、じゃあ……」
おぉ、こんな展開を見るのは初めてだ。
「ああ、付き合ってもいいぞ」
そして、康多は頭を掻く。
「あ〜。付き合うときは俺からって決めてたのになぁ〜」
そう言えばそんなこと言ってた気が……。
「じゃ、そろそろ帰るぜ。合唱コンクール頑張れよ!!」
「うん。康多のために頑張る」
「なんか違うだろ……」
康多が出てきそうなので、慌てて生徒玄関にダッシュし……。
捕まえられた。
「まさか、聞いてたのか?」
とりあえず知らないふり。
「え?何を?」
康多が右手を出す。
「嘘をついたら二倍だ」
ゴツン!!ゴツン!!
「いたっ……。ちょっ待て」
あまりの痛さに涙目になってしまう……。
ツーー……ポタッ
「あれ?」
康多が頭を叩く。
「悲しむな」
「いや……あまりの痛さになんですが?」
分かっているという風に頷く。
「大丈夫だ。高城の悩み聞いてやるから」
いや……そういうわけじゃ……、まっいいか。
そして週明け、うちの中学の合唱部が金賞をとったことが新聞に出た。
シリーズで初めて、恋が叶いました!!
そろそろハッピーエンドに向けて舵をきります。
このぐちゃぐちゃした関係がどうなるのか、お楽しみに!!