マトウの狩りを知るがいい《完結》   作:照喜名 是空

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第八話「優雅と野蛮」

俺は遠坂邸の近くで使い魔に持たせたカメラからの実況をアサコたちと見ていた。

さーて、王様達の聖杯問答はどうなったかな。ふーん・・・・・・各人そういう思いで来てたのね。

 

おいおいイスカンダル、騎士王あんまりいじめてやんな。そいつの部下ひでえから。全員がパンクロッカーみてえな奴らだぞ。

実の姉は近親相姦趣味でそいつの貞操ねらってくるし、子供はその姉との子だから姉にひでえ教育受けて反乱。

一番強い奴がそいつの嫁さん寝取っておまけに反乱してくるし。その上四方は蛮族だらけで土地はろくな飯が食えない。

そのへん分かって言ってやれ。

 

まあ、だからってタイムスリップしてやり直ししてもその子じゃ無理っぽいけどな。

いやだって、血に酔ってもいかれてもないじゃん。蛮族相手でそれで勝てるわけないじゃん。

戦争ナメてんの?これだから田舎の貴族は嫌いなんだ!戦場慣れしてないから略奪能力が育ってない!

 

なに英雄王そんな動機だったの?やっぱ啓蒙高えー。

えっ、騎士王かばったら英雄王と口論?英雄王が騎士王に告白して振られた?面白い奴だな!

なに今度は無理矢理迫ろうとしてる?英雄王レイパーかよがっかりだわ。

即席タッグで騎士王と征服王VS英雄王?おうがんばれ。こっちも行って良い?

 

よっしゃ!供給源から絶ってやる!がんばろうな!こっち早く終わったら加勢に行くわ!

アサコ、俺と時臣の邪魔が入らないように頼む。あとあいつに加勢があったら君らも入ってくれ。OK?よし!

 

「とーきおーみくーん!あーそびーましょー!!」

 

俺はドアを蹴破って入った。けっ、優雅な家だなあ!こっちか!

 

「どこだコラァ!今殴りに行くから歯ぁくいしばれ!」

 

おっ、廊下の曲がり角から出てきた。こんな時も気取ってやがんのな。

 

「やれやれ・・・・・・間桐の家はとんだチンピラに乗っ取られたものだ。やはり許せんな・・・・・・

誅を下、待て!話を聞け!」

 

俺は時臣の詠唱も話も終わる前に素手で貯め攻撃を行った。顔にヒット!ヒュー!3mはぶっとんでいったぜ!

 

「長年この瞬間をずっと待ってたぜ。いやあすかっとしたな!

さあ来いよ時臣!表出るか?俺はこの場でやっても一向にかまわねえぞ!お前の家燃えるだろうけどな!」

「貴様、魔術を何だと思って・・・・・・!」

 

顔芸する時臣に向かって俺は極力真顔で今までのすべての呪詛を籠めて冷たく言ってやる。

 

「くだらない学術ごっこ、カルト狂信者のイカれた儀式。あと世間的には犯罪で大迷惑。何か一つでも間違ってるか?」

「きさ、貴様・・・・・・!もういい表に出ろ!貴様を一つ一つ否定して罰を下さんと気が済まん!」

「おお気が合うな俺も同じ意見だわ」

 

俺たちは窓をぶち破って庭に出た。結構広いな。これならいけるか。来い、爆発金槌。

 

「まず言っとくな?お前しらなかっただろうけどさ。間桐のジジイの魔術って基本女をレイプして生け贄にして使うもんなのね。

それもグロイ虫を使い魔にしてさ。桜ちゃんの処女、ジジイが虫でやぶったんだぜ?そこんところどう思うよ?」

 

ははっ、やっぱ知らなかったのな。動揺してる動揺してる。

 

「そ、それは・・・・・・知らなかった、そうだ知らなかった。重大な違反行為だ・・・・・・

だがそれでも、桜が魔術師になれるなら・・・・・・そうだ!魔術の修行とは厳しいものなのだ!

途中で投げ出した貴様に何が分かる!」

 

ああ、そういう事言っちゃうのね。まあ魔術師の価値観ってそんなもんか。

そんなもん鼻で笑ってやるよ。

 

「はいダウト。それも間違いだ。女レイプして虫の餌にしてるクズにそこんところ期待する?

ただの孕み袋にしたかったらしいよ。もちろん魔術なんて教えてない。

ああ、虚数属性なんだって?あれジジイがつぶしてただの水属性になってたよ」

 

おっ、いい顔すんじゃない。気取った顔よりずっとましだぜ?

 

「まあ、最終的には俺の甥っ子のシンジ君の嫁って感じにして?

結局は自分がレイプして子供産ませて?飽きたら食うつもりだったんだってさ。

それでもあんたらにとっては魔術出来るだけで幸せなんだろうな。いやーすげえな魔術師。俺にはぜんぜん理解できないし、したくもないわ」

 

震えてる震えてる。いいぜ、まだ反論あんだろ?言ってみろよ。

 

「・・・・・・ならば貴様は何なんだ!魔道から逃げ出して!おめおめ手遅れになってから戻ってきて!

今更ゾウケンを殺して英雄気取りか!血に責任も持たず逃げ出した軟弱者が!

あまつさえ何だ?自らの家の魔術の祖を殺しておいてそのことに負い目を感じるどころか誇りすらする卑劣な恥知らずめ!

貴様など、魔道の恥だろう!」

 

わはは、とうとう話題そらしやがった。いいねえ、すっとするよ。

 

「ははは、俺だってお前のこと大して知らねえよ。

そりゃいろいろお前にも苦労があったんだろうよ。

魔道のためにいろいろ努力して苦しんで、捨てらんないもの捨てて。

もう後戻りなんてできないくらいにはやらかしちゃったんだろう?」

 

時臣はなんか金ぴかな杖を取り出してこっちに向ける。お前、そういう所あの金ぴかとセンス似てるのな。

 

「そうだ!貴様に分かるか!凡俗、二流の魔術師としてさげすまれる苦労を!5才の我が子に、追いつけないと知った絶望を!

己が手で根源への道などないと、聖杯戦争に賭けるしか無いと知った時の苦渋を!」

 

俺はため息ついて大げさに肩をすくめて言ってやる。

 

「じゃあ言うけどさ。お前だって俺のこと知らねえだろ?

まあ、あのジジイの家って事で察しろよ。

ああ、母さんはジジイに食われたし、彼女だってジジイが食うと思ったらこの年までできなかったよ。あ、ちなみにその時諦めた人な?葵さんなんだわ。

安心しろって。お前みたいなカルト狂信者野郎の奧さんになったって事でもうドン引きして醒めたから」

 

俺は爆発金槌に灯をともしてゆっくり構える。

 

「そもそもさ。何?神秘的なもん追ってたら偉いの?なにそれ。おめーらいい年して夢みたいなこと言ってばっかりじゃん。

挙げ句殺人だの生け贄だの。一般市民に迷惑かけて開き直って光栄と思えとか言い出すじゃん。

お前らクズだよ。間違いなく一般的にはクズの狂人だよ。大迷惑だ」

 

時臣が詠唱を始める。まあ待ってやるよ。全部へこますって決めてるからな。

 

「あとな。俺が魔道から逃げ出したって言ったよね。まあそうだよ。でも逃げた先に楽園なんてなかったんだ。

どこに行っても魔術師と幻想種だらけだったよ。だから俺は狩人になったんだ。

魔術だってやらざるを得なくなった。全部、血と炎に彩られた奴だ。恥知らず?虫畜生の血を継いでる事こそ恥だわ」

「黙れェェェ!」

 

時臣が杖から炎を出した。ふーん、速さと範囲はそこそこだけど、直線的だし殺意も密度も薄い。

 

「まあ、お前が魔術の出来でしか物事わかんない頭ぱっぱらぱーなのは分かったよ。

だからお前にもわかりやすく教えてやる」

 

俺は爆発金槌を振り回して奴の炎をかき消した。

 

「マトウの狩りを知るがいい」

「馬鹿な・・・・・・貴様のその下品な炎が私より強い神秘があると!?そんな馬鹿な!」

「俺の炎はトゥメル仕込みだ。さぞやその身に熱いだろうさ」

 

まあこれ上位者を沈めてきたもんだし、神秘をお手軽に高める精霊の抜け殻とか血晶をぶち込みまくってるしな。

 

まず先触れとか呼びかけとか一目でヤバイとわかる秘儀や魔術を見せびらかしてやった。

小アメンを出した時の顔と言ったら!目が点になってたよ。

 

その上で俺は奴の技を一つ一つ捌いていった。

炎を出せばより大きな炎で。

格闘仕掛けてきたらそれこそ俺の専門分野なので全部払ってねちねちぶん殴ってやった。

礼装も一つ一つあえて使わせて全部切り抜けてやった。魔力も体力も尽きるまでつきあってやった。

 

「馬鹿な・・・こんな馬鹿な事があるはずがない・・・・・・貴様のようなちゃらんぽらんな男が、私よりすべての技で上回っているなどと・・・・・・!」

「事実だろ?で、なんだっけ?魔術ができたら偉いんだろお前の価値観。どうなのよ」

 

目を背けて黙りやがった。俺は時臣の顔面を蹴って奴が倒れた後前髪をつかんで引きずり起こして、顔を間近に近づけて言う。

 

「その俺が言ってやる。

いいか、本当に強い、尊いもんはな、日々を当たり前に生きることだ。退屈と戦うことだ。まともに働いて、学んで、家庭を持つことだ!

暴力とか魔道だのに手を出さず、まっとうに生きてる奴が一番えらいんだよ!」

 

間近で目と目が合う。お互い血走ってにらみ合っている。

 

「つまりはお前がゴミと言った凡俗な幸せだ。それが最強だ。当たり前だろバーカ!」

 

「なぜだ・・・なぜ・・・・・・」

 

ぶつぶつ虚ろな目でつぶやいてるが知ったことか。俺は俺の言いたい事を言うぞ。

 

「現実に嫌気さしたからって摩訶不思議な力に甘えんな。暴力に逃げんな。

どっちも抗うため、大切なもんを守るための力だろうが。

間違っても俺らみたいに自分は強くてすごいなんて自慢する飾りじゃねえんだよボケッ!」

 

あーすっきりした。言うだけ言ったから俺は時臣に頭突きをして放してやる。

 

「だから俺はお前を殺さない。凜ちゃんにだって親は必要だ。

桜ちゃんだって、まあひょっとしたら悲しむかもしれない。

お前にはぜんぜん価値なんてわかんないだろうけどな。家族をまもってまっとうに暮らせ」

 

聞こえたかわかんないけど、死んじゃいないだろう。俺はちょっとだけ声を張り上げる。

ああ、令呪?奪ったよ。

 

「おーい終わったよー!こいつまだ生きてるから救急車なりなんなり呼んであげてー!」

 

葵さんがそーっと顔を出す。

 

「よっ、久しぶり。まあそういうことだから。ああこいつまだ死んでないし、嫌いじゃなかったら助けてやったら?」

「あなたは・・・・・・これで満足なの雁夜君!?これで聖杯も桜も、あなたのものにしてそれで満足なの!?」

「いらないよ聖杯なんて。どうせこいつらが作ったもんだもの。多分使おうとしたらエンストするよあれ?」

「あなたには何も分からないんでしょうね・・・・・・魔道の家に生まれる責任も、苦労も、素晴らしさも。きっと、誰かを好きになることも、分からないのでしょうね」

 

はっはっは。何を言うと思ったらそれか。残念だなそれも実はもう大丈夫だ!

カモンハサン!

 

「あっ、そういうこと言っちゃう?じゃあ紹介するわ。これ俺の彼女のアサコさんね」

「ご紹介にあずかりましたカリヤ様の情婦、アサコです。どうぞよしなに・・・・・・といっても二度と会うことはないでしょうが」

 

アサコさんを腰から抱き寄せてキスしてまあ、イチャイチャしてみせる。

 

「汚らわしい・・・・・・出て行ってください!」

「カリヤ様、いいでしょうか?ご安心を、殺しはしません」

 

アサコさんが俺からそっと離れてめっちゃ厳しい顔で葵さんに近づいていく。

 

「ああ、頼むわ。できるだけ優しくな?」

「努力します」

 

うっわ葵さんすごい声。痛そうだなー関節技。ん?なんか囁いてる?

 

「ひ、ひいい・・・・・・許して、殺さないで・・・・・・!」

「だから言ってんじゃん。その価値もないし、マトモに生きろよって。じゃーね。せいぜい楽しくやってくれ」

 

俺はアサコさんと手をつないで優雅な家を出る。

あー、すっきりしたー。ほんと戻ってきてよかったな冬木市!

 

「アサコさんあの人に何言ったの?」

「ふふふ、秘密でございます」

 

こえー、優しいし笑顔だけどこえー。

でも、もしかしたら俺のために怒ってくれたのかもな。そうだといいな・・・・・・

さあ、イスカンダルの方に応援に行くか!

 

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