さーて楽しいガチャタイムだ。魔法陣は赤いのならだいたいなんでもいいんだろ?
これの模様さえきっちりしてれば呪文はだいたいでも大丈夫なはずだ。
とりあえず普通の血の酒で書いたけど。場所は港で借りた倉庫だ。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が学祖ビルゲンワース。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
おっ、魔力がうごめいてきた。いい感じだ。
「
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
よし、ここまでいけたらまあちょいとくらいアレンジしても大丈夫だな。
俺の注文タイムだ!
「――――告げる。
汝の身は我が「隣」に、我が命運は汝の剣に。汝が命運は我が槌に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
要するにあれだ。上下とか気にしないで一緒に戦ってくれるタイプ募集ってやつだ。
面倒だからなそういうの。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
我は現世総ての獣を狩る者、
我は現世総ての虫を潰す者。
我は血によって人となり、人を超え、そして人を失うもの。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
まあ、俺は狩人のヤーナム野郎だよ、ということを付け加えた。
穢れた獣、気色悪いナメクジ、頭のイカれた魔術師共、そういうのほんとうんざりなんだよ!だからそういうのは来るな。
そこの所を理解したうえで来てくれ!
魔力が収束していく。ほほう、苛烈で清廉な気迫だ。きっと熱血野郎だな。
「サーヴァント、バーサーカー。真名ベオウルフ。じゃあ、殴りに行こうぜマスター!」
「おう、行こう行こう。でもその前に打ち合わせしとこうな?あ、俺は間桐雁夜ね」
出てきたのはガングロ金髪マッチョ野郎だった。腕にタトゥーまでしてるよ。
なんかホストみたいだな。
だがいいノリだ。気に入った。話が早いやつはいいな!それに有名どころじゃないか。
「マスターはノリがいい奴みたいだな。この名乗りで引かなかったのはあんたが初めてだ」
「だろうね。まあ、座れよ。酒いる?おつまみは出してるから適当につまんでくれ」
仮の拠点として一応はこの倉庫は手入れしてある。
テーブルと椅子、ベッドといった家具やカセットコンロにテレビラジオ冷蔵庫といった最低限の家としての機能はある。
食べ物や医療品なんかは山と買いだめしてるしな。
「おう、気が利くな!マスターがそんな感じなら俺も適当に呑らせてもらうぜ」
ベオウルフは俺が召喚に使った血の酒の残りを瓶ごとつかむとラッパ飲みする。
「くあーっ効くな!なかなかいい酒だ!文明がすすんで軟弱になったとか聞いたが酒に関してはそうでもないようだな!マスター肉はあるか!」
「干し肉ならあるぞビーフジャーキーってやつだ。ほれ」
俺もビールを開けて飲みつつテーブルの上に用意しておいたジャーキーを袋ごと投げる。
裂きイカあったかな……おっ、あったあった。うめえ。
音楽も適当にかけとくか。カセットカセット。「洋楽てきとう」これでいいか。
よし、カントリーミュージックみたいだな。でもなんだっけこれ。まあいいか。
「ほう、それが「らじかせ」ってやつか。なるほど面白いものができたもんだな」
「知ってんの?座ってやつから現代を見れるのかい」
「いや、聖杯に召喚されるときに大雑把な知識が手に入る。おっ、盛り上がってきたな曲が!」
何かと思ったらサンライズかよ!ハンセンの入場曲じゃねえか!
戦争の打ち合わせに使う曲じゃねえな!……まあいいか。
「よし、だいたい落ち着いたみたいだから、あれだ。打ち合わせしよう。とりあえずお互いの目的とか自己紹介とかそのへんからいこう」
「ああ。マスターはなんか願いとかあるのか?俺はないぜ。喧嘩祭りみたいなもんなんだろ?だから殴り合いができればそれでいい」
なるほどありがたいな。ほんと話が早い。でもこれを素直に楽しむってちょっと危機感足りてないんじゃないか……?
いやでも人のことはいえないしなあ。まあ、獣狩りの夜を楽しむ、くらいの感覚と覚悟でいてくれたらいいんだけど。
「あー……俺もそんなもんだ。願いはないっていうかあんな胡散臭いもん信用できないよ。
むかつく知り合いが何人か参加するからさ。この際だからぶっ殺しておこうと思ってね。
あとは俺、トレジャーハンターやってるんだけどこの際だから火事場泥棒しようと思ってさ」
ベオウルフはふーむ、と少し考えて言った。
「トレジャーハンターね……つまり略奪だな?ああ、悪いことする時は目を背けてやるさ。勿論、限度ってモンがあるがな」
「わかってるわかってる。そこまで俺も無茶苦茶する気はないさ。悪党っぽいのがいたらぶん殴ってお宝をもらってくだけだよ」
ベオウルフはもう一口酒をあおると唐突に立ち上がった。
「よし!自己紹介も目的も話したな!さぁいっちょ殴り合おうか!お互いの事を知るにはこれが一番だ!」
「よーしわかった、表出ろ。ああ、それと本番前に身内で殴り合って退場とか笑えないから、ほどほどにな?」
俺も狩り装束の上着を脱いで立ち上がった。まあいいじゃん。血に酔った奴らなんてそんなもんだ。
「安心しろって、仮にもサーヴァントなんだからよ。胸を借りるつもりで来いよ」
「はっはっはっ、まあ見て驚くがいいさ」
こうしてこの聖杯戦争は初戦がマスターとサーヴァントによるステゴロという前代未聞の幕開けとなった。
■
俺たちは夜の港、誰もいない倉庫街で向かい合った。5、6m。いい距離だ。
「さぁて、ぶん殴り合いのお時間だ。倒れるまで、ってわけにはいかねえのが面倒だな」
「……マトウの狩りを知るがいい」
俺たちはどっちともなく走り合ってお互いの顔面めがけて思い切りぶん殴り合った。
喧嘩ってのはこうでなきゃな!様式美は狩人の流儀だ。
「はっはっはっは!魔術師の癖にいい拳してるじゃねえか!」
「く、ははははは!そりゃまあ、魔術師じゃなくて狩人だからな!ほら来いよ!英雄らしいところ見せてくれ!」
「おう、行くぜ!」
いやー、こんなに爽やかな殴り合いって初めてだなー。やばいなこれは楽しいわ。
左手で強パンチ、右は溜め攻撃と内臓攻撃だけに絞ったほうがいいな。
手刀もできるっちゃできるけど、ジャブにしかならないだろう。
「オラオラオラ、どうしたどうしたァ!」
よし、ベオウルフがコンボに入ったな。回り込む感じで避けて……よし!
コンボの継ぎ目の所を狙って、こっちは力を溜めて……はいドーン!
ベオウルフのわき腹にいい感じのフックが突き刺さった。
「ちっ、マジでいいパンチもってるじゃねえか……!燃えてくるぜ」
振り回される裏拳を前転して避けて距離をとる。
いいから来い、と手招きのジェスチャーをする。ベオウルフがとったのは溜め攻撃に似た上からの大振り。
やっぱ速いな!これは食らっちまうわ。ちょっと避けて直撃を避けつつ……
蹴りも速いなくそっ!何発かいいのをもらっちまった。
今度はパンチのラッシュか!だがこれは範囲外に避けれる。
「避けんな!ぶっ飛べ!」
また溜め攻撃か!ならこれをパリィして内臓攻撃につなげよう。
「ああ、捌いてやるから来い!」
「おおお!」
俺も溜めのモーションをして誘う。いいぞ、そのコースだ!
前転して避けて……よし!避けた!ははは、しまったって顔したな!背後とったぜ!
おらぁモツ抜きだ!
「ちっ……なかなかやるな。いいのをもらっちまった」
「どうする?まだやるか?切りがいいしこのへんにしとこう。じゃないとここから先は殺し合いになる。
ってことは武器なり技なり全部使わないともったいないだろ?最後にとっておこう」
ベオウルフの腹からはだばだば血が出ている。腹筋に阻まれて内臓までは行ってないはずだ。
だけどここから先やるなら、お互いマジになりそうだしな。楽しすぎるから。
「……」
俺はじりじり距離をとって油断なく回り込みながらベオウルフを見る。
いざという時は仕掛け武器を取り出せるように。あっ、ていうか令呪ってもんがあったわ。
「しょーがねぇ……いい汗かけた。ま、楽しめたぜ。二回戦ができないのが残念だけどな。
だがその言葉覚えておけよ?」
ベオウルフは戦いの構えを解く。俺たちは大きく息を吐いた。やれやれ。たしかに楽しかったけどな!
なお、この様子を見ていた時臣は「なんて野蛮なやつらだ……正気とは思えない」とつぶやいたらしい。
ランスロット大暴れを期待していた方は申し訳ありません。
おじさんが触媒なし召喚と今までの経験による精神性の変化からこうなりました。
他の作品からのクロスも考えたんですが、それはそれで難しいな、という事もありました。
なのでFGOからベオウルフです。
できればこれにめげずについていってくださると感激です。