マトウの狩りを知るがいい《完結》   作:照喜名 是空

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ちょっと長いですがおつきあいください。9000字くらい。


第三話「英雄狩りの夜」

「傷の手当をしようか。俺もこんな楽しい戦いは初めてだったよ」

「はっはっはっ、なんだそんなになるまで鍛えて戦ってるのに、こういうのは初めてか?面白いマスターだな!」

 

聖歌の鐘を鳴らしてお互いの傷を回復させる。さてどうしようか、と考えていると近くで金属音がする。

 

「……聞こえたか?」

「ああ、俺たちのほかにもおっぱじめる奴がいるようだなマスター」

「よし見物しよう。あわよくば乱入しよう。とりあえず上着とか取ってくるわ」

「急げよマスター!」

 

俺はさっさと狩り装束に身を包んで酒を二人分もっていって合流する。

 

「ほらこれおまえの分な」

「気が利くなマスター!喉が渇いてたところだ。ここが良さそうだ、よく見えるぞ!」

「いいね、高みの見物って感じだ」

 

俺たちはコンテナの上に座って酒を飲みつつ観戦することにした。

ほーう、女騎士に槍兵か。いい感じの武器もってるね!

 

「なあマスター、聖杯戦争ってのは武器を自慢しながら戦うもんなのか?」

「いやーどうなんだろうな。でも武器自慢したい気持ちはわかるよ。俺もめっちゃ苦労して素材あつめたもん」

「いや、己の肉体こそ最高の武器だろ!?俺も能力のある武器とかもってるけどしゃらくさいぜ」

「わからないでもないけどなー……おっ、ランサーが一発いいのかましたぞ。オイオイオイ、あのセイバー脱ぎだしたぞ」

「テンションが上がったんじゃないか?戦場ではよくあることだぜ。おっ見ろマスター、騎士の名乗りだぜ」

「ディルムッドに騎士王ね。いいねー、騎士道あふれる戦いも雰囲気あって面白いな」

 

俺たちはゲラゲラ笑いながら酒を片手にのんびり観戦していた。さっきからなんか複数目線感じるな!うっとおしい。

 

「片腕を奪われたままでは不満かなセイバー?」

「戯言を・・・。この程度の手傷に気兼ねされたのではむしろ屈辱だ」

「覚悟しろセイバー。次こそは獲る!」

「それは私に獲られなかった時の話だぞ、ランサー!」

 

よしいいぞ!やれー!俺たちのテンションもマックスになる。つい立ち上がって歓声をあげてしまった。

俺たち二人ともだ。

 

「うおおおおいいぞ!やれ!ぶちかませ!」

「いい感じじゃねえか!くそっ、俺も混ぜろや!」

 

それとほぼ同時に俺たちの後ろ側からなんか鬨の声が聞こえる。

 

「アララララライ!」

 

なんか空飛ぶ戦車に乗って知らないおっさんがランサーとセイバーの間に割り込んできた。なにこのカオス。

 

「双方剣を治めよ。王の前であるぞ」

 

ふーむ味のある声のおっさんだな。体もごつい。

 

「我が名は征服王イスカンダル!!此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した」

 

よしこのタイミングだ!

 

「俺はマスターの間桐雁夜だ!狩人をやってる。で、こいつは……ほら今だって!名乗っとけよ!」

 

俺はベオウルフの脇を肘でつついて目線を送る。

 

「おう!俺はデネの王、巨人殺しのベオウルフ!バーサーカーのクラスで現界したぜ!」

 

よし決まった!イスカンダルとベオウルフ、俺の間で何かやりとげた雰囲気の目線が交わる。

誰ともなくガハハとひとしきり笑い合った。あ、なんかイスカンダルのマスターっぽい少年が頭抱えてる。

 

「何考えてやがるんだ……いやほんとあんたら何考えてやがりますか。えっ、僕か?僕がおかしいのか?」

 

ははは、少年よ人間馬鹿になるときは馬鹿になったほうが楽だよ!強く生きろ!

おお、イスカンダルにデコピンされてるよ。

 

「うむ!そちらもなかなかの益荒男ぞろいのようだな!で、話をつづけていいか?」

「あ、どうぞ」

「おう!つづけてくれや」

 

いやー、マッチョが3人いるとほんと暑苦しいな!夜だってのになんだこれ。

 

「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが、まずは問うておくことがある。

うぬら……一つ我が軍門に下り聖杯を余に譲る気はないか!

さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かちあう所存でおる」

 

俺はベオウルフを目線を交わす。よし俺が言うぞ!

 

「乗った!ただし、あんたが上とかそういうのはなしだ。

あと後で俺らと殴り合いしようぜ!」

 

ベオウルフはおおむね満足そうに俺にうなずいた。

 

「おう!せっかくの喧嘩祭りって聞いてわざわざ来たんだぜ。

戦う機会が減ったらつまんねえだろうが!」

 

イスカンダルは大きくうなずきすごくいい笑顔をする。

 

「うむ!後で存分に拳を交わし合おうではないか!

そして拳を交わし合い傷を分かち合ったならば我らは盟友となれるだろう!」

「よし、同盟成立な。あと俺らほんと聖杯いらないから。マジでいらないからあんなん。

そこは他の奴らも解っててくれよ?」

「おう!よろしくたのむぜ!いやあ、待ちきれないな!」

 

すごくすがすがしい笑顔で俺たちは自然に近づき、硬く握手をしあった。

 

「嘘だろ……これでうまくいっちゃうのか……?ええー……?そんなのありなのか!?

こいつら正気か!?」

 

イスカンダルのマスターがなんか呆然とした顔をしてるけど、まあ世の中そんなもんなんだよ少年!

 

「それでそちらのうぬらはどうする?対応は応相談だが」

 

ははは、セイバーとランサーがすげえ戸惑ってる。いやー、非常識の側に立って相手の常識ぶんなぐるの面白いな!

こりゃ魔術師のバカ共が調子に乗るのわかるわ。おっとかねて血を恐れたまえ。

 

「貴様ら、正気か……?俺が聖杯を捧げるのは今生にて誓いを交わした新たなる君主ただ一人だけ。断じて貴様ではないぞライダー!!」

 

セイバーが大きくうなずいて同意する。

 

「まったく同感だ!貴様らは聖杯戦争を祭りか何かだと思っていたのか!?不愉快極まる!

そんな戯言を並び立てるために私とランサーの勝負を邪魔立てしたならば、騎士として許しがたい侮辱だ!!」

 

なんかイスカンダルのマスターもうなずいてるけどいいの?うーん、がんばれ常識人ズ。理不尽は多いだろうけど、きっと乗り越えていけるさ。

 

「ふーむ、交渉決裂か。まあ仕方ないわな。そんなものよ」

「ライダーお前なあ!あとバーサーカー達もおかしいぞ!大体……」

 

少年がパニクってる。だいじょうぶ?鎮静剤のむ?

 

「一体何を血迷って私の聖遺物を盗み出したのかと思ってみれば

まさか君自らが聖杯戦争に参加する腹だったとはね。ウェイバー・ベルベット君」

 

なんか声が聞こえてきた。学者っぽい声だなあ。

 

「君については私が特別に課外授業を受け持ってあげようではないか。

魔術師同士が殺しあうという本当の意味。その恐怖と苦痛を余すこと無く教えてあげよう。光栄に思い給え」

 

おう教えてもらおうじゃないか。多分あんたより場数は多いぜ?

 

「おう、魔術師よ!!察するに貴様はこの坊主に成り代わって余のマスターになる腹だったらしいな。だとしたら片腹痛いのぉ。

余のマスターたるべき男は余とともに戦場を馳せる勇者でなければならぬ!!」

 

ここで俺らと肩を組むイスカンダル。はっはっは楽しくなってきたぜ。

 

「彼らのようにな!見よこのマスターなど自ら英霊と渡り合う気だ!

余のマスターにもこの場にいることはできた!

翻って貴様はどうだ?姿を晒す度胸さえ無い臆病者など役者不足も甚だしいぞ!」

 

照れるなイスカンダル!なかなかいい事いうじゃないか!

 

「おいこら!!他にもおるだろうが!!闇に紛れて覗き見しておる連中は!!」

 

あー、そういえばまだ目線感じるな。あっちと、あっちのへんか。

 

「セイバー、それにランサーよ。うぬらの真っ向切っての競い合い。

誠に見事であった!清廉な剣戟に惹かれて我らは出会ったのだ。

そしてベオウルフと雁夜。うぬらもまた真っ向から拳を交わし合っておった。

これもまた魅せられた!たまらぬ血の匂いで誘うものよ。

これほどの戦いがあって出てこないのであればそれは英雄豪傑を名乗るに値せん」

 

ふーむ、腹の底から響く声でほめられると悪い気はしないな!

 

「聖杯に招かれし英霊は今ここに集うがいい!!なおも顔見世を怖じるような臆病者は征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!!」

 

イスカンダルは腕を振り上げて宣言した。

いいね、お祭りムードあるよ。これこのまま終わらせたほうがいいんじゃない?

長引かせても魔術師の馬鹿が出張ってすげえ陰湿になるだけだしさ。

よし、ここは煽りまくって短期決戦で行こう。

 

「おおそうだ出て来いよ!特に時臣!どうせ見てんだろ!?

優雅さとか捨ててかかってこい!俺が俗物の野蛮さを教えてやるよ!

あとそこのなんだ、エルメロイ!魔術師同士の戦い?いいじゃねえか俺の専門分野だ!

時計塔の学者様に喧嘩の作法を教えてやるよ!」

 

おらベオウルフお前もなんか言え!

 

「落ち着けマスター。煽るよりも……これだ。場所はわかってるからな。より取り見取りだぜ」

 

ベオウルフはなんか逆に冷静に拳を構えて歩き出した。よしいいぞそのノリだ!

ん?やばい!なんか飛んでくる!俺たちは素早く跳んで避けた。俺たちのいたところには金ぴかな剣が刺さっている。

 

「我を差し置いて王を称する不埒者が一夜に3匹も湧くとはな、王たる我を待たずに見世物を始めようなどとするわけだ」

 

うわあ、偉そうなやつだな。だがなかなか鍛えてるようだ。なんか街灯の上に立ってるな。

 

「そこまで言うならまずは名乗りをあげたらどうだ?貴様も王たるものならばまさか己の偉名を憚りはすまい」

「問を投げるか、雑種風情が。王たるこの我に向けて。我が拝謁の栄に欲してなおこの面貌を見知らぬと申すならそんな蒙昧は活かしておく価値すら無い!!」

 

うん、啓蒙高いね……それとも思考の次元が低い頭が魔術師野郎か?よし今夜の獲物はお前だ!

首ねじ切って火あぶりにしてやる!

 

「ごちゃごちゃうるせえ!マスター、もういいだろ?!」

「ああ、もういいベオウルフ!やっちまおう!」

 

俺たちはうおーっと雄叫びを上げながら突っ込んでいく。

ベオウルフが飛んで殴りかかり俺が銃で態勢を崩す、金ぴかが避けようと地面に着地した隙に俺が内蔵攻撃をぶちかます。

堅っ!なんだこれ。この鎧ぶち抜けねえ。

 

「ほう、この腑抜けた時代にもまだ貴様のような獣がいたとはな、拝謁を許す。名乗るがいい」

 

バックステップで下がって距離を取る。

 

「間桐雁夜だ。それよりもその鎧いいな。武器も何か持ってるのか?あんたを殺してもそれ残るのか?」

 

俺は爆発金槌と短銃、精霊の抜け殻を装備して構える。

 

「ふん、物欲を隠そうともせんか。貴様、盗賊の類であろう。財を奪うためには持ち主を殺すことも厭わぬ畜生か。疾く死ぬがよい!」

「うるせえ!俺を忘れてんじゃねえぜ!」

 

ベオウルフが金ぴかに蹴りをぶちかましていく。ナイスだ!俺は爆発金槌を点火させて、振りかぶって上からドーン!

よろめいた隙にベオウルフがさらに殴る蹴るだ。よしいいぞ、再点火完了だ!隙を見て・・・・・・はい横からバーン!

あれ、なんか金ぴかがすげえ大げさに吹っ飛んだ。なんで?

ああ、殴られた威力を利用してバックステップしたのか。

 

「おのれ、おのれおのれおのれおのれ!・・・・・・よかろう、力だけは認めよう蛮族共!ならば我もそれらしいやり方でやろう」

 

おお、金ぴかが鎧を脱いだぞ。上半身裸だ。

この戦争、そういうルールなの?本気になったら上着脱ぐの?

 

「食らうが良い!」

 

うおっ、速い。動きのキレが全然違うわ。これは俺も上位者狩りくらいの気合いでいかなきゃな・・・・・・

 

「ライダー!くそっ、どうすれば・・・・・・いや、ここは加勢しなきゃ!いくぞライダ-!」

「うむ、多勢に無勢であるが好機には違いあるまい。そも、そうなったのは奴自身の言動故な。

いくぞマスター!蹂躙である!アラララライ!」

 

おお、騎兵隊の登場か!いいねありがたい!

 

「はあ・・・・・・なんだか気が抜けたが、たしかに好機だ。続きを行おう、セイバー。よろしいでしょうかマスター」

「ああ、そうだな。優雅さの欠片もない蛮族共はもう放っておけ。ここで決めろ、令呪を以て命ずるセイバーを討ち取れ!」

「御意!」

「まったく・・・・・・とんでもないマスターたちだ。だが、私のところよりは・・・・・・すまん、愚痴はやめておこう。いくぞランサー!」

 

おっ、セイバーとランサー組も始めたみたいだな!よしいい流れだ!

 

「うおおおおおおお!!」

 

それは誰の声だったか、いやこの場の全員の声だったかもしれない。

誰ともなく雄叫びをあげてぶん殴り、武器を振り回し、殺し合う。

もはや敵味方ない一体感、この場にいる全員が血に酔っていた。素晴らしいじゃないか。

 

「なに?時臣なんだと?よく聞こえんな!後にしろ!」

「よそ見してるんじゃねえぜ!」

「なにその念話時臣と?じゃあこう言ってやってくれ!こんな楽しい馬鹿騒ぎに参加しないなんて雑魚のやることだぜってな!」

「うわあああもうめちゃくちゃだぁ!」

「ははははマスター!これが戦場というものよ!守ってやる故しかとつかまっておれ!アララライ!」

 

俺たちと征服王は即席にしてはなかなかいいコンビネーションを発揮していた。

前衛はベオウルフ、後衛が俺、攪乱役がイスカンダルだ。

ベオウルフが金ぴかと殴り合って足止めし、俺が隙を見て金槌でぶん殴っては後退、

ヤバいのが来そうになったらイスカンダルが戦車で突撃して仕切り直しにする。

 

「ぬ、うううう・・・・・・おのれおのれおのれおのれぇ!」

 

じわじわと戦況は俺たちが押していた。ランサーたちも決着がつきそうだ。

おっ、戦い方変えてきたな。なんか剣を山ほど撃ってきたぞ。大技が来るのか・・・・・・?

セイバーも自分についた傷の呪いを自分で自分の肉をえぐって無理くり腕を動かせるようにしてるよ、ヤバいなあの姫騎士。

 

「セイバーそっ首もらったぞ!」

「負ける、わけには・・・・・・!」

 

そしてセイバーとアーチャー、二人の持つ剣が正体を現した。

なんだあれヤバっ。月光剣並の神秘じゃねえか。

 

「エクス・・・・・・カリバー!」

「エヌマ、エリシュ!」

 

戦場に、二つの光が放たれた。

金ぴかとセイバーの剣からなんかビームみたいなのが出てきたんだ。

とんでもない威力だったよ。

 

「あー、クソ! 悪いな、先いくわ…」

「ここまでか……マスター、どうか……」

 

ベオウルフは俺たちをかばって金ぴかを押さえ込んでくれた。

ランサーはなんか普通にビームで消し飛ばされた。

 

「ったく約束もあったってのによ・・・・・・だがまあ楽しかったぜ!また呼べよな!」

「・・・・・・だが、満足だ。ようやく騎士として尋常な戦いができた。感謝する」

 

ベオウルフとランサーが消えていく。うーん・・・・・・まあ仕方ないね!満足したんならまあいいか!

俺はベオウルフにサムズアップしていい笑顔で別れることにした。

おっ、見えたみたいだな。ははは、サムズアップ返してくれたわ。

 

「なんだと時臣さっきからやかましいぞ!

退け!?退けと!やかましい疲れておらぬわ絶好調だたわけ!

・・・・・・ぬううううう、本当に、本当に大きく出たな時臣」

 

ふーむ、たしかに切りはいいし、あの大技を初見で何発もぶっぱされたらやばいな。

っていうか時臣あんな大技使わせちゃって大丈夫?枯れ木になってない?

 

「はあ・・・・・・命拾いしたな蛮族共、次までに有象無象を間引いておけ。我と見えるのは真の英雄のみで良い」

 

金ぴかはなんかため息吐くとスゲエ疲れた顔して飛行機的なもんに乗って帰って行った。よし、これでいい。

そういえば結局あいつ名前なんていうんだろ?まあいいか。

 

「ふむ、それでどうするセイバー。余としては切りも良いしここらでお開きといこうではないか」

「・・・・・・わかりました。たしかにこちらとしても連戦は歓迎できない。申し出を受けよう」

 

セイバーも車に乗って帰って行く。そういやあの銀髪ねーちゃんは誰なんだろ。アインツベルンの人?

俺は輸血液と鎮静剤をがぶのみして回復しながらぼんやり眺めてた。あー癒やされるわー。

 

「よーし帰るかー。おつかれイスカンダル。あんたらはどうする?」

「えっ、あんたサーヴァントがやられたのにまだやる気なのか?」

「やるよ。そもそも聖杯とかどうでもよくって時臣殴りに来ただけだし。あとついでにあいつの家って宝石ため込んでるんだよね」

「ええ・・・・・・」

 

まあ引くか、引いちゃうよね。しょうがないな、もう一つの本音も言っておこう。

 

「まあそれだけじゃなくってさ。ほら魔術師がこんなんしたら一般人にすげえ被害でるじゃん?それは止めたいしね。

あと聖杯ってなんでも願いが叶うアイテムだろ?ああいうのってだいたい暴走すんだよ。だからそれも止めに来た」

 

おっ、難しい顔してたイスカンダルがうなずいてる。交渉成功か?

 

「なるほど、それでカリヤはあそこまで煽っておったのだな。一夜で勝負がつけばそれだけ被害も少なくなると。

たしかにどちらも嘘偽りではないようだな。略奪する蛮族でありながら、無辜の民を守る勇者でもある。

ふむ、カリヤよ。同盟はまだ継続で良いのだな?」

 

イスカンダルは手を差し出してきた。俺はそれを取って固く握手する。

 

「ああ、あんたらさえ良ければね。まあまだチャンスはあるし役にも立てるんじゃないかな」

「そう卑下するな。先の言葉と腕前、どちらも確かなものだ。

うぬは間違いなくこの時代の勇者よ。友として迎えるに値する。

それにまあ、うちのマスターはこんな感じだしな!少し揉んでやってくれ!」

「オッケー、じゃあそれで行こう。それで泊まる場所ある?うちくる?」

 

ウェイバーは少し悩んで覚悟を決めたように言った。

 

「いや、こっちの拠点に来てもらう。ライダーはああ言うけど、僕はまだあなたを信用したわけじゃない」

「いいよ?荷物とってくるわ」

 

やれやれ楽しい夜だったな。ちょっと疲れちゃったよ。

 

 

結局いろいろあってウェイバーたちは俺のアジトに泊まることになった。

いやだって、暗示で一般人の家にもぐりこむってお前・・・・・・まあ、久々に俺はキレて粛々と説教したよ。

わかってる、魔術師には言っても意味ない事なんてな。でもまあイスカンダルもいるだろ?

最終的には俺のアジトにもゲームあるよ?って一言で流れが決まった。

 

倉庫街とはまた別の場所だが、似たような人通りの少ないさびれた場所だ。

そこにキャンピングトレーラー三台を連結しておいてあるんだ。便利だよ?

 

「さてと、どうしようかな・・・・・・ウェイバー君、今日か明日もうちょっとがんばれそう?」

「えっ、どういうことだ?まだ何かするのか!?」

「いや君が見返したかったケイネス先生だっけ?もう帰っちゃうんじゃないかな。殴りに行くならつきあうけど?」

「あっ、そうか。サーヴァントがいなくなったから・・・・・・いや、でも、うーん・・・・・・」

 

殴りたいけど、疲れすぎてる感じだな。あるいは、負けたやつに鞭打つまねはしたくないってところか。

・・・・・・やっぱ君わりとまともだわ。こんな業界から足を洗ってまともに生きたら?と思うけどまあいいか言わないでおこう。

 

「あー、なんか疲れてるみたいだし無理しなくてもいいよ。多分さっき負けてそれで今日すぐに帰るって事もないだろうしね」

 

わあ、ウェイバー君すげえ顔してるよ。まあこの年頃はおっさんに説教されたら反発するわな。

 

「つ、疲れてない!ぜんぜん元気だ!」

 

おっ、なんか言ってくれるのかイスカンダル。

 

「まあそう焦るな小僧。飛行機というやつは今夜は出発せんのだろう?

それに拠点を引き払うにはいろいろと手間がかかるはずだ。今夜は疲れを癒やした方がよかろう」

 

言い方やさしいなあ。できた人だ・・・・・・伝承だとこの人酒癖すげえ悪いんじゃなかったっけ?

まあ、世界征服してたらいらつきもするからな。今とは状況が違うんだろう。

 

「ライダーまで・・・・・・うぐぐ」

「なあに、明日の朝一番で突撃に行けば良い!それまで体を休めるのも重要な役割よ!カリヤもつきあってくれるな?」

「ああ、魔術師の工房は面白いからね。いやー腕が鳴るなダンジョン攻略とか」

 

ウェイバーは肩を落としてため息をついてしまった。

 

「なんであんたの方がライダーに信用されてるんだよ・・・・・・一体何があったらそんな風になるんだよ・・・・・・」

「おっそれは聞きたいのう!実力は見たが相当な場数を踏んでおる。それなりに武勇伝もあるのではないか?」

 

うーん、俺の武勇伝ね・・・・・・まあ、いろいろあるけどさ。でもだいたいろくでもない話ばっかりなんだよな。

普通に話してたら気が滅入りそうだ。うーむ、そうだ。

 

「ああいいよ。ただえげつない話ばっかりだからゲームしながら話そう。大戦略、いったん中断してくれるか?おすすめがあるんだよ」

「ふむ、大戦略の続きが気になるが・・・・・・まあいい、カリヤのおすすめとやらをしながら聞こうではないか。で、ゲームは?」

「アーマードコアっていうんだけど対戦要素もあってね・・・・・・あ、説明書読んでくれる?」

「うむ、ほほう。ロボットを改造して戦うのか、ふむこれは実に男らしくて良いな」

「わかる?さーて何から話したもんかなー」

 

俺はぽつぽつと話し始めた。クソジジイのこと、時臣や葵さんのこと。それから羽生蛇村のこと、ヤーナムのこと、サイレントヒルのこと・・・・・・

 

「で、狩人になった俺は過去の清算のためにクソ親父をぶっ殺しましたとさ。めでたしめでたくもなし」

 

あれ!?何このお通夜ムード!いや、アーマードコアやってれば体は闘争を求めるはずなんだけどな!

 

「おぬし・・・・・・苦労したんだのう・・・・・・」

「そんな、魔術師の世界って、そんな・・・・・・」

 

だから言ったじゃん!えげつない話だって!ウェイバー君とか啓蒙がっつり上がっちゃった顔してるし!

でもそんなもんだよー?魔術師なんて。

 

「いやまあ、そんな聞いてる方が落ち込まなくってもさ。俺は俺で今はエンジョイしてるし?大丈夫だよ。

ただまあウェイバー君には夢を壊すようで悪かったけどね。でもそんなもんだよ現場は。引き返せるうちに足を洗う事をおすすめするね」

 

ウエイバー君はうつむいた顔を上げた。おっ、いい目してるじゃん。覚悟決まった?

 

「僕は、僕は決めた。魔術師がそんななんて認めない。僕が変えてみせる!

そのためなら、僕はどこまでも戦うぞ!この、ゲームの主人公みたいに!つきあってくれるかライダー、いやイスカンダル!」

「うむ、受肉したからには世界を征する意思には変わりない。だが、征服すべきものがまた一つ増えたようだ」

 

あー・・・・・・なんか変な方向に走ってるな。でもまあいいか!楽しそうだし!

 

「おうがんばってくれ。その時は適当に顔出しに行くよ。さあ寝ようぜ!」

「うむ、明日の時計塔の魔術師を倒す戦いはその第一歩だ!備えるぞ」

「ああ!」

 

何かが盛大に変な方向に舵を切った予感がしたが、上位者が来まくってる時点で今更だろう、と俺は眠りに入りながら思った。

 

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