マトウの狩りを知るがいい《完結》   作:照喜名 是空

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第四話「深き冬木ハイアットホテル・深度3」

朝5時。うーむなんかよく寝たな!久々に狩人の夢を見た気がするよ。

ウェイバー君やイスカンダルと聖杯ダンジョン攻略してたな。

そういえばベオウルフにも会ったな。ゲールマンと戦った場所で全力で戦った気がする。

たしかその時に宝具を渡してくれて・・・・・・そうそう、こんな感じの赤黒い剣でさ。

 

「夢だけど、夢じゃなかったよ・・・・・・」

 

赤原猟犬?だっけ。敵を追跡したり血のにおいを追ったりする剣。

オートで最適な斬撃を食らわすアシスト付き。

便利だよなー。ありがとうベオウルフ。

 

「うわああああ夢じゃなかったあああ!!」

「うーむ、これがヤーナムの神秘か・・・・・・やはり世界は広いのう!」

 

隣のウェイバー君達の部屋からも声が聞こえた。

 

「おっす、おはよう。いやーなんか妙なことになってたな!

夢の中でも狩人ってやつだ。マジェスティック!」

 

パジャマ姿のウェイバーくんとTシャツ一枚のイスカンダルが布団から起きて呆然と仕掛け武器を手に取ってる。

お、ウェイバー君は仕込み杖か。獣狩りの斧渡したけど最終的にそれになったんだよな。

イスカンダルは獣肉絶ちか。うむ似合う似合う。

 

「こ、これは一体どういうことなんだよ!こんなのありうるのか!?」

「落ち着こう。肉体はこっちで寝てたはずだから体は疲れてないと思うよ。

まあ精神とかはヤバいかもだけど。どういうことも何も、狩人ってこういうものよ」

 

イスカンダルは室内でぶんぶん獣肉絶ちを振り回してる。変形はさせないでくれよ。

 

「うむ、確かに疲れは残っておらん。その上レベルアップ?だったか。強くなった分はそのままだ。すごいなヤーナムの聖杯とは!」

「でしょ?便利だよね。だんだんなんのためにダンジョン潜ってるのかわかんなくなるけど。

冬木のはこういうのできないみたいだから残念だよね」

 

ウェイバー君は鎮静剤飲んでからため息ついて、顔を上げたら狩人になってた。

 

「僕は狩人になってしまったのか?ひょっとして、上位者ってやつに見つかって?」

「多分ね。ほらアメンドーズって基本、人間を観察してるし、気まぐれに悪夢に投げ込むからさ。

俺の話を聞いて変な風に縁とかパスがつながっちゃってこうなったんじゃないかな?

いやー若干申し訳ない」

 

ふーむ、としばらく考えるウェイバー君。おお、なんか冷静だ。大分たくましくなったねえ。

 

「いや、あんたを責めても仕方ない。獣になるリスクはあるけど、今現在だけ考えれば悪いことはないんだ。

大幅に強くなったのは事実だし、あっちで手に入れた礼装も取り出せる。

・・・・・・いこう。ケイネス先生に会うんだ。なんだか、遠い夢のようだけど、僕の原点でもあるから」

 

イスカンダルも獣肉絶ちをしまって大きくうなずいた。

 

「うむ、成長したなウェイバー・ベルベット。もう小僧とは呼べん。余と共に轡を並べる友である!いや、マスターと呼ばねばならんな」

「いや、違う。貴方こそ僕の王だ。あの夢が本当にあった事なら・・・・・・いやそれもどうでもいい。

また誓おう。僕はあなたに仕える!あなたと同じ夢を見させてくれ!」

 

ウェイバーは狩人のスキルで早着替えをして拝謁のポーズをとってひざまずく。

墓暴き装束かー、学徒の方が似合いそうなのにな。

イスカンダルも英霊的なスキルで正装に着替えて王の返礼をする。

おっ、なんか取り出して渡したぞ。

いつも装備してるキュプリオトの短剣の一般兵モデル?スパタってやつ?

 

「うむ、よかろう。ウェイバー・ベルベット、貴様を我が臣として認める!

夢を示すは王たる余の勤め。そして王の示した夢を後世に語り継ぐのが臣たる貴様の勤めである!

故に生き延びよウェイバー。生きて見届け、語り継ぐのだ」

「御心のままに・・・・・・!」

 

うーむ、思わず座って見入っちゃったよ。すごいな英雄のカリスマって。

っていうか若いっていいねえ。青春だよ・・・・・・え、おじさん?おじさんはほら、もういろんなものに幻滅してるからさ。

 

「ん、ごほん」

「おお、カリヤ。貴様を忘れていたわけではないのだ。

トゥメルで貴様の本当の狩りを見たぞ!

素晴らしいな。余の臣下に・・・・・・ならんわな、狩人とはそういうものだ。

昨日のゲームであったレイブンだったか?貴様はああいうものなのだろう。

鴉は自由に空を飛んでこそだ、籠の中に入れるものではないのだろう」

 

まー狩人もレイブンもそういう生き方できるのは強いやつだけだけどね。

あいつらだいたい組織人だし。

でも、それは一つの理想だ。俺に残ったごくわずかな理想の欠片なんだろう。

いかんな俺もなんだかセンチになってるよ。

 

「ああまあ、そうだよ。俺はそういう奴なんだ。でも今は仲間には違いないさ。

生きて帰れたら友達にだってなれるだろう。ま、そういうわけで飯を食おう!食ったら戦争だ!」

「おう!」

「ああ・・・・・・!」

 

俺たちは簡単な朝飯を食って、冬木ハイアットホテルに向かった。

 

朝の6時、冬木に馬鹿共が戦車でやってくる。

 

 

ダンジョン攻略は一般人が寝静まっている早朝に済ませなければならない。

俺たちはケイネスが泊まっているフロアの一個上から階段を使って攻略を始めた。

 

「また貴様らか!今何時だと思っているのかね!?敗者に鞭打ちに来るとはいい度胸だ。

これは誅伐である!楽に死ねると思うなよ・・・・・・!」

 

ダンジョンに踏み入った時にケイネスの声が聞こえた。

うわーめっちゃ怒ってる。まあそりゃそうか。

 

「いや、消化不良だろあんたも?こんないい工房用意したのにさ。

せっかくの馬鹿祭りなんだ。あんたも参加していけよ。案外すっきりするぞ」

 

あ、なんか笑ってる。啓蒙上がった?上がっちゃった?

 

「くくく・・・・・・君は間桐の魔術師だったか。いいだろう!存分に楽しんでいくがいい!格の違いという奴を見せてやろう」

 

そうして朝っぱらからダンジョン攻略が始まった。

いやーものすごく大変だったよ。陰湿な罠が沢山あったしさ。

でもまあ、深度5のダンジョンを制覇した俺たちを殺しきることはできなかった。

あとなんか爆薬が沢山しかけてあったからそれも使わせてもらったしな。補給アイテムがあるなんて親切なダンジョンだ。

 

モンスターをぶったおし、罠をかいくぐり、ギミックを解き明かし、時には戦車で蹂躙しながら。

俺たちはとうとうケイネスの元にたどり着いた。

あれ?なんか赤髪のねーちゃんがいるけどなんで?へー婚約者?そうなのかー、いいとこ見せたいの?ふーん・・・・・・

 

「なんという・・・・・・なんという者達だ。さすがは英霊、そしてこんな島国にも貴様のような達人がいるとはな・・・・・・

だがウェイバー、貴様は一体何をした?何故そこまで急に強くなった・・・・・・!?」

 

墓暴き装束に仕込み杖、スパタ装備のウェイバーはすっかり鋭くなった目つきでまっすぐにケイネスを見る。

 

「反則かもしれないけど、僕は地獄を見てきました、魔道の果てといえるものを。もう、以前の僕じゃないんだ。

彼らに守られ、鍛えられて僕はこうなった。さあ、決着をつけましょう、先生」

「よかろう。君もそれなりの経験を積んだようだが、付け焼き刃でどうにもならない才能の壁という奴を教えてやる」

 

そうして戦いが始まった。俺とイスカンダルは手出しをしない。これはウェイバーの戦いだからだ。

水銀のスライムをメインに様々な礼装を使って戦うケイネスはそれはもう強かった。

だがあの地獄をくぐり抜けたウェイバーはもっとやばかった。

 

「くっ、私がなぜ、なぜだ!」

 

ウェイバー君、ローコストな技がすごく得意なんだよね。

誰にでも使いやすくてその上、出が早くて無駄が無いやつ。

そういうのをいっぱい開発してたから技の引き出しで負けてない。

あと戦いのセンスはあんまりないけど、生存能力に長けてる。

見た目からは分からないくらいタフで素早い。

回避が上手いのはいい狩人に必要なことの一つだ。

 

「馬鹿な、この私が負けるというか・・・・・・」

「チェックメイトです、先生」

 

そして、しばらくして決着はついた。ウェイバーがうずくまるケイネスの鼻先に杖を突きつけている。

 

「認めん、認められるか・・・・・・!」

 

おっ、そろそろ動くかな。俺はイスカンダルにいくつか耳打ちして作戦を伝えた。イスカンダルは念話でウェイバーに伝えるだろう。

 

「おっと、決着はついたのだ。それ以上ごねるというならば我々が相手となろう」

 

魔術を使おうとしたケイネスの腕をイスカンダルがねじり上げる。ひでえ悲鳴だ。

 

「まあそういうことだね。なんだっけ?楽に死ねると思うな?とか言ってたよね。

それだけの事をする気でいたんだろ?じゃあ自分がそうされても文句は言えないよな?」

 

ケイネスの礼装を奪って放り出し、俺とイスカンダルは部屋にある礼装を片っ端から奪っていく。

戦車に乗せたり狩人的スキルで収納したり。

 

「な、何をする!」

「何ってお前、負けたのだろう?ならば待っていることは一つだ。略奪させてもらう。

ああ、別に刃向かってもいいぞ?拾った命が惜しくないならな」

「いやー悪いねはっはっは。さすが時計塔、いいもの使ってるなあ」

 

いろいろ略奪しながら俺はいくつかのアイテムを置いていく。よしこんなもんだろう。

 

「む?女か。まあ戦場のならいだな。こいつも持って行くぞ」

「きゃあ!ケイネス!なんとかしてよ!」

 

ケイネスの婚約者って女の腕をイスカンダルがつかむ。

俺も自然に近づいていくつかの魔術とかそういうのをかけておく。

 

「ほー、いい血筋みたいだね。人買いに売ったらいい値がつくぞ!

まあ、あいつら最終的に生け贄か苗床にしちゃうんだろうけど」

 

さーっとケイネスの顔が青ざめていく。

よし、目線が合ったな、ウェイバーが教えてくれてよかったよ。催眠術のたぐい。

 

「やめろ!やめてくれ!物はいくらもっていってもいい!だが彼女だけは!」

「はっはっは。その人買いから奴隷を買ってるのは君たち魔術師だぜ?

あんただってその片棒担いだことくらいあるだろ。

自分の番が回ってきたらこれか。情けないなあ!根性見せてみろよ!」

 

すがりつくケイネスを俺はめっちゃ手加減して蹴っておく。

 

「くそっ・・・・・・彼女を返せえええ!」

 

ケイネスが素手で殴りかかってくる。俺は適当に避けたりボコる。

この後のことがあるので顔はできるだけやめておくが、あっというまに血まみれ痣まみれになって倒れるケイネス。それでもケイネスはあきらめず俺たちにかかってくる。

 

「返せ!返してくれ!一目惚れだったんだ!本当に愛してるんだ!

初めて会った時からずっと好きで!でも君はまったく応えてくれなくて!

だから、私は、君にいいところを見せたくて・・・・・・!なんで、こんな事に・・・・・・

すまない、ソラウ・・・・・・!う、ううう・・・・・・」

「ほー、そんなに大事な女だったのか?」

 

イスカンダルがわざとらしく顎髭を撫でながら尋ねる。続けて俺もわざとらしく言う。

 

「ならどうすればいいか分かるかい?人一人。その価値を埋めるにはもう一つしか無いんじゃないかい?」

 

いやーこういう演技も悪くないもんだね!

ケイネスは少し困惑していたがやがてはっとして俺たちを見た。

 

「き、君たちの目的は金か!?なら私を奴隷にすればいい!

ソラウは、彼女だけは助けてやってくれ!

私だって金持ちなんだ。ソラウを浚うより私の財産を奪った方が得だ!」

 

おっ、ソラウさんがなんか泣いてるよ?よしあと一押しだな。

 

「どうしようかなー?そうだ本人に聞こうぜ!どうなのソラウさん?」

 

俺とイスカンダルは目配せしあってソラウを床に下ろす。

 

「やめて!やめてケイネス・・・・・・!私が馬鹿だったわ。所詮政略結婚だと思って・・・・・・

恋をしてみたかったからランサーの魔術にかかって!でも、結局愛される事はなくて。

でも、本当に私を愛してくれる人はここにいたのに・・・・・・!

最後に抱きしめてケイネス。その思い出だけで私は生きていける・・・・・・!」

「ソラウ!ああ私たちはなんという愚か者だったのだ・・・・・・ああ・・・・・・」

 

よしOKだ!俺たちは目配せしあってそっと戦車を発進させていく。

おっと、こいつを置いておこう。まあちょっとしたメモだよ。

内容はこんな感じ。

 

「『領収書』

 

商品名:真実の愛

代金:冬木にもってきた礼装全部

 

追記:返品には応じません。なお、後で報復に来た場合は今度こそあなたの全部を持って行きますのでご留意ください。

 

間桐雁夜」

 

イスカンダルもなんか書いてるな。何々?おっ、ウェイバーも書き足してる。

 

「『辞令』

 

もうなんか二人とも余の奴隷でいいな?ならば王として命ずる。

人としてまっとうに幸せになれ。民草を踏みにじるならば貴様らも踏みにじられると知れ。

別命あるまで祖国に帰っておとなしくしていろ!せいぜい幸せにな!

 

貴様らの王イスカンダル

 

今までお世話になりました。こんな狼藉を働いてすいません。

僕はかつてあなたに認められたかった。でも、もう僕は大丈夫です。

どうかお幸せに。

 

およびその臣下のウェイバー・ベルベット」

 

俺たちは窓を開けて戦車を呼んで夜明けの空を征く。

なんだかさわやかな気分だ。

誰にともなく笑い出す。俺たちはしばらく馬鹿笑いした後、肩をたたき合ってねぎらう。

 

「いやー、面白かったなあ!俺だってほら、たまにはいいこともするんだよ?」

「はっはっは。あの策を聞いたときはまさかと思ったがな。存外うまくいくものよ。

うむ、善行をしたら気分が良いな!」

「なんか勝負に勝って試合に負けた気分だ・・・・・・でも、なんだかすっきりした」

 

俺たちはアジトに帰って昼飯を食った後、爆睡した。

 

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