東方忠助の奇妙なヒーローアカデミア   作:寅猛

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 急いで書いたので、誤字脱字が多かったり、少し話の入りかた雑だったりしますがご勘弁を! 
 なかなか書く時間が取れませぬもので。
 後、あとがきで、少しばかり報告があるので、読んでいただけると幸いです。


USJに行こう! その①

 もうすっかり慣れてしまった通学路を歩く、一人の男がいた。

 名前は東方忠助、不良然とした外見に似合わず、心優しい少年であるのだがーー。

 今日に限って、その顔はひどく不機嫌そうだった。

 その背後から、一人の少女が歩み寄る。

 

「おはようございます、ジョースケ……ジョースケ?」

「……ん? よお汐華じゃねーか」

「どうかしたんですか? なんというか……覇気がありませんけど」

「見てわかんねーのかよ〜、これだよ、これ!」

 

 忠助は、そう言って両手を広げて汐華の前に立ちふさがった。

 汐華はしばらくの間、忠助が何を言いたいのかを考えていたが、結局首を傾げて見えたままを言った。

 

「その、すみません、雄英の制服がどうかしましたか?」

「わかってんじゃねーか! それに決まってんだろーがそれによ〜!」

 

 いつもの学ランではなく、雄英の制服に身を包んだ忠助は不満げに歯噛みする。

 

「そりゃ、雄英に入学決めた時点でよ〜、わかってたことではあるんだが、こいつぁ、マジにアイデンティティ崩壊の危機ってやつだよなァー」

「はぁ……そうですか」

「そうですかじゃねーぜ? だいたいよ〜、人ごとみてーな顔してっけど、おめーだって同じだろーが」

 

 そう言って忠助が視線を送る先には、同じく改造した学ランではなく、雄英の制服に身を包んだ汐華春乃が不思議そうな顔をして歩いている。

 

「僕は、君と違って服に対してのこだわりが強いわけではないですからね」

「あんだけ改造してるくせに、淡白なやつだなおめーはよ〜」

「気にしても無駄ですから、あとどうせヒーロー科の授業で着るじゃないですか」

「それは、そーなんだが、そーじゃねーんだよなァー」

 

 ふと、忠助は何かを思い出したように笑みを浮かべた。

 爽やかな笑みではない。

 悪戯小僧の笑みだ。

 忠助は、その顔のまま汐華に声をかけた。

 

「ま、おめーからすると、ダチと同じ服着れるってのも悪くねーってか?」

 

 汐華の足が一瞬止まった。

 珍しく動揺している彼女の姿に、忠助はニヤニヤと頰を緩める。

 

 先日の一件以降、汐華のクラスでの態度は軟化した。

 まあ今でも彼女が自分から話しかけるのは八百万と忠助くらいだが、大事なのはコミュニケーションを取る気があると周りに伝わることだ。

 あとは我らがA組の芦戸や葉隠(コミュニケーションおばけ)やら、蛙吹や切島(気の利く面々)が、なんとかしてくれている。

 結果として、汐華はクラスメイトと普通に会話をする仲にまでなっていた。

 

「いやいや、クールぶってたおめーが素直になってくれてよ〜、うれしーぜ、忠助くんとしてはよ〜〜」

「……バカなことを言ってないで、早く行きましょう」

「照れんなって、ガキじゃあるまいしよ〜〜」

「はぁ……着く前に教えてあげようと思ったんだが、これは必要なさそうだな」

「ん? なんか言ったかよ〜?」

「いいえ、何も……まあもともと教えても無駄なことですし」

 

 汐華をからかうことに集中しすぎた忠助は、汐華から教えてもらえなかった。

 忠助本人からすれば、ただ単に嫌というだけの制服だったがーー。

 客観的にみて、忠助に雄英の制服は驚くほど似合わなかった。

 

 上鳴や峰田に一切の遠慮なく爆笑されるまで、あと十分。

 

※   ※   ※   ※

 

 ようやくいつもの学ランに戻れたというのに、忠助の顔は不機嫌なままだった。

 それを見て、峰田がニヤニヤしながら声をかける。

 

「いつまで怒ってんだよー、東方?」

「そうそう、つい笑っちまったけど、そんなにおかしかったわけじゃーーぷぷっ!」

「いい加減にしやがれおめーら! 笑いながら言ってもなんの説得力もねーっつーんだよ〜〜!」

 

 朝から隙さえあれば笑い転げている上鳴と峰田に、忠助の怒号が飛んだ。

 登校一番に爆笑された時は、危うく手が出そうになったほどだ。

 と、隣に座っている女子生徒が口を開いた。

 

 

「上鳴ちゃん、峰田ちゃん、そうやって人の服を笑うのってよくないと思うわ」

「蛙吹……おめーってやつは」

「確かに全然似合ってなかったけど、笑ったりしてはいけないわ」

「蛙吹、おめーってやつは……」

 

 同じセリフだが、一度目と二度目で全く意味が変わっていた。

 感動で潤んでいた瞳から、すっかり光が消える。

 蛙吹は忠助の様子に、申し訳なさそうに言った。

 

「ケロ、ごめんなさい、私思ったことはなんでも言っちゃうのよ」

「ああ、蛙吹さん? それフォローじゃなくてトドメになってるっていうか……」

「それはそれとして緑谷ちゃん」

「ははは、はい? なに?」

「あなたの個性って、オールマイトに似てるわね」

「え⁉︎」

 

 蛙吹からの予想外の言葉に、出久が固まる。

 似ているも何も、それそのものなのだとは言えるわけがない。

 慌てて何かを言い返そうとした出久に代わって、忠助が口を開いた。

 

「蛙吹よ〜、そりゃ他人の空似ならぬ他個性の空似ってやつだろーぜ、何せオールマイトは一発ごとにぶっ壊れたりしねーからよ〜」

「て、手厳しい……」

「そう、それもそうね、あと梅雨ちゃんって呼んで」

「この歳でかァー? 女子をちゃんづけってのは、ちと照れるぜ」

 

 蛙吹の言葉におどけて返しながら、忠助は出久をちらりと見た。

 なんとか平静を取り戻した様だが、今の取り乱し様では、いつばれてもおかしくない。

 これはしばらくの間は、フォローに回ったほうがいいかもしれない。

 それが、秘密を共有した人間の義務というものだ。

 

(にしても、受け継がれる個性、ね)

 

 あの対人戦闘訓練の後、出久から明かされた秘密は、忠助の予想をはるかに超える大きなものだった。

 ワン・フォー・オール、鍛えた力を次代に継承していく個性。

 なるほど、オールマイトが頑なに隠そうとするわけだ。

 こんな事実が明るみに出れば、混乱は避けられないだろう。

 その上、緑谷出久の人生はめちゃくちゃになってしまうだろう。

 

 なんとしてでも、隠し通さねばならない事実だ。

 更に言えばーー。

 

(その上、オールマイトの活動限界だァ?)

 

 ナンバーワンヒーローの知られざる現状。

 一日三時間限定の個性行使ーー言ってはなんだが、一般の高校生である自分が知っていいレベルのことではない。

 はっきり言って、聞かなかったことにしたいレベルだ。

 だがーー。

 

「一人で背負わせるわけにも、いかねーよなァー」

 

 聞いただけの自分でもこうなっているのだ。

 背負っている当人がどんな状況なのか、想像に難くない。

 高校一年生のガキ同士、できることはお互い少ないが、一人で背負うよりも、二人で背負ったほうが幾らかはましになるはずだ。

 

「どうかしたか東方? ぼーっとしちまって」

 

 考え込んでいる間に呆けてしまっていた様だ。

 切島が、心配そうに自分を見ていた。

 

「いや、なんでもねーよ……それにしても、敷地広すぎるんじゃねーか? まだ着かねーって相当なーー」

「心配するな、もう着く」

 

 前に乗っていた相澤がそう言った直後だった。

 忠助の乗っていたバスがゆっくりと減速した。

 そう、A組は今まさに訓練に向かっている最中だったのだ。

 

 前に行った戦闘訓練とはガラリと趣の変わった。

 救助訓練にーー。

 

※   ※   ※   ※

 

「スッゲー!! USJかよ‼︎」

 

 興奮が抑えきれなかったのか、誰かがそう叫ぶ。

 忠助も叫びはしなかったものの、目の前に広がる光景に息を飲んだ。

 土砂崩れが起きた様な地形。

 大きな渦が巻いている水場。

 轟々と燃えているビル群。

 それらが全て遠くに見えるほどの広さ。

 

 なるほど遊園地と間違えても仕方のないほどの設備だ。

 いったいいくらかかっているのか……。

 

「水難事故、土砂災害、火事、エトセトラーー」

 

 興奮する生徒の前に、宇宙服の様なコスチュームに身を包んだ小柄な人物が現れる。

 

「あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場ーーウソの災害や事故ルーム(USJ)です」

 

 その人物に、緑谷と麗日が感嘆の声をあげた。

 

「スペースヒーロー13号! 災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的ヒーロー!」

「うわあ! 私好きなの、13号」

「……出久と麗日よ〜、あの人もしかして有名な人なのかよ〜?」

「ええ⁉︎ なんで知らないの東方くん!」

「勘弁しろよ〜、おれは出久と違って、ヒーローに詳しいわけじゃねーからよ〜」

「先生方くらいは把握しておこうよ……」

 

 はしゃぐ生徒たちを気に留めず、相澤が13号に何かを尋ねている。

 小声なので、聞こえなかったが、相澤の呆れた様子、それにいるはずだと聞いていたオールマイトがここにいないところを見るに、そういうことなのだろう。

 

(大方、来る前に人助けでもして、活動限界超えちまったってとこかよ〜)

 

 あの人ならさもありなんだ。

 結果的に、その答えは大正解だったが、まあ今は関係ない。

 先生同士の話し合いも終わったのか、13号が生徒たちへと向き直って語り始める。

 

「始める前に一つ、みなさんもご存知でしょうが、僕の個性はブラックホール、あらゆるものを吸い込んでチリに変えてしまいます」

「その個性で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね?」

 

 出久の言葉に、麗日が大きく何度もうなづく。

 そんな様子を見ながら、13号はなお話を続ける。

 

「でも、簡単に人を殺せる力ですーーみなさんの中にも、そう言った力を使える人がいると思います」

 

 13号の視線が、忠助へと向く。

 

「人を癒すという個性でさえ、使い方次第では誰かを傷つけるものになりかねません……一歩間違えれば、人を殺せてしまう力を個々が持っている、そういう社会に生きているんだということを、忘れないでください」

 

 それは、奇しくも先日八百万と帰っている時に言われた内容と似ていた。

 好き勝手に力を使えば、どんな優れた力でも凶器になる。

 だからこそ、超人社会は個性の使用を資格制にして、厳しく統制されているのだ。

 

「みなさんの力は、人を傷つけるためにあるのではない。救けるためにあるのだと、心得て帰ってくださいなーー以上、ご静聴ありがとうございました!」

 

 そう締めくくる13号に、生徒たちは気合の入った表情で拍手を送った。

 ーーと、あくまでクールな相澤が腕時計を見ながら、口を開く。

 

「さて、じゃあまずはーー」

 

 

 直後のことだった。

 目の前にある広場に、小さな黒い靄の様なものが浮かび上がったのはーー。

 いち早く異常事態に気づいた相澤が叫ぶ。

 

「13号! 生徒を守れ! お前らはひとかたまりになって動くな!」

 

 同時に広がっていく黒い靄からーー手が伸びてきた。

 いや、手ではない。

 人間の手を顔に貼り付けた男が、まるでカーテンを押しのけて現れる様に出てきた。

 それを皮切りに、後ろからは続々と集団が入場して来る。

 

「なんだぁ? また入試みたいにもう始まってますパターン?」

「……いや、どうやら、そんな穏やかな状況じゃあねーみてーだぜっ!」

 

 この状況にいち早く気づいた生徒は三人。

 昨年、実際のヴィランに襲われた出久、爆豪。

 日々の活動ゆえか、他のクラスメイトよりも注意を張っていた汐華。

 そして、忠助。

 身構える四人を見て、先頭に立っていた手の男が口を開いた。

 

「なんだよ……卵とはいえヒーローってか、すぐに構えられちゃ、奇襲にならないってのに」

「それに、オールマイトがいませんね、先日いただいたカリキュラムではいるはずなんですが」

 

 それに続いて声を出しているのは、後ろに立っている黒い靄をまとった男だ。

 状況的に、この黒い靄はあの男の個性を見て間違い無いだろう。

 手の男は忠助たちの方を一瞥して、気だるそうに呟いた。

 

「あいつら全員殺せば、出てくるか、平和の象徴」

 

 忠助はその声を聞いて、鳥肌が立つのを抑えきれない。

 声には熱がない。

 信念も、それ以前に重いと呼べるものがほとんどない。

 ただ、ひたすらに真っ暗で、底が見えないーー悪意だけがあった。

 

 だがーー。

 

(落ち着け! こんなもんでよ〜、冷静さ失ってらんねーぜ)

 

 東方忠助は知っている。

 ()()()()()()()()()()()()

 あの目を、覚えている。

 あれに比べれば、目の前にいる男たちなど、まだ緩い。

 

 それに加えて、今あのヴィラン集団は自分たちが狩る側だと思い込んでいる。

 戦うにせよ、逃げるにせよ、今なら先手を打てる。

 忠助の腕が静かにぶれる。

 その腕から、クレイジーダイヤモンドの腕が伸びーーる前に、忠助の頭がぱしんと叩かれた。

 

「いでっ⁉︎」

「何をしようとしている東方」

「セ,センセー……何って、決まってんじゃないっスか、あいつらがヨユーぶってるうちに先手をーー」

「それは、俺の仕事だ」

「へ?」

 

 呆けている忠助を無視して、相澤は13号と生徒たちに指示を飛ばす。

 

「13号! 外部と連絡が取れるか試してくれ! 上鳴! お前も個性を使って連絡取れるか試してみろ!」

 

 とりだしたゴーグルをかける相澤を見て、忠助は焦った様子で声をあげた。

 

「センセー! 一人で行くのは危険っス! 俺もーー」

「いいから黙って見てろ、学生に来られても邪魔にしかならん」

 

 相澤ーーイレイザーヘッドは、それだけ言い残すとヴィランたちの元へと単身飛び込んでいく。

 集団の中で一切鈍ることのないその動きは、洗練されていた。

 確かに、あそこに自分が混じっても邪魔にしかならないだろう。

 しかしなぜだろうか、不安が消えないのはーー。

 戦っているイレイザーヘッドから目が離せない。

 忠助は、ここにいなくてはいけない気がする。

 

 と、クラスメイトたちと避難しようとしていた出久が、止まったままの忠助に気づいてその肩をたたく。

 

「忠助早く! 今ここにいても先生の邪魔になる!」

「あ、ああ、わかってる! 今すぐ逃げるぜ〜!」

 

 不安がっても仕方がない。

 現状できることはない。

 今の自分たちにできるのは、さっさと逃げて先生の負担を減らすことだけーー。

 

「させませんよ?」

 

 すぐそばから声が聞こえた。

 視界に映るのは黒い靄。

 いつの間にか、二人のすぐ隣にそいつはいた。

 全身を靄でまとった、おそらく転移系の個性の持ち主。

 そいつは、目を見開く忠助たちの前で、堂々と言い放った。

 

「初めまして、我々は(ヴィラン)連合。せんえつながら、この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのはーー平和の象徴オールマイトに、息絶えていただきたいと思ってのことでしーー」

「クレイジーダイヤモンド!!」

 

 岩のように握り締められた拳が、黒いそいつの頭を狙う。

 ーーが、その拳は一切の手応えを感じさせずに、頭を素通りした。

 

「な、なにぃっ⁉︎」

 

 会心の一撃が全くきいておらず泡を食う忠助に対し、相手は一切慌てた様子なく呟いた。

 

「せっかちなお子さんがいますが、私は自分の役目を果たさせていただきましょう」

 

 直後、爆発的に膨らんだ黒い靄が忠助を、隣にいた出久をーークラスの全員に襲いかかる。

 特に至近距離にいた忠助は、声を上げることすら叶わずに、その靄に飲み込まれた。

 




 報告

 実は先の展開を二つほど思いつきまして、どちらにしようか迷っているので、アンケートで決めてしまおうかなと思います。

 感想欄でアンケートは禁止だと伺ったので、活動報告の方にあげました。
 お時間ありましたら、作者名をクリックしていただいて、活動報告の方からぜひ回答お願いします。



 それはそれとして、人が多すぎでだれを喋らせればいいのか迷う問題。
 ……二次創作も難しいですなぁ。
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