ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
今回はお察しの通りの彼が来ます。
アンケートまだやってますので、是非!
では、本編どうぞ。
○
2人の男。
先に入ってきたのは、初老の男性。茶色の綺麗な服(スーツというらしい)に身を包んだ彼は僕らを見るなり、顔を綻ばせて声をかけてきた。
「ああ、来ていたんだね。桐ヶ谷君、ツーベルク君」
彼こそがアスナの父親、結城彰三さんだ。彼は貴族____ではなく、現実世界での会社と呼ばれるグループを立ち上げ、経営しているリーダーらしい。
【レクト】という、大きな会社らしく、それを聞いた和人は口をぽっかり開けて驚愕していた。
僕は現実世界の情報には疎いので分からないが、とても有名な所らしい。
「こんにちは、お邪魔してます、結城さん」
「こんにちは」
「いやいや、いつでも来てもらって構わんよ。友人に来てもらっているんだ、この子も喜ぶ」
そう言って、明日奈の頭を撫でる。
その顔は慈愛に満ち溢れていた。父親として、彼女を愛しているんだろう。
だから、誰よりも辛い筈だ。
愛娘が、眠ったままというのは。
彰三さんは僕らのことを明日奈の友人だと言ってくれている。
現実世界であったことが無いけれど、やはり明日奈がアインクラッドで誰と行動を共にしていたかは知っているようだった。
「……ああ、そういえば彼と会うのは二人とも初めてだったね」
彰三さんはそう言って後ろにいたもう一人の男へと振り返った。
濃い灰色のスーツを着て、眼鏡をかけている。
何の変哲もない、パッと見て人の良さそうな男。
でも、ふと何か嫌な感じがした。
既視感、とでも言うべきだろうか。
この男、
「うちの研究所で主任をしている、須郷君だ」
「よろしく、須郷伸之です______そうか、君達があの英雄のキリト君とユージオ君か!」
「……桐々谷和人です。よろしく」
須郷伸之、と名乗った彼はまず和人に右手を差し出し、握手を求めた。
「…どうも、ユージオ・ツーベルクです」
僕にも笑顔で右手を差し出す。
そこまでしてくれるのなら、断る理由はない。僕も握手する。
しかし、彼から変な事を聞いた。
和人がチラリと彰三さんを見る。
仮想世界での話______特にアインクラッドでの話は口外しないのが普通だ。
しかも、僕らのやってきたことを知っているのような素振りを見せる彼は、内部についての情報をどうやって…
「すまない、例の件については口外禁止だったのに。あまりにもドラマチックな話だったのでつい喋ってしまった。彼は私の腹心の息子でね。昔から家族同然の付き合いなんだ」
「____社長、その件についてなのですが」
彰三さんの方へ向き直った彼は、何やら真剣な面持ちでこう言った。
「来月にでも、正式にお話を決めさせていただきたいと思っています」
「_____分かった。しかし、いいのかね?君はまだ若い。新しい人生だって」
「僕の心は昔から決まっています。明日菜さんが今の美しい姿でいる間に_____ドレスを着せたあげたいですから」
「……そう、だな。私もそろそろ覚悟を決めるべきか」
話の流れが見えない。今、彼はドレスと言ったのか……?
ドレスという事は_____
「では、私は失礼させてもらうよ、桐々谷君、ツーベルク君。また会おう」
彼はそう言って目を翻し、部屋を出ていった。
残されたのは、僕と和人、そして須郷という男だけ。
これ以上無い、嫌な予感を覚えた。
彼は、アスナの眠るベットへとゆっくりと歩み寄り、僕らとは反対側に立った。左手で、明日奈の栗色の髪をつまみ上げ、音を立てて擦り合わせる。
瞬間_______ズキリと、
瞬間、流れ込んでくる記憶。
同じ病室にいる、和人と須郷。
断片的に聞こえる須郷の粘着質な声。
感じる感情は、怒りや憎しみ。
嗚呼。
悪い予感は、当たっていたらしい。
「君達は_____一時期は明日奈と共に戦っていたらしいね」
「____ええ」
「…であれば、そこまで気にする必要も無いか」
伏せられていた彼の顔。
顔を上げた須郷という男の顔は、先程とはかけ離れていた。
にやり、と笑っていた。
まるで、愉快でたまらないと言わんばかりに。
再び、既視感。
______ああ、そうか。
何となく、理解出来た。
彼が_________ライオスやウンベールと同じ類の人間である事を。
「さっきの話はねぇ……
「______!?」
「______!!」
流石の和人も、度肝を抜かれている。
僕だって、予想はしていたけれど、ここまで酷いとは思わなかった。
「_____できる訳がないだろう。本人の意思確認が取れない以上、戸籍上の婚姻は出来ない筈だ」
「うん、その通り。法的な入籍は不可能だろう。しかし、書類上は僕が結城家の養子に入ることになるんだ」
やはり、いるんだ。
法の抜け道を使って、人を貶めたりする人間というのは。
「まぁ、実の所この子は昔から僕のことを嫌っていてねぇ…」
そりゃそうだろう。こんな男、彼女が受け入れるはずが無い。毛嫌いしている筈だ。僕だってそうするだろう。
「親達はそれを知らないが、いざ結婚なんてことになれば十中八九拒絶されるだろうと思っていた。だからね、
そんなことを、ほざいた。
彼は明日奈の頬に左手の人差し指を這わせ、彼女の唇へと触れそうになって_____
「______その汚らしい手でアスナに触れるな。彼女はあなたが触れていい人じゃない」
僕が初めて出た言葉が、それだった。
それには思わず和人も僕を凝視する。確かに、僕がこんなこと言うことなんて無いだろう。
しかし、これは心の奥底から出た本音だ。
「_______アンタ、明日奈の昏睡状態を利用するつもりなのか」
和人も須郷を問いただす。
「利用……?いいや、正当な権利と言って欲しいね。君達、SAOを開発した《アーガス》がその後どうなったか知っているかな?」
彼が言ったことを要約すれば、こうだ。
『アインクラッドの維持をしていた《アーガス》という会社が消えた後、彼の務める《レクト》に維持が委託された。つまり明日奈の生命を維持しているのは自分であるのなら、その対価を要求するのは、当たり前の事』
という事だった。
理解など出来る筈もない。
「それを、大衆が認めるって言いたいんですか?僕らがこの事を他の人に話せば____」
「なに、君たちのような子供の戯言、誰も聞き入れてはくれないだろうね」
「____っ」
ああ、この男はつまり。
自分が良ければ、他などどうでもいい訳だ。
「ああ、後________
「________」
時が止まる。
今、『ロニエ』と言ったのか?
「……その反応から察するに、知っているらしいね」
その男ははぁ、とため息を着いた。
「彼女には迷惑していてね。明日奈だけ招待したつもりが、あんな邪魔者が_____ぐ!?」
遂に、爆発した。
和人が、須郷の胸ぐらを掴んで壁に突き飛ばす。
僕だって、爆発寸前だ。
「____お前、ロニエをなんて言った?」
「…お前、ロニエに何をした?」
「彼女の心をどこにやった?」
「_____アスナだけでは飽き足らず、ロニエにまで手を出したのか?」
「答えろよ、須郷_____!!」
その細い腕から出るとは思えない力で、須郷の胸ぐらを掴み、壁に押し付ける。
怒号。
周りに、病院のスタッフがいなかったのが幸いした。
誰も来る気配はない。
「____離して、くれないかっ、このクソガキっ!!」
須郷は和人の剣幕に驚き、慄いていたが、すぐさま和人の手を払う。
ふん、とネクタイを締め直しながらしかめっ面で言った。
「君がゲームの中で明日奈とどんな関係だったのかなんて知ったこっちゃないがね、今後ここには一切来ないでくれないかな。結城家との接触もしないでくれ」
もう、ここに用はないのか、立ち去ろうとしている。須郷は椅子に置いたカバンを手に取った。
和人は須郷を睨みつけたままだ。
多分、僕もそうなのだろう。
そして、嘲るように彼はニヤリと笑った。
「式は来月、この病室で行う。その時は君達も是非呼ぼう。精々、最後の別れを惜しんでくれ、英雄君」
思わず、拳に力が入る。爪が手のひらに食い込む。
少し痛みを感じたけれど、それも気にならなかった。
あの男への憎悪に比べれば、なんてことは無い。
そして、彼は部屋を出る直前に、こう言い残した。
「_____ロニエという女の生命も、私の手の中にあると言うことを忘れないでくれよ?」
音もなく、扉が閉まる。
残されたのは、僕と和人の二人だけ。
自分達がどれだけ無力であるかを、嫌という程思い知ってしまった。
あの世界での強さは_____既に彼らには無かった。
憤怒と憎悪。
しかし、その感情を晴らす
為す術なく、項垂れるのみ。
ALO編に突入致しました。このALO編にて特別ゲストとしてテレビゲーム版のキャラクターを登場させる予定です。もし登場させるなら…?
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