ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
真面目で、短めな鬱回となります。現実世界での話はこの次で終わりになります。次回が説明あるのでかなり長いです。
後、アンケートを4月9日までに締め切ります。
10日に次の話を投稿する予定ですので、その時に結果発表をしたいと思います。
レイン人気だねぇ…
では、本編どうぞ。
○
「……よく、我慢出来たな。ユージオ」
エレベーターの中、二人だけの空間で、和人はそう力なく言った。
「_____うん、僕だって驚いてる」
本当の所、僕だってどうしてあんなに落ち着いていたのかよく分からなかった。
いや、違う。
あの時、僕が何をしても意味が無い事に無意識に気付いていたんだろう。
けど、あの時。
左腰に、剣があれば。
間違いなく______引き抜いて、彼の首を切り飛ばそうとしただろう。
あの場に、剣がなくて良かったと安堵したと同時に、悔やんだ。
剣があれば、何か変わったかもしれない。
けど______それで何が変わる?
彼を斬り刻んだとして、アスナやロニエが目を覚ますのか?
答えは、否だ。
_____その場の激昂に身を任せるのは、子供のやる事だ。
僕は、知っている。
今はまだ_____彼に恨み辛みを晴らすときでは無い。
今は、耐えるべき時だ。
来るであろう、
だから____耐えられた。
「お前、手から血が______」
和人が目を大きく開けて、驚いている。
ふと見ると、僕の右手が赤い液体で濡れている。
掌を見れば、爪がくい込んで血が出ていた。
「_____ごめん。お前だって、悔しいよな」
「…君に比べれば、こんなの可愛いものだよ」
和人はもっと悔しいはずだ。
彼はもっと自分の非力さを、無力さを呪っている筈だ。
だから。
僕が和人を_____キリトの手を取って、前へと連れ出さないといけない。
「_____ありがとう」
そう言った彼の顔が、僕には忘れられなかった。
「じゃあね、和人。」
「ああ。また、会って話そう。次はティーゼに顔出しに行くから」
「……無理はしなくていいよ」
「いや、俺がそうしたいだけよ」
病院の玄関口で別れの言葉を告げる。
「_____じゃあな。まだ暑いから、熱中症には気をつけろよ」
そう言って、和人は踵を返し、病院を出ていった。
その後ろ姿に、なんと言うか。
何か危ないものを感じてしまった。
「先輩?」
「……ぁ、何?ティーゼ」
その日の夜。
僕は本を読んでいたが、もちろん集中出来るはずが無く。
本をペラペラと捲っていた。
が、ティーゼに勘づかれてしまった。
いや、元々気付いていたが、ようやく聞いてきたという感じだけど。
ぽん、と本を閉じる。
「いえ、その……何だか、お昼くらいから元気無いなって。何かあったんですか?」
「………………」
「…黙っていたら、何も分からないじゃないですか」
「……ごめん、なんでもないんだ。ちょっと、これからのことで不安になっちゃって」
本当の事。
けれど、本当に悩んでいることを話している訳でもない。
______彼女に話す訳にはいかない。
リハビリ中のティーゼにこの事を話せば、少なからずリハビリに影響が出るはずだ。
彼女にとって、ロニエは唯一無二の親友。そんな親友が、下衆な男に囚われているなんて聞いた日には、どうなるか分からない。
「……深くは、聞きません。けど、いつか話して下さいね。出来るだけ早く話して欲しいですけど、先輩がいいって思った時に」
「ごめん………………いつか話すよ」
多分、君は怒るだろう。でも、その時は黙って叱られよう。
そうやって、叱られることになった時。傍に、戻ってきたロニエがそれを苦笑いしながら止めてくれる…そんな、光景を夢見て。
でも、僕はどうすればいいんだろうか。
僕がこの現実世界で知り得ている情報は余りにも少なすぎる。ここでの『日常』は、僕にとって『非日常』だ。
現実世界のことを知り尽くしている和人ならともかく、僕には手段がない_____手段を知ることも難しい。
なんて、無知無力。
僕らに、
○
須郷という男と会った次の日。
いつも通りウォーキングを済ませ、ティーゼのリハビリの時間まで2人で本を読んでいた_____その時だった。
「ツーベルクさーん」
「____王滝さん?」
看護師の王滝さんが部屋の入口に顔を出す。
「ツーベルクさんにお電話来てますよ」
「…僕に、
これまた急な話だ。
ハッキリ言って、僕に電話をかけてくる人なんてほぼ居ない。いるとしたら、菊岡さんか______
「えっとね、桐ヶ谷和人っていう方からなんだけど」
和人しかいない。
予想通りだったとはいえ、和人から電話をかけられるなんて初めてだったのでちょっと驚いた。
ちなみに、電話の存在は知っている。
ホントに、現実世界は便利なものばかりだ。遠方からどこでも声が届くなんて…
「あ、はい。すぐ行きます!」
ぱたりと本を閉じて備え付けの小さなテーブルに置いて、王滝さんの元へ。
こんな朝早くにどうしたんだろうか。
「ちょっと行ってくるよ」
「はい、私のことは気にしなくていいですからね?」
「大丈夫、そんなに時間はかからないとは思うから」
ティーゼとそう言葉を交わして病室を出た。
「_____はい、ユージオです」
看護師の皆さんが仕事をしている所に備え付けてある固定電話という電話の受話器をとり、それに向かって話しかける。
受話器の紐が着いている方を口元に、反対の先を耳に当てる。
『____ユージオか!?』
「っ…うん。おはよう、和人。流石に朝の挨拶くらいはして欲しいんだけど…」
朝一番にこの大きな声を耳元で聞くのはちょっと耳に悪い。びっくりしてしまった。
和人ってそこまで朝が得意じゃない筈だったんだけど、何かあったんだろうか?
『あ、済まない……おはよう、ユージオ!朝から突然で悪いんだが、今から出かけられるか!?』
「え?今から…?」
急な話だった。確かに暇を持て余してはいるけれど、流石に今からって言われても僕は病院から出かけることがあっても、大体ウォーキングで病院近くの公園に行く程度。出かける先が僕の徒歩で行ける場所ならいいけど、遠いと僕も辿り着く自信はない。
『ああ!ちょっと来て欲しい所があるんだ。そこで落ち合おう!一応住所言っとくぞ、メモしてくれ!』
「え、待ってよ!いきなり過ぎて分からないって…!」
どんどん急かして矢継ぎ早に要件を言っていく和人。
話が掴めない。
どうして電話したのか、何故行かなければならないのか。まったくそれを言ってくれない。
その時だった。
僕が困っているのを察してか、和人が分かりやすく一言で要件を言った。
『
「_______ホントに?」
すぐさま頭を切り替える。キリトの言葉が本当なら、すごいニュースだ。未だ眠ったままの2人の手がかりが見つかったとなれば、方法も自ずと見えてくるかもしれない。
『確かな情報だ。多分偽情報とかではないと思うが、とりあえず情報提供者から直接話を聞きたい。お前も来てくれないか?』
「分かった。ちょっと待って______王滝さん。なにか要らない紙切れか何かないですか?」
「え?メモするの?」
「はい、今から少し出かけたくって…場所をメモしておきたいんです」
そばに居た王滝さんに何かメモしてもいい紙がないか聞いてみる。
僕にはメモするだけの本も無い。ただ、昨日貰ったペンがいくつかあるくらい。
「分かった……はい、これメモ用紙」
「ありがとうございます」
王滝さんは自身が持っていたメモ帳からピリッ、と1枚紙をとってくれた。
「_____で、どこ?」
『場所は_________』
住所をメモする。
地名を聞いてもさっぱり知らないけれど、後で王滝さんに聞いてみようか。
『俺は今から家を出るから、また後でな』
「分かった。どうにかして行くよ」
電話を切る。
行くべき場所は分かった。後は____どうやってそこに行くか、だ。
「王滝さん、この住所ってここから近いですか?」
「ん?えーっと……あ、御徒町やね。ちょっと遠いかな、ここからだと1時間は少なくともかかるとは思うけど…」
「そ、そうですか…」
想像以上に遠かったようだ。
「行くなら電車だろうけど、お金は大丈夫?」
「お金は大丈夫です。一応手持ちはあります」
手持ち、というより何かあった時の為のものなのだけど。
菊岡さん達から渡されたこのお金。国からの『補助金』なのだそう。僕のように身寄りのなくなってしまった人達に充てられたお金らしい。現実世界には色々な制度があるとは聞いたけど、本当に色んなものがあるようだ。
ユウキやランによると、学院______現実世界でいう学校というものは、『義務教育』という制度によって学費は払う必要がないらしい。
僕からすると、ここはまさに『異界』と呼ばざるを得ない。
そして、『電車』というのも聞いたことはあったけど、乗ったことは無い。試しに見に行ったことはあるけど自動車同様、あんな鉄の巨大な塊があんなスピードで動くなんて、僕には信じられなかった。動いていたけれど。
お金が必要なのは知っているので、後で病室にある封筒を取りに行かないと。
メモをポケットに入れ、走らないようにティーゼの病室へと急いだ。
その己の無力さを、悔しさを糧に。
今は剣を研ぐ。
好機を逃さぬように。
ALO編に突入致しました。このALO編にて特別ゲストとしてテレビゲーム版のキャラクターを登場させる予定です。もし登場させるなら…?
-
鍛冶師の二刀流使い《レイン》
-
天才科学者のVRアイドル《セブン》
-
自称トレジャーハンター《フィリア》