ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
今回はあのフェンサーさんが登場です!
それではどうぞ‼︎
…………………松明の火だけが辺りを照らし出す。
そこは第一層の迷宮区のダンジョン。
闇の中、一人の少女が駆け抜ける。
少女はえんじ色のフードを被り、
『はあ、はあ、はあ………っ‼︎』
少女の後方には多数の獣人型モンスター『ルインコボルド・トルーパー』が大きなハンマーを持って走ってくる。
『グルゥァァァァァァァァァァアア‼︎‼︎』
『来るっ!』
剣を構える少女。
『……………ッ‼︎』
栗色の長い髪の少女はレイピアのソードスキル『リニアー』で『ルインコボルド・トルーパー』を一撃で仕留めた。
『…………ッ‼︎』
そして、『ルインコボルド・トルーパー』がハンマーで少女を殴ろうとした。だが、少女はそれを当たる寸前で避け、さっきと同じ『リニアー』で、また一体屠った。
『ッ!………どれだけいるのよ………‼︎』
少女は何度も倒しているのだが、何しろ数が多過ぎる。たった一人の少女に対し、モンスターら30体以上いる。今、この状況を表すなら、『絶体絶命』だろう。
『はあ、はあ、はあ………………キリが無いっ‼︎』
栗色の長い髪の少女は、また駆け出す。
だが、彼女もあれから何時間も戦い続けている。疲労も相当なものだ、限界が近かった。
何体目か……栗色の長い髪の少女がモンスターを倒した直後、油断したのか彼女は足を取られ、こけてしまった。
『⁉︎』
そして、モンスター達はチャンスとばかりに飛びかかって来る。
あれから一週間は過ぎた。そう、このデスゲーム『ソードアートオンライン』が始まってからだ。
少女はこれまで何度も試練を突破してきた。私立小学校の入学試験、日々の勉強、周りとの学力競争、様々な習い事、名門私立中学校への入学試験、定期テスト。全てに勝ってきた。
だが、少女は思った。恐らく、この『ソードアートオンライン』と言う試練には勝てない、と。あまりにも未知の世界であったからだ。
ああ………………やっと、終わる………やっと死ぬんだ。
その時、自然に涙がこぼれた。終わりを待つように目を閉じた。
だが、そのハンマーによる一撃はいつまでたっても来ることはなかった。
ズバシュッッッ‼︎
その代わり、聞こえてきたのは剣で何かを切り裂いたような音だった。
目を開いた。
『間に……あった‼︎』
その前にいたのは、
『君!……大丈夫⁉︎』
亜麻色の髪の少年、ユージオだった。
ユージオがなぜここにいるか?それは5時間程前まで遡る。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
逆襲の雌牛クエストをクリアしてから、2日後。ユージオ達は最後の町『トールバーナ』に到着した。その道中では様々なプレイヤーに出会った。四人は出会ったプレイヤーを助けてサポートした。その数20人程。
そして、ユージオ達は『トールバーナ』であらかたクエストをクリアし終わったのが、到着してから4日後。
僕らは、今から何をするかを相談しているところだ。
キリト「これからどうする?」
ロニエ「ええっと……観光……?」
ティーゼ「安全なところで黄昏ましょう!」
ユージオ「僕は………観光に一票かな?」
キリト「そうか……俺は………黄昏たいな……」
ユージオ「……どうするの?」
ロニエ「……最近、クエストを連続して受け過ぎですし……楽しく観光してみますか?」
キリト「観光か………それじゃあ、俺もそうするか!」
ティーゼ「………じゃあ、そうしますか!」
ユージオ「キリト、この街でいいお店ない?」
キリト「んー………観光スポットはないが、飯が食えるところはあるな。」
ユージオ「じゃあ、そこに行こう。」
ロニエ「はい!」
ティーゼ「わかりました!」
キリト「了解、行こうか。」
〜少年少女お食事中〜
ロニエ「美味しかったですね!」
キリト「ああ。久しぶりに肉を食べたな……」
ティーゼ「(やっぱりキリト先輩は変わってないですね……)また今度行きましょう!」
ユージオ「そうだね……いつも黒パンだから、余計に美味しく思えたよ。」
やっぱりキリトは過去に戻っても変わってないね……
キリト「よし!一休みしたし、『迷宮区』行くか。ちょっと贅沢したしな。」
ユージオ「……『迷宮区』?」
キリト「ああ………また、説明した方がいいか……?」
ロニエ「大丈夫ですよ、キリト先輩!私が説明します!アルゴさんに色々教えてもらった時に、『迷宮区』についても聞きましたから。」
キリト「そうか!じゃあ、頼んだぞ、ロニエ。」
ロニエ「はい!」
ティーゼ「私も説明しますよ!ユージオ先輩!」
ユージオ「じゃあ………よろしくね。」
ティーゼ「了解です!」
〜少女説明中〜
ユージオ「………じゃあ、その迷宮区っていうのを攻略すればいいんだね?」
ティーゼ「はい!でも、迷宮区にいるまも……じゃなくて、モンスターは他の場所と違って強いそうです。」
ユージオ「どうするの、キリト?これから迷宮区に行くのかい?」
キリト「ああ、そう思ってるんだが………まあその前に武器のメンテナンスをしてからだけどな。」
ユージオ「わかった。メンテナンスが終わり次第行くんだね。」
キリト「そういうことだ。よし、鍛冶屋でメンテしてもらうか!」
ロニエ「はい!行きましょう!」
ティーゼ「了解です!」
〜少年少女、武器メンテナンス後迷宮区に移動中〜
目の前にそびえ立っていたのは、黒い巨大な塔のようなものだった。
ユージオ「あれが迷宮区………」
キリト「ああ…………変わってないな……」
ロニエ「アルゴさんから聞いてはいましたけど…………すごいですね………」
ティーゼ「………セントラル・カセドラルよりすごいかも………」
キリト「よし、今から迷宮区に乗り込む。みんな、気を引き締めて行こう!」
「「「おおーー‼︎‼︎」」」
ユージオ「ハアッ‼︎」
ズバッ!
『グルがァァアア⁉︎』
パリィィイン!
僕の目の前にいるモンスター『ルインコボルド・トルーパー』は他のモンスターと違って、少し動作が人間に似ているような気がする。でも、動きは単純だ。
このコボルドで29体目。この迷宮区に入ってから結構時間が経つ。上がっても上がっても、そのボス部屋っていうのにはたどり着かない。
キリト「シッ‼︎」
ザシュッ‼︎
『グルラァァァァ……』
パリィィイン‼︎
キリト「ふう………」
キリトも順調に倒せていってるみたいだ。ロニエとティーゼは………
ロニエ「ティーゼ、スイッチ!」
ティーゼ「はいはい!はあっ!」
ズバッ!
『グルァァァアア⁉︎』
パリィィィイン‼︎
「「イェーイ!」」 パン!
順調だね……ハイタッチしてるし………大丈夫かな?
キリト「ユージオ!今何体倒した?」
ユージオ「29だよ。キリトは?」
キリト「⁉︎…………27体目………」
ユージオ「よし、勝った!」
キリト「ま、まだだ!まだ終わってないぞ‼︎」
ユージオ「さっきの約束覚えてるよね?負けたら、今日の晩御飯奢りだよ。」
キリト「うっ………でも、ユージオの分くらいなら……」
ユージオ「?何いってるの、キリト?」
キリト「……?」
………分かってないな、キリト。
ユージオ「……………言っとくけど、僕の分だけじゃないよ。ロニエとティーゼの分も奢りだから。」
キリト「⁉︎」
勝った、これは勝った、いろんな意味で。
ユージオ「あっ!あそこ次の階への階段じゃないかな?」
ロニエ「本当ですね………」
キリト「よっよし!さっさと行くぞっ!」
ティーゼ「あはは………」
そして、僕らは次の階層へ行った。
ユージオ「さて、次の階は………ん?
その時、僕の索敵スキルに反応があった。
ユージオ「ええっ⁉︎………モンスターの反応が37⁉︎」
ロニエ「………‼︎中心にプレイヤーの反応が1つだけありますよ!」
ユージオ「………ッ‼︎」
それを聞いて、僕は気づかないうちに走り出していた。
そして、走り出したと同時にあの頭痛がまた来た。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
暗いダンジョン。
大量のモンスターがあるプレイヤーを囲み、袋叩きにするように攻撃をする。
プレイヤーに大きなハンマーが迫る。
そして、その前に黒い人影が飛び出す。
そう、キリトだ。
キリトはモンスターを蹴散らしながら、プレイヤーに声をかける。
キリト『大丈夫か、あんた?』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
この記憶はまさか、今反応があったところの………?
キリト「‼︎……………行くぞ‼︎」
多分キリト達も走り出したんだろう。でも、僕の方が早かったせいか、僕は先に反応のあった場所にたどり着いた。
ユージオ「ッ⁉︎」
そこにあった光景は、まさに地獄。モンスターがそこら中にいた。
そして、その中心にいたのは、一人のプレイヤー。
ローブを着てフードで顔が分からなかったが、明らかに焦っているのが目に見えた。
僕は持っている技術全てを使ってモンスターを蹴散らし、プレイヤーの元へ向かった。
そのプレイヤーは疲労が溜まっていたのかこけてしまった。
そこに飛びかかって行く、モンスター。
……させや、しないッ‼︎
ソードスキルを発動させる。
跳躍技『ソニックリープ』。
プレイヤーに飛びかかろうとしたモンスターを斬る。一発で仕留められた。
ユージオ「間に……あった‼︎」
僕はプレイヤーに声をかけた。
ユージオ「君!……大丈夫⁉︎」
『……….⁉︎』
ユージオ「立てる?後は周りのモンスターを倒せばいいだけだから………もう少し頑張れる?」
『………!』コクッ
プレイヤーは頷いてくれた。
ユージオ「よし……」
キリト「ユージオ!大丈夫か⁉︎」
キリト達が遅れて着いたみたいだ。
ロニエ「ものすごい数ですね………」
ティーゼ「………どうしますか⁉︎」
キリト「…………攻撃開始まで、後5秒‼︎………4………3………2………1………GO‼︎」
キリトの指示通りみんな一斉に動き出した。
僕とキリトのレベルは13、ロニエ達は11だ。このモンスターはレベル6、こちらがかなり有利だが、このプレイヤーのレベルが少し気になる。ここで戦うということは最低限のレベルばあるはず……それでも、長時間の戦闘は『死』を招く。このプレイヤーはもしかすると長時間の戦闘に疲弊したのかもしれない。一か所に長い時間い続けたから、たくさんのモンスターが自然とわき始め、対処が難しくなったのだろう。
さっさと終わらせないと………
隣をみた。さっきのプレイヤーは細剣を構え、ソードスキルを発動させ……放った。
だが、僕にはその剣先が見えなかった。
ユージオ「‼︎」
速すぎる。剣先を目で追うことができない。
それは、まるで……
流れ星を見ているようだった。
戦闘はものの数分で終わった。
そのプレイヤーが鬼気迫る戦いをしたというのもあるが……
ユージオ「……ふう……お疲れ様、キリト。」
キリト「…………ああ。本当に……あの数はキツイな………」
ユージオ「うん………」
バタッ‼︎
ユージオ「⁉︎」
その時助けたプレイヤーが倒れてしまった。
ユージオ「キリト!ま、まずいよ!」
キリト「………仕方ない、ダンジョンの外まで運んでやろう……ロニエ、ティーゼ!二人で運んでやってくれ!」
ロニエ「あ、はい!」
ティーゼ「わかりました!」
ユージオ「?なんで僕らは手伝わないの?」
キリトはあからさまに嫌な顔をする。
キリト「そりゃあ……こいつが多分女だからだよ。」
ユージオ「でも、女だからって運ぶのを手伝わないのは………」
キリト「………ユージオ。ここにはハラスメントコードというものがある。」
ユージオ「は、はらす……?」
キリト「………つまりだ、男は不用意に女に触れちゃいけないのと同じだ。」
ユージオ「………そういうこと………分かった。頼んだよ二人とも。」
「「はい!」」
〜少年少女移動中〜
……昼寝にはちょうどいい安全区域の草原に連れてきて、1時間程たった。
連れてきたプレイヤーに見覚えがあった。
栗色の髪と瞳、この人が『アスナ』だ。
もうそろそろ起きてもおかしくないんだけど……
『……んん?こ、ここは……』
ロニエ「あっ!起きられましたよ!キリト先輩!……………そろそろ起きてくださいよ、キリト先輩‼︎」
キリトはここについてから、昼寝をし始めたんだ。……キリトはやっぱり変わってないな………
キリト「………んあ?あいつ、起きたのか?」
ロニエ「そうですよ、キリト先輩!」
ティーゼ「……先輩……やっぱりアスナ様は………」
ユージオ「………うん。多分、この時代の人だと思う…………」
そう、彼女はこの時代の人だろう。アスナはキリトとここで出会ったんだ。あの時に頭痛で………記憶が流れてきた。多分、あの記憶はアスナとの初めての出会いなんだ。
『………‼︎ダンジョンじゃ、ない……』
ユージオ「僕たちが君を運んできたんだ。……僕はユージオ、よろしく。」
ティーゼ「私はティーゼです。よろしくお願いします。」
『…………余計な……ことをッ!』
キリト「余計なことっていうのは聞き捨てならないな。」
ロニエ「せ、先輩!失礼な言い方はダメですよ!」
キリト「わ、分かったよ……」
ロニエ「……ええっと………ロニエです。よろしくお願いします!」
『………あと少しで…死ねたのにっ!』
ユージオ「………じゃあ、聞きたいんだけど……あの時、死にたいと思っていたのなら、何故君は剣を持っていたの?」
『………っ!』
ユージオ「………死のうとしてる人は、剣なんか持たないよ。」
『…………』
ユージオ「剣を持って戦っていたのなら、それは………心の奥で、生きたいと思っているんだよね?」
『………………ッ‼︎』
キリト「その通りだぜ。まあ、どうせ死ぬならボス戦で死にたい(バシッ)ッ⁉︎」
あっ………ロニエに叩かれた。さすがに僕でも怒るね、さっきの言葉は。
キリト「………その前に『第一層ボス攻略会議』には出とかないとな。」
「「「『………ボス攻略会議?』」」」
キリト「…………えっ?言ってなかったか?ユージオ、ロニエ、ティーゼ?」
「「「言ってない‼︎」」」
キリト「………おうふ……でも、説明はいらないよな?」
ユージオ「いらないけど……会議、いつあるの?」
キリト「……今日の夕方……町の広場で………」
「「ええッ⁉︎」」
ユージオ「キリト!大事なことは僕らにも言ってよ!」
キリト「………すまん……」
ユージオ「……とにかく、あと、1時間もすれば時間だ。早めに行っておこう。」
ロニエ「はい。」
ティーゼ「了解です。」
キリト「……おう。」
『…………』
ユージオ「君は………どうするの?一緒に来る?」
『……大丈夫……』
キリト「……でも、広場の位置、わかるか?」
『………』フルフル
ユージオ「分からないなら、一緒に行こう。」
『………分かった。』
こうして、細剣使いのアスナと一緒にボス攻略会議に行くことになった。
次回『ボス攻略会議』