ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
今回はお久しぶりの戦闘回です!
それではどうぞ!
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ネズハさんの詐欺事件を解決してから6日後、私達攻略組は迷宮区の攻略組を急いでいました。そして、私達のパーティが3日前、20階層にたどり着き、ボス戦まであと1日も無いか、と思われました。それから3日、未だ、ボスの部屋までたどり着けていません。いえ、正確にはもう目の前にボス部屋があるのです。しかし、
「キリト先輩、噂のこと信じますか?」
「……んん…ちょっと信じがたいな。攻略組の平均レベルは10を超えてるはずだし、一階層分で3日もかかるって言うのはおかしいよな。」
「でも、そんなに時間かかるかな?だって、二層の19階層までそんなに強いモンスターは出てこないけど……」
「いや、ほかのプレイヤーからしたらすごい強いけどな、トーラス達。」
「まあ、あたし達が強過ぎるんですよ。でも攻略組のみなさんにとってはそこまで強くない…そう思うのは同感ですね。」
「……でも、詳しいことは聞いてなかったですから、アルゴさんにでも……」
「いや、アルゴだと金がかかるから、俺たちが行こう。」
「いいんですか?今、アスナさんとユウキさんはネズハさんと一緒に体術スキル獲得のクエストを受けてていないんですよ?四人で行くんですか?」
そう、3日前にネズハさんと一緒にあの二人は体術獲得クエストを受けに行きました。私達でもかなりかかったのであの二人がいても、3日で体術スキルを獲得出来ているか……分かりません。
「ああ、大丈夫だろう。安全マージンどころかレベル的に俺たちが一番強いと思うぞ。」
そう、私達は攻略組の中でもレベルが高いそうで…私とティーゼが14、キリト先輩とユージオ先輩は15に達しました。
「……百聞は一見にしかず……ってやつだね。言ってみるしかなさそうだよ。」
「……不安ですけど、分かりました!」
こうして噂の詳細を確認するために二層迷宮区20階層に行くことになりました。
○○○○○○○○○○○○○○○
「……着いたな。」
「はい、そうですね……」
「別に普通だと思うけど……」
「変わらないように見えますよね。」
その2時間後、迷宮区の20階層にたどり着き、ダンジョンを見渡すみんな。
「……ディアベルの話だと、20階層のボス部屋の目の前……らしいな。」
「じゃあ、とりあえず行ってみよう!」
「「はい!」」
○○○○○○○○○○○○○
「んお?あれか!」
キリト先輩はメニューのマップを見ながらとある大きめの部屋(ルームと呼ぶそうです)を指さしました。
「……ここ以外道は無かったみたいだしね…って事はこの先がボス部屋への扉、かな?」
「……そして、問題の場所ですかね?」
「……行ってみるか。みんな、気を引き締めていくぞ!」
「ああ!」
「はい!」
「おー!」
私達は最後のルームへと足を踏み入れました。見えるのは大きな扉。おそらくあれがボス部屋への扉でしょう。すると、すぐに牛男……トーラスが3人ポップしました。
「よし、二人ずつに別れるぞ!」
「「「了解(です)!」」」
大抵、モンスターが2体以上ポップした時は、私とキリト先輩、ティーゼとユージオ先輩で別れて戦います。
『ブモオオオオッ!』
「シッ‼︎」
キリト先輩のスラントでトーラスのソードスキルをハンマーの柄の部分に直撃させることによりキャンセルさせ、スイッチ。
「スイッチ……ハアッ‼︎」
私から叫んで飛んで斬り込みます。
「よし、ラァッ‼︎」
キリト先輩もすかさずソードスキルをお見舞いし、またスイッチ。
「やぁッ‼︎」
『ブモオオオオッ⁉︎』
そして、二連撃ソードスキル『バーチカルアーク』を決めると、トーラスは叫び声をあげながら、砕け散って行きました。
「ユージオ!」
「こっちも倒せたよ!」
「んじゃ、ラスト行くか!」
「「はい!」」
「さあ、ラス……!」
最後の一体を倒すため向かおうとすると、また周りから三体のトーラスがポップしてきました。
「ま、またポップして来るなんて……運が悪いよ!」
「……トーラスは
「とりあえず行きましょう!」
「あ、ああ。そうだな!」
私達は新たに現れたトーラスを倒すためソードスキルを発動し、剣を閃かせました。
私達はまだ知りませんでした。この戦いが予想以上に厳しくなって行くことを。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
「りゃあああああ‼︎」
『ホリゾンタルアーク』で何十体目かのトーラスを倒し、息を荒らげる私。
「はぁ、はぁ、はぁ……き、キリト先輩!」
「おおおッ‼︎」
キリト先輩たちもこれまでにないほどの成果を挙げています。しかし、
「くそっ!何体ポップするんだよ⁉︎今ので60は超えたぞ!トーラスは時間湧きの筈だぞ……何で3分に五体もポップすんだよッ⁉︎ロニエ!ポーションの数はどれくらいある⁉︎」
「もう二個しかありません!」
「ユージオ、ティーゼは⁉︎」
「僕はもう最後だよ!」
「私は3個あります!」
「駄目だな!もう、これ以上戦闘は無理だ!撤退するぞッ!」
「は、はい!」
「わかりました!」
「これじゃ、仕方がない……ねッ!」
ユージオ先輩もティーゼもトーラスと戦いながらも返事をしました。また、トーラスがポップして五体追加されました。
その時でした。猛烈な違和感を感じたのは。ポップした五体のうち、一体だけが周りのトーラスと比べて小さいのです。そして、武器は持っておらず、無防備な状態でした。が、
「カウント、5秒前!4、3、2、1……走れッ‼︎」
キリト先輩の合図でその最後のルームから抜け出したあと、聞こえたんです。
ブォォオオォォォォォォォォ……
あれは、アンダーワールドの……ダークテリトリーの山岳地帯のゴブリンの村で聞いた………
あれは、何だったんでしょうか…
○○○○○○○○○○○○○○○
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「み、みんな!無事かっ⁉︎」
「な、なんとか、ね……」
「離脱が遅かったら、みんな死んでましたね……あれは…」
私達四人は迷宮区を走って脱出してきました。
「……ったく、なんなんだよ、あれ……無理ゲーじゃないか……β時代はあんなに早くポップしなかった筈なんだけどな……」
「……じゃあ、
「ああ、これは悪質過ぎる変更だな。多分あの部屋だけポップペースが圧倒的に早い。あんなんじゃゴリ押しでも行けるかどうか……」
「どっちにせよ、街に戻ろう。ポーションも使い果たしちゃったからね。」
「ああ、街に戻ってディアベルたちと話し合おう。多分、ボス攻略会議がそろそろあるだろ。」
「ディアベルもあのルームに入ったんですかね……」
「ああ、ディアベル自身も行って異常さを感じたらしいしな。」
「そろそろアスナさんたちもクエスト終わってるといいんですけど…」
そう言って街に向かいました。
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街に戻ると、ディアベルさんから攻略会議があるとの知らせを受けました。ポーションなどの買い置きを済ませました。
「………キリト先輩、アスナさんにメッセージを送ってみましたよ。」
「ん。さ、早いとこ攻略会議で話を聞こう。もっと情報が欲しいからな。」
会話をしながら、攻略会議の場所に向かうと、もうほとんどの人が集まっていました。
「……僕ら、遅れてたのかな?」
「……さあな。それで、アスナ達は………あ、いた。」
キリト先輩の目線を追うと、そこにはアスナさんとユウキさんがいました。
「…あれ?ネズハさんは……どこですかね?」
「……!キリト君、ユージオ君、ロニエちゃんにティーゼちゃん!きたのね。」
「あ、ひっさしっぶりー、みんな!元気でやってた?」
「お久しぶりです、アスナさん、ユウキ!あのクエストクリア出来たのね!」
「うん!ボクにかかればあんなのちょちょいのちょいだよ!」
「攻略会議に間に合ってよかったな。それより、ネズハは?」
「ああ、私達より半日ほど早くクリアして出て行ったわ。あなたの渡したアレを持ってね。」
「『僕は先にフィールドに出てレベリングを始めます。レベル10とはいえ戦闘スキルが低すぎますから……迷宮区のモンスターと一対一で渡り合えるくらいに強くなって……また、皆さんと面と向かって話せるように、頑張ります!』、ってネズハは言ってたよ!すごく楽しみだね!」
ネズハさんは変われたようですね。私達が頑張った甲斐がありましたよ。
「それなら安心だが、一人でレベリングをする気なのか?かなり危険なんだけどな……そこが心配だ……」
「大丈夫だよ。ネズハならきっと、負けやしない。ネズハは変わったんだから。」
「期待しましょう、先輩!」
「ああ。」
『おーい、キリト!』
その時、広場の中央から声が聞こえました。
「ディアベルか!久しぶりだな。」
「ああ、久し振り!他のみんなも元気にしてたか?」
「うん、いつもと変わらないよ。」
「元気ですよ、ディアベルさん!」
「ディアベルさんはどうですか?」
「俺かい?まあ、元気だったさ!」
第一層のボス攻略会議の時よりも爽やかで何というか、吹っ切れたような笑顔を見せるディアベルさん。
「………それより、キリト。迷宮区の最上階の最後のルームは行ってきたか?」
「……ああ、行ってきたけど…アレは1パーティじゃ無理だ。ディアベル、あんたがお手上げだって言ったことも頷ける。」
ディアベルさんと迷宮区での戦闘の事を話すキリト先輩。
「……どれくらい倒した?」
「俺達のパーティか?……俺は20体は行くかもな……みんなは?」
「私達は確か、30体です。」
「あたしはロニエと一緒に倒してたんで、キリト先輩より少し多いですけど……」
「僕もキリトと同じだよ。」
「かなりの数を倒してたんだね……俺達のパーティでも計30体ぐらいを倒して、撤退したからな………流石は、攻略組ナンバーワンのパーティだ。圧倒的だな。」
「いや、買い被るのはよしてくれ……」
「……それにしても、キリト達がそれだけ倒してもダメなのか……扉は開かなかったんだろう?」
「?……いや、扉に触れることすら出来なかったけど……その言い方だと、まさか開かなかったのか⁉︎」
驚いたように言うキリト先輩。確かにボス部屋への扉が開かないなんて、驚きです。
「……それでも、何かしらの条件があるんだろ。絶対にクリア出来ないゲームなんて、ただのクソゲーだ。茅場晶彦がそんな事をするはずがないしな……あいつはそう言うところに関しては変にフェアだ。何か、あるはずなんだけど……んでディアベル、あんたが考えたのがトーラスの討伐数か……」
「ああ。そう思ってたんだが……」
「…僕たちは4人で行ったから扉に触れることすら出来なかったんだよ。その時に確かめられればよかったけどね……」
……今言っても後の祭り、ですね…
「……よし、みんな!それじゃあ、会議を始めようか!」
その声にみんなが振り向き、期待の眼差しでディアベルさんを見ました。
「…と言っても、会議じゃなく情報交換って感じだけどな!今回の会議では最上階の最後のルームについてだ!昨日、俺達のパーティがそのルームに入ったところ、トーラスが倒すたび倒すたびに湧いてきた。俺達のパーティが30体ほど、キリトのパーティは60体ものトーラスを倒したが、変わった事はなかった。」
その言葉を聞いて周りがざわつき始めます。
「でぃ、ディアベルさん!それじゃあ、トーラスをどれだけ倒してもクリア出来ないんですか?」
ディアベルさんのパーティの……確かシミター(でしたっけ?)使いのリンドさんが聞きました。
「…まだ分からない。まだ俺たちを加えて4パーティしか行ってないから、情報は限りなく少ない。だから、俺達は今から、そのルームに行く!」
『『おお…!』』
「攻略組のみんなが余裕で入れるくらいの広さだったから、みんなで戦える!みんな、いいか⁉︎」
『『『『おおおおお‼︎‼︎』』』』
みんな雄叫びをあげて答えました。
「……さて、俺達も気合を入れて行くか!」
「「「「「おおー‼︎」」」」」
そして、私達も覚悟を決めて迷宮区へ向かいました。
○○○○○○○○○○○○○○○
「また、来ましたね……」
「ああ。リベンジってとこか…」
私の呟きに対して《再挑戦》の意味を持つ神聖語を使って返すキリト先輩。
「……大丈夫なのかな、キリト。作戦会議をしたっていっても、全く攻略方法がわからないんでしょ?」
「……ああ。まあ、全く情報がないから俺たちが探るしかないんだよ。」
「ディアベルさんも流石にお手上げってことですね。」
「ああ。さて、そろそろだぞ。」
「みんな!今回は情報を得るための戦いだ。まあ、勝ちたいっていうのが山々だけど、今はこのルームの突破条件を見つけ出そう!」
『『『『おおおおお‼︎‼︎』』』』
「よし、俺たちも行くぞ!」
「「「「「おおー!」」」」」
私たちもディアベルさんに続いてルームに入りました。
○○○○○○○○○○○○○○○
「はぁっ‼︎」
『ブモオッ⁉︎』
「スイッチ!」
「おお!オラァッ!」
ズバシュッ!
爽快な音が響きトーラスが倒れて行く。
あれから十分。
攻略組は問題なくトーラスを屠続けていました。私たちも順調に倒していきます。
「……ディアベル!数が少しずつ多くなって来た!警戒しておいたほうがいいぞ!」
「分かってる!あれから何度も扉を開けようしたが、開かないんだ!」
「……みんなでもう100体くらい倒したはずなんですが⁉︎」
「……討伐数で開くってわけじゃないらしいな。」
「……もうすぐ湧くぞ!気をつけろ!」
ディアベルさんの大声が飛んだ直後、また10体のトーラスが現れました。
「キリト!間髪入れずに行くよ!」
「ああ!」
キリト先輩とユージオ先輩がトーラスの群れに向かって突撃して行った時、私は何か違和感を感じました。
トーラスに何か違和感が…
よくトーラス達を見ると、一体のトーラスが私たち攻略組のメンバーから逃げるようにルームの端へと走っていきます。
そして、そのトーラスの左腰にぶら下げていたあるものを手に取り、口元に持っていき、大きく胸を膨らませ…
低い音色を鳴らしました。
「……こ、これって…あの時も聞いた………」
思い出しました!
これはダークテリトリーの山岳地帯のゴブリンの村で聞いたことがあります!あれは……
角笛は味方に危険を知らせたり、呼んだりする時に使うそうです。だから、あのトーラスはトーラスを呼ぶ……あのトーラスの出現条件はある一定のトーラスの討伐…もしかすると、何体倒せばいいかはルームの中に入った人数で決まるのかもしれません……
「キリト先輩!トーラスのタゲ取りお願いします!」
「分かった!」
トーラス達に一発ずつ攻撃し、一時的に自分にターゲットを移すキリト先輩。
その先輩に向かってトーラスが向かい始めました。それにより、角笛持ちのトーラスを守る役割を担っていたトーラスも移動する。
「……そこがガラ空きですよ!」
角笛トーラスに向かって私は疾駆します。
「ぜやあああああ‼︎」
ソニックリープで空中を飛び、角笛トーラスに一撃を入れます。
『ブモオオオオッ⁉︎』
トーラスが反撃に拳を振るいますが、そんなの遅すぎます!避けるのは簡単です!私のレベルなら、あと2連撃ソードスキル一本で……
「やぁあああ!」
バーチカルアークをトーラスのムキムキの胸板に叩き込むと、トーラスは悲鳴をあげながら四散していきました。落ちる角笛。私は勝利を確信……そして、油断していました。その時、
「危ない、ロニエッ‼︎」
キリト先輩の切迫した声が聞こえました。
「え?」
後ろを振り向くとそこには、斧を振り上げたトーラスが立っていました。
トーラスが斧を振り下ろし、私を一刀両断する……ことはありませんでした。
私は誰かに抱かれて吹き飛んでいました。
「っ⁉︎」
「ぐッ⁉︎」
叩きつけられて上を見上げると、
「ッ/////⁉︎」
「くそっ……すまん、ロニエ!立ってすぐ行くぞ!」
「あ、は、はいぃ///////⁉︎」
うう……キリト先輩の顔が目の前に……っていうか、抱きつかれた///⁉︎ち、違う!今は戦闘に、しゅ、集中!
「ロニエ、お前の考えは間違ってなかったぞ!多分、あの角笛がトリガーなんだ!」
「や、やっぱりですか……」
「でも、あの角笛を持ったトーラスを倒してもダメなんだ。
「!」
その言葉を聞いて、さっきのトーラスを見ると落ちた角笛を拾っていました。
「だから、俺達が角笛持ちトーラスを倒す。だから、ロニエは角笛を破壊してくれ。頼んだぞ!」
「……わかりました!」
「よし、行くぞッ!」
「はい!」
そして、キリト先輩とユージオ先輩はもうすでにこのことを話していたのか、二人で角笛持ちトーラスの元へ疾駆していきました。
「私はしっかり時期を見ておかないと……」
「ロニエちゃん!」
「ロニエ!」
その時、二人のプレイヤーが私の元に走ってきました。
「ティーゼ、アスナさん!」
「私達があなたの援護をするわ。」
「しっかり決めてもらわないとね!」
「ありがとうございます!」
そして、キリト先輩の方を見るとトーラスの天命……HPゲージを8割程削りきれていました。
「………そろそろですね。」
「オラァ!」
キリト先輩の剣がトーラスを切り裂き、HPゲージを完全に削り取った瞬間、私は走り始めました。それを阻むトーラス。
「させないわ!」
「邪魔すんなッ‼︎」
二人はそのトーラスをソードスキルを打ち込んで、止めます。
そして、私は角笛目掛けて飛びました。
空中でソニックリープを発動させ、その名の通り凄まじい速さで宙を駆け抜けました。
「やあああああああああああ‼︎」
そして、角笛に剣を一閃。
その直後、角笛は真っ二つになり砕け散りました。
「ディアベルさん!皆さんに指示を!」
「…!……みんな!反撃だ‼︎奴らを返り討ちにしてやれ!」
『『『『おおおおおおおおお‼︎』』』』
そして、その後10分後には全てのトーラスが討伐されました。
次回『大佐と将軍の前哨戦』
次出すお話のタイトル『あの日、あの時、あの場所で。』(番外編)
今年中には第二層を終わらせたいなぁ……と思っております。頑張って行きたいと思います!