ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
ついにボス戦突入!
それではお楽しみください!
「……いよいよ、ボス戦ですか……」
禍々しいボス部屋への扉を前にして、感嘆してしまう私。一昨日の戦いでトーラスがいなくなってしまったルームでみなさんは最後の準備をしています。このルームはアルゴさんによると、一度角笛を破壊すると新しいトーラスがポップするまで一週間かかるそうです。
「ああ、やっとだな。一昨日の事件もあってみんな気は引き締まってるとは思うけど、今回もすごいボスだからな……」
「すごいボスってどんな感じ?」
「……まあ、でかい牛男だ。そんでもってボスだけが持ってる特殊攻撃が危険だ。」
「うへぇ……まだ牛男っすか?俺、もう嫌っていうほど見て来たっすから、もう冗談抜きで見たくないっす。」
「……Я не хочу(嫌だ)!もう見たくないですネ……」
ボス部屋の前で再開したベルさんとナギちゃんはエギルさんのパーティに入っています。
「攻略会議でも聞きましたけど、2体もいるんですよね?」
「ああ。中ボスの大佐…ナト、んでボスの将軍であるバランだ。両方でかいし、特殊攻撃もあるが、大きさなんか第一層ボス戦でもわかっただろう?それに特殊攻撃も気をつければいけるさ。」
「……だといいんですけど……」
「……まあ、油断はできないな。第一層と同じようになにかが変わってる………いや、何もかも変わってる可能性もある。」
「……ディアベルと話した通り、その時は撤退するんだよね。」
「ああ。」
今回のボス攻略戦の注意点などを話している私達。後ろでユウキとアスナさんが何かを話しているようです。
「うーん……第二層のボス……(な、なんだったっけ?うーん…)」
「…どうしたの、ユウキ?」
「えっ⁉︎いやいやいやいや何にもないよっ‼︎」
「……?」
「……そういえば、ベルさんは主武装を変えたんですね。両手剣ですか…」
「…………はいっす。ちょっと理由があって……しょうがなくッスけど……」
「……ネズハさん、来てませんね……」
「まさか、レベリングの途中で……」
「……ネズハが来ればフルレイドだったのにな……」
すると、ボス部屋の前でディアベルさんが『注目!』と大きな声で言いました。
「みんな!これから、ボス攻略戦を開始する。作戦は昨日のボス攻略会議で話した通りだ!ABパーティが将軍のアタッカーを、CDパーティがブロッカーを、Eパーティにはデバフ、EFGパーティには大佐を相手してもらうけど……いいか?」
今回のパーティはGがキリト先輩、ユージオ先輩、私、ティーゼ、アスナさん、ユウキちゃんとなっていて、ベルさんとナギちゃんはエギルさんのパーティに入っています。
「ああ。大佐なら3パーティでも、十分だとは思うけど…」
「そうか、なら任せるとしよう!十分気をつけてくれ!」
「分かってるさ。」
『ちょっと待ってくれ!』
キリト先輩が返事をすると、ボス部屋の扉の左にいたパーティのリーダーが一声をかけて来た。レジェンドブレイブスのオルランドさんでした。
「我々はボスを倒しに来たんだ。ローテーションならともかく、取り巻きを倒すなんて納得出来ない。」
「……分かった。それじゃあ、アタッカーのローテーションとして参加してもらおうと思うけど……キリト、どうだ?いけるか?」
「……2パーティでは無理があるかも知れないぞ。何せ大佐は取り巻きとは言うが、ただの雑魚じゃないしな。」
「その通りだ。中ボスクラスのモンスターだって事前情報にも、キリトの情報にもあった筈だ。」
ディアベルさんの言葉にキリト先輩とエギルさんが抗議します。
「やはりそうか……わかった。オルランドさん、将軍のアタッカーのローテーションとして来てもらうが、キリト達が大佐を2パーティで耐えきれなかった場合は大佐の対処に向かってもらうけど、いいかい?」
「……分かった、それで行こう。一応、イレギュラー……β時代と違った時は一旦撤退で変わらないな?」
「ああ、死人は絶対に出させないさ。」
「最後にもう一度、ボスの注意事項を言っておいたほうがいいんじゃないかな、ディアベル?」
「ああ。ボスの注意事項としてはトーラス族の特殊攻撃の《ナミング・インパクト》と将軍の《ナミング・デトネーション》は武器の発動をしっかり見て確実に避けてくれ!特にデトネーションの方はインパクトより範囲が広いから絶対に受けないようにしよう!ナミングを二回連続で受けると《
その注意事項を聞いて深く頷く攻略組の皆さん。そして、ディアベルさんがボス部屋への大扉を押し開けました。
「………それじゃあ、行くぞ‼︎」
「「「「おおおッ‼︎」」」」
ディアベルさんの声に雄叫びで返して、皆さんはボス部屋へ入って行きました。
「……俺たちも行くか!」
キリト先輩の言葉に頷いて私たちもボス部屋へ入って行きました。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
「ナミング来るぞ!」
キリト先輩の掛け声と同時に2パーティが後ろへ跳んで、牛男の大佐……正式名称《ナト・ザ・カーネルトーラス》から距離を取ります。
『ヴゥゥヴォオオオオオオオオオオーーーーーッ‼︎』
凄まじい雄叫びをあげて巨大な鉄槌……稲妻を纏ったハンマーを振り下ろし、青黒い敷石を激しく叩きました。すると、衝突点を中心として細い稲妻が放射線状に拡散しました。私達は余裕を持って避けているので《
「全力攻撃一本!」
キリト先輩の指示に答えて、パーティ全員が最大威力のソードスキルをボスに叩き込みます。
「…順調ですね!」
「ああ。こいつのHPゲージも半分切ったからな……けど油断はしないでくれ!三本目まで行くとナミングを連発して来るからな!」
「あと、キリトの時と変更がある可能性があるから、みんな気をつけて‼︎その時は一旦引くからね!」
キリト先輩とユージオ先輩が注意し、みんながそれぞれに返事をしました。大佐が立ち直り、同時に私たちもスキル冷却時間も終了しました。
大佐の横殴りの範囲攻撃が来ると予想したエギルさんたちが、その軌道上で防御態勢を取ります。私達は少し後ろに下がりカウンター攻撃の時期を図っています。
ボス攻略戦が始まって5分ほどが経ちました。
私達、大佐攻略組は順調に大佐の体力を削っています。さっきの攻撃で半分を切ったので、あと少しです。
「……本隊の方は……」
そう言って私が振り返るとボス部屋の奥には私達が相手取っている大佐より一回り大きなモンスターがいました。
「回避‼︎」
ディアベルさんの一声で本隊の攻撃隊は一気に下がり、この第二層のボス、正式名称《バラン・ザ・ジェネラルトーラス》の放つ特殊攻撃である《デトネーション》を易々と回避します。デトネーションは大佐の《インパクト》より射程距離が2倍なので避けにくいそうです。バラン将軍はナト大佐の2倍の体の大きさを誇り、真っ赤な全身、腰に装備している鎧は光り輝く金色でした。ちなみにナト大佐は全身真っ青で、装備は腰巻きとハンマーだけです。
「A隊B隊、ソードスキル一本!」
そして、《デトネーション》を避けてバラン将軍が動きを止めているその隙に攻撃隊の皆さんは一気に詰め寄り、最大威力のソードスキルを叩き込みます。
前を見ると、エギルさんたちがガードをする直前だったので、キリト先輩達と走り出し、エギルさんたちがガードをした直後にソードスキルを当てて、後ろに下がります。
「……本隊の方も順調だな。向こうはもう3分の2以上削ってんじゃねえか。」
回復のために一緒に下がってきたエギルさんが本隊の方を少しして清々しい笑みをこぼします。
「ああ。なんだかんだで手こずりそうだったと思ってたんだが……」
「流石は、アインクラッド初の攻略組リーダーですね。」
「あれだけの人数を動かすんだからね……ディアベルじゃなきゃ出来ないよ。」
「あたしたちもはやくナト大佐を倒しましょう!」
「そうだね、ティーゼ!」
「次、来るよ!」
アスナさんの言葉でナト大佐を見ると、HPゲージが最後の一本に入りました。
「さあ、削り取るぞッ!」
キリト先輩の喝の直後、ナト大佐がこれまでより増して猛々しく吠えました。
ナト大佐が吠えた後、足にある蹄で踏ん張り、二本の角が生えた頭を屈めました。
「突進くるぞ!頭じゃなく尻尾を見ろ!尻尾の対角線上に来る‼︎」
その言葉でナト大佐の尻尾を見るとエギルさんの方を狙っていることが分かりました。
「バレバレ…だッ、と!」
エギルさんはナト大佐の突進を危なげなく避けてナト大佐の背中に両手斧ソードスキルを一本当てました。そして、私もボスが突進を終え、動きを止めている隙に一発ソードスキルを当てると、ナト大佐の頭の上に黄色い光が回っています。《
「チャンス!全員最大ソードスキルをぶちかませ‼︎」
キリト先輩の言葉を聞いた瞬間に私たちはナト大佐に一斉にソードスキルを叩き込みました。
HPゲージが半分まで減ってイエローゾーンに入ると、ナト大佐の体が青紫色になり暴れ出します。これが死に際の《
「……これが《
「ああ、1.5倍になるだけで落ち着いて見極めれば対処できる………」
そうキリト先輩が説明した時、ボス部屋の奥で喜びの声が上がりました。
「‼︎」
「あっ!」
振り向くと、なんと、バラン将軍の最後のHPゲージが半分の黄色に染まっています。
「………順調に行きすぎて怖くなるな…」
「いいじゃないですか!あと少しで終わるかもしれないんですよ?」
「……分かってはいるけど……今までの流れからしてなんの変更も無かった。変更があったのは第1層のコボルド王だけなのか……?」
「……!」
その時、アスナさんの表情が変わりました。何か、悩んでいるような、迷っているような……
「どうしたの、アスナ?」
ユージオ先輩が聞くと、アスナさんは口籠もりながら答えました。
「………ううん、ただの考えすぎだと思う…」
「……?どうしたのさ、アスナ?なんでもいいから言ってみてよ!」
ユウキちゃんがアスナさんにそう言います。
「……あの……第1層のボスが《王》だったのに、なんで第二層は《将軍》なんだろうって……」
アスナさんが迷いながらも答えた直後、後ろからゴゴォンッ!という大きな音が聞こえました。
戦闘時には聞こえなかった重く低い音。
後ろを向くと、ボス部屋の中央に石でできた階段……いえ、舞台のようなものがありました。
そこに少しずつ巨大な影が浮かび上がってきます。
「…うっ⁉︎」
キリト先輩が小さくうまくと同時にその影が光に照らされて、その姿が見えました。それはバラン将軍よりも一回り大きく、角が6本も生えており、より一層強そうに見えました。腰に巻いているのは黒い腰巻と鎧、上半身は裸で頭には王冠が付いていました。
その巨大なモンスターの名は《アステリオス・ザ・トーラスキング》。これがこの第二層の真の王の名でした。
次回『鍛治師よ、英雄になれ』