ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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こんにちは!クロス・アラベルです‼︎
今回は連続投稿します!
どうぞ!


鍛治師(少年)よ、英雄になれ

 

 

 

 

 

 

 

『ヴゥゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ‼︎』

 

 

「………っ⁉︎」

 

ボス部屋の中央に現れた真の王《アステリオス・ザ・キングトーラス》。真っ黒な体に白銀の鎧。上半身には何もないが、その頭にはトーラス族の王だということを示す王冠が輝いていました。バラン将軍の何倍もの迫力を乗せた鋭い咆哮を放つと同時にアステリオス王の周りに落ちる雷。

 

「…………全員、ナト大佐に全力攻撃ッ‼︎」

 

そのキリト先輩の掛け声で我に帰り、ナト大佐を見ると青紫色になって暴れようとしています。

 

皆さんが走り出すと、キリト先輩が走って飛び、ソードスキル《スラント》を発動させてナト大佐の角と角の間……額に攻撃しました。

 

『ウヴルヴオオッ⁉︎』

 

攻撃が成功し、叫び声を上げて体を反らしました。トーラス族に類するモンスターは大体、角と角の間の額が弱点だそうで、そこを攻撃すると、高確率で《行動遅延(ディレイ)》します。

 

体を反らした直後、2パーティが全力のソードスキルを当てるとHPゲージがほんの少しだけ残りました。

 

「……ッ‼︎」

 

「はぁッ‼︎」

 

キリト先輩が空中で体術ソードスキル……一回転した勢いをそのまま使って相手に踵落としを食らわせる……《水月》が、ナト大佐の後ろにいたユージオ先輩が体術ソードスキル《閃打》を当てて、HPゲージを削り取り、ナト大佐を倒しました。

 

「行きましょう、キリト先輩‼︎」

 

「…ッ……ああ!アステリオス王の右側を走ってディアベルの所へ行く!王とは戦うな!王がディアベル達の元にたどり着く前に、飛び入りして速攻で倒す!俺についてきてくれ‼︎」

 

「分かりました!」

 

「了解‼︎」

 

ナト大佐が砕け散るのに眼も呉れず、キリト先輩が指示を飛ばします。

 

私が行きましょうと行った時、何故か複雑そうな表情をしたのが気になりますが……それはまた後です。

 

キリト先輩の視線の先……真のボス、アステリオス王を見て思わず冷や汗を垂らす皆さん。

 

 

キリト先輩がアステリオス王を大きく避けながら右に迂回します。不幸中の幸いと言うべきでしょうか、アステリオス王はとても足が遅く、余裕を持ってディアベルさん達のいる本隊に合流出来ました。

 

「う、うぐぅッ⁉︎」

 

「ゆ、ユージオ先輩⁉︎」

 

ですが、途中でいきなりユージオ先輩が頭を抱え止まったので、ティーゼが心配そうに呼びます。

 

「…行って……はや、く……!」

 

「っ!………はいッ‼︎」

 

ユージオ先輩に言われ、ティーゼも遅れながらも走ってきました。

 

バラン将軍のHPゲージはもう赤く染まっており、《暴走状態(バーサーク)》に入っていました。そんなバラン将軍に本隊も、そのみんなを率いるディアベルも攻めあぐねていました。

 

「き、キリトッ⁉︎」

 

「おお…らあッ‼︎」

 

キリト先輩が直前にスキル冷却時間が終わっていたソニックリープを再び空中で放ち、トーラス族の弱点である額に直撃させました。《行動遅延(ディレイ)》になって本隊と私たちナト大佐組のソードスキルの嵐に会うバラン将軍。しかし、ナト大佐の時と同じようにHPゲージがほんの少し残ってしまいました。

 

「やあああッ‼︎」

 

「またか…よッ‼︎」

 

私とキリト先輩の体術単発ソードスキル《閃打》でHPゲージを削り取り、すぐさま後ろを向いて本隊に何かを伝えようと口を開きました。

 

 

その時。

 

 

 

 

 

 

 

「うああああああああああああああッッ‼︎⁉︎」

 

 

 

 

 

ユージオ先輩の叫び声が聞こえました。

 

 

「___」

 

ユージオ先輩はすぐ近くに来ているアステリオス王に向かってソードスキル《ソニックリープ》放とうとしていました。

 

剣が翡翠色に光り、加速するユージオ先輩。

 

それに対し、アステリオスは………硬い胸元をまるで風船のように膨らませ、体を思いっきり反らしていました。

 

そして赤黒い眼が一瞬光りました。

 

 

見たことのない動作に躊躇し、動きが止まる私と近くにいたアスナさん。

 

あれは………幾度となく見て来たもの。私と一緒に騎士の仕事を全うしていた仲間………《月駆》の、《火炎放射(ブレス)》。

 

「ロニエ、アスナ、右に跳べ‼︎」

 

キリト先輩の叫び声にも似た指示に、私とアスナさんは直後に床を蹴ります。

 

 

キリト先輩は私達が床を蹴った時にはもう私達の真後ろにいました。

 

そして、キリト先輩が私とアスナさんの肩を持ち、再び床を蹴りました。

 

ゆっくりと、ゆっくりと不思議な床の模様が流れて__.......

 

 

 

 

 

視界が真っ白に染まる。

 

 

 

 

 

その音は、まるで雷鳴。ユージオ先輩の攻撃は間に合わず、ユージオ先輩はもちろん、攻略組の約半分が……まさしく雷電放射に飲み込まれていました。

 

私達は軽く吹き飛ばされ、HPゲージは2割ほど減り、ゲージの上には緑色のマークが現れました。体の感覚が一気に遠のき、まるで何かに縛り付けられているような…

 

 

そう、私達は《麻痺(パラライズ)》にかかってしまったのです。

 

 

私達は絡み合ったまま床に叩きつけられてしまいます。私とアスナさんはキリト先輩を覆うように上に被さっています。

 

「……ふた、り………とも……ポーション………で、ちりょ…う、を…!」

 

キリト先輩は麻痺にかかりながらも私たちにポーションを渡そうと右手で腰にある小さなカバンの中を探ろうとしています。

 

私たちが見えたのはボスの目の前に倒れているユージオ先輩。

 

後ろを見るとディアベルさんやキバオウさんも倒れています。

 

そして、ユージオ先輩の所へ駆けつけるティーゼ。さっきの遠隔攻撃を奇跡的に避けられたようです。

 

「……なんで、来たの」

 

「!」

 

ちょうどポーションを飲み終わったアスナさんがすでにポーションを飲み干したキリト先輩に苦し紛れに聞きます。

 

「……そう、ですよ………なんで……わた、したち…の所へ……」

 

私も聞きます。すると、キリト先輩は表情を歪めながら、こう答えました。

 

「………わから、ない……」

 

 

それを聞いて、自然に涙が溢れでて来ました。

 

 

頭をキリト先輩の右肩に預け、思い出します。

 

 

 

あの時と、変わらないそのお人好しな性格。

 

 

その表情は、あの時…………修剣学院で助けてもらった時の表情にとても似ていました。

 

 

 

だから、私は………

 

 

 

 

 

あなたのことが好きになったんですよ?

 

 

 

 

 

私は最期に伝えたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでまた死ぬなら、あなたに……この《想い》を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、キリト先輩の眼が見開かれました。私達の後ろ、アステリオス王を見ながら。

 

どうしたのだろうと、そう思った直後。

 

 

 

クワァアンッ!

 

 

甲高い金属音が鳴り響きました。

 

それに驚き、なんとか後ろを振り返ると、空中を白い光を纏った何かが飛んでいます。アステリオス王は後ろに仰け反り、悲鳴をあげます。

 

そして、その白い光を纏った何かがボス部屋の入り口の方へと飛んでいき……

 

何者かの手に渡りました。

 

 

目を凝らすと、そこには………

 

 

 

 

 

 

ネズハさんがいました。

 

 

 

 

 

すると、私達は誰かに服の襟元を掴まれて後ろに引きずられて行きます。

 

「すまねぇ!オレとしたことが竦んじまった!」

 

「Вы в порядке⁉︎(大丈夫⁉︎)」

 

私達を運んでくれているのは、エギルさんと、ナギちゃんでした。

 

ユージオ先輩もティーゼによって後ろに運ばれていました。

 

「……あいつは……⁉︎」

 

ネズハさんが詐欺をしてしまったことを知らないエギルさんや、他の攻略組のメンバーが驚いて目を見張っています。

 

「遅くなってすいません、皆さん‼︎」

 

そう言いながら、ボス部屋の奥へと進むネズハさん。

 

それを見て、一番驚いていたのは、《レジェンドブレイブス》の皆さんでした。

 

「………ネ……」

 

リーダーのオルランドさんがネズハさんのことを呼ぼうとしますが、声はすぐに途切れました。まだネズハさんとの関係をひた隠しにしようとするようです。

 

なにも言わない仲間を見たネズハさんは沈痛な表情を浮かべましたが、すぐに毅然と叫びました。

 

「僕がギリギリまでボスを引きつけます!その間に、態勢を立て直してください‼︎」

 

ネズハさんはそう叫んで、ボスを睨みつけます。

 

「……エギル、あいつにブレス攻撃の……」

 

キリト先輩は多分、「時期(タイミング)を教えてくれ」と言いたかったのでしょう。たしかにネズハさんが来たのは恐らく私達がブレスを受けた後。ということは雷電放射(あの攻撃)について知らないはずです。

 

ですが、アステリオス王はキリト先輩がそれをエギルさんに伝える前に《雷電放射(雷ブレス)》の予備動作を始めました。

 

ネズハさんは立ったまま、ボスを見上げています。

 

「避けろ‼︎」

 

ディアベルさんが今、指示できない中、シミター使いのリンドさんがそう叫びました。

 

しかし、ネズハさんはそれよりも早く俊敏な動作で左に跳んでいました。

 

そのおかげで、アステリオス王の《雷電放射(雷ブレス)》を余裕で避けられました。

 

な、何故、ネズハさんが《雷電放射(あの攻撃)》の回避時期(タイミング)を⁉︎

 

『ブレスを吐く直前、ボスの眼が光るンダ。』

 

そう驚いていると、横から聞き慣れた……こんなところでは聞くはずのない声が聞こえました。

 

私の横……誰もいないところが歪み、そこから両頬に三本ヒゲを塗った私より小柄なプレイヤー……アルゴさんが現れました。

 

「いつまでへたり込んでるンダ?麻痺、もう回復してるゾ。」

 

そう言われて、HPゲージを見ると、《麻痺(パラライズ)》の表示が消えていました。

 

「はい、みんな!落とした剣、拾っておいたよ!」

 

ユウキが私達の剣を持って走って来ました。

 

「ありがとうな、ユウキ。」

 

「ありがと、ユウキ!」

 

そうお礼を言って受け取り、剣を構えます。

 

「みんな!今、ボスのブレスについての情報を手に入れた!さあ、反撃を始めよう‼︎」

 

「「「「「おおおおおおおおおお‼︎‼︎」」」」」

 

ディアベルさんもちょうど回復したようで、みんなに戦闘継続を指示する。

 

「A隊D隊、前進!」

 

その掛け声で、重装甲の(タンク)部隊がアステリオスの足に体当たりにも似た攻撃を仕掛け、タゲをネズハさん一人から本隊に移す。

 

「ネズハ‼︎」

 

キリト先輩が呼びかけると、前と変わらず弱々しくはありますが、一本筋……いえ、剣の通った笑みを浮かべて、右手にある投擲武器を掲げました。

 

ネズハさんの持つ武器の名は《チャクラム》。投剣スキルと体術スキルの両方を持っていなければ、扱えない特殊な武器です。

 

そして、つい最近体術スキル取得クエストをクリアし、ずっとレベリングして、今やってきたみたいです。

 

「やああっ‼︎」

 

私達の目の前でソードスキルを発動させ、チャクラムが黄色い光を帯びながら、ボスの弱点である額に直撃。

 

ボスは《行動遅延(ディレイ)》に陥り、本隊の《攻撃隊(アタッカー)》の総攻撃がアステリオス王を襲います。

 

「夢、みたいです。僕が……ボス戦で、こんな……」

 

ネズハさんは震えた声でそう言うと、後半をぐっと飲み込んで、代わりに叫びます。

 

「僕は大丈夫です!皆さんも前線に加わってください!」

 

「分かった!」

 

「雷ブレスを優先的に行動遅延(ディレイ)で潰してくれ!」

 

「頼んだよ!」

 

皆さんはそれだけ言って、キリト先輩は私達2パーティを見ます。

 

「………俺たちも、行くぞ!」

 

『『『了解‼︎』』』

 

そうみんなで頷いて、走り出しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから30分。

 

アステリオス王のHPゲージはもう最後の一本が赤くなりました。

 

あともう少しで倒せます。私たちも、スイッチで入れてもらい、ソードスキルをボスに叩き込んでいました。

 

『ヴオオオオオラアアアアアアアアアアッ‼︎‼︎』

 

すると、ボスがそうはさせるかと言わんばかりに《雷電放射(雷ブレス)》を発動させようと、大量の空気を吸い込み始めました。が、すかさず飛来したチャクラムによってそれは阻止され、のけぞったボスの鼻でバフッと雷が爆発します。

 

「……なあ、ロニエ。」

 

「……はい、何ですか?」

 

その直後に本隊の総攻撃を受けて、怒り狂い、踏みつけ(ストンプ)を三連発した後、ハンマーを高々と振りかぶり、《デトネーション》を発動させようとしています。

 

「……このままレジェンドブレイブスの奴らに全部持っていかれるのもアレだからさ………」

 

「………?」

 

「抵抗しないか?」

 

「………抵抗って、何をするんですか?」

 

「………ラストアタック、貰って行くんだよ。」

 

「……………いいんですか?」

 

「ああ、いいんだ。全部持っていかれるのも嫌だし、この二層で練習してきた左手持ちのソードスキルもここで試して見たいしな。」

 

「だ、大丈夫なんですか?こんな時に……」

 

キリト先輩はこの層に来て私の剣の詐取があってから、利き手ではない左手で剣を使う練習をしていました。ですが、こんな非常時にやるなんて……

 

「大丈夫だ、問題ない。じゃあ、ジャンプして………」

 

「……《レイジスパイク》で決めるってことですよね?」

 

「……分かってるじゃないか、ロニエ。行くぞ……3、2、1……GO‼︎」

 

それを見て本隊は一気に下がり、《レジェンドブレイブス》は果敢に前に出て、大技ソードスキルを構えます。

 

それと同時に私達は走り始めます。

 

「エギル、ナギ‼︎」

 

エギルさんとナギちゃんに合図を送ると、二人はこれからやることを察したのか、攻撃を一旦やめて、両手斧と両手槍を構えます。

 

「せーのッ‼︎」

 

私達は同時に跳躍して、構えていたエギルさんとナギちゃんの両手斧両手槍に片足で乗ります。

 

「オラアアアッ‼︎」

 

ypaaaaaaa(ウラアアアアア)‼︎」

 

掛け声とともに私達をそれぞれの武器で上に飛ばします。

 

そして、最高点で私とキリト先輩はソードスキル《レイジスパイク》発動させます。

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおッ‼︎‼︎」

 

「やあああああああああッ‼︎‼︎」

 

 

 

 

ソードスキルで加速して、アステリオス王の弱点である額を王冠ごと貫きました。

 

 

 

『ヴォッ………⁉︎』

 

 

 

そしてアステリオス王は叫ぶことも出来ず、ガラスの破片となって爆散しました。

 

 

 




次回「英雄の代償」

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