ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

30 / 119
すごく遅れてしまいました!クロス・アラベルです!
えっと、明日にはまた一話投稿します!
ちなみに今回はキリト目線です!
それでは、どうぞ!




未知の領域

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中、進み続ける俺達。

 

ユージオとティーゼの行動によって、完全にクエストが未知のものになったのに気付いたのは5分前。

 

「………このクエスト、これからどうなるんだよ……」

 

そう、これが一番不安なことだ。このSAOでは元ベータテスターの知識、経験、テクニックが最重要になってくるのに………βの時にあった戦闘の分岐点を通り過ぎて、なんか分からないが二人の騎士……黒エルフのお姉さん、『キズメル』と俺の知らない森エルフのお姉さんが一時共戦締結を結び、奪われてしまった秘鍵を奪還するために横に並んで歩いている……まあ、かなり間は空いてるが。

 

あの二人の騎士によると、『堕ちた(フォールン)エルフ』に秘鍵を奪われたとか。

 

でも、この層では『堕ちた(フォールン)エルフ』は出て来ないはずなのだ。出てくるのはもっと上の層で、レベルが高い。エンカウントしたら勝てるかどうか、すごい不安だ。まあ、俺たちはこの第三層においての最大レベルに上がってる。これ以上上げようとすると、ちょっとばかし、きつめのレベ上げをしなければならない。

 

ナギは14、ロニエとティーゼとアスナは15、ユウキが16、俺とユージオにいたっては17だ。もう、これまでのようにスムーズなレベルアップは見込めないだろう。

 

もう一つの心配なことは、第2層のボス戦後の件……もっと言えば、ベルについてだ。あの後、ベルは『俺は納得できない』と言って第2層の迷宮区に降りて行った。あの時のベルの目は親の仇を見るかのようだった。その目は恐怖を感じるほどに冷たく鋭かった。

 

「……フレンドの方を確認しとくか。」

 

そう呟いて、メインメニューを開いて、フレンド一覧表を出す。

 

「……っ!」

 

ベルが俺とのフレンド登録を消去したのか、そこにはベルの名前がなかった。多分、ユージオ達も同じだろう。

 

「……ベルの奴、一体どうしたんだ……」

 

「先輩、モンスター来ましたよ!」

 

「お、おう。」

 

ロニエの声で意識を現実に……いや、仮想世界に戻された。抜剣し、現れた『トレント・サプリング』一体とと『バイティング・ウルフ』三体を相手取る。

 

『ふッ!』

 

『シッ!』

 

エルフ騎士の二人は前にいた『トレント・サプリング』を通常攻撃二発ずつで葬った。

 

あの二人、強すぎるような気がする。俺達も人のことは言えないかも知れないが、レベルはどれくらいなのだろうか。15、6ほどはありそうだ。

 

「……お二人ともすごい強いですね、先輩。」

 

「……ああ……ロニエ、お前とレベルは変わらないかも知れないな。」

 

「……βの時は、あんなに強い女性を斬らなきゃいけなかった訳?」

 

「いや、βの時は片方が男だって言ったろ?多分、今の俺たちじゃ、太刀打ち出来ないな。」

 

「………今のクエストで、良かったわ。」

 

会話に途中で入って来たアスナはポツリと、安心したように呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………近いですね……』

 

『……もうそろそろだ、人族の剣士よ。武器を持て、始めるぞ。』

 

それからまた5分ほど歩くと、二人の騎士が俺たちに戦闘準備を促して来た。

 

「……なんでわかるんだろう……僕等の索敵スキルには反応はないのに…」

 

「……エルフの勘ってやつじゃないかな?エルフって耳が良さそうだしね!」

 

「……そう、なのか?」

 

「……!」

 

「………本当にいるみたいだね。索敵スキルに今反応があったよ。」

 

「……みんな、気を引き締めて行くぞ。」

 

そして、俺たちは茂みに隠れて、相手の様子を見る。焚き火を囲む四人の麻布を被ったエルフらしき人物。よく見ると耳がいびつにとんがっている。

 

「……じゃあ、端っこの方は俺たちが相手しよう。左がユージオ、ティーゼ、ユウキ、ナギで、右が俺とロニエ、アスナだ。後は…………えっと…」

 

『残りの右側の奴は私が斬ろう。』

 

『……では、私が左を。』

 

俺がNPCである二人の女騎士にどう伝えればいいのか、悩んでいると(ダーク)エルフのお姉さんが即座に相手を決め、(フォレスト)エルフのお姉さんもそれに合わせて答えてくれた。まあ、少し納得できなさそうな顔はしたが。

 

『……今です!』

 

森エルフの一声で一斉に飛び出し、斬りかかる。

 

『グハァッ⁉︎』

 

俺のホリゾンタルが右端にいたフォールンエルフにクリーンヒットする。

 

「ロニエ!」

 

「はい!やあぁッ!」

 

不意をついたことで完全に俺たちの方が完全に優勢だった。相手の武器は超近距離戦闘を得意とする短剣だ。短剣持ちを相手取るのは初めてだったが、ロニエもアスナも落ち着いて対処し、フォールンエルフを圧倒した。

 

そして、ユージオ達の方も落ち着いて対処している。このフォールンエルフ達は俺たちよりレベルは上みたいだが、防具をほとんどつけていない、いわゆる《盗賊(シーフ)》装備だったのが幸いし、安定したダメージを与えられた。

 

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

「よし、最後だ!ロニエ、頼んだぞ!」

 

「リャアアアアッ‼︎」

 

『ガハッ⁉︎』

 

ロニエのホリゾンタルアークがフォールンエルフにとどめを刺した。

 

「や、やりましたよ!キリト先輩!」

 

「ああ!アスナもナイスアタック!」

 

「うん、ありがと。」

 

お互いを褒め称えていると、HPゲージがゼロになったフォールンエルフがドウっと倒れた。それと同時にユージオ達の歓声も上がる。

 

「キリト、大丈夫だった?」

 

「ああ、問題ないさ。そっちも首尾よく倒せたみたいだな。」

 

「うん、ティーゼ達のお陰だよ。今回はナギが一番ダメージ量が多かったかな?」

 

「やっと出番が来て良かったデス!」

 

MVPのナギは誇らしげに胸を張って言う。

 

「あとちょっとでラストアタック行けたのになぁ…でも、ナギすごかったよ!」

 

「えへへ…」

 

ユウキが悔しそうに言うものの、素直にナギを褒める。

 

すると、先程のフォールンエルフを難なく倒したエルフ騎士がやってきた。

 

『人族の剣士よ、首尾よく勝てたようだな。』

 

『中々の剣技でした。人族にもこれほどの手練れが居たのですね。』

 

二人のエルフ騎士が俺たちのことを褒めてくれている。NPCは褒めたり、俺達の指示を聞いてくれたりしたっけ?

 

「あ、ありがとうございます。お二人は一人で倒したんですか?」

 

『ええ、あの程度の実力なら一人で倒せます。』

 

その時だった。不安な言葉が聞こえて来たのは。

 

 

『そ、そんな馬鹿なっ……カレス・オーの民とは、同盟を組んだ….はず……何故ッ……⁉︎』

 

 

『……何だとっ⁉︎』

 

『い、今、何と……答えなさい‼︎今何と言ったのですか⁉︎今、()()()()()()()()()()()()()()()()()と言ったのですか⁉︎』

 

二人はNPCとは思えないほど、目に見えて驚きをあらわにした。

 

「……キリト、話が見えてこないんだけど……」

 

「言うな、俺もだ。」

 

「…えっと……今のはどういう……」

 

『少し静かにして居なさい、人族!』

 

「は、はひっ⁉︎」

 

『どうなのですか⁉︎いいから答えなさい‼︎』

 

勇気を出してロニエが聞こうとすると、森エルフの騎士が一蹴する。

 

「……キリト、かれすおーのたみって何デスカ?」

 

「……知るか」

 

『……お前は、同盟のことを知らない…のか……ふん…今に見て、いるがいい我々フォールンが、貴様らを……』

 

最後のフォールンエルフは呪詛を残して四散した。

 

『………っ!』

 

『……どういうことだ、カレス・オーの騎士よ。()()、とは…』

 

『……私は、この話は知りませんでした…………まさか…!』

 

「……話が全く見えてこないわね。キリト君、説明お願い。」

 

「それは俺の台詞だ。βテスト自体じゃ、こんな展開なかったぞ……」

 

『……ここではおちおち話も出来ません。どこか安全な場所に移動しましょう。いつ怪物に襲われるか分かったものではありません。』

 

『……一つ、聞く。お前に敵意はあるか?』

 

『ありません。貴女はカレス・オーの民全てが敵だと思っているようですが、それは違います。』

 

『……どういうことだ?』

 

「……」

 

目の前で繰り広げられるNPC同士の会話を聞いて思わず黙ってしまう。

 

『……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……ということです。』

 

『!』

 

「……あれ?そんなのなかった気がするんだが……」

 

「何がですか、キリト先輩。」

 

「……いや、お互いに対立し合わない、なんてルート…βテスト時代には無かった筈なんだ。始まりから終わりまでずっと敵対し続けてたんだけど……」

 

ティーゼの問いに戸惑いながらも答える。

 

『………わかった。詳しい話は我々の野営地でする。ただし、秘鍵の方は私が持っておく。それでいいな?』

 

『……ええ。』

 

『それでは行くぞ、人族の剣士達。お前たちも先の戦いに参加した時点で、無関係とはいかないだろう。それに、お前達が一番中立的立場に立てるだろう?』

 

「あ、ああ。元より行くつもりだけど……」

 

そして、二人が微妙な距離を保ちながら歩き始めるのを俺達は遅れて追う。

 

「……キリト、このクエストのこと、どう思う?」

 

「………やべーよ。マジでわかんねーよ。」

 

ユージオの問いに対し、無意識のうちに本音が溢れる。

 

さて、これからどうなるのか……

 

俺は改めて、未知の領域に踏み込んだことを痛感したのだった。

 

 

 

 

 

 

 





次回『変わった現状』

次回は完全説明回です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。