ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
えっと、明日にはまた一話投稿します!
ちなみに今回はキリト目線です!
それでは、どうぞ!
☆
森の中、進み続ける俺達。
ユージオとティーゼの行動によって、完全にクエストが未知のものになったのに気付いたのは5分前。
「………このクエスト、これからどうなるんだよ……」
そう、これが一番不安なことだ。このSAOでは元ベータテスターの知識、経験、テクニックが最重要になってくるのに………βの時にあった戦闘の分岐点を通り過ぎて、なんか分からないが二人の騎士……黒エルフのお姉さん、『キズメル』と俺の知らない森エルフのお姉さんが一時共戦締結を結び、奪われてしまった秘鍵を奪還するために横に並んで歩いている……まあ、かなり間は空いてるが。
あの二人の騎士によると、『
でも、この層では『
ナギは14、ロニエとティーゼとアスナは15、ユウキが16、俺とユージオにいたっては17だ。もう、これまでのようにスムーズなレベルアップは見込めないだろう。
もう一つの心配なことは、第2層のボス戦後の件……もっと言えば、ベルについてだ。あの後、ベルは『俺は納得できない』と言って第2層の迷宮区に降りて行った。あの時のベルの目は親の仇を見るかのようだった。その目は恐怖を感じるほどに冷たく鋭かった。
「……フレンドの方を確認しとくか。」
そう呟いて、メインメニューを開いて、フレンド一覧表を出す。
「……っ!」
ベルが俺とのフレンド登録を消去したのか、そこにはベルの名前がなかった。多分、ユージオ達も同じだろう。
「……ベルの奴、一体どうしたんだ……」
「先輩、モンスター来ましたよ!」
「お、おう。」
ロニエの声で意識を現実に……いや、仮想世界に戻された。抜剣し、現れた『トレント・サプリング』一体とと『バイティング・ウルフ』三体を相手取る。
『ふッ!』
『シッ!』
エルフ騎士の二人は前にいた『トレント・サプリング』を通常攻撃二発ずつで葬った。
あの二人、強すぎるような気がする。俺達も人のことは言えないかも知れないが、レベルはどれくらいなのだろうか。15、6ほどはありそうだ。
「……お二人ともすごい強いですね、先輩。」
「……ああ……ロニエ、お前とレベルは変わらないかも知れないな。」
「……βの時は、あんなに強い女性を斬らなきゃいけなかった訳?」
「いや、βの時は片方が男だって言ったろ?多分、今の俺たちじゃ、太刀打ち出来ないな。」
「………今のクエストで、良かったわ。」
会話に途中で入って来たアスナはポツリと、安心したように呟いた。
◎
『………近いですね……』
『……もうそろそろだ、人族の剣士よ。武器を持て、始めるぞ。』
それからまた5分ほど歩くと、二人の騎士が俺たちに戦闘準備を促して来た。
「……なんでわかるんだろう……僕等の索敵スキルには反応はないのに…」
「……エルフの勘ってやつじゃないかな?エルフって耳が良さそうだしね!」
「……そう、なのか?」
「……!」
「………本当にいるみたいだね。索敵スキルに今反応があったよ。」
「……みんな、気を引き締めて行くぞ。」
そして、俺たちは茂みに隠れて、相手の様子を見る。焚き火を囲む四人の麻布を被ったエルフらしき人物。よく見ると耳がいびつにとんがっている。
「……じゃあ、端っこの方は俺たちが相手しよう。左がユージオ、ティーゼ、ユウキ、ナギで、右が俺とロニエ、アスナだ。後は…………えっと…」
『残りの右側の奴は私が斬ろう。』
『……では、私が左を。』
俺がNPCである二人の女騎士にどう伝えればいいのか、悩んでいると
『……今です!』
森エルフの一声で一斉に飛び出し、斬りかかる。
『グハァッ⁉︎』
俺のホリゾンタルが右端にいたフォールンエルフにクリーンヒットする。
「ロニエ!」
「はい!やあぁッ!」
不意をついたことで完全に俺たちの方が完全に優勢だった。相手の武器は超近距離戦闘を得意とする短剣だ。短剣持ちを相手取るのは初めてだったが、ロニエもアスナも落ち着いて対処し、フォールンエルフを圧倒した。
そして、ユージオ達の方も落ち着いて対処している。このフォールンエルフ達は俺たちよりレベルは上みたいだが、防具をほとんどつけていない、いわゆる《
○○○○○○○○○○○○○
「よし、最後だ!ロニエ、頼んだぞ!」
「リャアアアアッ‼︎」
『ガハッ⁉︎』
ロニエのホリゾンタルアークがフォールンエルフにとどめを刺した。
「や、やりましたよ!キリト先輩!」
「ああ!アスナもナイスアタック!」
「うん、ありがと。」
お互いを褒め称えていると、HPゲージがゼロになったフォールンエルフがドウっと倒れた。それと同時にユージオ達の歓声も上がる。
「キリト、大丈夫だった?」
「ああ、問題ないさ。そっちも首尾よく倒せたみたいだな。」
「うん、ティーゼ達のお陰だよ。今回はナギが一番ダメージ量が多かったかな?」
「やっと出番が来て良かったデス!」
MVPのナギは誇らしげに胸を張って言う。
「あとちょっとでラストアタック行けたのになぁ…でも、ナギすごかったよ!」
「えへへ…」
ユウキが悔しそうに言うものの、素直にナギを褒める。
すると、先程のフォールンエルフを難なく倒したエルフ騎士がやってきた。
『人族の剣士よ、首尾よく勝てたようだな。』
『中々の剣技でした。人族にもこれほどの手練れが居たのですね。』
二人のエルフ騎士が俺たちのことを褒めてくれている。NPCは褒めたり、俺達の指示を聞いてくれたりしたっけ?
「あ、ありがとうございます。お二人は一人で倒したんですか?」
『ええ、あの程度の実力なら一人で倒せます。』
その時だった。不安な言葉が聞こえて来たのは。
『そ、そんな馬鹿なっ……カレス・オーの民とは、同盟を組んだ….はず……何故ッ……⁉︎』
『……何だとっ⁉︎』
『い、今、何と……答えなさい‼︎今何と言ったのですか⁉︎今、
二人はNPCとは思えないほど、目に見えて驚きをあらわにした。
「……キリト、話が見えてこないんだけど……」
「言うな、俺もだ。」
「…えっと……今のはどういう……」
『少し静かにして居なさい、人族!』
「は、はひっ⁉︎」
『どうなのですか⁉︎いいから答えなさい‼︎』
勇気を出してロニエが聞こうとすると、森エルフの騎士が一蹴する。
「……キリト、かれすおーのたみって何デスカ?」
「……知るか」
『……お前は、同盟のことを知らない…のか……ふん…今に見て、いるがいい我々フォールンが、貴様らを……』
最後のフォールンエルフは呪詛を残して四散した。
『………っ!』
『……どういうことだ、カレス・オーの騎士よ。
『……私は、この話は知りませんでした…………まさか…!』
「……話が全く見えてこないわね。キリト君、説明お願い。」
「それは俺の台詞だ。βテスト自体じゃ、こんな展開なかったぞ……」
『……ここではおちおち話も出来ません。どこか安全な場所に移動しましょう。いつ怪物に襲われるか分かったものではありません。』
『……一つ、聞く。お前に敵意はあるか?』
『ありません。貴女はカレス・オーの民全てが敵だと思っているようですが、それは違います。』
『……どういうことだ?』
「……」
目の前で繰り広げられるNPC同士の会話を聞いて思わず黙ってしまう。
『……
『!』
「……あれ?そんなのなかった気がするんだが……」
「何がですか、キリト先輩。」
「……いや、お互いに対立し合わない、なんてルート…βテスト時代には無かった筈なんだ。始まりから終わりまでずっと敵対し続けてたんだけど……」
ティーゼの問いに戸惑いながらも答える。
『………わかった。詳しい話は我々の野営地でする。ただし、秘鍵の方は私が持っておく。それでいいな?』
『……ええ。』
『それでは行くぞ、人族の剣士達。お前たちも先の戦いに参加した時点で、無関係とはいかないだろう。それに、お前達が一番中立的立場に立てるだろう?』
「あ、ああ。元より行くつもりだけど……」
そして、二人が微妙な距離を保ちながら歩き始めるのを俺達は遅れて追う。
「……キリト、このクエストのこと、どう思う?」
「………やべーよ。マジでわかんねーよ。」
ユージオの問いに対し、無意識のうちに本音が溢れる。
さて、これからどうなるのか……
俺は改めて、未知の領域に踏み込んだことを痛感したのだった。
次回『変わった現状』
次回は完全説明回です。