ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
今回はティーゼとユージオが鍛冶屋に行って剣を作るだけです。他のメンバーは出てきません。
今現在、この作品の未来を決めるアンケートを活動報告にて行っています。まだ投票していない方は是非、ご参加していってください。
それでは、本編をどうぞ!!
◇
あれから、三十分後。
僕らはダークエルフの野営地に帰ってきた。そして、兵士の遺品と女王蜘蛛の毒牙を渡して、クエストをクリアして指令室を後にした。
その後、僕らは自由行動……もとい休憩を取ることにした。
アスナやユウキ、ナギ、キリトロニエはお風呂へ。(因みにキリトはしっかり見張り役としてかりだされた。……憐れな…)僕とティーゼで武器の新調をすることになった。
◇
このアインクラッドにある全ての武器や防具は、入手方法によって3つの種類に分けることができる、らしい。
一つは、ボスを含むモンスターを倒したときにドロップする『モンスタードロップ』、ダンジョンの中で宝箱から手に入れる『チェストドロップ』。これをまとめて『ドロップ品』という。因みに、アスナの『ウインドフルーレ』もこれだ。
次にクエストを達成した時に報酬としてもらえるのが『クエストリワード』。僕らが使っているアニールブレードはここに入る。
そして、最後がプレイヤー、もしくはNPCの鍛冶屋や革細工師が素材アイテムから作る『ショップメイド』。
今現在、この三つはさほど変わらないが、未来…強力な武器はドロップ品とプレイヤー製に片寄ってくるだろう。
……と言うのがキリトから聞いた話だ。
「……大丈夫ですよね?ユージオ先輩…」
ティーゼが不安そうに聞いてくる。多分、ネズハの取り替えが……そして、失敗するのではないか、というものだろう。まあ、無理もない。友達が被害を受けたのだから。
「大丈夫、ここの鍛冶屋はこの層じゃ、一番スキルが高いらしいから。キリトが言ってたから心配ないと思うよ」
「……はい!」
「……というより、武器作成は強化と違って失敗は無いんだって」
「なっ……先に言ってくださいよ…」
「ご、ごめん…忘れてた…」
そうこうしている間に僕らは噂の鍛冶屋についた。
しかし、一つ問題があった。それは、
「え、えっと…すみません…」
『…………フン』
「………」
ダークエルフの鍛冶師が中々無愛想だったこと。
「…だい、じょうぶなんですよね?」
「……多分、ね」
この人は、アンダーワールドにいた研ぎ師のサードレさんに少し似てる気が……しないでもない。頑固そうだ。
「……作成の前にやることがありましたね……この剣を延べ棒……ううん、インゴットにしてください」
「…ティーゼ、無理にしないでいいんだよ?」
「…いいんです。あたし、この子とまだ走り続けたいから……」
ティーゼはアニールブレードを胸に抱き、目を瞑る。そして、鍛治師に剣を渡す。
「……お願いします。」
『………』
すると彼は『…フン』とは言わず、黙って受け取った。剣を鞘から少し抜いて検分する。
彼はそのまま黙って剣を抜いて後ろにある鍛冶炉にそっと乗せた。
ネズハが使っていたような携行炉ではなく、煉瓦を四角く組んである本格的な物だ。
そして、不思議な青緑色の炎がティーゼのアニールブレードを一瞬で赤くなり、そこからすぐに切っ先から柄頭までが眩く輝いた。
そして、次の瞬間にひときわ強い閃光を放って収縮し、延べ棒…インゴットに変化した。暗色に輝く1つのインゴット。
キリト曰く、アインクラッドには膨大な種類のインゴットがあるらしく、キリトでさえも見た目だけでは分からないそうだ。
「…ありがとうございます」
鍛冶屋さんに礼を言ってインゴットを受け取ったティーゼはそれを抱き締めていたが、やがて慣れた手付きでストレージに入れ、武器作成の操作を始めた。
そこからキリトに教えてもらった通り、片手武器→片手直剣→素材選択へと進んだ。基材や添加材は今までで手に入れてきたアイテムを。心材にはアニールブレードだった『ルシュティウム・インゴット』を選び、必要アイテムが全て満たされたようで、工賃の額とともに最後の確認が出てきた。
「……お願いします」
ティーゼは小さな声でYES(はい等の肯定の意味があるらしい)を押した。
すると、しゅわわんという音と共に鍛冶屋の作業台の上に革袋2つと『ルシュティウム・インゴット』が置かれた。
鍛冶屋はその革袋を鍛冶炉に放り投げた。袋は燃え尽き、中にあったアイテムも赤く灼け始めた。
そして、そのアイテムは直ぐに溶けてしまい、炎の色が純白に変わったと同時に鍛冶屋はインゴットをそこに入れた。インゴットは徐々に光り始めた。
「………っ!!」
「……!」
その時、ティーゼは僕の手を強く握っていた。自分自身でも気付いていないみたいだ。
また鍛冶屋を見ると、熱せられたインゴットをすでに金床に移動させ、右手に鎚を持って降り下ろそうとしていた。かぁん、かぁんと二秒に一回ぐらいの早さで打ち始めた。
これもまたキリト情報なのだが、叩く音は、作られる武器の性能に比例して多くなるらしい。初期装備の『スモールソード』辺りは強化より少ない五回。アニールブレードと同等の武器は30回前後だとか。
だけど、その鎚音は30回を優に越えた43回で止まった。そして、輝くインゴットはゆっくりと変形した。アニールブレードより若干短めに、細く、それでいて力強い形に。
光が収まると、そこには銀色に輝く一振りの優美な片手直剣が横たわっていた。
鍛冶屋さんはその剣のシンプルな柄を握り、持ち上げて検分し、驚いたことに一言呟いた。
『………良い、剣だ』
鍛冶屋さんは後ろから臙脂色の鞘を選び、ぱちんと剣を収めてティーゼに渡してきた。
「……っっ!?/////」
その時、ようやく自分が僕の手を握っていることに気付いたティーゼは顔を真っ赤にしながら手を離し、剣を受け取った。
「…ありがとうございます」
『…フン』
そして、メニューを出して剣の名前を確認する。
【セルティアン・ソード】。それが新しいティーゼの相棒の名前だった。
「……良かったね、ティーゼ。大事にしてあげてね?」
剣を叩いた回数から見て、この剣の性能はアニールブレードを優に越えている。それほどに強いことが伺える。そして、ティーゼの大切な相棒が形を変えて強くなって帰ってきたのは明らかだ。
「……はい、ユージオ先輩。」
ティーゼは頬を少し赤く染めながら、剣を胸に抱き締めてそう言った。
次回『Nother Quest』