ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
『ソードアートオンライン~アリシゼーション~』の新しいPVを見て発狂してしまいました。
ついに、ユージオ君が動く⁉︎セルカも、アリスも………そして、あの後輩の傍付き剣士達もっ⁉︎
の、脳が震える……
ユージオ君の声にゾクゾクっとしたのは自分だけでしょうか…あ、まずい、感動で涙が……
こ、こちらも負けずに頑張って書いていきます‼︎
今回はただの会話回になります。
それではどうぞ!
◇
「行こう、ユージオ。早めに終わらせて、野営地に戻らないと…」
「……分かってるよ。ポーションで回復しながら行かないと……流石にこの状態はキツイよ」
「……それより、何だったんだろうね。あの、モルテって人……」
森の中、僕らは疲弊しきった体に鞭を入れてクエストのクリアを目指し、森エルフの野営地に向かっている。先程の決闘でキリトは引き分け、僕はなんとか勝ったものの、謎の残る事件となった。
「さあ、な。それより、ベルは……どうだったんだ?何か、言ってたか?」
キリトも僕と同様にベルのことを心配しているようだ。
「………なんとも。何故そんなことをしてるのか聞いても、うるさいって……あと…」
『何も知らないくせに、言うんじゃねぇよ』
あの時のベルは何か抱えているような気がした。僕らには言えない、何かを隠しているように感じられた。周りの全てを拒んでいた。僕らも。そして、あの目。殺意を感じたあの視線は、本物だったのだろうか。本当に、ベルは……僕らを殺そうと……
「……そう、か。取り敢えず、今はクエストを……」
キリトがそう言って、森エルフの野営地の裏側にある崖に向かおうとした、その時。
『………なんだ貴様らッ‼︎』
「「⁉︎」」
ボス攻略会議の時に乗り込んできた、あの人の声が聞こえた。声を荒らげ、まるで誰かと言い争っているように思えた。
「…行ってみよう、キリト。何か、嫌な予感がするよ」
「全く同感だ」
僕らは声の発信源を目指して歩き出した。
◇
「……あ、あれって……」
「…なんで、あいつらが……?」
そこには夕方にあったボス攻略会議に乗り込んできたギルドの面々がいた。正確に顔は覚えていないけれど、間違いない。そして、言い争っている相手は…
「おまんらいい加減にせぇよッ‼︎なんぼも言うけどな、ここを先に見っけたのはわいら《青の騎士団》やぞ‼︎」
「…こういうのは先着順っていうのがルールでありマナーだ。あんた達だって分かってるだろう!」
「ふん、マナー?ルール?犯罪者集団は何を言っても説得力がないな!」
「「なんだと(なんやて)……ッ‼︎」」
青の騎士団だ。しかも先頭には幹部であるキバオウさんとリンドさんの姿が見える。相当頭にきているのか、キバオウさんは人界の東地域の能面のような顔をしているし、リンドさんは額に青筋を立てている。だけど、ディアベルは来ていないようだ。
このままでは、ギルド同士の戦争になりかねない。
「……キリトはクエストを一刻も早くクリアして。その方が手っ取り早いから。僕は、仲裁してくるよ……正直望み薄だけどね」
「ゆ、ユージオ……分かった。俺がこのクエストを終わらせて仕舞えばこの森エルフの野営地は消えるから、俺がクエストをクリアするまで時間を稼いでくれ」
「…了解」
キリトは崖に向かって走り、僕はあの二つのギルドの間に入るために駆け出す。
「キバオウさん、リンドさん!」
「ゆ、ユージオはんっ?」
「…ユージオさん?」
「ほう…また来たか、忌々しい犯罪者」
何度そう言おうとするのだろうか。しつこいし、ネチっこいし、ムカつく。ここはシカトを決め込むのが一番だ。
「…二人とも、一度落ち着いて。間に受けすぎると向こうの思う壺だよ。頭を冷やして」
「貴様、無視を…」
「……分かったわ。わいもなんやかんや頭に血上ってたかもしれんわ。すまん」
「……こっちもだ、パーティーリーダー失格だな」
二人は僕の言葉に冷静になれたようで、落ち着きを取り戻した。そして、意図を察したのか彼の言葉に聞き耳を立てていない
「……とにかく、何があったのか、説明して下さい。僕もさっき来たばかりで状況がうまく掴めないんです」
「……俺達はキャンペーンクエストの『潜入』をやっていたわけだが…ギルド《オプリチニク》と運悪く鉢合わせしてしまった」
「わいらは別に何も悪いことはしてないからな。堂々としてたんやけど……あいつが突っかかって来よったんや。このキャンプを見つけたのはわいら《青の騎士団》やっちゃうのに、こいつら我が物顔でキャンプに乗り込もうとしとんねん」
「……で、そちらの言い分はどうなんですか?」
「ふん、決まっているわ。お前たちは他のプレイヤーにこの層の迷宮区攻略に必須の最重要情報を公開していない」
「……じゃあ、その最重要情報というのは?」
「貴様も知っているくせに何を言う‼︎貴様らビーター達に……」
「……びー、たー……?何のことか分からないよ。もうすこしわかりやすく…」
「よほど言いたくないらしいな!」
「……だから、何のことやねんって言うとるやろうがっ‼︎」
「……このキャンペーンクエストにこの第三層迷宮区攻略時必須のアイテムがあると言うことだッ‼︎」
イヴァンはいきなり聞き捨てならない言葉を聞いた。
「え、エルフクエストで、迷宮区攻略必須のアイテム……?」
「何をほざいて……俺達だってそんな情報知らなかったぞ!」
「アホなこと言うな!そんなことあったら、わいらが知らんわけないやろ!それに、キリトはんだって教えてくれるはずや!」
三者三様の反応を見せる。キバオウさんの言う通り、キリトはそんな大事な情報はボス攻略会議で言う筈だ。とういう事は、彼らは嘘をついているか、誰かに嘘の情報を流されたかのどちらかだ。
「はっきり言ってそんな情報は初耳だし、キリトからも聞いていないよ。どこでそんな嘘の情報をつかまされたの?」
「白々しいっ……ここまで言ってもまだ吐かないか⁉︎」
という間抜けた言葉に
「……元より吐くものなんて無いよ」
「……というより吐けへんやろ」
とすかさずツッコミをいれる。
「……こっ、言葉の綾だっ」
「…とにかく、あんた達は我々青の騎士団の後に来たんだ。常識のある判断をお願いしたい」
リンドの言葉に顔を怒りに染めてイヴァンは怒鳴った。
「………貴様らぁ……いい加減にしろぉッッ‼︎」
「…っ!」
その言葉と共にイヴァンは腰にあった両手剣を抜いた。それと同時に後ろで罵声を飛ばしていたパーティメンバー達も一斉に武器を構えた。全員に緊張が走る。
最悪の事態を防げなかった。相手は完全に
その時だった。後方40メートル先にあった野営地が跡形もなく消えたのは。
「な、何ぃ⁉︎」
「…な、なんで消えたんや⁉︎」
「……そうか、他の誰かが指令書を奪ったか」
イヴァンとキバオウさんはかなり驚いていたが、リンドさんは完全に理解したようだ。
『ごめん、ユージオ。遅くなった』
野営地の方から現れる人影。その声は聞き慣れたものだった。
「……遅すぎるぞ、キリト。来ないかと思ったよ」
二人のプレイヤー。一人は青い髪のこのアインクラッド初の攻略組リーダー、ディアベル。もう一人は黒髪に黒いコート、片手剣を背中に装備した、キリトだった。そのやんちゃな瞳は月夜の下で爛々と輝いていた。
「……悪いが、ここのはもうクリアした。《オプリチニク》の皆さん、ここは諦めて別の野営地を探してくれ」
キリトはその瞳に剣呑さを宿らせ、イヴァンに告げる。
「………き、貴様もか…ビーターッ‼︎」
「…イヴァンさん、武器を下ろしてくれ。もうやめにしよう。これ以上プレイヤー同士でいがみ合っても意味なんて見出せやしない。俺としてもイヴァンさんとしても損はしても得はしないだろう?」
ディアベルは冷静にイヴァンを説得しようとするが、イヴァンは全く聞こうとしない。
その間に僕はキリトに今までのことを説明すると、
「そんな話、ベータテストの時にはなかったな。嘘をついてるのか、嘘をつかまされているのか、どっちかだな」
と答えた。
「貴様も知っているだろうっ‼︎ビーター!」
「……いや、そんな情報βテストの時にも出なかった。それにエルフクエストは俺は全部クリアしたことがあるから分かるけど、経験値とアイテムだけで、アイテムは単なる武器だったり防具だったし、ボス戦に絶対必要なアイテムなんか無かった。しかも、このゲームの管理者……茅場晶彦はあくまでフェアだ。そんな事をするはずが無いんだよ、イヴァンさん」
キリトは淡々と答えた。イヴァンは両手剣を構え直し、叫ぶ。
「これ程言っても聞かんなら、無理矢理にでも吐いてもらうしか無いなァ………‼︎」
「……‼︎」
あの時、モルテは『今日クエストに挑むのをやめてくれ』と言った。彼らにとって利益も損害も受けない言葉に何か僕は心に引っかかるものがあった。辛くもデュエルには勝てたが、その疑問だけが残っていた。
そして、デュエルが終わってからすぐ近くで攻略組とオプリチニクのいざこざ。なんだか、この状況が意図的に作られているように思えた。
まさか……彼らの目的は今この状況なのではないか。僕はそう感づいた。
もう、戦うしか無いのか、そう思ったその時。
『待ちなさい』
そんな声が聞こえた。数時間前に聞いた、ここにいるはずのないアスナの声。
「……っ、あ、アスナ⁉︎」
僕らとイヴァンの間、僕らの右側から現れた一つの団体。そこにはアスナやティーゼ、ロニエ、ユウキ、ナギがいる。
「ユージオ先輩!勝手にどこかに行かないで下さい……心配したんですからっ…」
「ご、ごめん…」
「…どうやってここに来たんだ?」
「ついて来たんですよ。……もう、置いて行かないで下さい……っ」
「……わ、分かった…」
不味い。ティーゼたち、結構怒ってる。最近、ティーゼとロニエは怒ると怖い事が分かった。というよりは本能的にわかる。生き物として……なんだか、思い出せないけど、どこかでティーゼの怒ったところ(?)を見てしまった、そんな気がする。本当に怖い。
本当に怖い。(大事なことなので二回言いました)
「……イヴァンさん。貴方がそういうのなら私達も傍観は出来ないわ。貴方の一つの行動で攻略組全員を……いえ、アインクラッドの全プレイヤーを敵に回すことになる……だから、剣を収めて下さい」
「……っ!」
アスナの言葉にようやく気づいて少し冷静になれたのか、口ごもるイヴァン。
アスナの言葉に気付いただろうけど、アスナたちの新しい剣の妖しい程の輝きに威圧感を感じているのもあるだろう。
「……イヴァンさん、あんたらがクエストの一つや二つでグダグダ言ってるうちに俺は……いや、俺達攻略組は迷宮区攻略を開始する」
「っ⁉︎」
そして、キリトは驚きの言葉を発した。
「き、キリト……⁉︎」
「……俺達《青の騎士団》はこのエルフクエストを放棄する」
「何ィッ⁉︎」
「もちろん、俺もだ。」
ディアベルも爆弾発言を落とした。
「わいらはこないな喧嘩に時間使ってるほど暇人やないんや」
キバオウさんまでもそんなことを言い出すなんて……あ、もしかして……
なんか察した。言葉の駆け引きってことか。
「…貴様らぁ……‼︎」
「言っておくけど、僕らプレイヤーだけじゃないよ。迷宮区攻略に挑むのはね」
「貴様ら、何を言って…」
「……キズメル、パーシー。いるんじゃないかな?」
僕はここにいるはずの人物……あのエルフ二人の名を呼ぶ。すると、予想通り返事があった。
『バレていたか、ユージオ』
『隠す必要がないとは思うのですが……まあ、いいでしょう』
「だっ、誰だっ⁉︎」
目に見えて動揺するイヴァン。多分、イヴァンは知らないはずだ。僕らにエルフが両方仲間になっているなんて。そして、彼らからみれば、パーシーの頭上にあるアイコンは真っ黒を通り越して闇の色に見えているだろう。
「私の名はキズメル。リュースラの民、エンジュ騎士団の近衛騎士である!」
「…私の名はパーシー。カレス・オーの民、ヒメシャラ騎士団の近衛騎士です」
「私達は剣士キリト、ユージオ達との盟約により天柱の塔へ赴かん!例え天柱の塔の守護獣であろうと朝露の如く消え去るであろう‼︎」
「…彼らは必ずや上層へと送り届けましょう。私達がいなくとも乗り越えることの出来る方々なのですから」
その言葉を聞いてイヴァンはぽかんと口を開き呆然としている。
「……そう言うことだ。どうする?」
イヴァンは顔色を二度三度変えて答えを出した。
「ぐぅっ……クエストが……だが、迷宮区は必ず攻略しなければ……クソォッ‼︎このクエストは貴様らにくれてやるッ!行くぞ、お前ら‼︎だが、覚えていろ!迷宮区は我々だけで攻略して、ボスも倒してやるッ‼︎」
「……攻略会議にはまた来てくれ!イヴァンさん、あんた達がどんなことを言おうとこのアインクラッドを攻略しようとしている仲間だと言うことに変わりはない!」
ディアベルの言葉を無視してイヴァンらのパーティは森の奥、主街区の方へと消えた。
「……出来るもんなら、どうぞ。たかが2パーティ3パーティじゃ無理だろうけどな」
キリトの現実的な考えに同意せざるを得なかった。ボスはレイドを組んで行くもので、パーティ二つ三つじゃ攻略不可能だ。
「……ごめんね、ありがとう、みんな。何も言わずに行っちゃって」
「…このことについてはもう何も言いません。さっきしっかり言いましたから」
「……お、おう」
後からロニエ達に追加で叱られそうだ。うん、絶対。
「キリト、ユージオ。このキャンペーンクエストはお願いしていいか?」
「お願いっていうと…」
「彼らの言ったことが全て嘘だとも限らない。だが、彼らが迷宮区の攻略を開始するのなら俺達も開始しようと思う」
彼らの言い分は随分とおかしいところばかりだけど、やはり確認しておくべきなのでディアベルの言葉は的確な判断だ。
「あんな生意気な……ちゃうちゃう、おかしいやつに抜かされるなんて嫌やからな」
「……キバオウさんの言い方は悪いが、俺も同じだ」
……後ろのお二人さんはかなりムカついているそうで、あまりいい顔はしていない。
「……彼らの言葉が嘘か真か、それを確かめて欲しいんだ。君たちなら行けるはずだ。なにせ、攻略組最強の剣士達だからな」
「……最強かどうかはさておいて、その仕事、乗った。一応クエストは完全にクリアしてみるよ」
「ありがとう。じゃあ、俺達は一度主街区へ戻ろう!時間が時間だ。ゆっくり休んで次は迷宮区攻略だ‼︎」
『『『『おおおおお‼︎』』』』
ディアベル達は迷宮区攻略を開始するために休憩を取りに主街区に向かって去って行った。
「……さて、俺たちも野営地に戻ろうか。指令書もゲット出来たしな」
僕らも野営地に戻った。
次回《これから》