ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

50 / 119
遅くなりました、クロス・アラベルです!
今回、月夜の黒猫団編が終わります!うまくまとめられたかちょっと不安ですが、書きました。
それでは、どうぞ!


未来(ハッピーエンド)》来たれり

 

 

 

 

それから一週間後。サチが一時行方不明になると言う事件があったもののキリトとロニエの説得により、戻ってきてから4日、計11日後には月夜の黒猫団のレベルは攻略組に並ぶ程の数値まで上がり、武器や防具のグレードもそれ相応に上がった。それに比例して資金も溜まり、小さなホームが一つ買えるほどになったので月夜の黒猫団一行は念願のホームの購入に踏み切った。ホーム購入祝いとしてユージオ達もいくつか家具を買って送ろうと話しているが、これはギルドのみんなにはまだ話していない。サプライズとして用意するのだ。

ギルドリーダーのケータが不動産NPCの居る始まりの街へ向かうのを見送った月夜の黒猫団はほぼゼロになったギルドの貯金残高を見て顔を見合わせ苦笑いするのだった。

サチ行方不明事件からと言うもの、彼女は戦闘に積極的に参加し、前衛を務めた時もあった。顔つきも少し変わっているように見えた。優しい性格は相変わらずだが。盾持ち片手剣への転向は取りやめになったが、今までより一層活躍して他のメンバーを先導しているようにも見えた。

その一部始終を見ていたユージオは、これから起こるであろう戦いに想いを馳せていた。この件についてはロニエとティーゼには話してあるので二人も戦闘準備は万端だ。

そしてついに_____月夜の黒猫団の一人であるダッカーが残ったサチ達とキリト達にある提案をした。

「なあ、みんな。もうこの通りコルも使い果たしちゃったしさ、家具を買うコルを迷宮区へ稼ぎに行かないか?」

ユージオはこの言葉を聞いて、覚悟を決めた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と。

「……どこのなんだ?」

「そうだな……27層は?」

「ちょっと待ってくれ、行きすぎじゃないか?いくらみんなのレベルが上がったとしても、行ったことのない迷宮区での戦闘は……」

その言葉を聞いたキリトがダッカーの言葉に反対する。いうことはごもっともだ。確かに迷宮区は稼ぎがいい。レベリングも比較的しやすいだろう。だが、それと同じように危険も伴う。ダッカーが言った26層の迷宮区はレベル的に彼らでも行けないことはないが、あそこは他と毛色が違う。

「……いや、キリト。月夜の黒猫団だけなら確かに危険過ぎるけど、僕らが行くんだ。僕らなら一度行ったこともあるし、どんなものがあるのかも把握済み……いいんじゃないかな?」

「……確かにそうだけどさ…」

やはり迷宮区の恐ろしさと言うものを味わってもらうべきだとユージオは考えた。彼らは迷宮区に入ったことはほとんどなく、普通のフィールドでレベリングをしていたらしい。

「ただし、条件がある」

だが、ユージオもただでは行かせない。断りを置いて、ユージオは条件を出す。

「絶対に生きて帰ること……ただそれだけだよ。一人も欠けずにね」

ユージオが真剣な表情でサチ達に言うと彼らはニヤりと笑いながら答えた。

「当たり前だろ?上手いこと稼いでケータの奴を驚かせてやる!」

「望むところだよ!」

「安全第一、だろ?わかってるよ。絶対帰ってくるから!」

自信満々なその表情に呆れながらユージオは迷宮区に行くことを承諾した。

「ケータにはこのタフトの街で待ってもらうことにして……さあ、出発しようか」

『『おおおー!』』

「……大丈夫、だよな」

「大丈夫ですって!私達もいるんですから」

不安がるキリトをロニエが宥めると言う珍しい光景にティーゼが少しニヤリと笑った。やはり、こっちの方も遅いが着実に進んでいるようだ。

 

 

 

 

 

 

「始めに言っておくが、この層の迷宮区は他とは毛色が違う。トラップがかなりの数仕掛けてあるから、安易に迷宮区の物を触らないでくれ」

「この層の迷宮区は比較的に他とレベルが低めに設定されてるそうなんですが、私達攻略組はこのトラップの群生地に苦しめられたんです」

キリトとロニエの説明が響く迷宮区。迷宮区の入り口を入って3分。一階にはトラップは設置されていないものの、やはり腐っても迷宮区。かなり入り組んでいるし、マップがなければろくに進めない。この迷宮区はそれにプラス大量のトラップがあるのだがら、嫌われるのも無理はない。それにここ(この迷宮区)のトラップは一日に一度総替えされてしまう。迷うわ、トラップに引っかかるわ、トラップの位置を覚えても一日ごとに更新されてしまうという悪魔のようなこの迷宮区はプレイヤーからは『レベリング殺し』という異名で知られる。なので、この迷宮区をレベリングとして利用するプレイヤーはほとんどいない。そして、攻略組である『血盟騎士団』の副団長、細剣(レイピア)使いのアスナでも全フロアのマッピングを諦めた程なのだ。

「そんなとこだったんだ……私も知らなかった…」

「へー……ってことは、まだ見つかってないお宝もあるかもしれないってことだよな?」

「……そうだね」

「そうと決まればお宝探しだ!攻略組さえ見つけられなかったものが眠ってるとはな……!」

「楽しみだな!」

「まあ、その都度その都度確認も入れながらだよね?」

「ああ」

「……言っておくけど、みんな。攻略組が知らないとなると、そこからは未知の世界……どんなトラップがあるからわからないから気をつけてほしい。攻略組でさえ知らないトラップもある可能性は、十分にあるから」

攻略組も知らないところに行くかもしれない、そんな事実に期待を膨らませる四人に冷静に忠告するユージオ。いつにも増して真剣だ。

「わ、分かってるって…」

「……じゃあ、行こう」

ユージオ達はそのまま迷宮区を進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここまで変なトラップには引っかかってないな」

「そうだね……このまま行けばいいけど…キリトはどう思うの?」

「仕掛けさえ分かっていれば、対処は出来る筈なんだ。なんとかなるさ」

「そうですよ。何かあった時のために私達がいるんですから」

迷宮区に潜ってから十分。ユージオ達は迷宮区五階にまで到達していた。ここからがアスナ達攻略組がマッピングを諦めたところだ。現在、前衛にユージオとティーゼ、中衛にサチ達、後衛にキリトとロニエがいる。サチは来たことのない場所に少し不安を感じ、それに耐えきれずキリトに話しかけたようだ。

「………ここだ」

「……!」

先頭にいたユージオが小さな声でティーゼにそう告げた。

「……本当、ですか?」

「うん、多分この先にある筈だと思う。この景色、記憶にあったところだよ」

「……分かりました」

ついに辿り着いた。記憶の場所に。

さあ、気を引き締めて……と言おうとしたその時。

 

「あ、こんなところに隠し扉があるっぽいぞ!」

ササマルがそんなことを言い始めた。

「!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。ユージオからあまり無闇に触るなって言われてただろ?」

「大丈夫だって!このタイプの隠し扉は攻略本で見たことあるしな」

ダッカーがそう言って扉の前で右、左、上、右とタップすると、壁のように見えていたものが開いた。

「よっしゃ、開いたぜ!」

ダッカーの言葉と同時に三人が入っていった。それにすかさずユージオ達も入る。

全員が入った時、すでにダッカーは宝箱を開けようとピッキングしていた。これから、始まるのだ。キリトを未来永劫縛り付けるであろう、過去が______

 

ダッカーが宝箱を開けた直後、ルーム全体にけたたましいアラームが鳴り響く。入り口は閉じられ、四方八方からモンスターがポップし、側面の四ヶ所からモンスターがどんどん出て来る。

月夜の黒猫団の四人はその現象に驚き、夥しい数のモンスターに圧倒され、恐怖した。

だが、ユージオ達は違った。冷静に剣を抜け放ち、モンスターに剣先を向ける。そして、ユージオは呆然とするキリトにアラームより大きな声で叫ぶ。

「キリト、トラップを破壊‼︎」

その喝でキリトは我に帰り、背中の片手剣を鞘走りながらトラップである宝箱をソードスキルで破壊した。

直後、アラームが鳴り止み、側面の四ヶ所のゲートが閉じられ、モンスターのポップも止まった。

「……数は、43体…か」

ピッケルを持ったゴブリンと岩でできたゴーレム、合わせて43体。一人五体倒しても足りない。だが、今のサチ達の実力は過去を大きく超えているのだ。活躍は見込めるだろう。そして、こちとらキリトだけでなく攻略組が三人もいる。

「……ここからが正念場だ!みんな、生きて帰るよッ‼︎」

ユージオの喝の直後、八人全員がモンスターに斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、ユージオ達は一人も欠ける事なくケータの元に帰還した。全員のHPゲージは黄色にもなっておらず、回復アイテムを一つも使っていなかった。一番活躍していたのはサチだろう。片手槍を駆使して敵の攻撃を翻弄し、テツオやキリト達のアシストに努めた。

事の顛末を聞くやケータは今までにない程激怒し、サチを除く三人を叱った。油断して宝箱を開けたダッカーに関してはこれから一ヶ月間エールを飲むことを禁止された。その場にダッカーが崩れたのは、言うまでもないだろう。

「全く……ごめんな、キリト、ユージオ。迷惑かけちゃって…」

「そんなこと気にしてないよ。全員生きて帰ってこれただけでいいんだ」

「俺も焦って対応できてなかったから何も言えないさ。礼はユージオに言うべきだ。ユージオのお陰で生きて帰ってこれたんだ」

「…違うよ。ダッカーやササマル、テツオだって頑張ってたよ。特にサチはね」

「そう、か……本当にありがとう。この恩は必ず返すよ」

ケータはロニエとティーゼと笑顔で話しているサチを遠目に見ながらそう言った。

「……そうだ、ホームも買ったし、キリト達には世話になったからね。今夜はパーティーにしよう!」

『『待ってましたー‼︎』』

「でもその前に家具を買わないとね」

「あ、忘れてたな……でもお金が…」

「稼いできたぜ!家具くらい一式買えるぞ!」

「いや、家具なら俺達が買うよ。ホーム購入祝いにな」

「えっ、まじかよ、キリト‼︎」

「結構貯めたからな。ベットにテーブル、椅子とか……その他諸々込みで俺達が払うよ」

「その代わり、パーティの材料代はそっちが出してね?」

「それくらいなんてことないさ。あいつらが稼いでくれたみたいだし……」

「それじゃあ今夜は、腕によりをかけて作らないとダメですね!」

「よーし……先輩やケータさん達に一泡吹かせられるぐらいの料理を作るわよ!」

「そうだね!私も、頑張らなきゃ…‼︎」

 

温かい光景。キリトの過去には無かったもの。キリトを縛っていくであろう過去()は砕け、新たな未来が始まった、そう感じたユージオだった。

 

 

 

 

 

 

キリトの過去を変えたユージオは安心しきっていた。勿論、これから起こる様々なことを乗り越えていく、そう覚悟を決めている。だが、ユージオは知らない。

 

 

避けたその不幸が、他の者に降りかかってしまったことを。

 




ユージオ「皆さん。少し遅くなりましたが、ソードアートオンラインアリシゼーションアニメ放送が始まりましたね」
ロニエ「私達アンダーワールド人が活躍するところをアニメで見られるなんて、本当に嬉しいです!」
ティーゼ「まあ、私が一番嬉しいのは動くユージオ先輩が見れたことね。小さい頃のユージオ先輩、可愛かったぁ…」
ロニエ「うんうん……キリト先輩は変わらずやんちゃだったみたいだけど、凄く可愛かったね…」
ユージオ「……本人の前で言うの?それ」
ティーゼ「やっぱり緊張しましたか?早くも2話で出演しましたけど…」
ユージオ「まあね。本当に懐かしかったよ。あんな風にギガスシダーを切ってたのを思い出せたね」
ロニエ「しかも、次回は何やら戦闘シーンが入るみたいですね」
ユージオ「ま、僕はそんなに活躍しないけど」
ティーゼ「キリト先輩とユージオ先輩の始まりのお話ですからね。本当に楽しみです!私達はまだ出るのは後の方ですから…」
ユージオ「でも、二人ともオープニングに出演してたでしょ?」
ティーゼ「それはそうですけど、一瞬じゃないですか」
ロニエ「出られたのは嬉しかったなぁ…」
ユージオ「このペースだと第8話くらいで出られそうだね」
ロニエ「あと少しですね」
ティーゼ「ちょっと緊張するわね……台詞の練習しとかなきゃ」
ユージオ「皆さんもアニメはご覧になったでしょうか。作者は毎週見ているそうです。第4話もあと少しで放送なので、皆さんも楽しみに待ちましょう!」
ロニティー「そして、この『時を超えた青薔薇の剣士』シリーズもどうぞよろしくお願いします!」
ユージオ「次回は時間軸を少し戻ってのお話になりますそれでは次回お会いしましょう!」


次回『勇気の結晶』

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。