ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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こんにちは!クロス・アラベルです!
今回は自分の描きたかったことがかけました!ついに、ついに……!
それではどうぞ!


この想いは隠せない

 

 

3月2日、57層主街区《マーテン》。

そこにユージオはいた。

「……」

ティーゼと待ち合わせをしているのだ。今回はティーゼからではなく、ユージオから誘った。ティーゼがユージオに誘われた時は顔を真っ赤にして、『わかっ、分かりました!』と大きな声で答えたらしい。

「ユージオ先輩〜!」

ティーゼが到着したようだ。やはり今回も時間がかかったらしい。女の子はどこへ出かけるのにも準備に時間が掛かる、と愚痴っていた幼いキリトの言葉が聞こえてくる。

「待たせちゃいました?」

「いや、僕もちょうど来たとこだよ」

嘘である。1時間前から来ていた。

「じゃあ、行こっか?」

「はい!」

2人は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1年と4ヶ月。

このアインクラッドに来てからこんなに時間が経とうとしている。

僕にとっては意外にも短いと思った。

キリトの記憶を頼りに失われるはずだった命を救うことを繰り返し、キリト達と共に東奔西走していたらこんなにも時間が経ってしまった。

キリトの記憶とは違う道へ行っているのだろうか?僕のキリトの記憶を見るあの頭痛は一部分しか見せてくれない。キリトの記憶全てを見ることは出来ない。僕も何度か試して見たけど、叶うことはなかった。キリトの記憶全てを見る手段はない。なら僕は信じるしかない、未来よ現在がより良くなっていると。

多分、ここまで僕一人ではできなかったと思う。1人だったら力及ばずと言うことも多々あった筈だ。ひとえにその理由として、ティーゼ達の存在があると思う。そう、時を超えてきた人達だ。

その中でも特にティーゼにはとても世話になった。彼女は献身的に僕を支えてくれた。

特にキリトが殺人グループに殺されかけた時は言葉にならないほど迷惑をかけた。あの時、ティーゼに慰めてもらわなければ____抱きしめてもらわなければ、立ち直れなかったかもしれない。

隣で歩く彼女を横目に見る。自信なさげな初等練士の頃とは違い、自分自身に自信を持っているように見える。やはり、整合騎士として活躍した経験が生かされているんだろう。僕が知らない間に彼女は勇気のある剣士になった。

「どうかしたんですか?ユージオ先輩」

「___いや、何でも無いよ」

ティーゼがこちらの視線に気付いて声をかけてきた。燃えるような椛色の髪と瞳。見慣れた筈の彼女が綺麗に思える。

「ユージオ先輩、どこのお店に行くんですか?」

「こっちだよ。」

小首を傾げて聞くティーゼに僕はとある店を指さし、ティーゼを連れて店に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、ティーゼと一緒にいることが多くなった。ただそれだけではなく、彼女といると楽しいと思えた。僕は気づいたんだ。アリスに抱いた愛とは何か違う愛をティーゼに抱いているということを。ティーゼを自然に目で追いかけてしまっていることにも最近気付いた。

アインクラッドに来てから、ほとんど一緒に行動している。当たり前のような事だが、1度死んでしまって会えないはずのティーゼ達とまた会えるというのは僕にとって奇跡だ。ティーゼ達も同様で、特にティーゼは僕には絶対に会えるはずはなかった。だが、《時を超える》という奇跡がなければ永遠に会えないままだった。僕とティーゼが一緒に過ごした時間は本当に短かった。実に1ヶ月と少しだけだった。

ティーゼ達はそれを今で埋めるように僕らを色んなところに連れていく。特にティーゼは積極的だった。

そして、僕は彼女が僕のことをどう思っているかを知っている。アンダーワールドの修剣学院の僕の部屋のベッドに座って話をした時から……でも僕は彼女の想いに答えられなかった。アリスを取り戻すという目的であの学院に入学し、上級修剣士になったのだから。

でも、今はどうだろうか。あの戦いは終わり、アリスとともに僕はアンダーワールドから消え、このアインクラッドで新たな生を受けた僕は、キリトの過去を変えるという事だけ。それにこの世界にアリスがいる確証はない。この世界に来てから何度もアリスを探しに出かけ、アルゴに調査を依頼することも多々あった。けど、僕の知るアリスはいなかった。騎士《アリス・シンセシス・サーティ》さえも。

僕は気づいてしまった。僕がアリスを探そうとするのは、ティーゼの思いに目を伏せるためなのではないかと。

彼の者(アドミニストレータ)に言いくるめられていたこともあるが、あれ程自分一人だけの愛を一時的にも求めてしまった僕が、自分のことを愛してくれるかもしれない人を相手に何故目を伏せ、背を向けて逃げるのか。僕には分からなかった。

怖いのだろうか。また僕一人にされてしまうかもしれないのが、裏切られるのが。人を_____信じられなくなっている、のか。僕には分からなかった。

「ユージオ先輩、どれ食べますか?」

「そうだね…えっと、スワンプクラブとハーシュフィッシュのマルゲリータピッツァと…」

テーブルについて料理を注文すると、最後に注文していた飲み物が運ばれてきた。ティーゼはそのドリンクをストローからチューチューと、吸い上げる。

ティーゼと共に笑い合い、時には助け合う、そんな時間が僕はとても幸せだと感じた。今、この瞬間さえも、愛しく思える。

駄目だ。もう、この気持ちに嘘はつけない。今まで気づいていながらも無いものだと思い込んでいたこの想い。打ち明けるべきだ、嘘偽りなく。

「美味しいね」

「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方。ここは32層のとある村の外れにある山。

「ユージオ先輩、一体どこに行くんですか?」

紅葉で紅や黄色に染まる森の中を歩く僕とティーゼ。ティーゼには目的地がどこなのかを言わずについてきて欲しいと言ったから、訝しげにティーゼは僕に聞いてくる。

「到着するまでのお楽しみだよ、さあ、あと少し!」

目的地まであと少し。この思いを告げるならばここしかない、そう思ってここまで来た。

そして、山を登り切り、山頂に到着した。

「_______凄い、綺麗……」

その山頂からの景色に言葉を失うティーゼ。これでここに来るのは何度目だろう。この場所はキリトにさえ教えていない。おおよそ、僕だけの秘密の場所だ。

「この場所を知ってるのは僕と、君だけだよ。ティーゼ」

「えっ?」

「この場所は誰にも話したことがないんだ。もちろんキリトやロニエ達にもね」

「そう、だったんですか…連れてきて下さってありがとうございます、ユージオ先輩」

花を咲かせるようにティーゼは笑った。それを見るだけでも心が踊る。鼓動が早くなる。

 

_______決めろ。

 

_____________男なら、覚悟を決めろ。

 

そして、僕はティーゼに向き合って真剣に話すことを決心した。この想いを告げることを。

「……ティーゼ。伝えたいことがあるんだ」

「?どうしたんですか?」

「このアインクラッドに来てから1年と半年がたって、君に支えられてばかりだったね」

「そんなことありませんよ!私だってユージオ先輩に支えて貰いました」

「僕はそれ以上のものを貰ったよ。僕はこの1年半、キリトの過去を変えることとみんなを守ることを目的に走ってきた。それに、その……ティーゼは知らないと思うけど、アリスのことを探そうともした。まだ諦めきれてなかったんだ」

「……知ってました、よ?先輩が夜な夜な宿を出てどこかへ行っていたことも」

「…そっか」

やっぱり気付かれていたみたいだ。

「それで、気付いたんだ。ここにアリスはいないって。もえ僕の記憶にあるアリスとは会えないことにね。僕はずっとアリスの事が好きだった。でも、それは、その……なんて言うのかな。家族、兄妹みたいな感じだったんだ。けど、君は違った。僕は君といる時間が幸せで、楽しくて……この時間がずっと続けばいいなって思ったことも沢山あった。でも僕はその自分の気持ちに目を伏せて見ないようにして来てたんだ。学院でも、君の気持ちを知ってて君があの時、告白してくれた時も、僕はその想いに答えられなかった………君の気持ちを知ってこんなことを言うのは酷いのは分かってる。けど、君に僕の本当の気持ちを伝えたかったんだ。赦して欲しい」

「だから、僕は君に改めて言うよ。僕は、君が好きだ。アリスのように家族や、友達としてではなく、その______異性として」

「____っ」

「卑怯だと分かってる。けど、伝えなきゃ収まらないんだ。この気持ちは____」

「____」

準備していた、あのアイテムをストレージから取り出し、そのアイテムが入った箱を左手に持ち、左膝を地面に付き、こうべを垂れ、そして、その箱のを右手で開けて最後の言葉を紡ぐ。

 

 

 

「_____________結婚して欲しい」

 

 

 

その僕の言葉を聞いたティーゼは口を両手で覆い、俯きながら小さな声で呟いた。

「______卑怯ですよね、先輩って」

「私の気持ちを知ってそれを言うんですか?こんなの_____」

 

 

「断れる筈ないじゃないですか……っ」

涙を零していた。

 

「不束者ですが、よろしくお願い致します」

 

僕は静かにティーゼの薬指に指輪をはめた。ティーゼの僕の手に比べて小さな手を、壊さぬように。

「えっと……このあとは、その……………」

()()……ですよね?」

「うん……ごめんね。こういう、恋愛はした事ないから…本当は君を僕がリードするべきなんだろうけど…」

「いえ、こういうのも新鮮でいいですよ?」

「あ、あと……僕のことは《先輩》って呼ぶのはやめよう。あと、出来れば敬語もね。僕と君は、夫婦になったわけだし…」

「わかりま…、分かったわ……ゆ、ユージオ」

ティーゼは慣れないながらも僕のことを名前で読んでくれた。不思議と、アリスに似ている。でも、違う。ティーゼはティーゼだ。声も、表情もアリスの見せたことのなかったものだ。

 

アリスは_________僕が幸せになることを赦してくれるだろうか。ティーゼと結ばれる事を、僕だけがこの世界で、幸福に暮らす事を___赦してくれるだろうか。

分からない。でも、僕は今なら、アリスがどんなことを言おうとティーゼと共にいたいと言える。アリスが呪詛を口走ろうと、罵倒しようと、泣いて、懇願されても________

「じゃあ、目を瞑って___」

「____はい」

_____僕はどんな事があっても必ず、ティーゼを守ってみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼し気な山の頂上で、2人の影は重なり合った。

夕日に照らされて、彼女のいる場所からは見えないが、おおよそ、キスをしているのだろう。

「……まったく、やっとくっついたヨ。ここまで来るのに1年半か……長かったネ、ティーちゃん。お幸せにナ」

そして、それを見届けた彼女(アルゴ)は無邪気に笑った。

「さて、結婚速報(こいつ)は、いくらで売れるかナ……にししっ♪」

 

 

 

 




やっとくっつきやがったぜ!!٩*(゚∀。)وヒャッハアアアァァァァァアア!!!!!
改めておめでとう、ユージオ、ティーゼ。
次回は多分圏内殺人事件になると思います。はい(´・ω・`)
そして、FBユージオくん、5回目?位でやっと来ました。カッコイイっすわ( ^∀^)ニタァ…
次はロニエですね。絶対に、当てなければ……(。-`ω´-)

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