ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
今回も短めです。
さて、続きをどうぞ~!
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「ヨルコに会いたい」
キリト達はヒースクリフとの会合との後、シュミットからメッセージがあった。
その要望に答えるため、キリト達はヨルコに連絡しシュミットがヨルコのいる宿に行くことを伝え、シュミットをその宿に連れていく____護衛も兼ねて_____ことにした。
「……よう、ヨルコ」
「……久しぶりね、シュミット」
2人は非常に気まずい空気の中、再会した。
キリト達は護衛、兼監視の役目を果たす為、その部屋に居続けることにした。
「もう二度と会わないだろうと思っていたが……」
2人は武器を装備していない。ヨルコと会う条件として、武器を装備しないことを約束させたのだ。
東側のソファーに座るヨルコと、対面するようにシュミットがソファーに座る。ヨルコの後ろには大きめの窓があり、開け放たれている。春風がカーテンを揺らし、外の風景がよく見える。
「シュミット、今は攻略組の青の騎士団に入ってるって…聞いたわ。凄いよね」
「……その言い方だと俺が攻略組に入ったことが不自然だって言ってるように聞こえるんだが」
「違うよ。ギルドが解散した後、人一倍頑張ったんだろうなって思ったの。私やカインズはそこで挫けて諦めちゃったのにね」
「……話はそこじゃない。何故今更カインズが殺されたかだ。あいつは……あいつが、指輪を奪った張本人だって言うのか…?リーダーを殺したのも……っ」
シュミットが不安げに頭を抱える。彼にヨルコは即座に否定した。
「そんな訳ないわ。だって私もカインズもリーダーのことを心から尊敬していたもの。売却しようって言ったのも、お金に替えるんじゃなく、ギルドの戦力として有効活用出来ると思ったからよ。本当だったら、リーダーもそうしたかったんじゃないかしら」
「…俺だってそうだったさ。でも、指輪を奪う動機があるのは俺達反対派だけじゃない。売却派も同じことだろう!……いや、あいつらが金目当てにリーダーを殺すなんて……そんなこと…っ!」
自問自答を繰り返しながらシュミットはより混乱し、冷静さを欠いていく。
「どちらにせよ、両方に動機があるんだ!なのになんでグリムロックは今更カインズを殺したんだ…!?反対した俺達を、全員殺す気なのか…!?俺も、ヨルコも……っ」
「……グリムロックさんの仕業って決まったわけじゃないわ。他のメンバーの可能性だってある。若しかすると……リーダー自身の復讐なんじゃない?そもそも圏内で人を殺すなんて、普通のプレイヤーには不可能なんだし」
ヨルコの予想だにしない言葉にシュミットは彼女に弱い声で答える。
「な……何言ってるんだ、お前……!」
するとヨルコは悲しげな表情で窓の側へキリト達の方を向きながら歩き出す。
「私、考えたの。リーダーを殺したのはギルドメンバーの誰か……そして、メンバー全員なのよ。あの指輪がドロップした時点でリーダーの指示に従っていれば……いいえ、もっと言えばリーダー自身に装備してもらえばよかったのよ。剣士として、ギルドの中で1番実力があったのは他の誰でもないリーダーよ。彼女なら指輪の力を1番活かせた筈なの。なのに私達は自分の欲を捨てられずに『リーダーの指示を仰ぐ』と誰も言わなかった。」
窓辺に腰をかけ、ヨルコは泣きそうな声で呟いた。
「ギルドを攻略組にしようなんて言いながら、本心は自分自身を強くしたいだけだったのよ……っ」
そして、ヨルコは震えながら続けた。
「……でも、その中で唯一、グリムロックさんだけはリーダーに判断を委ねた。あの人だけが、自分の欲を捨ててギルド全体のことを考えていた。だからこそ、あの人には欲を捨てきれなかった私達に全員復讐して、リーダーの仇を討つ資格があるのよ!」
その言葉に部屋は沈黙に閉ざされた。部屋で聴こえるのは、窓から入ってくる夕暮れの冷たい風が窓のカーテンを揺らす音とシュミットが震えて鎧からでる金属音だけだ。
「……確かに、そうかもしれない……でも、何もせずに殺されるだけでいいのかよ!!俺達はここまで生き残った!確かに俺達にもリーダーの死の原因でもあるかもしれない、それでも、復讐だからって人を殺していい筈がないだろう!!」
突然シュミットが大声で叫び、ヨルコに問いかける。偶然にも部屋にいる全員の視線がヨルコ一点に集まった、その時だった。
ドスッ、という何かが刺さるような音がした。
直後ヨルコは目を見開き、よろめきながらも大きく振り返った。
「__________」
ナイフだ。正確には
○
やっぱり事は起こってしまった。
ロニエは顔を顰めた。この件についてはユージオから始めのカインズ死亡事件が起こる3時間前に予め伝えられていた。
『今回見たものはかなり断片的だから当てにならないと思う。けど、参考程度に聞いて欲しい。あと少しで、キリトたちの目の前で誰かが死ぬ。フルプレートのプレイヤーと、軽装の女性プレイヤーがそれぞれ短い槍と短剣で殺されるのをキリトの記憶から見たんだ。でもその後、殺された筈の2人は生きてたみたいでね。もう1人のフルプレートの男の近くにいたよ。あとそれと、この事件ではラフィンコフィンも関係してるから、気をつけて。』
ユージオが見れるキリトの記憶はかなり断片的で、全てを見れるという訳では無い。しかもその記憶には音や声が無く、全てを見るだけなのだ。その事象が複雑なものになるとキリトの記憶から全ての事象を読み取るのは困難となる。
故にこれから起こることの結果だけを知っているロニエはその場で見極めなければならない。だが、VRやシステムについて現代の人間と同じ思考回路を持たないアンダーワールド出身であるロニエにとってそれは至難の業であった。
ヨルコの背中に短剣が刺さっているのを見た直後、ロニエは行動を開始した。
「ヨルコさん!!」
ロニエはまだ間に合うと考え、ヨルコの元へと走った。が、ロニエが手を伸ばしたと同時にヨルコは後ろへ倒れ込んだ。彼女は先程から窓に腰掛けていた為にそのまま窓枠に倒れ込み、窓の外へと落ちていった。
「くそっ…!」
ロニエに続いてキリトも走ってきたが、ヨルコは下に落下して倒れている。
「何処に……っ」
ロニエはその短剣を投げた犯人を探そうと窓の外を見回した。すると向こう側の建物の屋根にそれらしき人影を発見した。それが大方犯人だろう。ロニエに気付かれたのを悟ったのか、犯人は逃走を開始する。
「先輩!12時の方向!!」
「っ!!奴は俺が追う!頼んだぞッ!!」
「はい!!」
短い言葉を交わし、キリトは建物の屋根にいる犯人を追って前の建物へと跳んだ。ロニエはヨルコの元へと飛び降りようとした、その時。
「_______」
ヨルコが何かを呟いた気がした。ロニエは飛び降りるのを断念し、これから消えるであろうヨルコをじっと観察することにした。人が消えるその瞬間を見れば何か分かる可能性があるからだ。
「……ッ」
何かを呟いた直後、ヨルコは体をポリゴン片を四散して消えた。
「……何かが、違う……?」
ロニエはヨルコが消える瞬間を見てそう思った。通常のプレイヤーの死のエフェクトと何か違和感を感じた。
「ヨルコさん!?」
「ヨルコ……!?」
遅れてアスナが走りよってくる。その後ろでシュミットが震えながら立ち尽くしている。
「…そんな……!」
「シュミットの護衛をお願いします、アスナさん」
「わ、分かったわ」
ロニエはアスナにシュミットの護衛を頼み、ヨルコが消えた場所へと飛び降りた。
そこにはヨルコの背中に刺さっていたであろう短剣が一振り、転がっているだけだった。
「今度は、短剣…」
ロニエはその短剣を拾い上げると一旦ストレージに入れ、シュミットとアスナがいる部屋へと戻って行った。
え?遅くなった理由?
FGOにハマってました、( ´•̥ω•̥`)ゴメンナサイ…