ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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あけましておめでとうございます!
新年一発目のお話を1月下旬に投稿します、クロス・アラベルです!
今回はオリジナルストーリーだと思います。
それではどうぞ!


メープルと女の子

 

 

 

32層のとある村のはずれ。

そこに一軒家が建っていた。

そして、その家の前___ベランダの手前にて、()()()()が行われていた。

「はぁッ!!」

「やぁッ!!」

閃く二振りの剣。そこに初撃決着決闘(ファーストアタックデュエル)だからと、手加減している気配は全くない。

ティーゼが怒涛の連撃をユージオに叩き込む中、ユージオはアンダーワールドで出会ってまだ初等練士だった頃のティーゼと今の彼女を重ねて、その成長ぶりが見られて____喜びを感じてしまった。そして、一緒になった事も嬉しく思った。

________ああ、この娘はこんなにも強くなったのか。

自分の知らない間に成長し色んなことを体験してきたティーゼは実力も折り紙付き。今やユージオと互角に戦えているのだから。

だが_____それでも負けるつもりは無い。

何故か_____当たり前だ。

ユージオはティーゼにとっての夫であり、先輩だから。

「フッッ!!」

彼は思う。

ティーゼにとっての良き先輩として、良き夫としてありたいと。

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

4分と少し。それがティーゼとユージオの決闘の経過時間。ただそれだけで汗が吹き出す。

このアインクラッドでは表情がかなり大袈裟(オーバー)に表現される。その感情表現は汗や涙も含まれるのだ。悲しくなれば涙がこぼれ、怒れば顔が真っ赤になる。それぞれの程度にもよるが、予想しているより感情が表情に出やすくなっている。

 

ティーゼにとっては、4()()()()()()()()()()、と感じた。ティーゼの全力を叩き込んでいるがそれでも勝てそうにない。やはり、体力や集中力はユージオの方が上か。そんなことを考えていると、彼女の顔に焦りが見え始める。

やはり、彼の方が先輩で色んなことを経験してきている。確かにティーゼもユージオより長く生きていることかも知れないが、それでも死線をくぐり抜けた数で言えばユージオの方が上だ。確かにアンダーワールド大戦ではティーゼも幾分か戦ったがユージオの整合騎士破りに比べれば見劣りする。

それに今まで一緒に戦ってきたからこそ、お互いの戦い方の特徴はバレている。ならばもうこれはソードスキルの問題ではなく、それぞれの技術の戦い。

「ッッ!!(不味いわ……!このままじゃ集中力が切れていつ隙を見せてしまうか、分からないし、時間もない!……なら、決めないと!!)」

制限時間はあと15秒。

ティーゼはユージオの剣を切り払い、少しユージオから離れてソードスキルの構えをとった。

《ホリゾンタル・スクエア》

これが彼女の選んだ最後の一撃。左腰に剣を構えると、剣が蒼色に光る。ティーゼはユージオへ斬りかかった。

「____(あの構え……《バーチカル・スクエア》!)」

斬り掛かるティーゼに対してユージオは剣を上段に構えてソードスキルを放つ。

直後、激しい光がぶつかり合い火花を散らす。

計4回。ユージオはティーゼの《ホリゾンタル・スクエア》を《バーチカル・スクエア》で完全に相殺した。2人とも剣が大きく弾かれ、バランスを崩す。

「うっ!?」

その時頬を掠るものがあった。ユージオの靴だった。

ユージオは大きく弾かれて後ろへと倒れるその動作さえも利用して攻撃をしてきた。体術スキルによる蹴りの追撃。ユージオが最も得意とする戦い方である《体術》と《片手直剣》、2つのスキルを駆使するユージオなりの二刀流。

ティーゼは倒れた直後に横に転がり体勢を立て直す。ユージオは体術スキルによって反動がつけられ、そのまま地面に片手を付いてバク転の要領で倒れるのを防ぎ、突貫する。

そして_____

「……参りました」

ティーゼの首元に剣が突きつけられて、時間切れ(タイムアップ)となった。

 

 

 

 

「また負けちゃった…」

三角座りしながら頬を膨らますティーゼにユージオは苦笑いでフォローした。

「でも惜しかったよ。今まで立ち合い……いや、決闘(デュエル)してきて一番大事良かったんじゃないかな?」

ユージオも内心焦っていたので事実そうだった。多分、今までで1番接戦していた。けれど、ユージオの瞬間的判断によってほんの一瞬最後の立ち直りが早かっただけなのだ。

整合騎士になって戦った事とこの世界で戦い続けた事が今のティーゼの強さを形作っている。ユージオも近いうちに負けてしまうのではないかと、戦慄したのだった。

「お疲れ、ティーゼ。日課も済んだし、少しシャワーを浴びて来なよ」

ユージオはそう言いながら座り込んだティーゼに手を差し伸べた。

「うん……そうね。じゃあ、私、先にシャワーを浴びてくる」

「その後に僕は浴びるから、もう少し素振りしてるよ」

「ええ。早めに上がるからね!」

「いいよ、ゆっくり浴びて来て」

ティーゼは服に着いた砂を払って駆け足で家に入って行った。

「……まだまだ負けてられないなぁ…」

ユージオはそう呟きながら日課である素振りを始めた。

「ハッ!!」

 

 

 

 

「お待たせ!ユージオ」

その数分後、ティーゼはお風呂場から出てきた。少し頬を赤くしながら笑顔でユージオの元へと歩く。

「それじゃあ、入らせてもらおうかな」

部屋着に着替えてソファーで新聞を読んでいたユージオはその新聞をストレージにしまい、立ち上がった。

すると、ティーゼより幾分か背が高いユージオの目にあるものが映ってしまう。服の隙間から見えてしまう、胸元。

「……どうしたの?ユージオ」

「い、いや……は、早いとこ浴びてくるよ!」

少し顔を赤くし、慌ててお風呂場に行ってしまった。

やはりユージオも男。ティーゼとは結婚し一緒になったとはいえ、また恥ずかしいようだ。

「……ふふ、照れてるユージオ…可愛い」

そんなことお見通しなティーゼはユージオの反応を見て楽しんでいたようだ。

尻に敷かれるのは、遠くない話のようだ。

 

 

 

 

 

「で、今日はどうするんだい?ティーゼ」

朝食をとった後。紅茶を飲みながらユージオが切り出した。

「うーん……もう行きたいところには大体行っちゃったものね」

結婚し、休暇を貰ってから2人は様々なところに出かけた。4層の水の都だったり、10層の和風な街……グルメなプレイヤーがこぞってやってくる31層のレストラン街にトレジャーハントが楽しめる5層、極めつけは膨大な海を望める13層。有名どころからマイナーな観光地まで、もう行き尽くしてしまった。

その旅行は2人にとっての新婚旅行(ハネムーン)

しかし、まだ攻略組への帰還には早い。あと4日はある。

「そうだ。ティーゼってさ、こんな噂話聞いたことある?」

「…どんな噂、なの?」

「それがさ…」

2人が住むこの32層は安全域。数少ない《モンスターの湧かないエリア》になっている。それもあってここに住むことを決めたプレイヤーも多い。

そして、32層は《秋》がテーマになっている。そこかしこに生えている木の葉っぱも、紅や黄色に染まっており、大変のどかな場所だ。景色もよく、山頂から眺める景色は誰もが哀愁を感じる、故郷(現実世界)の景色だ。

この32層の木にはメープルシロップが採れる木が幾つもあり、ユージオによるとその中に最高級のメープルを出す木があるのだという。

「どうかな?僕らで探してみないかい?」

「……最高級、メープル…!」

「ティーゼ甘いもの好きだし、ぴったしかな…と思ったんだけど…」

「じゃあ、そうしましょう!何か要るものはある?」

「大丈夫、用意はしてあるよ。アルゴによると…あとは根気よく探すことと、自分の幸運にかけるしかないって」

「すぐ行こう!その最高級メープルが手に入ったらそれをパンケーキにかけるのもいいわね。ううん、そのメープルを使ってロールケーキを作るのも……焼きたてのパンの上にたっぷり……!」

ティーゼはユージオの提案に飛びついた。何を隠そう、ティーゼは甘いものが大好きで、毎日必ず夕食後に「ティーゼタイム」なる時間を設けて最低2品スイーツを食べる。しかも、アンダーワールドと違いアインクラッド(ここ)では太ることは無いので、余計に食べてしまっている。その食べっぷりを見たアスナ達は「太ることの無いここだからこそ出来る事ね…」と呆気にとられていた。まあ、そう言いながらもティーゼと一緒に食べていらっしゃったが。

ティーゼタイムはユージオにとって結構至福の時間だったりする。甘いものを食べられるということよりはティーゼの幸せそうな顔が真正面からじっくりと見られるのだから。

ティーゼはメープルを使って様々な料理に使おうとしているようで、ニコニコと笑みがこぼれる。

_____これは絶対に見つけなければ。

ユージオはそう思いながらメニューウィンドウを開いた。

 

 

 

 

「………見つからない…!」

「あはは……ここまで苦戦するとは僕も思ってなかったよ」

3時間後。2人は森の中を探し回ったがそれらしいものがなかった。

その最高級メープルが出る木は、葉っぱが不思議な模様に色付いており比較的に分かりやすいのだという。

「うーん……葉っぱの染まり方だけじゃなぁ…」

「ユージオ!他に情報は聞かなかったの?」

「うん。僕はその事しか聞かなかったよ。一応これはアルゴに聞いた事だから、そのアルゴが何か黙っていることがなければこれだけしか情報はないよ」

「……うーん…そう言えばもうお昼ね。お弁当作ってきたから、それを食べましょう!」

「うん」

一向に進まない状態にティーゼがしびれを切らして昼食を食べることを選んだ。

ストレージからランチボックスを取り出し、蓋を開ける。そこにはティーゼお手製のサンドイッチが入っていた。

「はい、ユージオ」

「ありがとう、ティーゼ」

ティーゼからサンドイッチを受け取りかぶりつくユージオ。ティーゼもユージオに続いてかぶりつく。

「……ここまで普通のメープルは取れてるんだよね?」

「うん。もうストレージがメープルで埋まってきたわ」

「早めに探さないとね。でも、やっぱり難しいのかな…」

メープルというのは樹の樹液、メープルウォーターというサラサラの水を煮詰めることによりメープルシロップができる。現実世界だと40Lのメープルウォーターで1Lのメープルシロップができるのだが、それをアインクラッドで再現すると面倒極まりない。それを製作者(茅場晶彦)も察したようで、メープルウォーター(500mlほどのビンに入っている)2つに対して瓶1つのメープルシロップが出来るようになっている。

現在ティーゼとユージオのストレージにあるメープルウォーターは20個を超える。10個はメープルシロップが出来る計算だ。

そろそろ見つけないとストレージがいっぱいになって入り切らなくなるかもしれない。

「食べ終わり次第まだ探してない方に行こう。南は結構探したから、次は北だね」

「ええ!」

ティーゼはユージオの指示にサンドイッチを片手に気合いをいれた。

 

 

 

 

 

そして、その2時間後。

ティーゼのストレージがいっぱいになり、残るユージオのストレージもあと少しで埋まるかと思われた時。

「あった!!あったわ、ユージオ!」

「ホントだ……確かに、葉っぱの模様が独特だね」

5時間探してようやく見つけ出すことが出来た。葉っぱが赤と黄色に模様がついており他と違うことが分かる。

「じゃあ、早速…!」

「採取しようか」

目を輝かせるティーゼが見守る中ユージオは準備を済ませる。

ストレージからバケツとナイフを取り出し、木をナイフで切りつけてその下にバケツをセットする。

数秒後メープルウォーターが出てきた。

「これが最高級メープルウォーター…!」

「ちょっと透明度が高いね」

メープルシロップを作るには瓶が2ついる。しかも、メープルウォーターはそんなに早く取れるものでは無い。瓶がいっぱいになるまで10分ほどかかる。なのでユージオは反対側にも採取口を作り待つことにした。

「僕のストレージならあと8つくらいなら入るし、限界まで入れていこう」

「どれくらい出るかしら?いっぱい出るといいんだけど…」

ユージオ達が見つけたその木はかなり大きく他より多くとれそうだ。

「無事見つかってよかったね、ティーゼ」

「うん!それじゃあ、早めに帰ってメープルシロップを作りましょう!」

声が弾むほど機嫌が良くなったティーゼはメープルシロップで作れるスイーツを想像して笑顔をこぼした。

その後2人は無事最高級メープルウォーターを6つ手に入れ、帰路に着いた。

 

 

 

 

「……っ?」

帰り道。

ユージオは視線を感じて立ち止まる。

「どうしたの、ユージオ?」

「……いや、何にもないよ」

急に立ち止まったユージオにティーゼが声をかけた。ユージオは何も無いと言葉では言ったが妙に気になる。

敵意、では無い。ただ見られているだけなのだが、少し気味が悪い。ただ通りすがりのプレイヤーがいるだけならいいが、今日1日この山を探索してきて誰ともすれ違っていない。そして、1番気にかかっているのが____

「……(索敵スキルには、何も反応してない…?)」

ユージオは索敵スキルを980まで熟練度を上げているので相手がモンスター出会であってもプレイヤーであっても反応する。で、あれば残るはNPCということになる。

ティーゼに勘づかれないように索敵スキルを発動し周りを見ているが、やはり反応はない。

「…気のせい、か」

ユージオはそう呟いてユージオの少し先で不思議そうに彼を見るティーゼに追いつこうと少し駆け足になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

ユージオが去った後。

木の影に隠れてみていた人物がいた。

彼女はユージオ達が歩いていった方へゆっくりと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからメープルシロップ作り始めるから、ユージオは待ってて!」

ユージオはティーゼにそう言われてリビングのソファーに座り込んだ。

「結構嬉しそうだったな…」

ティーゼの満面の笑みが見られて、ユージオもアルゴから情報を仕入れた甲斐があったと思った。

 

だが、やはり___

「…気になる」

そう、帰り道に感じた視線。敵意は無かったが、執拗にこちらを見ていた。

「まさか、ね」

ユージオは何となく玄関へと足を進めた。

温かみのある木製のドア。ユージオは思い切ってドアノブを回して外に出た。

秋らしい少し冷た目の風がユージオの頬を撫でる。ドアを閉めて前へと歩く。

 

「_____(まだ、見てる…!)」

視線はまだ続いていた。即座に索敵スキルを発動させるが__

「から、ぶり…」

再び何の反応も無くなった索敵スキル。反応しているのはティーゼだけ。

だが、謎の視線がどこから来ているかは何となく分かった。

「_______誰だ」

ユージオは鋭く謎の監視者に声をかける。

すると、ユージオが見ていた木の影から誰かが出てきた。

それは____

 

 

「……」

 

1人の女の子だった。

真っ黒なワンピースに真っ白な長い髪。そして、紅い瞳。年は10歳にも満たないだろう。

「君、は____?」

「……ぁ」

ユージオの思わず出た言葉を聞いた彼女は直後、倒れてしまった。

「だ、大丈夫!?」

即座にその子を抱き寄せる。もうその子は気を失っているようで、目を開ける気配はない。

「ねぇ!君、大丈夫!?」

体を揺らしてみるが、反応はない。

「くっ……ティーゼ!!ティーゼ!?」

ユージオは困り果ててティーゼを大声で呼んだ、その時ユージオは違和感を感じた。

「…この子、カーソルが……ない…?」

分からないことだらけで戸惑い、再びその子の顔を見る。

だが、その口が開かれることは無かった。

 

 

 

 

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