ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

65 / 119
お待たせ致しました、クロス・アラベルです。
今回は前回の女の子について少し書きました。まだまだ書いていないこともいっぱいありますので全貌は然るべき時に。
では、どうぞ!


白髪の女の子(シャロ)

 

 

 

 

ユージオとティーゼの家、その寝室。そこのベッドでその少女は眠っている。

「うーん……」

「どう、かな?」

「別に苦しそうでもないし、怪我もしてないわ。まあ、ここじゃ傷も残らないんだけど…」

素早く女の子の状態を見たが何もおかしいことは無かったという。

そもそもアインクラッドでは傷が残ることは無く、調べてもあまり意味はない。念の為にと調べた。

「……ユージオ、なんでこんな小さな子が…?」

「分からない。元々メープル探しの帰り道から多分この子にみられてたんだと思う」

ユウキ達にユージオは聞いた事がある。このアインクラッド______ソードアート・オンラインをプレイするには年齢制限(レーティング)があり、15歳からしか出来ないのだ。しかし、この子はおよそ10歳にも満たない。この世界にいるはずのない子。プレイヤーでなければNPCだが、それを判断するカーソルカラーはカーソル自体が無く、ユージオ達では全くわからないことだった。

「……今は無理に起こさない方がいいんじゃないかな?自然に目を覚ますのを待とう。この子に話を聞くのはそれからにしよう。もう遅いからね、子供にはあまり良くないだろうし」

「……うん、そうね」

「ティーゼ。君はベッドで一緒に寝てあげて。僕は居間のソファーで寝るよ」

「でも…」

「知らない男が隣にいたら怖がるからね。頼めるかい?」

ユージオがティーゼに女の子の子守りを任せた。ティーゼも理由は分かっていたがもし起きて隣にいたのが自分だったとしても、怖がらせないという自信はティーゼには無かった。

「……分かったわ。今日はもう寝るの?」

「うん。メープルシロップ作りも明日にしよう。今はティーゼ、君が近くにいてあげて欲しい。明日の鍛錬も無しにしよう」

「分かった。お休みなさい、ユージオ」

「お休み、ティーゼ」

この日、2人はかなり早くに床に就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んぅ…」

次の日。

ティーゼは6時ぴったりに目を覚ました。

目覚ましの音楽が鳴り響く。

ティーゼにとってこの世界にある音楽も、童話も何もかもが知らないもの。目覚ましに設定していた音楽_____《木星(ジュピター)》もここに来て初めて知った曲だった。

起きて朝食の準備をしようと瞼を開けると_______

 

「きれいなおうただね!」

 

「……え!?」

目の前で昨日保護した女の子がティーゼのことを見ていた。

ニコニコと上機嫌に言うその子は、とても元気そうだった。

紅い瞳。

燃えるような紅い瞳は生気に満ち溢れていた。

「…お、おはよう」

「おはよー!」

ティーゼが挨拶するとその子も元気に返してくる。

その子が隣で座ってこちらを覗き込んでいたようだ。

女の子が除くのを止め、ティーゼは起き上がる。

「……少し待ってね?」

「うん!まつ!」

「ユージオ!ユージオ!!」

ティーゼはどうしていいか分からずユージオをとりあえず呼ぶ事にした。

『どうしたの、ティーゼ?』

ドア越しにユージオが返事をした。もうティーゼより早く起きていたようだ。

「昨日のあの子が起きたわ!」

『え!?』

ティーゼの言葉に驚いてドアを開けて寝室に入ってくるユージオ。

「あ、おはよー!」

「……あ、おはよう…」

ユージオも女の子の元気さに少し驚きながらも挨拶した。

「…えっと……君、名前はなんて言うの?」

ユージオが恐る恐る聞いてみると答えはあっさりと帰ってきた。

「…おなまえ?おなまえ……おなまえ…………あ、おなまえ!わたし、シャロ!!」

名前という言葉を遅まきながら理解しユージオに笑顔で答えた。

「……シャロ、か。可愛い名前だね」

「そう?わたし、かわいい?」

「ええ、すっごく可愛いわ」

ユージオは表情に出さぬよう、考えを巡らせた。

言語能力的に言えば、5~6歳と変わらない。見かけは10歳程だが、 ほんの数回話す度に精神的年齢の幼さを推察出来る。

何故、こんな所に1人来ていたのか。

そして、もうひとつ。ユージオは何か、既視感を抱いた。彼女の顔を知っている訳では無い。だが、彼女の紅い瞳に見覚えがあった。どこでだろうか、ユージオははっきりとは思い出せない。だが、確かに見た気がする。ただそれだけ。

「シャロ。少し、聞いてもいいかな?」

「うん、いいよ!」

「シャロは、なんでここにいたの?」

「……?」

「…?」

シャロにずっと気になっていた質問をぶつける。だが、何を言っているか分からないのかシャロは首を傾げる。

「……えっと…昨日のこと、覚えてるかな?」

「きのう…?分かんない」

「…そっか。ごめんね、変な事聞いて」

ユージオは悟った。この子には記憶が無いのかもしれない、と。1度、ラン達から聞いたことがある。何か、深刻な精神的ダメージを受けた時、人間はその記憶を忘れようと記憶を消してしまうのだと。その他にも頭を打ったりなどもあるらしいことは聞いていたのでその答えにたどり着いた。

「あなたは……だれ?」

「あ、教えてなかったね。僕はユージオ。この人がティーゼって言うんだ」

「ゆーいお、いーえ?」

「まだ言い難いのね。じゃああなたの呼びやすい名前でいいわ」

「……うーん……あ!」

ユージオ達の名前を言えなかったシャロはどう呼んでもいいと言われて____

「おとうさん、おかあさん!」

_____大方覚えていないであろう、両親を呼ぶかの如く、笑顔で2人を指さして呼んだ。

ユージオとティーゼは絶句しそうになるも、耐える。

「_____っ、そうよ、私が……お母さんよ」

「おかあさん…!おかあさん!」

シャロは嬉しそうにティーゼに抱き着いた。ティーゼは泣きそうになるのを堪え、笑顔でシャロを優しく抱き締めたのだった。

ユージオも悲しみを表情に出さないように笑顔で2人を見守った。

 

 

 

 

 

 

シャロが朝ごはんを食べて寝た後。

「……ユージオ、あの子は…」

「アルゴに情報を集めてもらうことにしたよ。そう時間はかからないってアルゴが言ってた。早くて明日には結果を報告するそうだよ」

「……」

ユージオの言葉に体育座りをして顔をふせていたティーゼは言葉無くユージオを見る。

「…それまではここで面倒を見よう。放っておくわけには行かない。それまでは…我慢出来る…?」

「はい、わかりました。でも、ユージオ。もし……もし、あの子の家族が見つからなかったら…」

ユージオの優しい声に、少し涙しながらもティーゼは答える。だが、もしシャロの家族が見つからなかったら……最悪な結末を考えてしまったティーゼ。

「その時はその時だよ。もちろん、この子が良ければ記憶が戻るまで預かる。全てを思い出すまでは、この子の両親でいよう」

「…うん…!」

ティーゼは涙を浮かべながら何度も頷き、ユージオに抱きしめられたのだった。

 

 

 

 

 

 

「おかあさん!これおいしいよ!」

「良かった、作った甲斐があったわ!」

「おかあさん、おかわり!」

「待ってね、シャロ。今からもう1枚焼くから」

「わーい!」

 

次の日の昼。シャロはティーゼの作ったパンケーキを頬張っていた。

シャロに催促にはいはい、とティーゼはフライパンにボールを流し込む。

薄黄色の生地はフライパンの熱に焼かれて、耐えきれないと言わんばかりに生地の表に気泡を出す。

 

「あんまり食べ過ぎないようにね?またお腹いっぱいになって眠たくなっちゃうから」

「だいじょうぶ!わたしちゃんとおとうさんとあそべるようにおきてるもん!」

「だといいけど…ミルクも持ってこなきゃね」

笑顔で追加のパンケーキを待つシャロ。

布巾でシャロの口元に付いたメープルシロップを拭いながらユージオは微笑む。

「えへへ…!」

ユージオに撫でられるとシャロは気持ち良かったのか足を揺らして嬉しそうだ。

「はいっ!2枚目出来たわ!」

「んー!」

「出された瞬間頬張り出したよ……子供はやっぱり甘い物好きなんだね」

シロップたっぷりのパンケーキをティーゼに出された瞬間に食べ始めるシャロ。

「……はいはい、あんまり急ぎ過ぎないようにね?パンケーキは逃げないから」

家族団欒、とはこの時を言うのだとユージオは悟った。確かに2日前に来たばかりとはいえ、シャロにとってはここが我が家なのだ。そして、ユージオとティーゼが両親。一時的だ、偽りだとは分かっていてもユージオにとってこの幸せは_____アンダーワールドにはなかった物だった。

 

 

 

 

 

 

 

「もうそろそろ来るんでしょ?アルゴさん」

「うん。メッセージだともうすぐだよ」

お昼にパンケーキを2枚平らげて案の定眠ってしまったシャロの頭をを撫でながらティーゼはユージオに聞いた。

ユージオが答えたその時、玄関の扉を3回叩く音が。

「はーい」

ユージオは玄関へ行き、扉を開ける。

「ヨッ!ユー坊。ラブラブチュッチュしてるカー?」

「久し振りに会って開口一番がそのセリフなの…?」

時間ぴったしに彼女が来た。いつも通りおちゃけながら、ニッと笑った。

アルゴの言葉に少し顔を赤くしながらユージオは質問し返す。

「ホー……誤魔化す辺り、してると見たヨ…!」

「……で!頼んだ事は分かったんだよね!?情報屋の《鼠》さん?」

しつこいアルゴに遂に顔を真っ赤にしながら声を荒らげそうになるユージオ。

「ああ、調べてきたヨ」

アルゴはユージオにリビングに通されながら答える。笑顔だったアルゴの表情が曇る。

「……もしかして、見つからなかったのかい?」

ユージオはティーゼの隣に座る。アルゴは2人の向かいのソファーに座った。

「…残念だけどナ。《シャルロット》って言うプレイヤーネームで誰か知らないかって始まりの街を聞き回ったけど、収穫は無し。他の層もツテを使って色々聞いて回っても何一つ掴めなかったヨ」

手掛かりは一切無し。シャロ自身からの情報にも期待は出来ない。となると、ほぼ詰みだ。

「……ふーむ…オレッチもわかんないなァ…このシャロって子。カーソルが出なかったんだロ?」

「うん。だからプレイヤーかそうでないかさえ判断出来なかったんだ」

「オレッチにとっても未知の領域か……それか、タダのシステムの故障(バグ)か。多分どっちかだと思うゾ。まあ、オレッチは後者だろうと思ってるけどナ」

「…まあ、カーソルが出ないだけならそうだけど、この子の場合、カーソルだけじゃなくて、メインメニューの出し方もちょっと違ったんだ。」

「出し方が、違う…?どういうことダ?」

「普通は右手で出すでしょ?けどあの子は()()で出したんだよ。僕達もびっくりしてたんだけど…これって利き手によって違う、とかじゃないだろう?」

「いや、SAOは利き手は確かに設定出来るけど、メインメニューを出せる方を決められる…なんて設定、なかったゾ」

「うん…アルゴはやっぱり、バグだと思う?」

「そう言うしかないんじゃないかナ。だって、1人のプレイヤーとしてわかる事なんて本当に少ないのが現状ダ。システムに関してはSAOが始まる前に開示されたこと以外は分からないしナ」

アルゴは両手を上げながら降参する。流石のアルゴとて、分からないこともある。

「……」

そして、1番謎なのが、シャロのプレイヤーネームである。メインメニューを開いたところ、シャロのプレイヤーネームとして表記されていた名前、それが______

「……(《Charlotte(シャルロット)- MHCP000》…か。シャロと名乗ったのはこのシャルロットの愛称としてなのかな……そして、残りの《MHCP000》って言うのが気になる。あれには一体なんの意味が……?)」

ユージオが言葉に詰まっている中、ティーゼがシャロの頭を撫でながら途切れ途切れに言う。

「アルゴさん、あたし達……どうしたらいいんでしょうか…?」

「…今はティーちゃん達が預かるしかないと、オレッチは思うけド……だって、かなり懐いてるんだロ?」

「ええ…そうだけど…」

「曲がりなりにもその子がティーちゃんとユー坊のことを『おかあさん』、『おとうさん』って呼んだんなラ…」

初めてそう呼ばれた瞬間の、シャロの顔を思い出してティーゼは震える。涙腺は緩み、今にも泣きそうになる。

「……っ」

「そうだね。僕らも覚悟を決めよう」

シャロが目を覚ました日、誓った事を忘れないように。ユージオは小さいけれど、強い声で言った。

「ユージオ…」

「後の事はこれから考えよう。今、僕らに出来ることはそれくらいしかない。アルゴの腕を使っても見つけられないのなら、僕らじゃ到底無理だ」

ユージオは、揺らいだ自身の覚悟を改めて決める。その瞳に迷いは微塵も無い。

「…はいっ」

「ごめんね、ティーゼ。勝手に決めちゃって」

「ううん、あなたが決めたことなら、私は信じて進むわ。一緒に、頑張りましょう…!」

ティーゼは最後に涙を流しながらユージオに微笑むのだった。

 

 




バレンタインロニエ出なかった(白目)
最近ロニエ運がない…
あと、エクスクロニクル行ってきましたー
ランダムのアクリルキーホルダーは、1回でロニエが出た(`・ω・´)キリッ
家宝にします( ˊᵕˋ )

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。