ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
後日に、短編の新しい小説を投稿予定です。たった1話で終わってしまいますが、そちらの方もよろしくお願いします。すごく悲しいお話なので、読む時はお覚悟を(泣)書いてる本人も泣きそうになりながら書きました。
はい。ということで、今回はオリジナルストーリーの3話目、戦闘シーンです。
中々難しく、何度書いても慣れないものですが、描き終わりました。
このオリジナルストーリーはあともう1話で完結します。
それでは、どうぞ〜
○
先に仕掛けたのは勿論ユージオだった。
ユージオはソニックリープでレイラに斬り掛かる。
これで間合いを詰めてここから接近戦を挑むつもりだった。
「ハァッ!!(彼女の対人戦の実力がどれ程か実際に見たことは無いけど……これで一撃を入れて___)」
ソニックリープを発動し、跳ぶ。その時だった。
「_____(あれ?レイラは構えてないのか?剣を持って立ったまま静止している…?)」
違和感。
普通なら中段に構えて相手の行動を見極めたり、先手必勝と言わんばかりにソードスキルを発動させる。だが、彼女にそれをする素振りはない。
ただ、ユージオを見ているだけ。
このままだと真正面からソードスキルを受けることになる。
だが、彼女は動かない。
そのままユージオの剣はレイラへと向かう。
ユージオが違和感を感じて疑問を抱いた、その時だった。
『___シッ!!』
レイラが動く。
直後、自分が悪手を取ってしまったことをユージオは悟った。
レイラはユージオを完全に避け、ただ剣をかざす。ユージオは軌道修正出来ずにレイラの剣に斬られた。
「ぐっ!?」
ソードスキルは失敗に終わり剣は緑色の輝きを失って、ユージオは地に倒れた。
彼女はユージオの行動を読んでいた。いや、ユージオのソードスキルの軌道を読んでいたと言うのが正確か。
ユージオはすぐさま体勢を整え中段に構える。
だが、その時にはもう彼女の剣が眼前に迫っていた。
「ッ!!」
有無を言わせぬ連撃にユージオは何とか反撃を試みるが、レイラはその隙を見せない。
「ぐっ!?」
鍔迫り合いになり押し込まれるユージオ。だが力だけならユージオが上を行く。
「……おおッ!!」
ユージオが競り返すとレイラは自らの剣を左肩へ方向を変えて受け流す。そしてそのままユージオへ一撃を入れた。
「シッ!!」
「がはっ!?」
ダメージ量としては1割に満たないが、それでも彼女の一撃はユージオを吹き飛ばした。
「ぐぅ……ッ!」
すぐさま立ち上がり剣を構える。
それから何度かソードスキルを撃ったが、全て見破られて反撃を食らった。
彼女は強かった。ソードスキルに関しては完全に封殺。ソードスキルを撃とうものなら即座に手痛い反撃が返ってくる。レイラは完全にソードスキルを熟知しているようで、その手際は慣れたものだった。そして、彼女はソードスキルを使わない剣戟に関しては特に強かった。
ユージオは心のどこかで____これまでのアインクラッドての戦いから、NPCはソードスキルを多用してくるし、ソードスキルを打つ隙があったから____油断していたのだ。彼女はNPCだから、ソードスキルを使えば勝てる。そう、無意識に鷹を括っていたのかもしれない。
だが、彼女は違った。尋常ではない剣の速さ、無駄のない身のこなし、一撃一撃の威力、そして、勝負を決する剣の冴えも、そこらのNPC__いや、プレイヤーをも凌駕している。
剣の速さはアスナ、身のこなしはラン、剣の冴えはユウキ、一撃の威力はキリトと言ったところか。
今まで戦ってきたどのNPCよりも強い。
ユージオはすぐさま対プレイヤー戦へと____いつもキリトとデュエルをする時の意識に切り替えた。
「……!!(彼女はもう普通のNPCなんかじゃない。僕らプレイヤーと何ら変わらない思考を持ってると考えるべきだ。ソードスキルの軌道も読んでいるし、対人戦に関しては彼女の実力はキリトを超えるかもしれない…!)」
『ハアッ!!』
「うおおッ!!」
惜しみなく降りかかる彼女の斬撃を剣で打ち合わせて応戦する。
彼女は特にスピード系の剣士の為、レイラの方が攻撃数は多い。ユージオはそれを防ぐ事を余儀なくされる。
しかし、ユージオもやられてばかりでは居られない。
レイラの剣戟の一瞬の隙を見てユージオも何とか反撃を試みる。
が、それも防がれる。
ユージオの不利な状況は3分程続いた。
HP量はユージオが6割、レイラが8割。剣を打ち合わせることで反動によって少しずつではあるが双方にダメージがある。だが、やはり初撃の失態が効いたか、ユージオの方が少ない。そして、ユージオはレイラの攻撃を全て防ぎきっている訳ではなく、致命傷になるであろう攻撃を優先して防ぎ、そうでない攻撃___かすり傷程度の攻撃は二の次であった。
スピードでは勝てない。だが駆け引きによってユージオは応戦出来ている。だが時間もない。このままではレイラのがユージオのHPを削り切ってしまう。
ならば応戦出来ている要因である、その駆け引きで彼女に勝つ。
「ッおお!!」
『!!』
ユージオは彼女の剣戟を押し込む形で無理矢理レイラから形勢逆転を挑む。
だが彼女はそれにも動揺することは無い。何せ彼女はあらゆる剣士を相手取り、完封勝利を決めてきた対人戦のプロ。しかも、相手が男だった事など山ほどあったはずだ。
だがユージオの狙いはそれではない。
「っ!!」
ユージオはそこでソードスキル《バーチカル》を発動するために初動のモーションを起こそうとする。
それを見た彼女はすぐさま迎撃体勢へ。
そして彼はそのまま初動のモーションとしてシステムに認識される寸前、素早く彼女に剣を振り下ろす。
『!!』
ブラフ。
ユージオは彼女が、ソードスキルを熟知している事を逆手に取った行動だ。彼女のソードスキルに対する対応の速さは確かに目を見張るものがある。だが、早ければ早いほど判断も早い筈。ならばわざと間違って判断させるか、判断をさせる前に一撃を浴びせるしかない。
そして、《バーチカル》程度なら彼女も何度もモーションを見ているだろう。ならばレイラが『相手がソードスキルを放つ』と認識する瞬間はどこかを探る事をユージオは選んだ。
レイラはソードスキルとして初動のモーションが認識されるその一瞬で判断しているのではなくやはりユージオが思っていた、システムによって初動のモーションが読み取られ剣に光が宿るよりもっと前に迎撃体勢をとっていた。
ならば彼女に先にソードスキルの迎撃体勢を取ってもらって、そこを通常攻撃の不確定な一撃で攻める。攻撃の軌道が決まっているソードスキルでは無いもので。
向こうもそうだが、こちらも判断が難しいし、少し攻撃するのが遅くなればソードスキルが本当に発動してしまう。
「ハアッ!!」
『っ!?』
NPCであるレイラに少し動揺が見られる。
やはりユージオの試みは誰もやった事がなかったのか_____対応に遅れが出ている。
「ッらぁ!!(このまま攻めきる!これも長くは持たない、必ず彼女は克服して反撃してくるはずだ。短期決戦、この剣戟で決着を…!)」
『っくぅ…!?』
着実にレイラへ攻撃を進める。時にはソードスキルを撃ち、時にはブラフで騙す。
それを3回ほどした頃か。
『ここッ!!』
「!?」
たった3度の攻撃で、彼女は見抜いた。
ユージオの狙いを。
レイラはユージオの策を実行される前に、それを未然に攻撃することで防ぐことを選んだ。
『やぁッ!!』
「なっ!?」
今までのお返しだと言わんばかりの力の籠った一撃。
ガキィィン、と剣を弾き飛ばす音が山中に響く。
辛うじてユージオは剣を離すことはなかったが、完全に体制が崩れた。レイラはその隙を逃さない。追い討ちをかける。
だが、ユージオも諦めてはいない。
「ぜぁッ!!」
『ッ!!?』
体術スキル《弦月》。後方宙返りしながら蹴るソードスキルで、これは立った状態からでも後ろに倒れ込みながらでも発動できる優れ物。ユージオはこれを体制を崩されたその瞬間の後ろに倒れ込むような動きから、このソードスキルを発動させた。これぞユージオの得意とする片手剣ソードスキルと体術スキルの混合戦闘スタイルだ。
ガッ_____
ユージオの《弦月》はレイラの右手に直撃。レイラの一撃はユージオの《弦月》によって
レイラは後ろへと体勢を崩し、ユージオは《弦月》の勢いそのままに後方宙返りで着地する。
「はあああッ!!」
一撃がレイラに入る。
『うっ!?』
続けてもう一撃、
「う、おおおおッ!!」
『!!』
が、防がれる。もはやNPCとは思えないこの順応性、臨機応変さ。
『はあああああああああああッ!!』
「うおおおおおおおおおおおッ!!」
真正面なら交わる剣と剣、散る火花。2人の剣戟によって積もった雪が吹き飛ぶ。
ユージオの意識は闘いだけでなく、レイラへの畏怖と尊敬があった。
ユージオはキリトと共に強くなったが、彼女は違う。たった1人で、高みに至った。剣を極め抜いた。
孤独である悲しみと寂しさを、ユージオは知っている。
アリスが整合騎士によってカセドラルに連れ去られてからの6年間、かれは孤独だった。家族もいたし、世話を焼いてくれる人もいた。だが、ぽっかりと穴が空いた心は塞がることは無かった。
唯一無二の存在を_____アリスとキリトを失ったその感情は言い表せない。
だが、彼女はユージオが無くしたその大切な人が、初めからいなかったのだ。
そばにいて、共に切磋琢磨し合える人が。
それがどれほど辛いのか_____ユージオは理解出来る等とは思わなかった。理解した、そんな言葉で彼女を語ることなど許されない。
悲しみも寂しさも、それぞれがその人のものなのだ。完全な理解など到底できない。
ならばその悲しみを、寂しさを_____この瞬間だけでも、埋めようではないか。
こうして剣を打ち合わせる、今だけ__
例え、レイラを形作る情報がこの世界を作った存在による後付けの物だとしても。
いつしか、レイラは笑っていた。
ユージオも気付いていないが、笑みが零れていた。
ああ_________なんて楽しいんだ。
2人はそう思ったのだろう。
「おおおおおおッ!!(まだだ!もっと、もっと、もっと速く、身のこなしをもっと無駄なく、そして、一撃一撃に瞬間的に力を込めてッ!!)」
『あああああッ!!』
「おおおおおおおおお!!(彼女を超えろ!!
より激しくなる剣戟。
決着の時は_______
今ここに。
2人は剣戟を中断し、後方に跳ぶ。
そして、それぞれに構えをとる。
レイラも最後にソードスキルを使うことを決めたようだ。
ユージオは迷うこと無く構える______重単発突進技《ヴォーパルストライク》だ。
ユージオにとってキリトへの憧れの象徴。絶対的な一撃。
レイラは上位単発技《プレダトリー・ガウジ》。逆袈裟に斬り下ろす、かなり威力の高いソードスキル。しかし、突進技では無いため彼女は『迎え撃つ』と言った方が正しいだろう。
一瞬の静寂、そして、ソードスキルの発動によるそれぞれの音。
ユージオからはジェットエンジンのような轟音が、レイラからは鋭い金属音が、発される。
ソードスキルのそれぞれの音が臨界点を突破した、次の瞬間。
「はあああああッッ!!!!」
『やあああああッッ!!!!』
解き放たれる最大の一撃。
音速で迫るユージオの《ヴォーパルストライク》。それを迎え撃つレイラの《プレダドリー・ガウジ》。
紅い閃光と、翠色の閃光が交わり_______
紅い閃光が、それを貫いた。
『ッ_______』
「______」
すれ違い、5m以上ユージオが突き抜け、立ち止まる。ソードスキルの技後硬直によって1秒もない間動けなくなるが、解けた瞬間すぐ振り返る。
すると、レイラはユージオに微笑んでいた。レイラのHPゲージは数ドットを残して止まっている。だが、明らかに勝負は決まっていた。
『_______ありがと、ユージオ。すっごい、楽しかったよ』
「___レイラ…」
『負けちゃったけど_____悔いは無い、かな。確かに勝ちたかったけどね……やっぱり隣に誰かいるって、強いんだね』
「…うん」
「……レイラさん」
『ごめんね、ティーゼさん。貴女のユージオを独り占めしちゃって』
「剣士同士の決闘だもの。例え、妻であっても口出しは出来ないわ。だって私も剣士だから」
『……ユージオ、いい人見つけたね!』
「__まあね。自慢のお嫁さんだよ」
『…さて、私もそろそろ限界だからね。済ませちゃおっか』
「何を?」
『君にあげたいものがあるんだ』
レイラは山の奥へと歩き出す。
『来て』
「…分かった」