ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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こんにちは、クロス・アラベルです!
今回はキリトの元に駆けつけるまでの数分のお話です。
次回こそ、クラディールさんに鉄槌が下る……予定です(`・ω・´)

では、本編へどうぞ〜



運命の3分

 

 

 

血盟騎士団、本部にて_____

ロニエは不安そうにアイテム整理をしていた。時折フレンド欄からキリトの様子を見ては溜息をつきながら、だが。

 

「……大丈夫かな…先輩、クラディールさんと一緒のパーティに入ってるって聞いたし…」

 

ロニエもまた、クラディールの話を他の女性団員から聞いていたので心配でたまらないようだ。

 

「流石にキリト先輩があの人に正面切って負けるなんてないと思うけど…もしもってこともあるかもしれないし…クラディールさん、最近ギルドの中でもあんまりいい噂無いって聞いたしなぁ…」

 

血盟騎士団に入団してからロニエが初めに行ったことは、クラディールについての調査…もとい、聞き込みである。

 

血盟騎士団の中で最も不安要素があるとすればクラディールであると決めつけたロニエはそれまで知らなかったクラディールの素性や普段の様子などを女性団員や攻略時によく話すことが多い他の団員に聴き込んだ。

結果、クラディールは4ヶ月ほど前に自主的に入団申し込みをした、アスナのような幹部からのスカウトを受けた人とは違うプレイヤーだった。入りたての頃はあまり目立った行動はせず、ただひたすらにアスナの護衛班への参加を求めたという。

 

元々血盟騎士団の中にはアスナを崇拝するが如く信奉する変人プレイヤーもおり、クラディールもその1人だった。

初めはアスナも気にならない程度ではあったのだが、入団から2ヶ月頃あたりからその異常さは現れ始めた。

主にストーカー行為が目立った。自宅へ帰ろうとすると『護衛が必要でしょう』とついてくるようになった。アスナ自身もそれはいやだったので断ったのだが、しつこくついてくる。流石のアスナも気持ち悪いと思ったのか、《隠蔽(ハイディング)》スキルを使って撒いたこともあるという。一時はギルドの団長であるヒースクリフの指示にも逆らったくらいだ。

 

今や女性団員からのイメージは地に堕ちた。団員なので一応それ相応の対応をしなきゃならないので仕方なく、というのが女性団員の中での暗黙のルールだ。

この情報を聞くに、ロニエが出した結論とは______

 

「あの人、元々アスナさん目当てで入ったみたいね」

 

そう結論せざるを得ない。

しかして、今回のパーティにはアスナの前で恥をかかせた(元よりアスナには恥を見せ続けているので別に何かが変わるという訳では無いと思うが)その張本人(キリト)がいる。そうなればクラディールの取る行動は絞られる。

騎士団に諌められたので流石に謝罪をするか、逆恨みでありえない行動に出るか______

 

キリトとのデュエルの時の目_____憎悪とも取れるあの眼光は、その二択の答えがどちらなのかを自然に解らせてしまう程に明確な怒気と殺意がこもっていた。

 

「やっぱり、心配…」

 

そう言いながら再びフレンド一覧からキリトを選択し、HPゲージを確認する。

 

SAOのフレンドの機能には《親密度》というものがある。パーティを組んだ回数、パーティを組んでいた時間の総数、フレンド歴、アイテム交換の回数など様々なもので数値化され、それが100に近いほどフレンド間で出来ることが増える。というのもフレンド間で送れるメッセージの文字数の増量程度しかないが、一定の親密度を超えると、対象フレンドの簡易的なHPゲージをフレンド一覧からみることができる。言わずもがな、キリトとロニエの親密度が100に達している。

 

「……今ところ、別に攻撃を受けた感じはなさそうだけど」

 

キリト程の剣士がそこらのモンスターから攻撃を食らうことなど滅多にない。というより攻撃を食らう前に回避するか、倒している。それにソロプレイをしている訳では無いので攻撃を受けることはないだろう。

 

「……ぁ(そろそろお昼だ)」

 

メニューウィンドウに写った時間、11時58分。いつもならキリトと一緒に昼食をとっている時間だが、現在は別行動中だ。そして、ロニエはキリトに昼食のお弁当を渡すのを忘れていたことに気付いた。

 

流石に食べられるものをひとつも持っていないとは思えないが、若しかすると今頃愚痴りながら適当なものを食べているに違いない。ロニエもキリトの食べっぷりを見るのがすっかり日課になってしまったのもあって、すこし寂しそうにキリトに渡すつもりだった弁当のもう一方___ロニエの分の弁当をインベントリから取り出した。

 

「…あの人の隣にいるのが、当たり前になっちゃったなぁ」

 

これは嬉しい愚痴である。

アンダーワールドではキリトの隣にいられた時間などほんの少しだけだった。傍付き剣士として世話をした2ヶ月、アンダーワールド大戦の一時、そして、整合騎士見習いの日々。

共にいられた時間は短かった。ティーゼに比べれば長いものかもしれないが、それでもロニエにとってキリトの隣にいられることがどれほど幸せかは計り知れない。

それに、キリトにとっては唯一と言っていい存在になりつつある訳だが____

 

「……?」

 

弁当のサンドイッチを食べようとしたその時、誰かからメッセージが来た。

送り主は、ロニエの親友であるティーゼ。

どうしたのだろう、と片手でメッセージを開くと________

 

 

 

 

 

『キリト先輩が危ない!!先輩の元に走って!!ユージオの記憶じゃ、先輩がクラディールに襲われてる!!』

 

 

 

 

 

 

「________ッ!!」

 

そのメッセージを読んだ直後、お昼ご飯を置いてロニエは走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユージオ、キリト先輩はどこのフィールドに!?」

 

「多分74層の迷宮区への道のり!!岩肌が見えてたから、最低限実力を測れるところと言ったらそこしかない!!」

 

32層、ユージオとティーゼの自宅にて、2人は急いで支度を済ませる。

 

「おとうさん、きりとにぃをたすけてね!」

 

「うん、ありがとねシャロ……少しの間留守番出来るかい?」

 

「うん!シャロだってしぃかねぇがいなくてもおるすばんできるもん!」

 

シャロはお任せを、と言わんばかりに胸を張る。

愛娘のその健気さに心打たれつつユージオとティーゼは家を飛び出し、躊躇なく転移結晶を使い、74層の主街区へと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

「むぐっ……!?麻痺毒ですって!?キリトくんが…?」

 

その頃お昼ご飯を食べてなんとなしに……キリトのことが心配になってフレンド一覧からキリトのHPゲージを見たアスナは驚いた。キリトが麻痺毒をくらっているではないか。しかも、アイコンの数字からしてLv5。プレイヤーの作れるLv3の範疇を超えた、フィールドボスモンスタードロップオンリーの激レア毒だ。しかし、キリトが向かったはずのフィールドでは麻痺毒を使うモンスターは居ないしポップする筈がないのだが____

 

「まさか____!」

 

悪い予感が走る。

ここまで来れば本当にそうなのだと認めざるを得ない。

クラディールがやったのだとアスナは確信した。元々彼を信用してはいなかったものの、キリトとのデュエルの件で完全に分かった。

彼は危険だと。

すぐさまギルドの副団長権限をもってキリトたちのパーティのHPゲージをひっぱりだす。

 

「…クラディール以外が、麻痺_____もう言い逃れは出来ないわね」

 

確定である。

アスナは愛剣を腰に装備し、部屋から出ようとドアを開けて______

何かが凄まじいスピードで走っていくのを見た。

 

「まさか、ロニエちゃん______!?」

 

焦げ茶色の髪の少女はアスナのことに気付かず本部を走り去って行った。

ロニエも同じようにキリトのHPゲージをフレンド一覧から見ていたことを見抜いたアスナはロニエに追いつこうと走り出した。

が_____

 

「速すぎ____っ!!」

 

街の転移門前に到着したがロニエの姿は無い。アスナは急いで74層の主街区へと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

「あ、ユージオ君とティーゼちゃん!どうしてここに!?」

 

「アスナさん!」

 

「_______アスナ!ロニエからキリトが危ないってメッセージが……ロニエは____」

 

「そうだったのね……ロニエちゃんならもう先に行っちゃったわ!私達も早く行きましょう!!」

 

74層の主街区の転移門前にて2人はアスナと合流した。アスナに何故ここにいるのかを聞かれてユージオは咄嗟に嘘の理由をでっち上げた。本当のこと____キリトの記憶を見た、とは言えない。

 

「間に合って______!!」

 

走り出した3人。今は一刻の猶予もない。ロニエが先に行ったが、1人だけでは不安だ。

増援は1人でも多いと良いが、これ以上の人数を呼ぶのは時間がかかる。ユウキとランはユージオの記憶の件を知っているので知らせれば来てくれるだろうが、今はこの人数で行くしかない。

しかし、迷宮区程では無いとはいえ、そこはフィールドダンジョン。当然___

 

「モンスターがいるよね_____」

 

最悪のタイミングでポップするモンスター。数は4体。蹴散らせなくもないが、時間が惜しい。故にここは、

 

「僕とティーゼに任せて、アスナは先に行って!!」

 

「ユージオくん!?」

 

「アスナさん、私達もすぐ追いつきますから______!!」

 

「_____分かった!!」

 

ユージオとティーゼだけで対処出来る数だ。それに3人の中でスピードが1番あるのはアスナだ。アスナを走らせた方が早く着く。

ユージオとティーゼの言葉に悔しそうな表情を一瞬見せたが、アスナはそのまま走っていった。

 

「この先に用事があるんだ_____邪魔するなっ!!」

 

「はあああッ!!」

 

2人は剣を鞘走らせながら、モンスターへと斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

「__________っ!!」

 

走る。

走る、走る。

モンスターが現れようと見向きもせず、素通りしてキリトの元へと急ぐ。

『ゲ、ゲギャ______!?』

モンスターの反応を完全に振り切って走り続ける。

ロニエはアスナのような完全なスピード型のプレイヤーではない。が、今この時だけはそのアスナ(閃光)のお株を奪う程の速さで駆け抜けていた。

そして____

 

「ッ!索敵スキルにプレイヤー反応が入った___!!」

 

索敵スキルが半径100メートルにプレイヤーがいることを知らせる音を鳴らした。人数は、2人。人数が当初の半分になっているが、何故そうなったかは簡単に予想がつく。このままなら_____およそ、10秒もないくらいで辿り着く。

そのまま100メートルをたった7秒で走りきり、ようやくたどり着いた。そこに居たのは________

 

『さァ、死ねェ……死ねェェェェエエエエエエエエエエエ!!!!』

 

愛しの人(キリト)に両手剣を突き刺す、クラディールだった。

ロニエは完全にブチ切れて、

 

「______ああああああああああッッ!!!!」

 

本気の斬撃をクラディールの両手剣に向けて放った。

キリトの危機を察知してから、約3分。

ロニエの疾走がここまで速くなければ______キリトは殺されていただろう。

 

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