ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
今回は待ちに待った回です…!
そして、これを書いてる時に痛感しました。
「あ、自分ラブコメ書くの苦手だな(白目)」
と。
下手ではありますが、良かったらどうぞぉ……(苦笑)
来年はいい感じのペースで投稿出来たらなぁ…と思います、はい。
それでは本編どぞ〜
そして良いお年を〜!
○
「ぐべらッッ__________!?」
俺のHPゲージが一割を切って、もうすぐゼロになる______その直前、奴はあらぬ方向へ吹き飛んで行った。
「な______」
「___間に、合った…!!間に合いました…!」
傍に駆け寄ってきたのは、今は血盟騎士団の本部にいるはずのロニエだった。
なんでロニエがここにいるんだ…?
そして、何故だか抱き着かれた。
流石に恥ずかしさに頭がショートする訳にも行かないので、耐える。
「____ヒール、キリト!!」
直後、治癒結晶を使って俺のHPを全回復させてくれた。もしかするとフレンド欄から俺のHPゲージを見ていたのかもしれない。ここまで来るのに俺たちは歩いてではあるが1時間かかった。それをロニエはたった数分で_____
「待っていてください、キリト先輩______」
直後、ロニエは冷たい声でそう囁いた。
ロニエは怒ると怖い。ほんとに怖い。
今回のは特にそうだった。鬼気迫るものがあったような気がする。
「ロニ、ェ……まっ____」
俺はロニエに待ってくれと言おうとしたが、まだ麻痺状態が続いているせいでろくに喋れない。さっきまで死にかけてたせいもあるのか、恐怖で体が動かない。
「っづァ………クソッタレが、何なんだ……!?」
「_______」
吹き飛ばされたクラディールはようやく自身を攻撃したのがロニエだと気付いたようだ。
俺からはロニエの背中しか見えないが、ロニエはどんな顔をしているのか、わかる気がする。
「て、てめぇ……なんでこんな所に…!?」
「……!!」
「はっ、小娘一人でノコノコと来やがって…まぁいい。お前もどうせは______」
クラディールは両手剣を片手に立ち上がる。
ロニエも片手剣を中段に構える。
まさか、やる気なのか。
駄目だ。ロニエ、お前はそんな奴に手を汚すことなんて______
「キリト君!!」
と、その時アスナが駆けつけてきた。
「体力は、回復してるのね……ロニエちゃんが間に合ってよかった…」
「アス、ナ……」
「大丈夫、後でユージオ君とティーゼちゃんも来るから」
アスナもロニエと一緒に来てくれたのだろうか。ユージオとティーゼも来るらしい。多方、途中で出てきたモンスターの相手をしてるんだろう。
「あ、アスナ様……!?」
「……クラディールさん_____いえ、クラディール。これはどういうことですか?」
「ぁ、こ、これは……その…そう!不慮の事故でして____」
アスナの姿に目に見えて驚くクラディール。ロニエだけなら隠す気はないようだが、アスナがいるとなれば話は別か。
形勢逆転だ。
「何故そうなったかを事細かに説明出来ますか?他2人の団員が死んでいることについても」
「そ、それは______」
アスナの言及に奴は言葉を詰まらせるこの光景を見てクラディールの言葉を信じるものはいまい。何せ、俺だけが麻痺毒で倒れ、1箇所に散らばる結晶系アイテム。そして、オレンジ色のクラディールのカーソル。言い逃れ等、出来ない状況だ。
「ちぃ、仕方ねェ……どちらにせよお前らも______あぶァ!?」
言い逃れ出来ないと判断したクラディールが本性を現した_____その直後、銀閃がクラディールの口を斬り裂いた。
「___遂に本性を現したという訳ですか」
背筋が凍るほど冷たい声。それには確かな怒りを感じた。
俺でも剣筋が見えなかった。凄まじい剣速。確かにロニエには剣の才能があるし、俺以上かもしれないと感じたこともある。しかし、これは____
「覚悟して下さい。躊躇する必要も無いですから」
「はっ、小娘が調子に乗ってんじゃ_____ぶぉあ!?」
「____殺された人達が感じた恐怖を体験する…それくらいは亡くなった人も望んでいるでしょう」
「クソがァ___!!」
「はぁぁぁあああああああああッッ!!」
「ぐ、ぉうおおおお!?」
銀の閃光が奴を切り刻む。
その斬撃にクラディールは防戦一方____いや、何も出来ていない。ロニエ自身、奴を一息に殺すことも出来るだろう。1分程あれば可能な筈だ。しかし、それをしないのはそれでは罪を自覚させる___それに繋がらないからだろう。攻撃を掠らせて、少しずつHPを削っていく。しかし、ロニエも攻略組のトッププレイヤーだ。その攻撃力は尋常ではない。
「いっ、びぅっ!?」
「ぜあああああああああッッ!!」
「ぎぃえっ!?」
最後の一撃が奴の腹に決まった。あとHPは1割。あと一撃で確実に決まる。
だが_____止めてくれ。
お前がそんなことをする必要は_____
「わ、分かった!ギルドを抜ける!アンタらとも関わらねぇ、から_____!?」
「_____ッ!!」
「許してくれ_____死にたくねぇぇぇぇぇ!!!?」
「___死にたく、ない…?」
クラディールの言葉にロニエの剣筋が止まる。
「人の命を散々奪っておいて、自分は死ぬのが怖いですって……?」
剣を持った右手が震えている。それは、怒りだ。純粋な、怒り。
「巫山戯るのもいい加減にしなさい!!貴方が殺してきた人達がどれだけ恐怖を感じたか、今頃になって知ったからって、許されると思いますか!?」
ああ。その通り。決して許されるものじゃない。この期に及んで命乞いなんて巫山戯るな、と俺も思う。
けど、ダメだ。
くそっ、麻痺毒はまだ解けないのか…!?
視界内には雷マークの麻痺毒アイコンが点滅している。もうすぐ消えるようだが、このままだと_____
「躊躇はしません。今までしてきたその蛮行、ここで裁く__________!!!!」
「ひぃぃぃい!?」
「止めろ、ロニエ!!」
ロニエが剣を振り落とす直前、ギリギリ俺の声が届いた。
体は動かないが、口だけなら動かせるようだ。
ロニエの剣は止まった。
俺からじゃ、ロニエの表情は見えない。
言葉を続けなければ、ロニエは止まらない。それこそ、その怒りを鎮めなければ。
しかし、俺の持つ言葉で出来るのか…?
いや、やって見なきゃ分からない。
出来なければ俺が体を張って止めるだけだ。
「……何故、止めるんですか」
「当たり前だろう。そんな奴に、お前が手を下さなくてもいい」
「誰かが止めなければならない事です」
「その手段が、
「…!」
「そいつだって生きてる。それは俺達と変わらないだろう?
「………」
ロニエが、葛藤している。
まだ、言葉は届いてる。なら、説得出来る。
だが_____その隙を、アイツが見逃す筈がない。
止めなければならないが、止めればロニエに危険が迫る。
早く麻痺が溶けてくれれば、俺が今すぐあいつを斬るのに_____
多分あと、数秒で麻痺が取れる。
けど、その数秒が惜しい。
早く_____
その時、俺が危惧していた事態が起こってしまった。
「ヒャァアアアアア!!!!」
「____!?」
飛ぶ剣、響き渡る狂気に染った奇声。
ロニエが見せたその隙を、奴は見逃さなかった。
ロニエは完全に剣を弾き飛ばされ、体勢がぐらりと崩れている。あれでは____次の攻撃に対処するなど不可能だ。
しかし、それと同時にパッと。
俺の麻痺毒アイコンが消えた。
動かせる。なら、急げ_____!!
「あめぇんだよ___小娘がァ!!!!」
「_____ぁ」
「___________ッッ!!」
判断は一瞬。
いや、考えるよりも先に体が動いていた。
○
「急げ____!!」
走るユージオとティーゼ。
2人は先程タゲってしまった4体のトカゲ型モンスターを20秒で片付けて、走る。既に索敵スキルには4つの反応があることを確認済みだ。
1つは問題のクラディール。そして、キリト、ロニエ、アスナだ。
一つだけ他の3つから離れた位置にある。多分これがクラディールだろう。およそ、寄り添っている2つのうち一つがキリト。あとの2つがロニエとアスナだろう。
しかし、ユージオには悪い予感がしていた。
ユージオが見た記憶によると、キリトを助けたアスナが激昂してクラディールを殺す一歩手前まで攻撃した。そして、一瞬見せた隙をつかれてアスナも攻撃されそうになったのをキリトが身を呈して守り、反撃して____クラディールを殺してしまう。
今の状況はどうなっているのだろうか。
変わらず、アスナがクラディールを責めているのか。
しかし、今この時代で1番キレるであろう人物は_____多方ロニエだ。
彼女はユージオ無きアンダーワールドにて整合騎士としてティーゼと共に責務を全うした。故に責任感やその正義感は人一倍強い筈だ。当然、キリトを想う心も。
故に、ロニエならやりかねない。
ユージオはそう考えた。
しかしその考えに至ったのは、ロニエと共に整合騎士として戦ったティーゼの方が早かったようだが。
「______ティーゼ、君は回復結晶を!クラディールは弱ってるはず……キリトが奴を攻撃したらそのまま殺してしまう!」
「だからその前に回復させて死なせないようにする……よね!!」
「頼むよ!僕はクラディールが動かないように、これで止める!!」
そう言ってユージオは腰のベルトから、投げナイフを片手で取り出す。
そのナイフは黄緑色に濡れている。そう、麻痺毒付き投げナイフである。
ユージオはクラディールを殺させずに、黒鉄球の牢屋に入れることを決めた。キリトには殺しなどさせない。だが、クラディールにはそれ以上蛮行をさせない。
これがユージオの決断だ。
索敵スキルの反応の距離からして、ほんの数秒で辿り着く。
勝負は一瞬。
クラディールを見つけ次第、ティーゼの回復結晶、そしてユージオの投げナイフ。
それでこの場を収める_____!!
たどり着いた。
岩場から飛び出し、作戦を実行する。
すでにクラディールは虫の息。が、ロニエが剣を持っていない。クラディールは既にソードスキルを発動させてロニエを殺そうと襲いかかっていた。
しかし、キリトが動いていた。麻痺から回復したようで、武器も持たずにロニエの元へと駆け寄り、片手でクラディールの凶器を受け止めた。落ちるキリトの右腕。が、キリトは止まらない。
ジャストタイミング。
まさに事が起ころうとしていた。
「ヒール、クラディール!!」
「_____はァッッ!!」
ティーゼの回復結晶の発動しクラディールの体力が全回復する。直後、ユージオの投げナイフが投擲スキルのソードスキル《ラピッドシュート》が発動し、ナイフが音速でクラディールの右肩に突き刺さった。
麻痺状態に陥ったクラディールは力なく倒れようとし____その隙をキリトは逃さなかった。
「_____うおおおおおッッ!!」
斬り落とされなかった左手が体術ソードスキル《エンブレイサー》を発動させ閃いた。
「________がァ!?」
見事命中。
そして、クラディールは為す術なくそのまま吹き飛んだ。
HPゲージは2割に届かないくらいには削れており、あのままだった場合____あと1割しかHPが残っていなかったクラディールは死んでいただろう。
まさに、紙一重。
奇跡に等しい結果だった。
「____間に、あった……!」
「良かったぁ…」
勢いに任せて飛び出したせいで2人仲良く地面に倒れたユージオとティーゼは安堵する。
「____助かった…」
キリトも同時に安堵した。ロニエが殺しをすることなく、彼女がクラディールの毒牙にかかることもなかったのだから。
もう1つ____キリト自身がクラディール殺すことになることも分かっていたがそれもユージオとティーゼによって防がれた。
後ろを振り返るとユージオとティーゼが安堵の表情をでキリトを見ている。
そして______弱々しいロニエの声が、聞こえた。
「__ぁ、先輩…」
「ロニ、エ____?」
彼女は、泣いていた。
ポロポロと大粒の涙を零しながら、へたり込む。先程の怒りなど、かき消えてしまった。
ロニエにとってのトラウマ。
キリトの
それこそ、セントラルカセドラルでの戦いの後、ロニエとキリトが再会した時に見てしまったその痛々しい姿に彼女は大きく心を痛めた。右腕は無くなり、キリトの心は崩壊し、物言わぬ植物のようになってしまった。
それが、再来する。
血は出ていない。アインクラッドでは血は表現されず、赤いエフェクトの破片がこぼれ落ちる程度だ。
だが、ロニエのトラウマを引き起こすには充分だった。
「______また」
「___また、私が…」
「__また私のせいで、先輩が…!」
それだけではない。修剣学院でのあの事件が蘇る。まだ、弱かった頃______初等練士時代。ロニエとティーゼを助ける為に、ユージオは片目を失い、キリトは人を殺した。今はクラディールを殺した訳では無い。だが、状況があの時と重なって_____
自責の念は、彼女を傷付ける。
後悔したくないから。
悲しいのは嫌だから。
故に。
強くなって、キリトの隣で守ろうとしたのに。
想いを伝えようとしたのに。
_____まだ助けられる側にあった。
「ごめんなさい、ごめんなさい…っ」
手で顔を覆って泣くロニエ。キリトはロニエの過去を知らない。だが、深刻な問題を抱えているという事は分かった。今まで健気に自分の事を慕ってずっと着いてきてくれていた仲間は_______ただの女の子だった。
分かっていたのに、キリトにとっては今頃になって痛感する。
キリトが気付いていないだけで、ロニエはここまでキリトのことを想ってくれていた。
自分がヒースクリフとの決闘に負けて、ギルドに入った時も一緒に入ってくれたのも。
今までパーティを組んで一緒にクエストに来てくれていたのも。
一緒に出かけようと誘ってくれたのも。
若しかすると_______第1層で出会って、パーティを組むことになった時も。
そう考えると、なんと______
「私、が…ひっ………守るって…決めたのに…ぃ……!」
なんと、愛しいことか。
「____ロニエ」
「わた、し…やっぱり先輩と、一緒にいちゃ…っ、いけない…んです」
麻痺から回復したとはいえ、まだ感覚が完全に戻っていない体に鞭を打つ。
「ロニエ」
「だから、っ______」
震えきった小さな体を、抱きしめる。
失った右腕も構わず力一杯に、それでいて、優しく。
ロニエの身体は、キリトの予想以上に細かった。こんな腕でどうやって剣を振るうのか疑問に思うくらいに。
一瞬ロニエの身体は震え、抵抗しようと力を入れた。が、上手く力が入らないのだろう。キリトの抱擁からは逃れられない。
ロニエの視界には、今頃ハラスメント防止コードの発動の有無を聞くシステムメッセージが出ている。OKのボタンを押せば、キリトは黒鉄球の牢屋へと飛んでしまう。だが、ロニエに、そんなことは出来なかった。
「___ダメです、先輩っ……守れなかった私じゃ………また、___あなたを危険に晒しちゃう、から___!!」
「____」
「こうなるかもって…分かってたのに、止められなかった…私じゃっまた……先輩にこんな目に遭わせて、しまうかもしれ______」
直後、ロニエはキリトに唇を奪われた。
有無を言わせず、力強く。
数秒間の沈黙。
「___ん、ぁ……」
「…ロニエ。お前が____いや、君が何に縛られているか、何を背負っているのかは…俺には分からない。けど、さ」
キスを終え、キリトはロニエの肩を掴んで言葉を紡ぐ。
「____それが、ロニエにとって凄く重いものだって言うのは俺にも分かる。そんな、泣いてる姿見せられたら……苦しんでるのを見たら、俺だって苦しくなる」
「ロニエが一人で背負ってるもの____俺にも、背負わせてくれないか?」
「_____!!」
「訳は今すぐに話さなくていい。明日でも、1ヶ月後でも、1年後でも_____俺は君が、君から話してくれるのをずっと待つから。だから____」
「せん、ぱい_____っ!!」
そして、キリトはロニエをもう一度抱きしめる。そして、囁いた。
「……ロニエはこう言ったよな。『
「なら俺にも、君を守らせてくれ。ずっと____君が許すのなら、ずっと」
「____ぁ、ああ……!!」
涙を流しながら、ロニエはキリトを抱きしめた。
キリトもロニエを優しく包み込んだ。
2人を引き裂く者は誰もいない。
いるのは、そんな二人を祝福する者だけ。
「……ロニエ…!!」
「…良かった、ロニエちゃん…!」
「____君にも、こうやって守りたい人が出来たんだね、キリト。愛する人が___」
既にクラディールはもう居ない。今頃ユージオが使った回廊結晶によって黒鉄球の牢獄へと飛んでいるだろう。
もう迷わないだろう。必ずや、お互いを守り続ける。
二人は、互いの温もりを確かめ合ったのだった。