ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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お待たせ致しました。
どうも、クロス・アラベルです。
大変遅くなりました。
では、今回は待ちに待った《ユージオ君、頑張る》の回です!
何回か書き直しをしてしまったのですが、こんな所で落ち着きました。
本編の方を、どうぞ〜!



血薔薇(あかばら)》よ、咲き乱れろ

 

 

 

 

「____ぐ、…!!」

やられた。

まさか、あんな攻撃があったなんて。

 

HPゲージがラスト1本になったらパターンが変わることなんて今まで嫌という程思い知ってきた。だから、即後退して様子見をする筈だったのに…

まさに《初見殺し》だな、衝撃波(アレ)は。

 

衝撃で頭が朦朧とする。

視界がぼやけて居るが、システム的に入り込んでいるもの_____HPゲージなんかはスッキリ見える。

パーティメンバーのHP。

ユージオとティーゼは回復していたから9割がた。けど、俺やロニエは、《危険域(レッドゾーン)》に突入している。しかも、多分皆不意をつかれてダウンしている筈だ。

幸い、衝撃波によって端まで吹き飛ばされてボスから離れられたが_____直ぐに来る。

この隙を、逃すはずが無い。

 

「づ、ぅ……!!」

立て。

立ち上がれ。

早く、立ち上がって、ロニエを…!!

このままここにいれば、死ぬ。

やがてボスは一人、また一人と殺しにくる。

守ると誓ったんだ。

ロニエ、だけでも_____

 

剣を杖のように使って立ち上がる。

嗚呼、足が震えてるじゃないか。

しっかりしろよ。

ここで立たなきゃ、攻略組が、男が廃るだろ……!!

 

「ロニ、エ___!!」

ロニエは右隣にいた。

俺と同じように剣を杖代わりに立ち上がろうとしている。

その時。

 

『ギギギィィ_____ジャァァァァァァァ!!』

 

ボスの咆哮がボス部屋に轟く。

けたたましい金属音のような何か。

 

____ボスが、俺達に迫ってきている。

 

振り返ると、ボスが鬼の形相でこちらへと一直線に走ってくる。

 

『___お前らからだ』

そう、宣告するように。

 

「____ッ!!」

二振りの剣を構える。

負けるのは目に見えている。

奴の攻撃が掠りでもしたら、俺の負け。

もとより_____死ぬのは避けられない。

 

なら、ロニエだけでも守る。

 

「来や、がれ_____!!」

 

《死》が迫り来る。

 

_______しかし、その直前。

 

『ギジャァァッ!?』

ボスが、一瞬怯んだ。

何かからの攻撃を食らったようだった。

 

「____?」

 

『____ギ、ギシャァァァァァア!!』

 

ボスが、一気に方向転換して、ボス部屋____その入口付近へと目を向ける。

 

そこには________

 

 

『________』

 

ユージオがいた。

 

ユージオは()()()を携えて、ボスを睨みつけている。

 

紅い、剣____?

 

待て。

ユージオの(アルマス)はどちらかと言うと青系の色だった気が___

 

よく見たくて、焦点を合わせようと、目を細める。

ユージオの右手にあったのは_____アルマスと同じ形をした、真紅の剣だった。

直後____

 

 

『_____________ッ』

 

 

ユージオの姿が掻き消える。

 

「______な」

 

ユージオが消えると同時に、ボスの断末魔がボス部屋に響いた。

ユージオは____

 

『ぎ、ギギギギギキィァァァァアアアアアア!!』

 

『_______ッ!!』

 

たった一人。

 

たった一人で、ボスと交戦を始めた。

 

ダメだ。

アレと単騎でやりあうなんて、自殺行為だ。

攻略組全員でかかって戦線を保つのもギリギリで、誰が死んでもおかしくない。

単騎で挑むなど、愚の骨頂。

それこそ、真っ二つになるのがオチ____だった筈、なのに。

 

『ギギャァァァァァアアアア!!』

 

たった一人で、互角____いや、それ以上に渡り合っている。

 

攻撃しては、また離れ、攻撃しては、また離れる。

ヒットアンドアウェイ。

ボスの大鎌は空を切り、ユージオがボスの周りを駆ける。

ボスは____ユージオを捉えきれていない。だが、あの怪物は全身が武器だ。

ムカデのような足は全て剣の如く、鋭くとがっている。

攻撃力もトップクラス、攻撃のスピードも前の比じゃない。

 

なのに____ユージオはその攻撃の数々を紙一重で躱して斬撃を繰り出す。

 

「何が、起こって_____うぉ!?」

「きゃ!?」

 

キリトとロニエがユージオの豹変ぶりに呆気にとられていると、誰かに後ろから引っ張られた。

 

「二人とも、早く回復をお願いします___!!」

ティーゼだった。

「ティーゼ_____済まない、恩に着る!」

「ありがとう、ティーゼ!」

入口付近へと引っ張られながらもポシェットからハイポーションを取り出し、飲み干す2人。

 

他のプレイヤー達も月夜の黒猫団達によって連れられてハイポーションを飲んでいる。

 

 

『__________ジャギャァァァァァアッ!!!!』

 

『________ふッ!!』

 

 

最前線ではユージオがボスに臆することなく、果敢に立ち向かう。

ボスの攻撃は紙一重で躱され、ユージオは1度も攻撃を受けていなかった。

 

「ティーゼ、アレは_______どういうことなんだ?」

純粋な疑問。

攻略組のトッププレイヤーであるとはいえ、先程のユージオとは思えない戦いっぷりに、キリトはこの状況がなんなのかが分からない。分かるのは____ユージオがみんなの回復時間を稼ごうと、危ない橋を渡っているという事だけ。

 

「_____例えユージオでも、あんな……それこそ、一線を画してる。いや、アレは異常だ。一体全体、どうなってるんだ…?」

 

そのキリトの疑問に、ティーゼはこう答えた。

 

「あれは______先輩の、切り札です」

 

「切り___札?」

「はい。先輩のユニークスキルは、ご存知ですよね」

「ああ、《青薔薇》だろ?」

「_____その《青薔薇》スキルの《派生技術(スキルMOD)》です」

 

スキルMOD。

SAOにおける100を超えるスキル。そのスキルの熟練度を一定以上上げることで獲得出来る、その名の通り、派生スキル。

武器を早替えさせたり、クールタイムを短くするなど、効果は様々。

そしてそれは______ユニークスキルにも存在する。

二刀流にもクールタイム短縮のMODがあることをキリトは知っていたが____()()は、『派生』なんて領域を遥かに超えている。

 

「でも、おかしいだろう。あんな___」

「はい。アレに関してはその派生スキルと_____元よりあるソードスキルを組み合わせることで使用可能になる、スキル《青薔薇》の《最上位剣技》なんです」

「《青薔薇》の、最上位剣技…!」

 

「名を______《血薔薇(あかばら)》と言います」

 

ユニークスキル 《青薔薇》の最上位剣技(ソードスキル)と《青薔薇》スキルがMAX(カンスト)しなければ取得取得できない派生(モディファイ)スキル、それを会得することで初めて開放される。

血薔薇(あかばら)》。

 

「アレは、スキル使用者に強力なバフをかけるものです。攻撃力やクリティカル威力の増幅、俊敏性の大幅向上_____それが付与されます」

「バフ_____待ってくれ、アレはバフの範疇を超えてる。」

「はい。確かに、バフ…なんていう領域を超えています。それこそ…」

「____チート…いや、ユージオなんかができる芸当じゃないし、そんなこと出来るやつなんて居ない。ここにいるのは全員プレイヤーだ。システムに介入して、チートをするなんて言うのは、《システム管理者側(茅場晶彦)》くらいだ…」

「_____でも、強大が過ぎる力には代償が伴います」

「___代、償?」

 

ティーゼば顔を伏せて、ボソリと呟いた。

「あそこまで強い力を、何の代償も無く使える道理はありません。アレにも《代償(デメリット)》があります」

 

ロニエは話についていけないまま、呆然とティーゼを見つめ、キリトは何かに勘づいたように振り返る。

キリトの視線の先には、今もたった一人でボスに立ち向かうユージオ。

ボスの攻撃を全て回避し斬撃を叩き込む。

 

ふと_____不安に駆られて、視界の左上の端に表示されたHPゲージ。パーティーメンバーの物も表示されている。

キリトとロニエの物は少しずつ、ハイポーションの効果で回復していく。今は《注意域(イエローゾーン)》だが、そう時間のかからないうちに《安全域(グリーンゾーン)》へと戻るだろう。

ティーゼは既に完全に回復出来ている。

しかし______

 

「_____待ってくれ」

 

ボスの攻撃を全て回避して全快している筈の、ユージオのHPゲージ。

それが______7割まで減っている。

「なんで_______なんであそこまで減ってるんだ?ユージオは攻撃を全て回避してる筈だ…攻撃を受けている素振りなんて_____」

 

攻撃を受けていないユージオ。

しかし、表示されているユージオのHPゲージは、今も減り続けている。

徐々に______しかし、確かなスピードで。

 

そこから導き出される答えは_____

 

「まさか______」

 

「キリト先輩の予想通りだと思います。あの人のスキル《血薔薇》の《代償(デメリット)》は、《体力継続減少状態》です」

 

《体力継続減少状態》

その名の通り、攻撃を受けていなくてもダメージを受け続ける状態異常。

《毒》などと同じ物で、大体は____時間経過で消えるものだ。

しかし、ユージオのソレは時間経過では消えない。

 

「そして、《代償(デメリット)》はそれだけではありません。《ソードスキル使用不可》、《戦闘中自然回復(バトルヒーリングスキル)無効化》、《防御力半減》…これらの《デバフ》がスキル使用中は常時発動します」

 

「________」

 

大きすぎる代償。

それは、《血薔薇》スキルを使えばユージオを苦しめ続ける。

「_____待ってくれ、理解は出来た。納得はしてないが…ティーゼ。正直に答えてくれ。アレは______どれくらいもつ?」

理解はすれど、納得はできない。

ユージオ一人に危険な橋を渡らせるなど、キリトも我慢ならない。しかし、現実的に今ボスを止められるのはユージオだけ。

HPゲージが半減したキリトには到底できないということを、悔しながらも理解していた。

 

しかし。

超高性能バフ(メリット)を帳消しにしてしまいかねない程の代償(デメリット)。《体力継続減少状態》。

当然、HPゲージが減り続けるのなら時間的限界(タイムリミット)があるのは明白。

キリトはそれが気になった。

現在、ユージオのHPゲージは_____半分にさしかかろうとしている。

 

「______()()

 

「_____」

「それが、今、ユージオ先輩があのスキルを展開出来る時間です」

 

ティーゼの答えに絶句する。

ユージオは、もうすぐHPゲージが半分になろうとしている。ということは____既に、1分が経過しようとしているということだった。

 

だが_____ユージオを苦しめるのは、システム上…数値の話だけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体が、熱い。

 

剣を振るいながらポツンと心の中で呟いた。

既に、血薔薇(切り札)を使って体感的に1分が経っている。

後、もう1分。

耐えなければならない。

しかし、もう身体も心も限界を迎えていた。

激しい痛みが、頭を貫く。

 

それを無視して、僕は全速力で駆け出す。

 

ボスの叫びが聞こえる。

振り下ろされる大鎌。

僕はそれを______紙一重で躱し、ボスの懐へ飛び込んで斬撃を叩き込んだ。

 

「______ッ!!」

 

遅い。

 

苛立ちを隠せず、遮二無二身体中の鋭い刃を______僕を一撃で死に至らしめる凶器を振るうが、それは僕に届くことは無かった。

 

より速く。

 

ボスの攻撃を予測し、一切を受けない。

これがこのスキルの大前提だ。

一撃。

たった一撃、掠るだけで死に至る。

《血薔薇》のバフの倍率は、他のものよりも圧倒的に高い。

それ故に、デメリットも酷い物だった。

 

初めてこれを使った時______まだシャロがいなかった頃、ホーム前で試しにと使って、恐怖した。

デバフが大きすぎる。

自分で剣を上に投げて、わざと食らった時は本当に死ぬかと思った。

八割以上のHPゲージが、一瞬で四割まで減ったのだから。

ソードスキルを受けた訳では無い。だと言うのに____

 

『ギャジャァァァァァァ!!』

 

「_____っ!!」

 

余計なことを考えたせいか。

反応が遅れて、ボスからの一撃を貰いそうになった。

危ない。

油断も隙もないな、と他人事のように思った。

 

ボスから距離をとるべく、後ろへと飛んで、ボスから5mほど離れたところにザシャリ、と着地した。

 

僕のHPゲージは、後、半分丁度になった所だった。

少し、はやり過ぎていただろうか。

体感時間と現実の時間の流れがズレているな、と痛感した。

 

 

 

 

 

この《血薔薇》には、数値では分からない弱点がある。

それは______身体だけでなく、心も擦り切れてしまうこと。

 

簡単な話。

この血薔薇(スキル)は、人間が出せるスピードを優に超えている。

それ故に、人間の脳の処理能力だけでは行動の判断や処理が追いつかない。

例えどれだけ速く動けても、動体視力が追いつかないのだ。

人間はもとよりそこまで速く動ける生き物ではない。動体視力もそれに比例している。

それが急に倍の速さで動けるようになっても、人はなれることが出来る訳では無い。

車の運転で、咄嗟にブレーキをふむ判断が出来ないのと同じ。

曰く____ツバメは時速50キロと速く飛ぶが故に動体視力もそれに比例して良い。障害物を避けることなど瑣末な事だ。

しかし____人間は話が違う。

 

頭をフル回転させているが故に常に激しい頭痛を伴う。

しかし_______

 

 

 

まだ、行ける。

 

根拠はない。けど、まだ身体は動けた。

前傾姿勢をとり、剣を構える。

それと同時に骨ムカデ(ボス)も殺意を剥き出しにしながらこちらに突撃してくる。

まず、この状況でやらなきゃいけないのは_____ボスの大鎌を躱すこと。

 

発走する。

 

ボスとの距離は瞬く間にゼロになり、眼前に僕を一刀両断出来る程の鋭い刃が迫る。

僕はそれを紙一重で躱して、前へと進む。

片方ずつでしか攻撃してこないから、次は_____

 

いや、違う。

すぐさま僕は再び回避行動をとった。

通常ならば、片方ずつの鎌でしか攻撃してこないはずが、既に左からもう一方の鎌が迫っていた。

 

「_____ふッ!!」

 

ギリギリでそれを躱す。

HPゲージが最後の一本になると、攻撃パターンは変わるのはボス戦において当たり前ではあったから、こんなこともあろうかといつでも避けられるように体勢は整えていた。

あとはボスに斬撃を食らわせるだけ。

 

回転斬りを食らわせようと剣を振るう。その直後、僕は嫌な予感がした。

 

 

左から右へと剣を薙ごうと振り返れば______ボスの憎悪に染った顔が眼前に迫っていた。

その凶悪な顎は、僕を噛み砕かんとしている。

 

()()()()

 

しくじった。

確実に仕留めに来ている。

こればかりは、この《血薔薇(スキル)》使用中でも回避はできない。

 

嫌な汗が流れる。

バクンバクンバクンバクンと、絶え間なく____動いている筈の心臓が一瞬止まる。

 

いや、ここで何もしないのは大間抜けの所業。

今からでも体を捻って、回避を______

 

その時、銀色の光がボスの顔面に直撃した。

クワァァァァン、と子気味良い音が響く。

 

『ギガギャァァァ____!?』

 

ボスの動きが止まる。

僕は回避をやめて、渾身の回転斬りをボスに見舞った。

 

_____ネズハ、だ。

 

後衛で様子を見ていたネズハが、チャクラムで僕を援護してくれている。

 

「ユージオさん!!援護は任せて下さい!!」

 

ネズハの声を聞くと同時に僕は再びボスへ特攻を開始する。

ネズハのサポートがあれば、怖いものは無い。

彼へ最大級の感謝をしなければ。

 

ズキリ、と頭に痛みが走るが、それを無視して駆け出した。

 

残りの体力からして、あと____50秒無いくらい。

 

「_____せァッ!!」

未だスタンしているボスに斬撃を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このスキルの持続時間について問われたティーゼ。

『2分間』と、彼女は言った。だが、それは事実であり______虚偽でもあった。

何故か。

 

このスキルは『体力が自然に減り続ける』という性質上、タイムリミットが存在する。

ユージオにとっての限界が『2分間』だった。

 

_______()()()()()()()()()というのが大前提の話だが。

 

ダメージを受ける、または余裕を持たせるのなら、本当は1分…長引いて1分半が本当のタイムリミット。

この『2分間』とは、ユージオの体力をフルに使った場合____即ち、9割9分までギリギリ使って解除した時のタイムリミットだった。

 

 

 

 

 

 

 

ネズハのチャクラムでスタンしたボスに

「_____はアァッ!!」

斬撃を次々と叩き込んでいく。

 

あと残り30秒。

まだ、やれる________そう考えた直後。

 

『ジャアアアアアアア!!』

 

「_____ッ!?」

 

ボスの大鎌が頬を掠る。

髪が少し巻き込まれて切れた。

 

それだけで____________一割。

HPゲージを一割も持っていかれた。

 

嫌な汗が流れて、ぶわりと身の毛もよだつ。

 

不味い。

 

これでは_____後、10秒程しかない。

そんな考えのせいか。

 

「___う、あああああああッ!!」

 

声を上げて突撃する。

 

嗚呼、僕の馬鹿。

これじゃ_____台無しじゃないか。

焦りに焦って、なんて馬鹿な真似を。

 

そんな僕の愚行を、ボスが見逃すはずも無く。

 

『ギジャァァァァァア!!』

 

「うッ_______!?」

ボスの攻撃を真正面から受けそうになって、慌てて剣で守ろうとした。

けど、守りきれるはずもなくて______

 

吹き飛ばされた。

ボス部屋の床に叩きつけられながら、どうにか止まった。

 

「ぐ_____っ!!」

いち早く起き上がろうと、左手に力を入れようとして_____

力が入らないことに気付いた。

 

手が、震えている。

 

《死》を目の前にして、身体が悲鳴をあげている。

響き渡る、けたたましいボスの足音。

 

 

何、やってるんだ。

 

立て。

 

早く、立ち上がって、回避を_____

 

 

 

「_______ぁ」

見上げれば、ボスの顔があった。

狂った叫び声を上げて、その大鎌を振り下ろす。

 

 

 

回避不可。

 

 

 

 

防御もままならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死ん________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時。

僕の見知った黒い背中が、飛び出した。

 

「_____おおッ!!」

 

激しい金属と金属がぶつかり合う音。

 

僕を貫くであろう、大鎌の一撃は_____僕の真横にズドン、と重い音を立てて落ちた。

 

_______その背中。

 

僕が追いつきたかった、彼。

同じ剣士として、仲間として、親友として。

対等に立ちたかった_____(キリト)は。

 

ああ。

例え、過去に戻ろうとも。

僕の相棒は_____

 

「____任せ、たっ……!!」

 

「_______任された」

 

僕の言葉に、たった一言。答えて見せた。

後ろを振り返ることはせず、キリトはボスへと駆け出した。

 

 

 

 

 

「キリトに続け!!ユージオが稼いでくれたこの時間を無駄にするな!!」

 

ディアベルの声。

それに答えるように雄叫びが響く。

 

それを聞いて安心して_____剣を鞘に収めようとした。

 

手が震えて、上手く戻せない。

この《血薔薇》スキルは、剣を鞘に戻して初めて解除される。

このままでは______スキルを解除出来ない。

 

ズキリ、と激しい頭痛。

頭がどうにかなりそうだ。

 

後、数秒。

焦れば焦るほど、手の震えは大きくなる。

 

「______はや、く…っ」

 

HPゲージは、もうあと数ドットしかない。

 

呆気ない終わりだな。

そう、他人事のように思った。

 

その時。

 

誰かが僕の手を掴んで、鞘に剣を戻してくれた。

ギリギリ____間に合った。

ジャキン、と音を立て、鞘に紅く染った剣が収められる。

直後、剣の紅い何かが音を立てて霧散する。

僕のHPゲージに表示されていたバフとデバフ、両方が消えていく。

頭を襲っていた刺すような痛みも、ふっと消えていた。少し痛みの余韻は残るが、これで随分とマシだろう。

 

手伝ってくれた誰かは、僕を抱きかかえて飛んだ。

 

即座にボス部屋の入口へと避難したその誰かは、直ぐにポーションを僕の口に突っ込んだ。

 

「んむぅ……!?」

 

有無を言わせず、ポーションをがぶ飲みさせられる。

「んく、ん________ぷはぁっ!?」

 

息が止まるかと思った。

 

「_____生きてる」

僕を運んでくれた______ティーゼは僕を抱きしめた。

 

「生きてる……先輩、先輩…先輩っ…!!」

 

「____ごめんね、心配かけて」

 

ティーゼは僕の胸で泣きながら、ぎゅうっと、強く抱きしめてくる。

______愛している人に、1番心配させてしまった。

 

僕のことを『先輩』と呼ぶ癖は___まだ、治っていなかったらしい。

 

 

でも______やっぱり、そう呼ばれた方が少し安心するかな。

 

 

何度も僕を呼ぶ彼女が_____酷く愛おしくて。

僕も、ティーゼを抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから10分後、ボスは無事倒された。

 

戦闘時間、1時間28分。

 

犠牲者は奇跡のゼロだった。

 

 

 

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