二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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今回で異変は終了!

では、第百八話をどうぞ。


第百八話 懐かしの二人

Side鏡夜

 

天井を蹴り、壁を駆け、目の前の少女から放たれる弾丸の形した魔力弾を躱していく。

 

やはり妙だ。なんといえばいいんだ。弾丸を認識しているのに、認識できていない。認識をずらされているとでも言えばいいのか。正面に弾丸があると思っていたら急に眼の前に現れる。そんなことが多々あるのだ。

 

こんなこと、普段の俺ならありえない。……やはり、彼女が何かしら俺に仕掛けているのか。

 

「逃げることしかできないのですか」

 

空を飛びながら、口元をにやけさせて挑発してくる少女。

 

確かに、さっきから逃げっぱなしだな。この妙な違和感が気になるが、このまま逃げていても仕方がない。……少しだけリミッターを解除してこの違和感の正体だけでも暴いとくか。

 

「なら、お望みどおり」

 

右手に魔力を溜め、右腕を横なぎに振るう。横なぎに振るったことにより、右手に溜めていた魔力は横に拡散しながら少女に向かっていく。

 

拡散型の魔力弾。範囲はそれ程でもないが、躱すなら普通上か下に移動しなければならない。だが、彼女は躱すことはしないだろう。

 

「無駄です」

 

「やはりな……」

 

俺の想像通り、少女は俺の魔力弾を動くことなく躱した。普通ならそんな事出来ないが、少女は能力によってそれが出来てしまう。

 

少女の能力、それは波長を操る能力。

 

物事に必ず存在する波長。波長とは、いわば波のようなものと考えてくれればいい。この波長を操るれば簡単に人の心を操れたり出来る。そんな波長を少女は操っているのだ。

 

さて、じゃあ、少女はこの波長を使ってどうやって俺の弾幕を回避したか。簡単だ。少女は自身の波長を操り、自分を一時的にこの世界から自分をずらしたんだ。

 

言ってることが分からないかも知れないが、言葉通りなのだから仕方がない。

 

「だが、理解した俺にはそんなこと関係ない」

 

今度は両手に魔力を溜めた俺は、少女に向かって腕を手に振り斬撃のような魔力弾を放つ。

 

「だから、貴方の攻撃は無駄だと……ッ!」

 

少女はまたもやこの世界と波長をずらして逃げようとする。躱せると確信していたのだろう。余裕といった感じの表情を浮かべていたから。ま、すぐに驚愕と苦痛の表情に変わったが。

 

「ケホッケホ! 貴方、一体、何をしたんですか」

 

咳込みながら地面へと降りてきた少女は睨みつけながら聞いてくる。

 

「簡単だよ」

 

人差し指を真っ直ぐと少女に向ける。

 

「波長が合わないというのならば、君の波長に私があわせればいいだけのこと」

 

「波長を合わせる……馬鹿な、私は一言も波長をずらしているなんて言っていない……それに、私の波長に合わせる……?」

 

あまりにも色々なことが起こりすぎたのか、少女は若干パニック状態になっている。この程度でパニックになってたら、幻想郷じゃパニックになりまくっちゃうよ。

 

「そら、早くしないと、こっちからいっちゃうよ」

 

未だにパニックになっている少女に向かって、球体の魔力弾を投げまくる。さっきの斬撃の魔力に比べれば速度はかなり遅い。その代り、数は馬鹿みたいに多いけどな。

 

「ッ!」

 

咄嗟に空に飛んだ少女は魔力弾を避ける。だが、俺はさらに少女が避けた先に魔力弾を撃ち込んでいく。それすらも少女はギリギリで回避していく。

 

魔力弾を回避した少女は隙を見ては俺に向かって弾丸を撃ちこんでくる。しかし、弾丸は俺に届く前に、俺の魔力に当たり弾丸だけが消えてしまう。

 

「く! スペルカード発動!」

 

少女のスペルカード宣言に俺は攻撃を一旦止め、様子を見る。

 

ポケットから少女はスペルカードを取り出すと自分の顔の前に持ってきて握りつぶす。すると、少女の瞳が赤く怪しく輝きだす。

 

どんな攻撃が来るのだろうか。楽しみだ。

 

「波符『赤眼催眠マインドシェーカー』

 

少女の言葉が終わると、円形に弾丸が展開され飛んでくる。本来なら波長を操る関係上、この弾丸はこれ以上に見えていたり、これ以下に見えていたり、色々と面倒なのだろうけど、生憎とこっちは少女に波長を合わせているため、ただの円形に展開された弾丸でしかない。

 

少々残念に思いながらも、少女の弾丸を避けつつ少女に細く針状にした魔力を撃ちこんでいく。弾丸とぶつかり、細い魔力の方が壊れるかと思われるが、壊れることはなく弾丸を貫いて少女に向かっていく。

 

「どうして……」

 

少女から聞こえてくる小さな声。その声はどこか泣きそうな声にも聞こえる。おいおい、もしかしてだけど、やめてくれよ。流石に、戦いの最中に泣かれたら対処のしようがないぞ。

 

「どうして当たらないのよ……」

 

あ、やべ。本格的に少女が目の端に涙を集めている。嘘でしょう。泣かれたら……どうしよう。

 

「うッ、えぐッ」

 

「え、え~っと」

 

とうとう泣いてしまった。まだ弾幕ごっこの途中だというのに、地面に女の子すわりで座って目元を擦りながら。

 

ど、どうしよう。流石にこんな感じで泣かれたことないからどうしていいか分からない。弾幕ごっこの途中だったこともあるし、どうすればいいんだろう。

 

「だ、大丈夫?」

 

「触らないで!」

 

近づいたら拒絶されてしまった。ますますどうすればいいか分からなくなってしまったぞ。

 

「どうせ、私なんて月から怖くて逃げてきた臆病者よ。……皆から逃げて、どうせ私なんて……」

 

……なんか急に泣きながらネガティブになったんだけど。これ、本当にどうすればいいの。この子のお師匠さん出て来てくれないかな。もう異変よりもこの子をどうにかする方が大事だわ。

 

「貴方」

 

「おっと」

 

いきなり少女の後ろの暗闇から弓矢が飛んで来た。横に体をずらして躱したが……なんだかあの弓矢、普通の弓矢にしては尋常じゃない速さだったんだが。

 

「優曇華を泣かしたわね」

 

ゆっくりと暗闇の奥からカツカツと歩いてくる音が聞こえてくる。

 

……気のせいだろうか。なんだか凄い昔にこの声を聴いたことがあるんだが。いつだ。……そうだ。この声はあの時の……。

 

「万死に値する……って、え!?」

 

 

「やっぱり、貴方でしたか」

 

暗闇から濃密な殺気を出しながら歩いてきた人の全容が明らかになる。

 

白く腰まである大きな三つ編み。半分が赤で半分が青の服装。昔とはかなり服装が違うが、間違いなくあの時会った人だ。

 

「お久しぶりですね、永琳」

 

「まさか、貴方が生きていたなんて……」

 

「死んだと思っていたのですか?」

 

「普通はそう思うでしょう。あれから数百年……数千年だったかしら? 過ぎているのだから普通の人は生きていないわ」

 

……ああ、そうか。あの時は時間も無かったから話していなかったのか。……ん? そういえば、永琳がここにいるってことはだ……。

 

「そういえば、言ってなかったですね。私はまあ、半妖的な何かですよ。個人的には人間だと思っているんですがね」

 

「数千年生きていたら人間ではないわよ。言うならせめて仙人よ」

 

「仙人になったつもりはないですけどね……それよりも少し訊きたいのですが……」

 

少し訊きたいことがあったのだが、永琳の人差し指に阻まれてしまう。

 

「その前に、少しあちらを片付けていいかしら?」

 

永琳が指さしたのは、さっきから泣いている少女だった。泣きやましてくれるのなら、俺の訊きたいことなんて後回しでいい。だから、早く泣き止まして。

 

「ほーら、優曇華、さっさと泣き止みなさい。お客人の前ではしたないわよ」

 

「だって、師匠~」

 

「師匠~じゃない、ほら、私達の命の恩人がいらしているのだから、シャキッとしなさい」

 

「命の恩人って……この人がですか?」

 

指さしながら言ってくる優曇華とやら。この人って……軽く名前は売れてると思ってたんだげどな……って、俺名前名乗ってないじゃん。そりゃあ、軽く見られますわ。

 

俺に指さして言った優曇華の頭にゴツンと永琳の拳が振り下ろされた。

 

「あいたッ! 師匠、ないするんへすか~」

 

ついでに頬まで抓られてしまってる。あらら~なんだか微笑ましい事。

 

「この人じゃないわ。時成鏡夜さんよ。貴方も、名前くらいは聞いたことあるでしょう?」

 

「時成鏡夜!? この人が!? って、いふぁい! いふぁいれふ!」

 

「だーかーら。この人じゃなくて、鏡夜さん」

 

今度は思いっきり頬を左右に引っ張られる優曇華。ジタバタと痛みで暴れる優曇華だが、一切の容赦なく永琳は頬を引っ張る力を強める。

 

「まあまあ、別にさん付けじゃなくてもいいから。鏡夜と呼んでもらえればそれでいいから……永琳も、そこらへんでやめてあげて」

 

「貴方がそう言うなら別にいいわ……それで、私に何を訊きたかったのかしら?」

 

聞きたかった事、それは永琳がここにいるのならあの時、あの場所にいたもう一人。蓬莱山輝夜もここにいるのではないかと言う事。それと……。

 

「訊きたかったのは二つ。一つはあの時いたもう一人、蓬莱山輝夜さんもここにいるのかって言う事が一つ。もう一つは、異変の原因は君たちかって事」

 

 

 

俺の質問を受けた永琳は優曇華と言う名の少女を下がらせ、俺に付いてくるように言って歩き出してしまった。

 

「どこに連れて行くんですか?」

 

「輝夜の所よ。彼女が今この異変を起こしているのよ」

 

振り返らずに言うと、永琳は襖の前に止まりゆっくりと襖を開けた。

 

「輝夜、お客様ですよ」

 

永琳に続いて中に入ると、そこはごく普通の和室の部屋だった。部屋の中央にいる、見る人全員が絶世の美少女と言うレベルの少女が目を瞑っていること以外は。

 

「お客? 私を訪ねてくる人なんて……」

 

ゆっくりと瞼を上げた輝夜は、俺の顔を見ると固まってしまった。

 

「あ、あなたは……!」

 

「お久しぶりですね、輝夜」

 

ゆっくりと頭を下げると、輝夜は軽く座ったまま後ずさってしまった。よく正座したまま後ろに下がるなんて器用な事出来るな。いや、そもそもなんで俺挨拶しただけで後ずさられたの?

 

「あ、あああああ、あなた! きょ、鏡夜!」

 

「はい、鏡夜ですよ」

 

「永琳、大変よ! 私幽霊を見ているわ! 恩返ししなかった私を怨んで現れた鏡夜の幽霊が目の前にいる!」

 

……う~む、あの時は頭がいいと思ってたんだけど、もしかして輝夜ってバカ?

 

「何バカなこと言っているんですか輝夜。こちらは正真正銘の時成鏡夜ですよ」

 

「そうですよ。幽霊でも他の何かが変身している訳でもない、正真正銘の時成鏡夜ですよ」

 

永琳の顔と俺の交互に見た後、輝夜はまた目を閉じてしまった。

 

「……そう、本物なのね」

 

輝夜はコホンと咳払い一つすると、背筋を真っ直ぐと伸ばした。

 

「時成鏡夜さん、あの時は助けていただきありがとうございました」

 

姿勢を正して輝夜は頭を下げる。

 

「あの時出来なかったお礼、今したいと思います……しかし、私は鏡夜さんに対する最高のお礼というものが思いつきません。そこで、私が叶えられる範囲で鏡夜さんの願いを叶えると言う事をお礼としたいのですが、どうでしょうか?」

 

叶えられる範囲で願いを叶えてくれるのか……う~む、しかし、困ったことに俺は叶えて欲しいお願いなどない。

 

そもそも、俺が自分の願いを叶えようとすれば大抵の事は実現できる。強いて俺が叶えられないとすれば……何が出来ないだろうか? その位、俺は自分の願いを実現させるだけの力があってしまう。

 

……そうか、今一番叶えて欲しい願い事があるじゃないか。

 

「輝夜、顔を上げてください」

 

俺の言葉に顔を上げた輝夜に向かって、指を二本輝夜の顔の前に立てる。

 

「輝夜のお礼を私は受け入れます。その上で、私は二つお願いしたいのですが構わないですか?」

 

「私の出来る範囲でなら」

 

頷きながら俺の条件を飲んでくれる輝夜。

 

「では一つ目。まず質問から入りますが、今回の異変、首謀者は輝夜と永琳でよろしいのですか?」

 

「私達の二人で起こしたわ」

 

「ふむ、ならばこの異変を終わらせてもらえますか?」

 

「そ、それは……」

 

困った顔をしたまま永琳の方を向く輝夜。輝夜に見られた永琳であるが、こちらもこちらで困った顔で輝夜の顔を見ている。

 

何か、異変を終わらせることが出来ない理由でもあるのだろうか?

 

「……無理でしょうか?」

 

「いえ、その、無理ではないのですが……永琳、話すわよ」

 

「構わないわ、輝夜」

 

大きく息を吸いこみ、意を決したのか、ゆっくりと輝夜は話し始めた。

 

「この異変は終わらせる事は出来ません。理由は簡単です。私達がこの幻想郷にいることが月に知れれば、あの時のように月から使者が送り込まれてきてしまいます。そうなれば、この幻想郷は滅びるでしょう。そうならないために、私がこの幻想郷の空に浮かんでいる本物の月を偽物の月へと変えているのです。これにより、月と幻想郷の往来を阻止している形となっているのです。……そのため、今回の異変を終わらせる事は出来ないのです」

 

長い説明を受けたわけだが、別に今回の異変を終わらせることが出来ない理由にはならなかった。理由は単純明快、俺がいるからだ。

 

月の使者が攻めてくる? 上等! 来たら返り討ちにしてくれる。俺とお嬢様達とカロと美鈴、そしてパチュリー様に小悪魔に咲夜ちゃん。それとこの幻想郷にいる

全員で月の使者とやらをな。

 

それにだ。俺がいるのに、この守るべき者達が大勢いる幻想郷を傷つけさせるものか。

 

「……そうか。質問なのですが、それは月の使者に勝てないからこの幻想郷を隔離していると言う事なのですか?」

 

「そうよ」

 

「……ふむ。その月の使者に私が勝てないとお思いで?」

 

「勝てないわ」

 

ほう、言ってくれる。月の文明がどれ程のモノか知らないが、この俺が勝てないというのならばそれはものすごく強いんだろうな。

 

「鏡夜さん、貴方は神に勝てる?」

 

「神?」

 

「そう、神。修羅神仏、ありとあらゆる神々に。貴方は勝てる?」

 

そうか、神か。神ね。

 

「……クク、クハハッハハハハハハハ!!」

 

思わず、腹を抱えて笑い出してしまった! 輝夜と永琳が引いているが、気にしていられない。

 

いや~久々にその言葉を聞いた。神に勝てるかだと? 笑止! 神に勝てずして何が幻想郷最強か! 神々の奴らとは当の昔に戦って勝ってるわ! それをいまさら、神に勝てるかなんて……

 

「きょ、鏡夜さん」

 

「ククク……いやいや、失礼。懐かしい言葉を聞いたもので、つい吹き出してしまった。……それで、神に勝てるかでしたっけ? 答えは、はいですね」

 

神に勝てると、堂々と言った俺に永琳と輝夜は目を見開いて驚いた表情のまま固まる。

 

「千、或いは数百か。昔、この日ノ本を収めている神々と一戦交えましてね。辛くもと言ったところでしたが、勝ちましたよ」

 

「でも、今勝てるとは限らない……」

 

「勝てます。あれから私も成長していますし、なによりも、神ごときに負けているようでは、最強なんて名乗れませんからね」

 

「……」

 

黙ってしまった。輝夜と永琳は数度お互いの顔を見合い、何かしら考えているようだった。そして数分後、永琳がため息を吐いたことで、考える時間は終わったらしい。

 

「輝夜、鏡夜さんの言っている事は嘘ではないようよ」

 

「本当に?」

 

「ええ。彼の瞳に嘘は無かった」

 

「そう……鏡夜さん」

 

「はい」

 

真剣な眼差しで見てくる輝夜に笑いながら返事を返す。

 

「私達は貴方を信じます。なので、もし月の使者が攻めてきた時、私達を……いえ、幻想郷の人々を守ってくれますか?」

 

「ああ。……けど、私は幻想郷よりもまずは自分の大切な人たちを優先して守りますけどね」

 

「……その中に、私達は含まれているんでしょうか?」

 

「もちろん、貴方達も私の大切な人ですよ」

 

そう、もう既に俺にとっては守るべき人達だ。もちろん、道中で会った鈴仙って子とあのピンク色の女の子もだけど。

 

「さて……これで一つ目のお願いは終わりますね。では二つ目のお願い、こちらは簡単なお願いです」

 

「何かしら?」

 

「お二人、いやさっき会った子達にもお願いしたい事なのですが、私の事は鏡夜と呼んでください」

 

俺の簡単なお願いに、今夜何回目になるのか分からない、驚いた表情を浮かべる永琳と輝夜。しかし、今回はさっきみたいに無言で固まるなどと言う事は無く、すぐに小さな笑みを浮かべた。

 

「ええ、分かったわ、鏡夜。だったら、図々しいかもしれないけど私からもお願い。堅苦しい喋り方は無しにして頂戴」

 

「分かった。そうさせて貰うよ……じゃあ、これで俺のお願いはもう叶ったし、もうこれ以上の願いは無い」

 

「あら、私っていう美少女は手に入れなくていいのかしら?」

 

「生憎と、強引っていうのは好かんのでね。俺の好みは相思相愛なんで」

 

「そう……ならいつか、私に惚れさせてあげるわ」

 

……あれ? これってもしかして、さりげなく口説かれてる?

 

「私を助けてくれた鏡夜。いつでも、私の下に遊びに来ていいわよ」

 

ちょんと人差し指を俺の唇に置いた輝夜は、この世の男全員が見惚れるような微笑みを浮かべた。

 




これにて永夜抄終了! 次回は宴会……と行きたいのですが、まだ完成しておりません。完成しだい投稿する予定なので、お待ちください。失踪するつもりはないので、気長に待っててください。

感想、アドバイス、誤字、お待ちしております。
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