では、第四十二話をどうぞ。
Side鏡夜
さて、文ちゃんが泣きやんでから五分が経った。あの後、眠っていた天狗たちを葛木に叩き起こさせ、天魔のところに集まるように天狗たちに伝えるように葛木に伝言を頼んでおいた。
そして、今俺と文ちゃんは天魔のところに向かっていた。道中色々なところで他の天狗に会い、驚いた顔をされたが、その天狗たちにも天魔のところに集まるように言っておいた。
「さて、ここだな」
「そうだね、兄さん。それにしても、なんで兄さんは生きてるの?」
「みんなが集まったら話すよ」
「うん、わかった」
「なんだい。うるさいね~」
文ちゃんと会話していると、急に台座の奥から気だるそうな声が聞こえた。その声に懐かしさを感じながら台座の方を向くと、一人の女性・・・別れた時から姿が変わっていない天魔が現れた。
「誰だい・・・って、鏡夜!?」
「や、天魔・・・いや、桜。久しぶり」
「うえ、あの、あ!」
天魔、もとい桜は俺の姿を見たせいか驚き、台座から滑り落ちそうになった。俺はすぐさま駆け寄り、桜の体を支えて上体を起こした。
「おっとっと、大丈夫かい?」
「あ、大丈夫です。それにしても、何故ここに?」
桜は台座に座り直すと、文ちゃんがいるのに敬語で話してきた。
「いやね、またいずれ会おうって言ったじゃん? あと、敬語になってるよ」
「あ、ん、ん、して鏡夜よ。何故お主は生きているのだ?」
桜はまるで俺が生きていることを知らなかったように言ってくる。本当はこの桜は俺が生きている理由は知っているのだが、まあ、その話は俺の昔話を見てくれ。
「それは、皆が集まったら話すよ・・・っと、来たみたいだね」
「おーい鏡夜―集めてきたぞー」
葛木の声に後ろを見るとそこには、この里の全員がこちらへと歩いていた。
「うお!? 本当に鏡夜がいる!」
「本当だ!」
「おーい!」
「鏡夜!」
先ほど眠らせた天狗たちや、先ほど会った天狗たちなどが、俺の姿を見てそれぞれ手を振ったりしてくれた。
「やあ、久しぶ・・・って!」
俺は手を振ってくれたから振り返そうとしたら、一人の天狗に頭を殴られてしまった。
「このドアホ! なんで、生きてるのに連絡よこさんのじゃ!」
「すまないって」
「そもそも、なんで生きてるんだ?」
「ああ、それは・・・」
「鏡夜、お土産は?」
「えっと・・・」
「鏡夜!」
「なあ、鏡夜」
「皆の者、静まれ!」
鏡夜、鏡夜、と矢継ぎばやしに声を掛けられ、返答に困っていると、桜が一喝して皆を静かにしてくれた。
「これかそのことについて鏡夜が話してくれる! 鏡夜、良いかの?」
「ああ、ありがとう。さて、皆色々と聞きたいことがあるだろうが、まず俺から最初に言いたいことがある」
静かになった天狗たちに俺は大きな声で言っていく。そして、天狗たち皆が俺の事を不思議そうな顔で見ている中、俺は―――
「すまなかった!」
頭を下げた。天狗たちは突然の謝罪に困惑してざわついているが、俺は構わず謝罪した理由を話していった。
「実はあの時俺は、皆のことを騙していたんだ」
「あの時?」
「騙していた?」
「ああ、実は俺が死んだのは嘘だったんだ。だが皆、これは文や葛木も知らないことだから、責めないでくれ」
嘘だといい顔を上げると、文と葛木は驚いた顔をしていた。だが、他の天狗たちはなんか微妙な顔をしていた。
「いや、そんなこと言われてもな・・・」
「ん?」
「いやな、そもそも嘘って何が?」
「死んだことがだけど」
「いやいや、知ってたけど?」
「「「え!?」」」
天狗一人の衝撃的な発言により、俺と文と葛木は呆然としてしまった。いや、なんで二人も呆然としてんの?
「いやだって、天魔様が言ってたじゃないか。文も葛木も聞いているはずだが・・・」
「「いや、知らないんだけど!?」」
文と葛木が真顔で手を顔の前で振っている間、俺はゆっくりと桜ちゃんの方を向いた。
「はい? おい、桜ちゃん。どういうことだ?」
「あ、いや、あっはっは~」
若干睨みながら、桜ちゃんの方を向くと、手で頭を掻いて苦笑いしていた。俺はちょ~っとイラっときたため、笑顔で桜ちゃんの方へと歩み寄った。
「う~ん、桜ちゃん。これはどういうことかな?」
「あ、いや」
「どういうことかな?」
「す、すみませんでした!」
桜ちゃんに笑顔で詰め寄って言ってもまだシラを切るため、笑顔のままその顔を覗き込むと、土下座してしまった。
「どうして土下座するのかな?」
「あ、あの、その・・・」
「どうしたの?」
「あ、あの、まずはその怖い顔を抑えてくれるといいのですが・・・」
「怖い顔って何?」
「ひっ!」
嫌だね~笑顔で話してるのに怖い顔と言われてしまったよ。全く、俺は笑顔だというのにね~
とまあ、そこで悪ふざけをやめて、俺はやれやれといった顔で桜ちゃんに話し始めた。
「は~で? どうして、知ってるの?」
「じ、実は鏡夜が死んでしまったあと、つい口が滑って皆に貴方が死んだのは嘘だと言ってしまったのです・・・ですが、許してね」
「ふ~ん、そうか・・・」
天魔が最後に舌を出しながら言ってきたので、俺はそっと空を見上げた。
今日も綺麗な青空だよ。そう、雲一つない綺麗な青空だったよ。
「この阿呆!」
「痛い!」
でもまあ、桜ちゃんには暗闇の世界が見えてるだろうね。
ってのはどうでもいいんだよ! 俺がなにをしたかって? デコピンだよデコピン!
いや、ちょっとだけイラっときたからね。軽くデコピンしただけだよ。軽くね。
Side文
「あの葛木さん。鏡夜の死が嘘だって知ってました?」
「いや、知らなかったが・・・」
他の天狗たちが鏡夜の死を知っていることに驚きつつ葛木さんに聞いてみると、葛木さんは首を振りながら答えてくれた。
そもそも私と葛木さんは、鏡夜が生きているということを天魔様に言われていたら覚えているはずだ。しかし、一切天魔様からそんな情報は教えてもらっていない。
「あれ? お前らは知らなかったのか?」
「ええ、知らないのですが?」
「いや、お前達。言われただろ。鏡夜が死んだ次の日に」
「次の日ですか? 確か、次の日は・・・」
「そうだな、次の日は確か・・・」
「「あ!」」
鏡夜が死んだ次の日を思い出していると、あることを思いだした。
そう、鏡夜が死んだ次の日。私と葛木さんは共に私の部屋、というか鏡夜の部屋の整理をしていたのだ。確かにその日、天魔様から招集が会ったが、鏡夜が死んでしまった絶望感で、部屋から出たくなかったのだ。
「あ、なんだ。お前たちあの時いなかったのか?」
「はい・・・」
「そうだ・・・でも、じゃあなんでお前達は、鏡夜に襲いかかったんだよ?」
「ああ? いつだよ?」
「あの、侵入者の時」
そして私が落ち込んでいると、葛木さんと天狗の一人が話していたため、近寄って話を盗み聞きすると、さっきの侵入者の話をしていた。
「ああ、あの時か? あの時は、俺たちの唯一の人間の家族である鏡夜を侮辱してんのかと思ってブチギレて、襲いかかったんだが・・・」
「だが?」
「途中から鏡夜だって気づいてな。途中から遊び半分で戦ってたんだよ」
「おい! 気づいたらやめろよ」
「ハッハッハ、いや~楽しくてな、つい」
「ついじゃねえよ」
「全く、何してるんですか貴方たちは」
ボソっと小声で言い、ため息を吐きながら鏡夜の方を見ると、何故か天魔様が気絶していた。
「あ~天魔様が気絶してる・・・って、え?」
いやいや、天魔様が気絶してるのは不味いでしょう! というかなんであの馬鹿兄は天魔様を気絶させてるんですか!
私は急いで天魔様の近より、すぐさま天魔様の上体を持ち上げた。
「ちょっと、大丈夫ですか! 天魔様!」
「は、はは、見ろよ、人がゴミのようだ」
「天魔様―――!!」
「は~スッキリした」
天魔様の安否を気にしていると、後ろでスッキリ顔の鏡夜がいた。そのスッキリ顔に怒りと私の今までの寂しさが相まってか、思いっきり振り返って―――
「何しとんじゃ、この馬鹿兄貴!」
「グフ! ナイス、右フック・・・」
拳を振り抜いてしまった。拳はものの見事に鏡夜の顎に当たると、鏡夜は吹き飛んでしまった。
「ハア、ハア、ハア」
拳を振り抜いたあと、その場に残ったのは息を切らした私と、気絶した二人。そして、何故か拍手をしている天狗の皆さんだった。
「ハア、ハア、どうしよう」
Side鏡夜
「いって~」
「ごめんなさい、兄さん」
「いや、いいって」
あの後、目が覚めたのは夕方だった。いや~どうやらあの文ちゃんの右フックで、ものの見事に気絶してしまったらしいみたいだね。
そして、起きるとすぐさま宴会へと発展した。で、今は文ちゃんと葛木。それと最初に会った時に気絶させた子を膝枕しながら酒を飲んでいた。
ん? なんで気絶した子を膝枕させてんだって? 知らん。なんか文にそうしてくれって言われたんだよ。
「それにしても鏡夜、お前今までどこに行ってたんだよ」
「いや、旅をしていた」
「旅って・・・」
「いや~確か俺、文ちゃんと死ぬまで一緒にいないといけないからあんなことしたんだよね」
「全く、それぐらい言ってくれれば、許しましたよ」
「いや、すまない」
「で、これからは一緒に住めるんですか?」
文は酒のせいで頬を若干赤らめながら言ってくる。ちなみに、葛木も顔をが赤い・・・どうでもいいか。
「いや、それはできないんだよ」
「え? 何でですか?」
文は酒を飲むのを止めると、急に顔を近づけながら言ってきた。
「いや、今住んでるとこがあるから・・・」
「どこですか~?」
「この前異変があった紅魔館ってところなんだけど?」
「あ~あそこれふか~じゃあ、ゆるひまふ~」
「ああ、ありがとう。で、それはいいのだが、何故こちらに唇を押し付けようとする!」
文は最初普通に話していたのだが、段々と呂律が回らなくなり、徐々にキスしようと迫ってきた。天狗も酒には強いはずなのだが。
「いいじゃないれふか~」
文は笑顔になると更に迫ってくるが、なんとか片手で文の顔を抑えて止める。文を抑えつつ、葛木に助けを請おうと思ったが、肝心の葛木が眠っていた。
「ん、ん~? あれ、文さん。何してるんですか?」
「うお~もむじ~おふぁよ~」
文とキスする寸前、先ほどまで膝で寝ていた子が起きた。そのおかげで、文の意識はその子に向いたため、一息つく。危なかった。
「うわ! 酒臭いですよ文さん」
「アッハッハ~もむじ~」
「ちょっ! 文さん!」
先ほどまで膝で寝ていた子が起き上がると、文に抱きつかれた。
「もう・・・って、あれ貴方は?」
「ああ、すまんすまん。俺は時成鏡夜兼侵入者だよ」
「へ~時成鏡夜さんですか・・・って、え!?」
女の子は文に抱きつかれたまま、驚いた顔をした。
「あの、えっと、もしかして、文さんと住んでいた人間って・・・」
「ああ、俺だよ」
俺が平然と答えると、女の子はいきなり頭を下げた。文に抱きつかれたまま。
「すみませんでした!」
「いや、なんで?」
「あなた様は伝説になっておられるのですよ。そんな、伝説の人に向かって刃を向けたことをお許し下さい!」
「いやいや、別にいいよ」
伝説というのが若干気になったが、まあどうでもいいか。
「それより、君の名前は?」
「あ、これは申し遅れました! 私の名前は犬走椛です」
「そう・・・じゃあ、椛ちゃん。後は任せたよ」
「はい? どういうことですか?」
「いや、もう帰ろうかなと思ってね」
そう言って俺は立ち上がって、文の頭を撫でた。
「じゃあな文。また今度来るから」
「はふ~じゃあまふぁね~兄ふぁん~」
「ああ、また今度な」
そうして、文の元を離れ、葛木の腹に一発蹴りを入れた。
「グフ! なんだ、一体!?」
「俺だ。葛木、俺帰るから」
「おう、また今度な」
「おう。あ、あと一つ」
寝ながら答える葛木にひとつだけ伝えることが有り、そっと俺は葛木の耳に近寄った。
「はやく告れや、このヘタレ」
「な! てめえ」
「フフ、じゃあな」
そうして俺は霊力の翼を出し、空へと飛んだ。ちなみに、最後に酒の名前を見たが、そこに書かれていた名前は鬼殺しだったよ。
「ふ~それにしても、皆元気でよかったよ」
さて、次回は・・・人間の里です!
紅魔館でのイチャイチャはしばらくお預けです。楽しみにしていた方はすみません。
感想、アドバイス、批判、その他、楽しみに待ってます!