二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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どうも、ちょっと私情で戦っていました。
最近、鏡夜君のチート成分が足りないと思い、後半チート盛りだくさんとなってます。ちなみに、今作の魔力は色々な属性に変化できます。

では、第四十五話をどうぞ!


第四十五話 稗田のあっきゅん

Side鏡夜

 

寺子屋からでてから数分ほど歩くと、周りよりは豪華な一軒家が建っていた。

 

「ここかい、慧音?」

 

「ああ……阿求、いるかー阿求ー」

 

慧音は扉に近づくと、二、三度扉を叩いた。

 

「あら、慧音さん。どうなさいましたか?」

 

「ちょっと、阿求に会わせたい人物がいるので、連れてきた」

 

「人物?」

 

慧音が扉を叩いていると、一人の女性が現れた。彼女が阿求という人物なのかと思ったが、どうやら違うらしいな。女性は慧音の言葉に、横にいた俺のことを見て、驚いた顔をした。

 

「あ、あなた様は……時成……鏡夜さま……ですか?」

 

「そうですが、なぜ私の名前を?」

 

「阿求様の書いた伝承でわかりました」

 

「伝承?」

 

女性は伝承といったが、あの伝承のどこに俺が時成鏡夜だとわかる要素があっただろうか。だって、あんな体長五mとか書かれてるんだぞ? まあ、それも稗田の書いた伝承を見ればわかるか。

 

「まあ、いいか」

 

「それで、阿求は今平気か?」

 

「はい。ではご案内しますね」

 

女性のあとに続いて、俺と慧音は中に入っていった。中に入ると、紅魔館程ではないが、なかなかの大きさだった。

 

そのまま廊下を歩いていると、女性がふすまの前で止まった。

 

「阿求様、お客様です」

 

「そうですか、入ってください」

 

ふすまの向こうからの声に女性はそっと麩を開いた。ふすまを開いてくれた女性にありがとうと言いつつ中に入ると、一人の可愛らしい少女が筆を持って机に向かっていた。

 

ちなみに、少女の格好は、黄色の着物に、緑っぽい色の長着に花柄で赤いスカートを着ていた。

 

「すみません、ちょっと手が離せないので、少し待ってください」

 

少女はそう言うと、黙々と机に向かって筆を振るう。そして、五分ほど待っていると、筆を置いてこちらを向いる。

 

「ふ~ようやく終わりました。さて、今日はなんのごよう……じ?」

 

少女は振り返り俺の顔を見ると、徐々にその顔を青くしていった。

 

「今日は、鏡夜が阿求に会いたいと言ってたのでな、連れてきた」

 

「あ、ああ、そうでしたか~」

 

「やあ稗田。久しぶり」

 

ニコニコの笑顔で言うが、阿求ちゃんは一切俺と目を合わせようとしない。

 

「ん~どうしたのかな~稗田?」

 

「え、え~っと、初めて合いますよね」

 

阿求ちゃんは答えるが、それでも俺と目を合わせようとしない。

 

「うん、そうだね。君と会うのは初めてだね……けど、知ってるだろ? 私のこと?」

 

「い、一体何のことやら~」

 

「とぼけんな。稗田家の秘密は知ってるっつうの」

 

稗田家の秘密だが、実は稗田家は前世の記憶を持っているのだ。いや、正確に言えば前世の前世、その更に前世と、俺と会ったときより前、つまり千年以上も前の記憶を持っているのだ。

 

普通の人間では不可能だが、この稗田家は、どうやったのかは知らないが、閻魔と契約してこのようなことができるのだ。まあ、前世の記憶を引き継げる代わりに、地獄で百年以上働かなければならないようだが。

 

で、結局何を言いたいかというと、今代の稗田……つまり、阿求ちゃんは俺と会った時ん記憶も持っているはずなのだ。

 

「なあ阿求ちゃん。正直にいってみ? 私の事を覚えているでしょう?」

 

「え、あ、う……覚えて……ます」

 

笑顔で言う俺に、若干頬を引きつらせながら、答えてくれた。う~んなんでそんな怯えてるんでしょうかね~

 

「うん。覚えてるんならいいんだ……さて、じゃあなんで私がここに来たかもわかるかな?」

 

「えっと、その、伝承のことですか?」

 

「そうそう、じゃあ、私が次にすることは?」

 

「……怒る?」

 

「うん……」

 

うんと言った瞬間、阿求ちゃんは震えながら怯えたが。俺の言葉はまだ終わってないんだいよね。

 

「怒ってない」

 

「へ?」

 

「いやね、もし阿求ちゃんが男だったら怒ってやろうと思ったけど、女の子だしね。それに、別にこの伝承を書いたのは阿求ちゃんの先祖なわけだから、阿求ちゃんを怒っても無駄だしね」

 

本当は怒ろうと思ったんだけどね、流石にこんな小動物みたいに怯えてるおんなのこは怒れないよ。それに、どうやら伝承のことも反省はしてるようだし。

 

「でもまあ、伝承はちょっと変えさしてもらうよ」

 

「……はい、構いません」

 

「じゃあ、伝承の原本を貸してもらえるかな?」

 

「少し待ってください」

 

阿求ちゃんはそう言うと、後ろに会った戸棚を漁り始めた。

 

「えっと……あった、これです」

 

「これ?」

 

「はい」

 

トンと目の前に置かれたのは、つい最近出来たような真新しい本だった。試しに一ページ捲ってみると、目次なのか、様々妖怪や人物の名前が書いてあった。

 

「阿求ちゃん、この本妙に真新しいのは何故?」

 

「それは、代々この本はその代の稗田によって書き直されているからです」

 

「成程ね」

 

そう言って、今度は目次のところから俺の名前を探していく。

 

「え~と……お、あった」

 

目次は都合よくあかさたな順で並んでいたので割と早く見つけられた。目次ので見つけたページを開くと、そこには普通の人間が墨で描かれていた。

 

「あれ? 普通だこと……」

 

普通の人間の絵が描かれていた下の部分を見ると、その人物についての説明みたいなものが載っていた。

 

「え~と、なになに……」

 

『時成鏡夜

 体長五m、体重五百キロ、その姿はあまりにも醜悪で、大妖怪すらも恐れさせる人物。その声を聞けば一瞬で気絶し、鬼と素手で殴り合え、天狗のスピードを余裕で超える。この説明を聞いていれば出会いたくはない人物であろう。しかし、その姿や力は確かに凶悪ではあるが、その心は優しいものである。人や妖怪、その他の動物などが困っていれば、見返りも求めず無言で助けてくれる。もし、出会ったのなら、それは幸運だと思おう。彼は敵対したのなら凶悪だが、敵対しないのならとても優しいのだから』

 

……稗田の奴、なんで最初の方を巫山戯たんだよ。後ろの方はまともなのに、前半のせいで台無しじゃないか。まあ、いいか。

 

俺は一通り説明を読み終わると、そっと本を閉じて、阿求ちゃんの方へと渡した。

 

「なあ阿求ちゃん。後半の部分はいいから、前半の体長らへんのところだけ直してちょうだい。その他は変えなくていいから」

 

「それだけでいいのですか?」

 

「別にいい……さて、目的は果たしてくれるだろうから、今日はこのへんで帰らせてもらおうか」

 

「そうですか……鏡夜さん、私から一言言わせてください」

 

「なに?」

 

妙に真剣な顔をした阿求ちゃんが姿勢を整えながら言ってくる。どうしたのかと思っていると、阿求ちゃんが急に頭を下げた。

 

「先代がこのような誤解を生むよう伝承を書いてしまい、申し訳ありませんでした」

 

「……阿求ちゃん、顔を上げて」

 

頭を下げた阿求ちゃんはゆっくりと頭を上げた。頭を上げた阿求ちゃんの顔はどこか申し訳なさそうな表情をしている。

 

そんな阿求ちゃんに、俺は立ち上がって阿求ちゃんに近寄った。近寄った瞬間、若干ビクッとしたが、そんなのは気にせず阿求ちゃんに近寄り、屈んでそっと頭を撫でた。

 

「阿求ちゃん。別に君が悪いわけではないんだ・・・いや、完全に悪くはないと言いきれはしないけどさ。でもね、それでもそんな申し訳なさそうな顔をしないで」

 

「ですが……」

 

「それに、この伝承の後半、悪いことは書かれてないからね。最初の方は多少の悪ふざけはあるようだけど、それはそれで誤解生むけど面白いしね・・・まあ、直してはもらうけどさ。それに・・・」

 

そこで一息ついて、俺は阿求ちゃんの頭を撫でつつ、笑顔を作った。

 

「女の子は、笑顔の方が可愛いからね」

 

「へ?」

 

「プッ」

 

阿求ちゃんは驚いた顔のままで呆然としてる。後ろで口を抑えながら吹き出してる慧音がいるが、それは放っておこう。

 

「フフ、そういうことだから。笑顔になってよね、阿求ちゃん」

 

「……はい!」

 

先ほどまで呆然としていた阿求ちゃんは、口元い小さな笑を浮かべてから、満面の笑みで答えてくれた。

 

「やっぱり、女の子には笑顔が一番似合うね……さて、もうこんな時間だし、今日は帰るね」

 

「もう帰ってしまうのですか?」

 

「時間も遅いしね、それにうちの家族も待ってるだろうから」

 

「そうですか」

 

なんかすっごい寂しそうな顔で言ってくる阿求ちゃんに、苦笑いしつつ俺はその場をたった。

 

「まあ、また会えるさ」

 

そして、振り返りながら未だに口元を抑えている慧音の元に歩いた。

 

「いつまで笑ってんの」

 

「いや、すまない……プッ」

 

「は~」

 

口元を抑えて笑っている慧音を立ち上がらせて、俺はふすまを開けた。

 

「それじゃあ、またね」

 

「はい、また今度会いましょう」

 

「そうだね、また今度。じゃあね、あっきゅん」

 

「あっきゅん!?」

 

「プッ」

 

「フフ」

 

驚いているあっきゅんに笑顔で手を振りながら俺と慧音は部屋をあとにした。

 

「おや、もうお帰りですか?」

 

廊下を歩いていると、入口で出迎えてくれた女性が入口の前に立っていた。

 

「ええ、もう遅いですしね」

 

「そうですか」

 

女性はそう言うと、入口から避けてくれた。

 

「……慧音、ちょっと先に外に出て待っててくれないかな?」

 

「別にいいが、どうした?」

 

「ちょっとね」

 

「? まあいいか、先に外で待ってるぞ」

 

慧音がいい愚痴から出ていくのを確認にしてから、俺は女性の方を向いた。

 

「どうしましたか?」

 

「全く、長年会ってなかったせいか」

 

「なんのこと……」

 

「とぼけんなよ……柑奈」

 

「……フフ」

 

女性は笑顔を浮かべたまま俯くと、少しだけいつも俺が笑うように笑った。そして、彼女……いや、柑奈の背中から二枚の黒い羽が生えた。

 

覚えている人は覚えているだろうが、彼女は柑奈。昔文の裸を見たときに、葛木と一緒に俺を天魔のもとに連行した、天狗の一人だ。

 

「よく思い出しましたね、鏡夜」

 

「ああ、さっきまではわからなかったけどな。ちょっと意識してみたら、妖力を持っている事に気づいてな」

 

「……上手く隠したつもりなんですけどね」

 

「上手かったさ、上級妖怪でも意識しないと気づかないくらいにな」

 

「そうでしたか」

 

「それよりも柑奈、どうしてここにいるんだ?」

 

「鏡夜、それを聞いちゃうの?」

 

「ん? どうした?」

 

柑奈はやれやれといった感じで俺のことを見ると、その天狗特有のスピードで即座に俺の前へと移動した。

 

一瞬攻撃かと思い避けようとしたが、その必要がないと理解したため避けずにいると、柑奈は俺の唇にそっと人差指を置いて微笑んだ。

 

「乙女に秘密はつきもんだよ?」

 

「……ク、クク、成程。そう言われたら、事情を聞けないな」

 

「でしょ?」

 

「ああ、それならもう用はないな」

 

「あら、帰っちゃうの?」

 

「慧音も外で待ってからな。それに、俺の家族も待ってるんだよ」

 

「へ~じゃあ、仕方ないね。またね、鏡夜」

 

「おう、またな柑奈」

 

俺と柑奈はお互いに軽く手を振って、俺は外へと向かった。

 

 

 

「慧音、お待たせ」

 

「ん? 用事は終わったのか?」

 

「ああ、無事ね」

 

「そうか……で、これからどうするんだ?」

 

「とりあえず、慧音を寺子屋まで送るよ。もう遅いしね」

 

遅いと言っても、まだ日が傾いてから一時間も経ってはいないが。

 

「そんな、別に私は大丈夫だぞ」

 

「いやいや、これは男の意地なの」

 

「プッ」

 

またも、何故かはわからないが慧音は手で口を抑えながら、肩を震わせて笑い出した。

 

「何故笑う」

 

「プッ……いや、格好良いな鏡夜は」

 

「それは、褒め言葉として受け取っていいのかな?」

 

「ああ、そう受け取ってくれ」

 

「そうかい、ありがとう……じゃあ、行こっか」

 

「道中お願いします」

 

「わかりましたよ。お嬢さん」

 

「プッ、私がお嬢さんか……」

 

 

 

たわいもない話しをしながら俺と慧音が歩くこと数分。寺子屋が見えてきたのはいいのだが、その寺子屋の前で二人の男女が必死にドアを叩いて叫んでいた。

 

「慧音先生! 慧音先生!」

 

「ん? 慧音、あの人たちは?」

 

「……バクの両親だな。一体どうしたのだ?」

 

「尋常じゃないくらい慌ててるね・・・慧音、少し急ごっか」

 

「そうだな」

 

軽く駆け足で寺子屋まで近づくと、二人の夫婦はこちらに気づいたのか、必死な形相で夫婦も駆け寄ってきた。

 

「どうしました?」

 

「慧音先生、家のバクが、バクが」

 

「落ち着いてください。バクがどうしたのですか?」

 

「バクの奴、この時間になっても家に帰ってこないのです!」

 

「どこかに友達の家に遊びに行ってるんではいないですか?」

 

「いえ、周りの人に聞いてみたら、バクが里の外に出て行ったという話しが・・・」

 

「なんですって!?」

 

「それは……マズイな」

 

日没、つまり夜は妖怪が活発に活動する時間だ。その時間に妖怪は里を襲わないように約束されている。だが、もしその時間に里の外に出ている者がいたら? 答えは簡単だ。襲われて食われるか、殺されるだけだ。

 

「わかりました。すぐに探します……鏡夜、手伝ってくれるか?」

 

「もちろん、俺を誰だと思ってる? 心優しい時成鏡夜だぜ」

 

「そうだったな」

 

慧音は苦笑いを浮かべると、すぐに走り出そうとするが、俺は慧音の腕を掴んで止める。

 

「鏡夜、どうした?」

 

「待った慧音、そこの夫婦さん。バク君がどこに行ったかの目星などはありませんか?」

 

「すみません」

 

旦那さんの方が頭を下げながら言ってくる。目星は無しか……仕方ない。ちょっとだけ本気を出すか。

 

「そうですか」

 

「鏡夜、急がないと」

 

「慧音、空に飛べるか?」

 

「急にどうし……」

 

「いいから」

 

「飛べるぞ」

 

「よし、なら飛ぶぞ!」

 

慧音の言葉を聞いた瞬間、俺は霊力で白い翼を出して羽ばたかせる。その時に夫婦がポカンとしていたが、別に大丈夫だろう。

 

俺が空へと飛ぶと、慧音もそのあとを追うように飛んできた。

 

「鏡夜、どうして空に?」

 

「作戦があるんだ、ちょっと待っててくれ」

 

そう言って、目を瞑り俺は一割だけリミッターを外す。それだけで、霊力や妖力が大妖怪なみに放出されるが気にせず、即座に目を開ける。

 

「……見えた」

 

「え?」

 

目を開けると、幻想郷のすべてが見えた。これは、視力の限界を無くしたのと、暗闇で見える限界をなくしたため出来るんだ。

 

「五時の方向……マズイな、妖怪に追われてる」

 

「なに!?」

 

バク君を見つけたのはいいが、三匹の……上級妖怪に襲われていた。

 

「慧音、捕まって!」

 

「え? キャッ!」

 

俺は慧音をお姫様抱っこで抱えると、すぐさま翼を羽ばたかせてバク君の下へと向かった。天狗以上の速さで飛んでいるため、風圧で慧音に負担がかかるが、そこは曲げる能力で風圧を曲げて慧音に負担を掛けないようにする。

 

「せい!」

 

バク君にたどり着く前に、俺は妖怪とバク君の間に、妖力で作った剣を三本飛ばす。リミッターを解除したせいか、一本一本の大きさが五m以上の剣になってしまった。

 

「げひ!? 何だこりゃ!?」

 

「な、なんだこれ!?」

 

「慧音、行くよ!」

 

「うわわっと!」

 

上手くバク君と妖怪の間に剣が刺さり分断できた。そして、妖怪とバク君がその剣に夢中になってる隙に、俺は慧音をバク君の前に置いて、妖怪たちの前に立った。

 

「よっと、おいてめえら、十秒以内にこの場から去れ」

 

大妖怪並に妖力を出しながら言うが、妖怪達は俺と自分の力の差がわからないのか笑っていた。

 

「はあ~? 何言ってんだよ! てめえごときに命令される筋合いはねえな!」

 

「10、9、8……」

 

「それにな! てめえに邪魔されたせいでガキを逃がしたんだ。その落とし前付けさせてもらうぜ!」

 

「4、3……」

 

「てめえ、聞いてんのか!」

 

「……0……時間切れだ」

 

「何言ってん……」

 

「スペルカード発動……激符『五竜王の裁き』」

 

「は……?」

 

スペルカードを発動した瞬間、俺の周りに魔力で作られた、二十m程の大きさの五種類の龍が現れた。

 

一匹目は炎で作られ、岩をも溶かす炎を纏った龍。二匹目は風で作られ、風のせいで光が滅茶苦茶に屈折しているため透明になっている龍。三匹目は雷で作られ、青白い雷を放っている龍。四匹目は毒で作られ、何もかもを腐らせるドロドロとしたドス黒い液体を垂らしている龍。そして、最後の五匹目は鋼線で作られ、触れたものを全て切り裂こうとする龍。

 

この五匹が俺の背後に目を瞑って佇んでいる。

 

「へ、あ、な、何なんだよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

妖怪達はその龍を見て腰を抜かしている。今更怯えるなら、最初から戦わなければいいのに。まあ、容赦はしないが。

 

「うるさい」

 

冷徹な声でそう言うと、俺の後ろに佇んでいた五種類の龍は目を開き―――

 

『―――――――――――――!!!!!!!!!』

 

声とは認識できない声で、同時に吠えた。

 

「ひ、ひいいいいいいいい!!!!!!」

 

妖怪の一匹が悲鳴を上げて逃げ出そうとするが、残念ながらそれは悪手だ。

 

声を出して逃げたせいで、五匹の龍はその妖怪をロックオンし、次々と襲いかかった。

 

「ッ!!!!!!!???????」

 

雷の龍がまず光の速さで妖怪に襲いかかり、痺れさせる……いやそんな生易しくはなく、あまりにも雷が高温過ぎて、妖怪を焼き尽くして炭にしていく。もうとっくに死んでいるはずなのに、さらに龍達は次々と襲いかかり、妖怪は声を上げる間もなく死んでいった。

 

他の妖怪二匹がその光景にブルブルと震えながら見ているが、俺は構わず二枚目のスペルカードを取り出した。

 

「スペルカード発動……激符『光灯す我が道』」

 

俺は腰を落としてスペルカードを握りつぶすと、一本の霊力で作った光の槍が俺の手に握られる。握った槍を後ろに引き、大きく腕を後ろに下げる。そして、妖怪の後ろと宇宙空間に向かってスキマを開く。

 

「穿て」

 

その一言と共に、握っていた槍を大きく引き、妖怪に向かって投げた。すると―――ヒュンという音とが後から聞こえながら、スキマを通して空に巨大な光の道ができた。

 

何が起きたかというと、俺は唯妖怪に槍を投げただけである。ただし、光の速度で。

 

威力的には魔理沙ちゃんのマスタースパークの……何倍だろうね。多分、百の何百乗とかじゃないかな?

 

「さて、あと一人」

 

「あ、ああああああああ!!!!!!!!!!」

 

恐怖で訳がわからなくなったのか、最後に残った妖怪は俺に向かって妖力弾を撃ちながら突っ込んできた。

 

妖怪が突っ込んできたせいで、五匹の龍が動こうとするが、俺は手を上げて五匹の龍の動きを止める。

 

「大丈夫だ。スペルカード発動……激符『赤と朱と紅』」

 

スペルカードを持ちながら発動を終えた俺は、スペルカードを妖怪に向かって投げる。

 

「あ?」

 

その行動に戸惑ったのか妖怪はその場で止まってしまい、俺の投げたスペルカードに当たる。すると―――

 

「咲き誇れ」

 

「ッ!!!!!??????」

 

スペルカードは一瞬光ったあと、スペルカードは赤い、血で作られたような槍を無数に出し、妖怪を貫く。だが、その槍は貫いたあと、妖怪の血を吸い始める。全ての血を吸い尽くした槍は先端に蕾を作ると、皆の目を釘付けにできるような、真っ赤なバラを作り出した。

 

「……終わりか」

 

ふ~とその場で一息ついた俺は、先ほど妖怪とバク君を仕切っていた妖力の槍を消す。

 

妖力の槍を消した向こうには、涙目のバク君と、驚いた顔のままで固まっている慧音がいた。

 

「大丈夫か、慧音」

 

「……」

 

「慧音?」

 

「……あ、ああ、大丈夫だ」

 

大丈夫だと慧音は言うが、その表情はどことなく固い。

 

「どうしたの、慧音?」

 

「その、だな……鏡夜、その妖力やらをしまってくれれば、ありがたいのだが・・・」

 

「あ、ごめん」

 

成程ね。流石にこんな馬鹿みたいに多い妖力やらを浴びてたら辛いよね。

 

俺はすぐさま先ほど外したリミッターを掛け直す。うん、これで大丈夫だろう。

 

「これで、大丈夫?」

 

「ああ、すまないな」

 

「別に謝る必要はないよ」

 

苦笑いを浮かべつつ、慧音に答えた俺は、今度は涙目になって座り込んでいるバク君に近づいた。

 

「大丈夫か、バク君」

 

「……こ……か……」

 

「ん?」

 

「怖かったよ!」

 

「おっとっと」

 

バク君は今までの恐怖が爆発したのか、俺に抱きついて泣き出してしまった。

 

「全く、そんなに怖いんだったらこれからはしちゃダメだよ」

 

「はい」

 

素直に泣きながら頷いたバク君の背中を撫でながら俺は慧音に話しかけた。

 

「慧音、これからどうする?」

 

「とりあえず、他の妖怪が来ないうちに人里に帰ろう」

 

「わかった……バク君、立てるかい?」

 

「う、うん……あれ?」

 

バク君は俺から降りて立とうとするが、腰が抜けてしまっているのか、上手く立ち上がれずにいた。

 

「あらら、腰が抜けちゃったか……ほれ」

 

歩けないなら運ぶしかないため、俺はバク君の前で背中向きに屈んだ。ようするに、おんぶの体勢になった。

 

バク君は慧音に支えながら俺の背中に乗った。

 

「よいしょっと、じゃあ、行きますか」

 

「そうだな」

 

 

 

そのまま、歩くこと数分。バク君は安心したのか、俺の背中で眠ってしまった。

 

「あらら、寝ちゃったか」

 

「そのようだな……なあ、鏡夜」

 

「ん? どうしたの、慧音?」

 

慧音は真剣な表情で俺のことを見ながら話しかけてきた。

 

「さっきのあの妖力や魔力、霊力は全て鏡夜のものなのか?」

 

「そうだよ」

 

「ちなみに、あれは全力なのか?」

 

「うんにゃ、あれで一割半ぐらい」

 

「一割半!?」

 

「シッ! 静かに慧音。バク君が起きちゃうよ」

 

「あ、すまない」

 

「ふ~あ! ほら人里が見えてきたよ」

 

そんな感じで歩いていると、人里の入口が見えてきた。

 

里の中へ入り、寺子屋に向かうと、バク君のご両親が立っていた。

 

「バク君のご両親」

 

ご両親に声をかけると、こちらに気づいて駆け寄ってきた。

 

「鏡夜さん、家の子は……」

 

「バク君なら大丈夫ですよ。今は安心して寝てますが、大丈夫でしょう」

 

「そうですか。慧音先生、鏡夜さん。貴方たちにはなんとお詫びすれば」

 

ご両親はそう言うと、頭を深く下げてお辞儀をしてきた。

 

「いいですよ。お礼なんていりません」

 

「ですが……」

 

「私が助けたいと思ったから助けたのですよ。なので、そんなお礼とか考えなくていいですよ」

 

俺はそう言って、ご両親におんぶしていたバク君を預けた。

 

「さて、今日はもう遅いですから、私は帰りますね」

 

「そうか……鏡夜、今日はありがとう」

 

「別にいいさ。何かあればまた、文に頼んで手紙頂戴」

 

「わかった」

 

「それじゃあ、慧音、じゃあね。それとバク君のご両親。また、いずれ」

 

「はい、鏡夜さん。今日はありがとうございました」

 

ご両親が頭を下げ、慧音が手を振ってくる中、俺はグッと足に力を入れて、紅魔館へと帰った。




次回、ちょっとこの話の後日談を前半し、その後ちょっとした小話をします。
そして次次回に妖々夢へと突入します。

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