二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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さてさて、遅くなりましたが、第五十話です! ここまで続くなんて、これも皆様のおかげです。ありがとうございます。

では、第五十話をどうぞ。


第五十話 八雲家

Side鏡夜(女)

 

「ふふ、人形で弾幕で放つなんて器用ね~」

 

「あら、ありがとう。貴方の弾幕は綺麗ね」

 

「ありがとう」

 

互に話し合っているが、私とアリスは、空中で弾幕を相手に向かって放ち合っている。アリスは人形を何体も使い弾幕を放ち、私は自分の魔力を使って虹色の弾幕を放つ。

 

しばらくの間互いに弾幕を放ち合っていると、中々当たらない私にイライラしてきたのか、アリスは懐からスペルカードを取り出した。

 

「スペルカード宣言」

 

「きなさい」

 

「蒼符『博愛のオルレアン人形』」

 

スペルカードが唱えられると、アリスは自分の周りに大量の人形を出した。人形はアリスの周りを飛びながら、たったの二十発程度の弾幕を放ってくる。

 

たったこれだけなのかと疑問に思っていると、その弾幕は途中で何かに反射したように別の方向を向く。だが、弾幕はただ向きを変えただけではなく、その弾幕の数が倍以上に増えていた。

 

一回、二回と反射した弾幕は、とうとうその数を数十倍にして、私の左右から迫ってきた。

 

「と、流石に辛いわね」

 

弾幕を掻い潜ると、更にその先には同じ弾幕が展開されていた。同じような弾幕が展開されていたが、私は無理やり弾幕を掻い潜り、アリスの前へと飛び出した。

 

「ッ!?」

 

「それ!」

 

アリスの前へと飛び出した私は、弾幕を放ちながらアリスの横を通り抜ける。流石に急に飛び出してきた私には対応できず、アリスはその身に私の放った弾幕をモロに喰らってしまった。

 

「まずは、一つよ」

 

「っつう! 痛いわね」

 

「丁度いい気付になったんじゃない?」

 

「ならないわよ」

 

「そう・・・っと、危なわね~」

 

「まさか、躱すなんてね」

 

アリスと話していると、隙だとばかりに地面に積もった雪の中から、上海が弾幕を放ってきた。アリスが指を動かしたのに気づいて、なんとか躱せたけど、これアリスの人形の特性知ってなかったら確実に喰らってるわよね。

 

「これぐらいは、淑女のたしなみよ」

 

「そんな、淑女はいないわよ」

 

上海の弾幕を躱したことを切っ掛けに、私とアリスはお互いに弾幕を放ちながら、そんな会話をしていた。それにしても、私も結構な量の弾幕を放ってるんだけど、よくアリスはあんなに喋る余裕があるよね。まあ、私もだけど。

 

「全く、こんなに密度の濃い弾幕を放ってくるなんて、躱す方のみにもなってよ」

 

「いやいや、アリスの弾幕も中々濃いよ」

 

 

正面からのレーザー、上下左右、そして後方からの魔力による弾幕。殆ど逃げ道を作らないように、計算されて放たれている。私はレーザーを躱し、飛んでくる魔力による弾幕は、私の弾幕で相殺させて躱している。

 

一方、アリスに向かって放っている私の弾幕は、上下左右から囲むように弾幕を放っている。これ、アリスの方がえげつないよね。

 

「そろそろ、いきますか」

 

「あら、スペルカード?」

 

「そうよ」

 

私は懐に手を突っ込み、桜色のスペルカードを取り出す。

 

「舞符『舞いちる桜吹雪』」

 

スペルカード宣言が終わると、私の手には桜吹雪が描かれた、扇子が握られた。

 

「いくわよ!」

 

ゆったりとした動きで、扇子を開いてアリスに向かって扇ぐと、扇子から大量の桜の花びらが出てきた。桜の花びらは、アリスに向かうと、アリスの周りをグルグルと回りだした。

 

「これは・・・まずいわね・・・」

 

「さあ、舞いなさい」

 

桜の花びらはグルグルとアリスの周りを飛びながら、桜色の弾幕を放ち始めた。

 

「く、えげつないわね!」

 

「ふふ、喋ってる余裕なんてあるのかしら?」

 

桜色の弾幕は、ドンドン密度を濃くしていき、徐々にアリスを追い詰めていく。アリスは弾幕を紙一重で躱していくが、とうとう逃げ道がなくなった。

 

「く! 当たる・・・・・・?」

 

逃げ道がなくなり、最後の一発が放たれた。その一発がアリスに当たる瞬間、桜色の弾幕が消えた。

 

「あらら、残念」

 

「終わっ・・・た・・・?」

 

「まだよ」

 

「ッ!?」

 

桜の弾幕は放ち終わったが、今度は先ほどからアリスの周りをグルグルと飛び回っていた桜の花びらが、全て上空へと集まった。

 

「何が・・・」

 

アリスが上空へと集まった桜の花びらに向かって視線を向けている間に、私は指をパチンと鳴らす。すると―――

 

「さあ、第二幕の始まりよ」

 

桜の花びらは全て桜色の弾幕に変わり、アリスに向かって降り注いだ。アリスは驚きながらも、私の弾幕を躱していくが、徐々に弾幕に掠り始めてきた。

 

そして、アリスはとうとう空から降り注いだ桜色の弾幕に当たってしまった。

 

「はい、二つ目」

 

「く! 流石、幻想郷最強ね」

 

「あら、私そんな風に思われていたの?」

 

「新聞に書かれていたわよ」

 

「文か・・・」

 

肩を落として、やれやれといった感じでは~と息を吐いてアリスを見ると、その手にはスペルカードが握られていた。

 

「スペルカード宣言、雅符『春の京人形』」

 

アリスはスペルカードを唱え終えると、周りに人形を数体出した。その人形たちは、アリスを中心に回りながら、私に向かって滅茶苦茶に弾幕を放ってきた。

 

先ほどの計算された弾幕とは違い、滅茶苦茶に放ってくるので、徐々に逃げ道がなくなってくる。まだ、あっちの方が計算されていたから、逃げ道があるので楽だった。

 

そして、とうとう私は一発の弾幕を喰らってしまった。

 

「よし、一つ取った」

 

「やるわね~」

 

「流石の私も、やられっぱなしってわけにはいかないのよ!」

 

軽くアリスに話しかけるが、その途中でアリスは弾幕を放ってきた。先ほどの滅茶苦茶に弾幕を放ってきたのが当たったせいか、アリスは滅茶苦茶に弾幕を放ってくる。

 

「ふ~流石にキツいわね・・・じゃあ、私もいくわよ」

 

アリスの弾幕を避けつつ、私は持っていた扇子を右手に持ちながら、左手で懐から、紫色のスペルカードを取り出す。

 

「スペルカード宣言、惑符『嘘つきな私』」

 

スペルカードを唱え終えた私は、右手に握っていた扇子を振って桜の花びらをこっそりアリスの後ろと私の前に出す。

 

「さあ、踊りましょう」

 

桜の花びらは、私を囲む。その時に私は曲げる能力で、光を曲げて自分の姿を見えないようにする。そして、先ほどアリスの後ろの放った桜の花びらの中に、魔力で作った分身を入れておく。

 

そうして、仕込みを終えた私は、回りを囲んでいた桜の花びらを消し去る。

 

「え!? 鏡夜はどこに・・・」

 

「ここよ」

 

「ッ!? そこ!」

 

アリスの後ろから声をかけると、アリスは即座に後ろに向かって弾幕を放ってくる。ちなみに、分身である私に弾幕が当たっても、被弾になるため、アリスの弾幕を躱す。

 

アリスの弾幕を躱した私は、先ほどと同じように桜の花びらを、アリスの両隣に展開してその中に分身の姿を隠し、自分の姿を曲げる能力で光を曲げて姿を見えなくして桜の花びらを消す。

 

「また・・・」

 

「「こっちよ」」

 

「二人!?」

 

アリスが驚いているなか、私は左右からアリスに向かって弾幕を放つ。咄嗟の判断で、アリスは下降して弾幕を躱し、人形を使って、私達二人に弾幕を放ってくる。

 

私はその弾幕を避け、オリジナルのところに桜の花びらを展開して、再び先ほどと同じことをする。

 

「また消えた・・・けど!」

 

「え!?」

 

今度はオリジナルの私を桜の花びらを纏わせて姿を現そうとしたら、姿を現す前にアリスは私に向かって弾幕を放ってきた。

 

「な、なんでわかったの!?」

 

あえて大げさに、自分の弾幕が見破られて、動揺しているようにアリスに話しかける。

 

「貴方のこの弾幕は、姿を消し、現れるときには、桜の花びらを纏って現れる。つまり、桜の花びらが集結している所に弾幕を放てば、貴方に当たるのよ。気づかなかったの?」

 

「く、まさか見破られるなんて・・・」

 

アリスのどうだ! と言わんばかりのドヤ顔に、焦った表情を作り、私はすぐに桜の花びらを纏って自分の姿を消す。自分の姿を消した私は、アリスの後ろに桜の花びらを纏いながら出ようとしたが、その前にアリスの弾幕が飛んできた。

 

「くっ!」

 

「無駄よ! 貴方の弾幕の謎は解けているからね!」

 

再び姿を消し、今度は再びアリスの背後に出るが、またもや出現する前に、アリスは弾幕を放ってくる。

 

この時、アリスは私の術中にはまっていた。よく考えて欲しい。私のスペルカードの名前を。

 

再び姿を消した私は、今度はアリスの両側に出るが、弾幕を放たれる。

 

「どうしたの? この程度?」

 

「くっ! ・・・ふふ」

 

焦った表情を浮かべ、私はアリスの背後に桜の花びらを出す。

 

「これで、終わらせてあげる・・・って、あれ!?」

 

アリスは、背後に桜の花びらが出たことで、振り向きながら弾幕を放つ。だが、そこには・・・私はいない。

 

「残念でした」

 

「え!? キャッ!?」

 

「はい、三つ目。終わり」

 

私は桜の花びらとは反対。つまり、振り向いたアリスの後ろから、弾幕を放ち、アリスに被弾させた。

 

「一体、どういうこと?」

 

困惑した表情で、アリスは問いかけてきた。多分、自分の後ろに、なぜ私がいるのか不思議に思ったのだろう。

 

「ふふ、簡単な話し。アリス、貴方は私の出現場所を何で見つけてた?」

 

「それは、桜の花びらで・・・まさか!?」

 

「そう、そのまさか。あれは嘘。本当は、桜の花びらなんか出さなくても、私はどこからでも出現できたの」

 

「じゃあ、なんでわざわざ桜の花びらなんて出したの?」

 

「それも簡単な話しよ。それを目印にすれば、次はあそこに出るって思い込むじゃない」

 

そこまで説明したところで、アリスはガクッと肩を下げた。どことなく、隣にいた上海も肩を落としている気がする。

 

「・・・この、嘘つき」

 

「そ、嘘つき。だから、惑符『嘘つきな私』なのよ」

 

アリスは私を見ると、は~っと息を吐いて、両手を上げた。

 

「貴方には完敗よ」

 

「ふふ、じゃあ私が勝ったことだから、約束通り、桜の花びらはいただくわよ」

 

「ええ、いいわよ・・・でも、その前に、興味本位で聞いていいかしら?」

 

「何かな?」

 

「貴方、二枚しかスペルカードを使ってないでしょう? 三つ目のスペルカードはどんな感じなのかなっと思って。見せてくれない?」

 

「三つ目? 別にいいわよ。じゃあ、向こう側に立って頂戴」

 

「ええ、わかったわ」

 

アリスとの一定の距離を置いたのを確認してから、私は懐から、真っ赤な色のスペルカードを取り出す。

 

「スペルカード宣言、棘符『美しいバラにはご用心』」

 

スペルカードを唱え終えて、私はスペルカードを扇子の上に乗っける。そして、軽く扇子を振ると、スペルカードは真っ赤なバラの花びらに変化し、私の周りを飛び続ける。

 

「わ~綺麗」

 

「ふふ、ありがとう」

 

私の周りを回り続けているバラの花びらに向かって、扇子を前に突き出す。扇子を前に突き出した瞬間、バラの花びらは、一本の、真紅の槍の形状になって、アリスの方に飛んだ。

 

「うわっと・・・あれ!? この程度?」

 

「アリス、油断はダメよ」

 

アリスは軽く飛んでバラの槍を躱す。バラの槍は、アリスの飛んだ丁度真下に停止している。

 

「言ったでしょう? 美しいバラには刺があるって。さあ、刺されないようにね」

 

「え?」

 

呆然としているアリスを見ながら、私はパチンと指を鳴らす。すると―――

 

「え、ちょちょ、なにこれ!?」

 

真紅の槍は、持ち手の部分から、いくつもの槍が、アリスに向かって飛び出す。アリスはそれに驚きながら躱すが、槍はアリスのいたところで止まると、再び槍の持ち手から真紅の槍を出現させる。

 

アリスは器用に躱すが、その槍は増える限界を知らないかのように、ドンドン槍を出してアリスを追い詰めていく。

 

「ちょっと、これひどくない?」

 

「まあ、頑張って」

 

そして、とうとうアリスの周りは、真紅の槍で囲まれてしまった。何とか逃げ出そうと、アリスは槍に向かって弾幕を放つが、真紅の槍はその弾幕を反射した。

 

「跳ね返ってくるの!?」

 

「そ、そして、その弾幕はさらに跳ね返るから」

 

アリスは自身の弾幕を躱すが、再び弾幕が跳ね返り、自分に返ってくる。自身の弾幕を躱すが、今度は真紅の槍がアリスに向かって飛び出した。

 

「こ、こんなの無理!」

 

最終的に逃げ場のなくなったアリスは、自身の弾幕と、私の放った真紅の槍の弾幕に当たってしまった。

 

「うう、綺麗だったけど。流石にあれは避けきれない」

 

「あれは、さっさと私に弾幕を当てれば止まるわよ。 でも、今の場合は無理だけど」

 

「そうね・・・」

 

「さ、咲夜ちゃんと魔理沙が待ってるから、さっさと戻ろうか」

 

アリスは、弾幕に当たったのが痛かったのか、半分涙目で、私を見ながら、私とゆっくりと地面に向かって降りていった。

 

「お姉様、お疲れ様です」

 

「鏡夜、あのスペカは流石にえぐいんだぜ」

 

地上に戻ると、咲夜ちゃんはいつもの調子で、魔理沙ちゃんはどこかゲンナリとした表情をしていた。

 

「ありがとう。 ・・・さあ、アリス。例のものを頂戴」

 

「わかってるわ。上海」

 

アリスは器用に上海に、例の春の結晶が詰まった箱を上海に持ってこさせた。

 

「はいこれ」

 

「はい、確かに受けとりましました。 ・・・咲夜ちゃん、預かってて」

 

「わかりました」

 

アリスから受け取った箱を、咲夜ちゃんに渡す。

 

「さてっと、アリス。私と咲夜ちゃんはこの異変解決に向かうわね」

 

「あら、もう行っちゃうの?」

 

「流石にこれ以上ここに居ると、今日中に異変可決できなさそうだからね」

 

「そう・・・気を付けてね」

 

「ええ、行ってくるわよ」

 

「咲夜、鏡夜、気をつけるんだぜ!」

 

「ええ、気をくけて行ってくるわ」

 

「魔理沙も、あんまりアリスに迷惑かけちゃダメよ?」

 

咲夜ちゃんがからかうように言うと、魔理沙は沈んだ表情になった。

 

「咲夜、それは言わないでくれよ・・・」

 

「あらあら、失言だったかしら?」

 

「ふふ、それじゃあアリス、魔理沙ちゃん。またね」

 

「じゃあなー! 鏡夜! 咲夜!」

 

「また今度、ゆっくり来て頂戴」

 

アリスと魔理沙ちゃんに手を振りつつ、私と咲夜ちゃんは空へと飛んでいった。

 

 

 

Sideアリス

 

鏡夜と分かれてから、私と魔理沙は、家に戻って紅茶を飲んでいた。

 

「ふ~あ~あ、一日所有権、逃しちゃったな~」

 

「アリス。一体一日所有権で、鏡夜に何するつもりだったんだ?」

 

「何って、それは勿論、研究よ」

 

「研究?」

 

「そ、研究」

 

魔理沙は不思議な顔をしているが、鏡夜を研究したいというのは、本当のことだ。 ・・・いや、正確に言えば、鏡夜の魔法を研究したかったのだ。

 

鏡夜の魔法は、新聞で見た限り、今までに見たこともないような魔法だった。魔力で龍を作ると言うのは、相当な魔力を消費するし、複雑な術式も必要となる。

 

内心嘘でしょと思いながら、新聞を眺めていた。そして、今日本人に出会ったわけだが、鏡夜にはあの魔法を実行するだけの、魔力はなかった。

 

だが、魔力はなくても、何故か、鏡夜には強力な封印魔法が掛かっていた。私が見たこともない封印魔法。

 

そのことを知りたくて、鏡夜にあの条件を出したのだが、見事に負けてしまった。これで、鏡夜が私の一日所有権を条件で出してくれたなら、私の勝ちだったのに。

 

「は~早く来ないかしら、鏡夜」

 

「アリス・・・まさか、鏡夜に惚れたのか?」

 

「惚れた? う~ん、そうかもね~」

 

「え!?」

 

惚れたは惚れた。あの、鏡夜の魔法にだが。私が惚れたというと、魔理沙は普段以上に慌てだした。

 

「あ、アリス。本当か?」

 

「ええ、そうよ」

 

「クソ・・・ライバルが一人増えたか・・・だが、絶対に渡さないぞ。ロリ鏡夜だけは・・・」

 

「な~にブツブツ言ってるの?」

 

「なんでもないぜ」

 

いきなりブツブツ言い始めたと思ったら、今度はケロッとして私に返事を返してきた。若干不審に思ったが・・・別にいっか。

 

「あ~早く鏡夜に会いたいな~」

 

「そうだな~」

 

そんな感じで、魔理沙とウダウダしながら、夜まで過ごした。

 

 

 

Side鏡夜(女)

 

「ふあ~さてっと、じゃあ情報・・・は、あまり手に入れられなかってけど。そろそろ、この異変の、黒幕だと思うところに行きますか」

 

「そうですね。多少は不安がありますが、行きましょうか」

 

いつもの通り、霊力で翼を作り、黒幕のところと思われるところに向かって、咲夜ちゃんと一緒に飛び始めた。

 

しばらくの間飛んでいると、ちょうど雪が降っている雲を突き抜け、太陽の光が当たる所に出ると、咲夜ちゃんが話しかけてきた。

 

「そういえば、お姉様。いつもの、姿に戻らないんですか?」

 

「え、ああ忘れてたわ」

 

何故かこの姿になると、女言葉になってしまうのだが、まあ、それは置いといて。

 

私は咲夜ちゃんの言われた通り、いつもの姿に戻ろうと、飛びながら境界を弄って戻そうとしていると、急に私の目の前にスキマが開かれた。

 

「危な!?」

 

「え? キャア!」

 

咄嗟の判断で右に避けたが、私が邪魔でスキマが見えなかった咲夜ちゃんは、スキマの中へと入っていってしまった。

 

「咲夜ちゃん!」

 

スキマへと入って行った咲夜ちゃんの後を追ってスキマの中に入る。少しの間スキマの中を飛び、スキマを抜けると、人里のようなところに出た。

 

「ここは・・・?」

 

人里のようだが、人影や、人の気配は感じない。感じるとすれば、動物の気配と、四人の人妖の気配。

 

空に浮きつつ咲夜ちゃんを探していると、下のほうから四人の気配を感じた。すぐさまそちらの方に視線を向けると、三人の妖怪と咲夜ちゃんが相対していた。

 

「あれは・・・どうしてここに?」

 

翼を羽ばたかせて咲夜ちゃんのところへと向かう。咲夜ちゃんの方へと向かうと、一人はこちらを見ながら、ニッコリと笑い。一人は若干頬を赤らませ。一人は、興味津々といった表情でこちらを見ていた。

 

「咲夜ちゃん、大丈夫?」

 

「大丈夫です」

 

咲夜ちゃんの隣に降り立ち、三人の妖怪の方を向く。三人の方を向くと、私は自然と笑みがこぼれた。

 

「この前ぶりね」

 

「ええ、この前ぶりね」

 

一人の妖怪と会話を交わすと、隣にいた妖怪が綺麗に頭を下げた。

 

「お久しぶりです。鏡夜さん」

 

「久しぶりだね。十年ぶりぐらいかな? 元気にしてた?」

 

「はい、元気にしていました。鏡夜さんの方は?」

 

「ええ、元気にしていたよ」

 

私はその妖怪に微笑むと、もう一人の妖怪が、二人の服の裾を引っ張った。

 

「ねぇ、紫しゃま、藍しゃま。この人が時成鏡夜しゃまですか?」

 

「そうだよ、橙」

 

三人の妖怪とここまで意味もなく引張たが、私の目の前には、紫の傘を差した紫ちゃんと、昔会った時と変わらない姿の藍ちゃん。そして、見たこともない猫耳、尻尾の生えた少女がいた。

 

「鏡夜さん、あの女性を知っているのですか?」

 

警戒しながら隣にいた咲夜ちゃんが、藍ちゃんの方を見ながら聞いてくる。

 

「ええ、紫ちゃんの方は知ってるわよね。もう一人の女性の方は、八雲藍ちゃん。で、最後の子は、私も初めてみるわ」

 

「そうですか」

 

そんな風に咲夜ちゃんと会話していると、三人が近寄ってきた。一瞬、咲夜ちゃんが飛び出しそうになったが、手を出して、警戒を緩めるように目で伝える。

 

「咲夜、警戒を解きなさい。私達はまだ、何もするつもりはないから」

 

紫ちゃんがそう言うと、咲夜ちゃんは一応警戒心を解いた。

 

「さて、紫ちゃん。今日はなんのようでここに呼んだの?」

 

「要件は二つあるわ。一つ目はこの子の紹介」

 

紫ちゃんは自分の膝下にいる少女に視線を移す。すると、少女は勢いよく飛び出した。

 

「初めまして、時成鏡夜しゃま! 私はこの前藍しゃまの式になった、橙です! これからよろしくお願いします!」

 

「橙ちゃんね。初めまして、話しは聞いてると思うけど、私は時成鏡夜、よろしくね」

 

「では、私も一応。鏡夜さんと一緒に住んでいる、十六夜咲夜といいます」

 

「これはご丁寧に済まない。私は、紫様の式をしている。八雲藍だ。よろしく」

 

橙ちゃんの頭を撫でていると、咲夜ちゃんと藍ちゃんの自己紹介が終わったみたいだ。

 

そういえば、橙ちゃんの頭を撫でているわけだが、先ほどから、ジーッと私の顔を見てくるのだが。

 

「橙ちゃん。どうしたの?」

 

「いえ、鏡夜しゃまって、男ですよね?」

 

「ええ、そうよ・・・って、そういうことか」

 

忘れていたが、今の姿は女性の姿だった。

 

「ごめんごめん。ちょっと能力でこうなってるだけだから、本当は男だよ」

 

そう言って、元の姿に戻ろうと思ったが、紫ちゃんに止められてしまった。

 

「ちょっと待って頂戴。鏡夜」

 

「どうしたの?」

 

「戻らないでちょうだい」

 

「どうして?」

 

「もう一つの用件に関わるから」

 

「そうなの? で、その用件って?」

 

首をかしげつつ聞くと、紫ちゃんは悪い人の笑を浮かべた。

 

「用件は、私と戦ってもらうわ」

 

「・・・・・・」

 

「それも、この前渡した格闘専用のスペルカードの調子を見たいから、格闘専用のスペルカードを使っての格闘戦よ」

 

「・・・・・・成程」

 

私は紫ちゃんの言葉を聞いた瞬間、俯いてそう呟いた。別に負けを覚悟して諦めたとかではない。ただ純粋に楽しみになのだ。

 

「成程成程。ってことは、これまでの修行の成果を見れるってわけだね」

 

顔を上げながら言う。多分今の私の顔は笑ってるでしょうね。

 

「ええ、見せてあげるわ。だけど、私は藍と橙も参加させるけどいいかしら」

 

紫ちゃんは挑発したような表情で言ってくる。普通この場合、一体一だろと言うところなのだろうが、私は言わない。だって―――

 

「ええ、いいわよ。だって、言っては申し訳ないけど。本当に申し訳ないけど、紫ちゃんから見れば、突き詰めればその二人は式っていう道具なのだから。戦いに道具を用いるのは普通だしね」

 

「流石、鏡夜ね。わかってるじゃない」

 

戦いは素手だとか道具を使うなんて卑怯だとか言う人はいるだろう。だが、・・・それがどうした? 道具を使うのの何が卑怯なのだ? 戦い、闘争とは、例え武器を使おうと、勝てばいいというのが私の持論だ。

 

そもそも、拳や足なども、武器なのだから別にいいだろう。それが例え人であろうとも。人だって、突き詰めれば武器なのだから。

 

「鏡夜さん、ここは私も・・・」

 

「駄目だ」

 

「どうしてですか!」

 

「私はあの三人と戦いたいの。それに、咲夜ちゃんが入っても、始まった瞬間、スキマで外に出されるだけだよ。ね、紫ちゃん」

 

紫ちゃんの方を見ながら言うと、紫ちゃんは口もとを扇子で隠しながら、クツクツと笑い出した。

 

「本当に、なんでもお見通しなのね」

 

「ですが、最初に時を止めれば・・・」

 

「止めたところで、あの紫ちゃんは対策を打つはず。結果は変わらないわ」

 

「でも・・・」

 

中々引き下がらない咲夜ちゃんに、私はは~っと息を吐き、咲夜ちゃんの頭に手を乗っける。

 

「大丈夫。安心して待ってて」

 

「・・・・・・わかりました」

 

渋々といった感じで咲夜ちゃんは引き下がってくれた。私は咲夜ちゃんの頭を軽く撫でてから、紫ちゃん達の方を見た。

 

紫ちゃん達は準備が出来ているのか、橙ちゃんは軽く屈伸運動したり飛び跳ねたりしてる。藍ちゃんの方は、どこか緊張したような感じで、こちらに敵意を向けている。

 

「さあ、鏡夜。準備は出来たかしら?」

 

そして、紫ちゃんは扇子を口元に当て、笑っている。しかし、目は笑っておらず、敵意むき出しの状態だ。

 

私もそれに応えるように、軽く霊力を出して、三人に向かって殺気、とまではいかないが、敵意向ける。

 

「・・・流石、私の師匠」

 

「く! 流石に圧力が凄いですね」

 

「肌がピリピリします」

 

三者三様の意見を言ったところで、私は懐に手を突っ込んで例の近接戦闘用スペルカードを取り出す。

 

「さあ、始めましょうか!」

 

スペルカードを上に投げると、目の前の景色は一変し、不可思議な世界となっていた。

 




さてさて、今回、細かい疑問が多数発生するかもしれませんが、その時はコメント欄に書いてください。できるだけ解りやすくしてるつもりですが。

感想、アドバイス、批判、誤字、お待ちしております。
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