二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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遅くなってもうし訳ありません。なんとか無事、オリジナル小説も投稿できましたした。
さて、今回ですが、何故でしょうねえ、スランプなのか、あまりうまく表現できませんでした。なので、疑問の残る箇所や、なんで? ってなるところがあるかもしれませんが、その時は感想で質問してください。

では、第七十四話をどうぞ。



第七十四話 昔話2の続き

Side???

 

「私も早く会いたいけど、もう少し待ってて、鏡夜」

 

満月の綺麗な晩。博麗神社の屋根で酒を飲んでいた鏡夜の反対側に寝っころがりながら、先ほど鏡夜からちょろまかした酒を飲む。

 

うん。やっぱり鏡夜の持ってる酒は格別だね。一味違うよ。

 

「それにしても、鏡夜ったら、また随分と昔の話しをしだすもんだねぇ」

 

鏡夜と初めてあって、ボッコボコにされた時……いやはや、あの時は本気で落ち込んだね。

 

この鬼の四天王と呼ばれた私が、たった一人の人間ボコッボコにされたんだから……その時の私はもう、本当に、本当に! 落ち込んだんだから。

 

でも、ま、その代わりに、親友といっても差し支えない存在が新たに出来たんだけどね。

 

「ハハ、本当に、あの頃が懐かしいなぁ」

 

 

 

「うぐー! んむ! んんー!」

 

小さな箱へと閉じ込められた私は、必死に妖力の箱から出ようともがいていた。

 

簡単に壊せると思っていたのだが……壊れない。なに、この硬さ! 私でも、こんな硬い妖力の箱は作り出せないよ!

 

「んむー!!」

 

それでも、鬼の四天王の意地と根性と執念で、なんとか破壊する。

 

それだけで、体力がごっそり持っていかれたが……脱出すれば、こっちのもんだ! あとは、あの男を殴り飛ばして、気絶させてやればいいんだから!

 

「鬼神母神様、決闘のほう……ハ?」

 

妖力の箱を破壊し、外に飛び出してみれば、そこは……わけがわからなかった。

 

涙目で地面にへたりこんでいる勇儀。気絶した鬼達。呆然と男の方を見る鬼神母神様。そして、寒気のするような妖力を、片手に宿している男。

 

……なにこれ? わけがわからんのですが? って、それよりも、あの男の妖力なんなの!

 

肌がビリビリして、体が震えてるんですけど! 人間だよね! あの男、人間だよね!

 

なんで人間がこんな寒気のする妖力を放てるわけ? いや、それよりも、なんで人間が妖力を持ってるわけ!

 

ああもう! 訳がわからない!

 

「鬼神母神様? これはどういった状況でしょうか?」

 

「萃香、見ての通りだよ。あの男……いや、鏡夜一人で、四天王全員がやられたんだよ」

 

苦笑いを浮かべながら、鬼神母神様が言ってくる。

 

「…………」

 

なんにも言えない。

 

だって、そうでしょう! たった一人の人間の男に、妖怪の中では最強とまで言われた私達が壊滅させれたんだよ!? なんにも言えるはずないじゃない!

 

「俺の、勝ちだ!」

 

この現状に驚いていると、人間の男は右手を高々と掲げて、大声で言った。

 

うん、もう勝ちでいいです。だって、どう見たって、誰が見たって、あの人間の男の勝ちだから。

 

負けるのは悔しいけど……仕方ないよね。これだけやられているんだもん。もうね……泣きたいです。

 

「それまで、この勝負、鏡夜の勝ち」

 

私と勇儀と鬼神母神様。そして、鏡夜しか起きていない状態で、鬼神母神様が声高らかに宣言した。

 

男は、掲げた右手を振り下ろすと、私と鬼神母神様の方を見て――――

 

「……おやすみ」

 

ブッ倒れた。しかも、完全に意識を失った倒れたかただ。

 

……って、冷静に状況分析してる場合じゃない! 早く助けないと!

 

急いで男の方へと駆け寄る。地面に倒れた男を抱きかかえると、男はとても安心したような表情で、スヤスヤと寝始めた。

 

……死んではいないようだね。ふぅ、良かった、死んでなくて。死んでたら、後味が悪いからね。……いや、後味悪いって食べるわけじゃないよ?

 

「萃香、鏡夜の容態はどうだい?」

 

「鬼神母神様……どうやら、命に別状はないと思います。ただ、これは疲れているだけで気絶しているものだと」

 

「それは良かった。なら……勇儀! いつまでヘタレてるんだい! さっさと立ちな!」

 

「は、ハイッ!」

 

涙目でへたり込んでいた勇儀は、飛び上がるほどの程の勢いで立つと、急いで鬼神母神様の隣に立つ。

 

「萃香、お前はその男が起きるまで、介抱してな。その間、私達は宴会の用意をするからね。ほら、勇儀! さっさと寝ている奴らを叩き起こしてきな」

 

「ハイイイイ!」

 

鬼神母神様の、あまりにも大きな声に、勇儀は本気で泣きそうになるが、返事をして、走って他の気絶している奴らを起こしていく。

 

……って、え? 私が、この男の介抱? 出来ないんですけど……。

 

鬼ならまだしも、人間って……捌きからくらいしか知らない。どうすればいいの?

 

と、とりあえず、着てるもんでも脱がせばいいの? それとも、安静に寝かせとけばいいの? それか……傷口に酒でもかければ大丈夫?

 

わ、わかんない! どうすればいいの!

 

「いったたぁ。久しぶりだよ、気絶させられたのは」

 

「あ、鬼御子」

 

あたふたとどうすればいいのか迷っていると、頭を二、三回小突きながら鬼御子が歩いてきた。

 

「すいかぁ、力と技では四天王の中でも一位、二位を争うのに、治療の面ではてんでダメだねぇ」

 

「うぐっ! そ、それは」

 

だって、私は怪我なんて放っときゃ治るんだもん! だから、治療の仕方なんてしらいないよ! 多分勇儀だって知らないはず! ……多分。

 

「まあ、まあ、下がっといて。あたしが治療するから」

 

私の抱えている男に、鬼御子が近づくと、首筋や額、胸から背中、足元から頭の頂辺まで触ると、一つ頷いて顎に手を当てる。

 

ど、どうしたの? もしかしてもう治らないとか? やめてよ! これで死んだら私のせいになるんだから!

 

「ど、どうしたの? まさかもう死ぬとか……」

 

「ん? ああ、いやいや、死にはしないよ。……そうさねぇ、寝かせとけば大丈夫だよ」

 

「ほ、本当に?」

 

嘘だったら、本気でぶっとばす! 本気だよ、私は。

 

「本当だって」

 

「酒とか傷口にかけなくても大丈夫?」

 

大真面目に言ったのだが、鬼御子は肩を落とすと、呆れた表情でこちらを見てくる。

 

「萃香、あんた何しようとしてるの。そんな事したら、鏡夜が……爆発するよ」

 

「爆発するの!?」

 

怖! 人間怖! 爆発って……怖!

 

人間だって酒飲むのに……へ~傷口にかけたら爆発するんだ。

 

「まあ、嘘だけど」

 

「嘘なんだ!?」

 

そりゃあ、そうだ! 爆発って、少し考えればわかることじゃん! 何故爆発すると思った私!

 

ああ、恥ずかしい! 爆発するのが本当だと思った自分が恥ずかしい!

 

うわぁ、って顔で鬼御子がこっち見てるし……うわあああああああん! 恥ずかしい!

「ガッ……」

 

恥ずかしさのあまり、頭を抱えて俯く。その時、なんか、ゴッ! って音がしたけど、そんなの知らない!

 

「ぁぁぁぁぁ、うわああああ」

 

「あらら、鏡夜可哀想に。萃香が離したせいで、地面に頭をぶつけちゃってるよ」

 

「鬼御子! 絶対、皆に言いふらさないでね! 爆発するってのを信じたこと!」

 

「はいはい、言わないから。ちゃんと、鏡夜を介抱してやんなさいな。それじゃあね~」

 

「あ、ちょっと鬼御子! 絶対言わないでよう!」

 

後ろを向きながら手を振り、鬼御子は去っていってしまった。

 

……残ったのは、私と気絶した男。鬼御子は寝かせとけば大丈夫って言ってたけど……本当に大丈夫かなぁ? 

 

「考えても、仕方ないか」

 

とりあえず、安静な場所で寝かせるため、男を背負う。

 

……う~ん、重い。なんかこの男、かなり重いんだけど。筋肉のせい? わからないけど。

 

「よいしょっと、さて、運びますか」

 

背負った男を、安静だと思われる洞窟の中へと運ぶ。

 

運んでいる最中思ったんだけど、さっきから、なんかズリズリって地面をこする音が聞こえるんだけど……気のせいだよね? 

 

身長のせいで、男の足が地面についているけど、それが引きずられている音ってことはないよね? 

 

男を背負いつつ、後ろを振り返ると、そこには、何かこう、地面を引きずった跡がある。

 

なんなんだろう、この跡? この跡が、さっきの音の音源かな?

 

「萃香の姉さん、不思議そうな顔してますが、音の音源は萃香の姉さんが背負ってる鏡夜のせいですよ」

 

「あ、童子」

 

私の背負っている男の重さが消えると同時に、私の後ろから声がかけられる。

 

振り返れば、そこには勇儀並の身長と、勇儀並みの大きい胸を持った童子が立っていた……ちくしょう! いい体しやがって! 私だってそんな体になりたいわ!

 

……っとと、思考がずれた。考えを戻さないと。ああ、んん! ええ、それと、童子の片手には、男が軽々と摘まれていた。

 

「よいしょっと、萃香の姉さん、鏡夜は私が運びますんで、萃香の姉さんは普通に歩いてください」

 

「悪いね、童子」

 

「いえいえ、これくらい」

 

男を童子に任せ、洞窟の奥へと歩いていく。童子に男を任せて歩いているわけだたけど、何故かさっきの地面を擦る音が聞こえなくなる。

 

やっぱり、さっきの音の正体は、私だったのか……男の足の部分の着物が壊れてるのが、いい証拠か。

 

 

 

そんなこんなで、歩くこと数分。洞窟の奥へと歩いていた私達は、洞窟の最新部へとたどり着いていた。

 

大きな広間。鬼たちが全員入っても余裕がるくらい広い大広間。周りの壁には、大量の提灯が掛けれている。

 

そんな大広間の中央では、さっき気絶していた鬼達と勇儀が、せっせと酒樽を運んでいた。

 

「よいしょっと、それじゃあ、萃香の姉さん。私はあっちの手伝いに行くんで」

 

「うん、ありがとう童子」

 

広場の中央から外れた隅っこ。そこに童子は男を寝かせると、酒樽を運んでいる鬼達の方に歩いて行ってしまった。

 

後に残ったのは、私と人間の男の二人だけ。……ええと、どうすればいいんだろう。

 

男の頭の方に座って両足を抱えながら男の方を向く。そこには、スヤスヤと安心したように寝ている男。

 

……このまま放っておけばいいか。

 

「……暇」

 

中央の広場をボケっと見つめ、ただただ座り込んでいる。……うん、暇だ。この上なく暇だ。

 

な、の、で、とりあえず、男の顔をつついてみようと思う。何故かって? 別に、なんとなくだよ、なんとなく。

 

「……ん」

 

「おお、これはこれは、可愛い声出すねえ」

 

ちょいと男の頬っぺたをつついてやると、男はくすぐったいのか、少し唸ると、私がつついた頬を指で掻いた。

 

面白い。もう少し、弄ってみますか。

 

「今度は、こうね」

 

さっきは頬だったので、今度はおでこをつついてみる。軽くだよ、軽く。こう、ちょいっとね。

 

すると、男はさっきみたいに私の押したおでこをくすぐったそうに指で掻く。

 

「ハハ、可愛いねえ」

 

反応があまりにも可愛すぎるので、調子に乗って小突いていく。

 

二度、三度、四度、五度……面白すぎてつついていると、男がとうとう反応しなくなってしまった。

 

「なんだ、もう反応しなくなっちゃったよ」

 

なんて言いながら、最後のダメ押しとばかりに、もう一回だけ指でつつく。

 

「ん……んぬらあ」

 

「って、ちょ!?」

 

気の抜けた声が男から発せられたので、可愛いなと思ったのも束の間、いきなり腕を掴まれた。

 

逃げ出そうにも、逃げられない。こう、掴まれてるんだけど、傷つかない位の絶妙な力加減で握られている。

 

そして、男が何を思ったのか、私の腕を握っている方の腕を大き振るう。結果、私の体は中を浮き、最後には……男に抱きしめられた。

 

「ちょ、ちょちょちょちょちょちょ!! 離せ! 離せええええええ!!」

 

「ん……ん」

 

両腕を抑えられながら背中に腕を回され、頭の後ろにも手を回せれているため、動けない。

 

ジタバタと足を振って逃げ出そうとするが、それでも、この男は起きる気がしない。

 

「もう、離してよう……」

 

ジタバタするのも疲れたので、大人しく男に抱きしめられていると、男はさらに私のことを抱きしめて、耳元に息を吹きかけてきた。

 

「ひゃうん! な、何するのよう」

 

「もう……離さない」

 

「ふえ……?」

 

もう離さない……って、えええええええええ!? そ、そそそそれって愛してるって受け取って……よくないよね!? 寝言だからね! 

 

「んん」

 

「ふにゃあああああああ!!!」

 

男の言葉に戸惑っていると、男は私を抱きしめたまま仰向けから横になった。

 

「ふあ! ん! あっ!」

 

い、息が! 男の息が私の耳に! 完全に起きてるとしか思えないくらいに、正確に私の耳に息を吹きかけてくるんだけど!

 

息を吹きかけるのをやめたかと思うと、男は私の耳元に近寄り、ボソッと一言。

 

「なあ、俺の嫁になれよ」

 

「…………!!!!」

 

よ、嫁!? 嫁ってあの……嫁!?

 

む、むむむむり! 無理だって! だって、さっき会ったばっかだし、それに、種族が違うし……で、でも、どうしてもって言うなら、その……。

 

「萃香、あんた何やってんの?」

 

「ゆ、ゆうぎぃ」

 

頭の中でグルグルと解決しない問題の回答を考えていると、大きな酒樽を担いで、勇儀が歩いてきた。

 

「顔も赤いし、熱でもあるのかい? それとも……もうそういう仲になったとか?」

 

「違う! それだけは断じて違う!」

 

何を言い出すのよ、勇儀は! そういう仲? いやいや、ならないから! ……いや、でも、その、どうしてもってこの男が言うなら、なってあげてもいいけど?

 

強いし? 格好良いし? 何より男らしいし? そこら辺の鬼たちよりは、嫁になってもいいと思うけど……って、私は何を考えているんだ!

 

「うわああああん! とりあえず、勇儀、助けてよ!」

 

涙目になりながら、勇儀に助けを求めるが、勇儀は私を助けるどころから、ため息を吐く。

 

な、なんで? まさか、このまま男が起きるまで抱かれとでも!? いやいや、そんなことになったら私、恥ずかしさのあまり気絶しちゃから!

 

「勇儀、お願い、助けてよう」

 

「いや、助けるもなにもさ、萃香、あんた霧になれたろう? それで抜ければいいじゃん」

 

……そうだった! 私霧になれたじゃん! なんで今まで気づかなかったんだろ。

 

私の能力、密と疎を操る能力で、体を霧状にして、男からすり抜ける。その際、なんか男が少し唸って、手を動かして私を探しているが……そんなに抱き心地いいのかな、私って?

 

「成功!」

 

「いや、最初から出来たでしょうに、なんで気づかなかったんだい?」

 

「いや、私でも分かんない」

 

「はぁ、おっちょこちょいだねえ、萃香」

 

おっちょこちょいって……いやまあ、確かにそうだよね。

 

「よいしょっと。それじゃあ、萃香、あたしは持ち場に戻るよ」

 

「うん、ありがとう勇儀」

 

勇儀はため息を吐いたあと、大きな酒樽を背負い直して、中央の広場に戻っていってしまった。

 

「……さて、どうしようか」

 

すり抜けたはいいけど、男はまだ眠ってるし、またやることが無くなってっしまった。さっきみたく、つついたりしてもいいけど、それじゃあまた抱きしめられる可能性もあるし……どうしようかな。

 

「ん……んん?」

 

「あ、起きた?」

 

これからどうしようかと迷っていると、私という温もりがなくなったせいか、それとも偶然目が覚めたのかは知らないが、目を擦りながら男は起きた。

 

「んあ~あ、おはよう、ええっと、萃香?」

 

「おお、覚えてくれてたのかい」

 

名前を覚えてくれていたことに、内心すんごい驚いたけど、それを表に出さずに平静を装う。

 

「ん、ん~……ふむ」

 

起き上がり、大きなあくびをしながら背伸びをした男は、辺りをキョロキョロと見渡すと、自分がどんな状況に置かれているのか考えているのか、目をつぶってしまった。

 

そして、数秒ほど目を瞑ったあと、私の事をじっと見つめてくる。

 

な、なに? そんなに見つめられると、その……も、もしかして! 正式に俺の嫁になれよとか言うの!? そ、そんな……まだ、心の準備が!

 

「ど、どうしたの?」

 

ドキドキしながらも、いつも通りの声で男に聞いてみると、男は顎に手を当てる。

 

「……いや、これは、宴会の準備をしているのかなと思ってね」

 

「ああ、そのこと……そうだよ。今は、あなたのために、宴会の準備をしているんだよ」

 

なんだ、違うのか。少し、残念……って、私は何を期待してるの! 違うでしょ! 私!

 

「そうか、それはありがとう。……よっこいしょっと」

 

男は立ち上がるとともに、私も立ち上がる。

 

さて、どうしよう? このままだと、多分男が広場の方へ行くから、宴会が始まっちゃう。その前に、その……さ、さっきの寝言のこととか聞いとかないと。

 

「ね、ねえ、そのさ……」

 

「ん? どうした萃香?」

 

「そのさ、あなた……」

 

「少し待って」

 

意を決して本題を切り出そうとする前に、男は私に掌を見せて、待ったをかける。

 

「そのさ、あなたってのをやめにしてくれ、俺のことは鏡夜でいいよ」

 

「じゃ、じゃあ、鏡夜。その、好きな人とかって……いる?」

 

「どうしたの、急に……まあ、いるかどうか聞かれれば……」

 

どっち、どっちだ! いるなら、少し、その、私かもって期待してもいいのかな?

 

鏡夜は少し考えたあと、苦笑いを浮かべながら両手を肩のあたりに持ってくる。

 

「生憎と、今はまだいないね」

 

「そう……そうだよね」

 

まあ、ですよね。だって、あれはただの寝言だったのだから・

 

「ただ……」

 

「ただ?」

 

鏡夜は苦笑いを浮かべたままこちらに向かって歩いてくると、私の前で止まって頭に手を乗っけてくる。

 

「あの四人の中では、萃香が一番好みだよ」

 

……ええええ!? 好みって、好みってことは、その……私のことが多少なりとも好きってこと? 

 

「も、もう、からかうな!」

 

「ハハ、からかってはいないんだけど……じゃあ、行きましょっか」

 

「もう!」

 

これって、本当にからかわれたのかな? ……わからない。けど、からかわれてないと思っておこう。

 

笑いながら中央の広場に向かっていく鏡夜のあとを、怒ったように両手を下に押し付けるようにしてから、走って追い駆ける。

 

 

 

そうして、鏡夜が中央の広場に着くと、宴会が開始された。

 

男の鬼達は、あまり気乗りではなかったが、女の鬼達は男の鬼達よりも強い鏡夜の強さに惚れたのか、はたまた興味津々なのか、結構乗り気だ。私も例外じゃない。

 

だって、あんなこと言われたあとだし? そりゃあ、興味位は持つよね……?

 

そんなこんなで開始された宴会の途中で、調子に乗った男の鬼が鏡夜に酒の飲み比べを始めた。

 

鬼の私たちが、人間の男に酒飲みで負けるはずがないので、周りからは、やめとけの嵐だったけど、それでも鏡夜は鬼の酒の飲み比べを受ける。

 

誰しもが鏡夜の負けを確信していたのだが、予想は大きく外れた。

 

鏡夜が勝ったのだ。それも、圧倒的に……。

 

いくら鬼が酒に強いといっても、それは人間とは違い酒樽を二、三個飲めるだけであって、何十個も飲めば流石に酔う。まあ、私達四天王は、何十個もいける自信はあるけど。

 

でも、それでもだよ……!

 

「その量はおかしいでしょう」

 

「ハッハッハ、どうした? もっと飲まないのか?」

 

自分のお猪口に持った酒を飲み干し、目の前を見る。

 

そこには、酒の飲みすぎで顔を真っ赤にしてブッ倒れた鬼と、酒樽を何十個も積み上げ、酔った鬼の肩に腕を回してる鏡夜がいた。

 

まさか、酒の飲み比べに人間が勝つとは思っていなかった鬼達は唖然とし、その光景を見ている。しかし、それも束の間。我に返った鬼の一人は、今度は自分が行くと言って、鏡夜との酒の飲み比べを始めた。

 

酒樽を何十個も既に開けているというのに、鏡夜は平然な顔で更に酒樽を開けてく。

 

 

 

「んぐ、んぐ、ん……どうしたみんな、眠っちまって」

 

数分後……そこには、酒の飲み過ぎで倒れている鬼達と、百近くあった酒樽を全て開け、平然と鬼達の真ん中で酒を飲んでいる鏡夜がいた。

 

うん、これは勝てないわ。いくら鬼がザルだからって、ここまでは飲めない。私でもね。

 

「なんだ、皆潰れたのか……どうだい、四天王に鬼神母神。飲み比べするかい?」

 

「「「「「いいえ、お断りします」」」」」

 

急にこちらに視線を向けながら言ってきた言葉に、私達と鬼神母神様は同じ言葉を、同じ瞬間に言う。

 

何を言っているのだろうか、鏡夜は。酒の飲み比べ? 結構です。勝てません。無理です。鬼は正直だから、負けは負けと認めます。

 

「なんだ、つれない」

 

「すまないが、鏡夜。私たちでも、あんたの酒飲みには負けを認めるよ」

 

「そう」

 

鏡夜の近くにあった酒樽を鏡夜は掴むと、残っていた酒を全て飲み干すと、私たちの前に歩いてくる。

 

「よっこらせっと。残っているのは、四天王と鬼神母神。ま、お互いに酔いつぶれるまで、飲み明かしましょうや」

 

「絶対、私たちの方が潰れますよね、コレ?」

 

「言わないの、童子。こりゃあ、酔いつぶれるまで付き合わないといけない流れってもんだよ」

 

横で酒を飲みながら鬼御子と童子がそんな会話をしている。

 

そうだね、これは酔いつぶれるまで飲む流れだね。……酒、持つかなあ。

 

「ハハハ、流石四天王を下した人間だね。酒でも腕っ節でも負けるなんて……あんた、本当に人間かい?」

 

「人間だよ、割と普通のね」

 

「ふふ、そうかい」

 

軽い会話を交わしながら鬼神母神様と鏡夜は話すと、互の杯に酒を入れ合う。

 

普通の人間? 冗談はやめて欲しいもんだよ。こんなのが普通なら、私達は今頃人間に滅ぼされているよ。

 

「……そういえば、思ったんだけどさ、童子と鬼御子ちゃん……でいいんだよね? のさ、雰囲気変わったね」

 

酒を全部飲み干すと、鏡夜はそんな事を言ってくる。

 

そうだろうか? 私は割といつもどおりだったと思うんだけど……。 

 

「ああ、そんなこと? 戦闘の時は、若干子供口調の方が、相手を油断させることができるんだよ。この体型だしね」

 

「私は、変わらないと思いますが」

 

「うんまあ、童子の方は変わってはいないと思うんだけどさ、なんていうのか……口調が二人とも逆な気がする」

 

鏡夜の一言に、二人は互いに顔を見合わせると、少し貯めたあと、吹き出す。

 

「アハッハッハ、そうだねえ。確かに逆かもねえ」

 

「初めてです、そんなこと言われたのは」

 

「そう? 意外と皆言ってそうだけどね」

 

空になった杯に酒を注ぎ、空いた二人の杯にも酒を注ぐ鏡夜。

 

う~ん、確かに二人の口調が逆になったら、意外としっくりくるかも。でも、鬼御子が急に丁寧に話し始めたら……うわ、鳥肌が立ってきた。

 

「なあ、鏡夜。あんたはさ」

 

「ん?」

 

酒を再び飲み始めた鏡夜に、巨大な瓢箪に入れた酒を飲みながら、遊戯が声をかける。

 

「一体、どんなことをして、そんな力を得たんだい?」

 

……それは、私も気になる。だって、あの力は尋常じゃなかった。妖力では鬼の中でも最高峰にいる私と同じ程だし、人間が持っている霊力も半端じゃない。

 

そんな矛盾を持っている上に、なおかつあの馬鹿げた力。一体どうやって、霊力と妖力、つまり陰と陽の相反する力を手に入れたのか? それと、あの馬鹿げた力も……気になる。

 

「ああ、あの力か? あれは、ただ単純に戦い続けたら、ああなっただけだよ」

 

「いや、戦い続けたって……」

 

「こう見えても、随分と年寄りなんだよ。……そうだね、アレは今から数百年前か。解りやすく言うと、太陽が沈んでから出るを繰り返すことを、三十六万回繰り返す中、俺は戦い、戦い、戦い続けてきたんだ」

 

「ちょっと、待ってよ、数百年って言った?」

 

思わず会話に割り込んでしまったが、どうしてもこれだけは聞き逃せなかった。

 

数百年? ありえない。人間は長くても、五十年生きればいい方だ。なのに、その倍以上の年月を生きてるっていうの? じゃあ、鏡夜は一体なんなの?

 

「ああ、言ったとも」

 

平然と言う鏡夜に、私は思わず生唾を飲み込む。

 

「じゃあ、貴方は一体なんなの?」

 

冷や汗が体中から流れる。変な気持ち。この気持ちは……恐怖?

 

私は変な汗が流れる始めるが、鏡夜は淡々と言う。

 

「言っただろう? ただの……普通の人間だよ」

 

「ッ!?」

 

閉じていた口元をただの笑みに変えただけなのに、息は詰まるし気持ちは悪いし吐きそう。決して鏡夜が気持ち悪い訳ではない。気持ちが悪いのは、鏡夜の纏う雰囲気だ。

 

今まで味わったことない黒い雰囲気。今まで見た事も無い、こんな雰囲気。大妖怪の鬼神母神様ですら、こんな雰囲気は出せっこない。

 

それが……それが、こんな人間が出すなんて。怖い、怖すぎる。

 

僅かに動く首を動かし、皆と鬼神母神様を見るが、私同様、誰一人動けずにいる。

 

「……な~んてな、ごめんごめん、悪戯が過ぎた」

 

「ッハア、ハア」

 

鏡夜が先ほどと同じように杯の中の酒を飲むと同時に、気持ち悪かった雰囲気が一気に霧散した。

 

一体、なんだったのだろうか、今のは。……でも、考えるより、今は息を吸わないと。

 

ゆっくりと深呼吸して呼吸を整え、一度目を瞑ってから鏡夜の方を見る。そこには、柔和な笑みを浮かべている鏡夜がいた。

 

「なんだったの、今のは……」

 

「気にしなさんな……さ、飲もう飲もう!」

 

私達の盃や杯に酒を注ぎながら、鏡夜は豪快に自分の酒を飲み干していく。

 

……さっきの気持ち悪さのせいで飲む気になれないんだけど、ま、我慢して飲みますか。

 

「ング……ぷは」

 

ああ、駄目だ。一杯飲んだら、もっと飲みたくなった。

 

「鏡夜、もう一杯!」

 

「おう! ガンガン飲もうぜ」

 

鏡夜に酒を注いでもらい、二人して一気に飲み干す。うん、盛り上がってきた!

 

周りを置いて、二人して酒を飲んでいく。途中、何度か勇儀達や鬼神母神様と話したが、酒の飲み過ぎのせいかよく覚えてない。

 

「アハッハッハ!」

 

「いいねえ、いい飲みっぷり!」

 

 

 

「……んあ?」

 

そして、何十杯目を飲み干した頃だろうか、いつの間にか私は眠っていた。

 

視界がぐらつくし頭が痛い……それに、なんか気持ち悪い。吐き気がする。

 

「うがあ~頭が~」

 

ゆっくりと体を起こし、周りを見渡す。そこには、気絶したように眠る勇儀達と鬼達。鬼神母神様の姿は……無い。自分の寝床にでも戻ってしまったのだろうか?

 

あと……鏡夜の姿が見えない。一体どこにいったんだろう? 鬼達の所で眠ってるわけでもないし……もしかして、鬼神母神様のところかな?

 

……わかんないからいいや。

 

「うん? なんだろうこれ?」

 

周りを見渡していることで気づかなかったけども、私の体の上に何か掛けられている。取って見れば、それは見たことある男性の着物の上だった。

 

……えっと? これ誰の? 物凄く見たことあるんだけど? もしかしてこれって、鏡夜の?

 

「なんで私の上に掛かってたの?」

 

え~っと? 昨日何したっけ? 鏡夜と飲んでから、記憶が曖昧なんだけど……大丈夫だよね。記憶にないからって、鏡夜との行為に及んではいないよね。

 

急いで自分の服装を確認するが……良かった。脱いだ形跡は無い。

 

「……それにしても、鏡夜はどこに行ったんだろう?」

 

具合が最高潮に悪い状態で何とか立ち上がり、とりあえず陽の光を浴びたいのでゆっくりと入口に向かって歩き出す。

 

う~気持ちが悪いよう。初めてだよ、酒を飲んだあとにこんなに気持ち悪くなるなんて。

 

「ん? 何の音だろう……」

 

洞窟の入口に近づくにつれ、徐々に変な音が聞こえてくる。こう、ズパン! とか、パーン! とかって音。

 

この音、勇儀とかが拳を振るってる時の音じゃん。でも、勇儀はあそこで眠ってたし、他の鬼達はこんな音出せないし……誰が鳴らしてるんだろう?

 

「あれって……鏡夜?」

 

まだ洞窟の入口までは遠いけども、確かに鏡夜の姿が見えた。それも、上半身裸で、下半身だけ着物を纏っている姿の。

 

「ふ~……」

 

こっそりと洞窟の入口近くに隠れ、鏡夜の姿を見つめる。

 

鏡夜は息を整え、体を自然体の状態から、少しの予備動作もなく踏み込み拳を放つ。そして、すぐに拳を引き戻すと、今度は右足の回し蹴りを放つ。

 

そこからは、徐々に速度が上がっていき、とうとう私の目では目視できなくなった。できるのは、あとに残った音と地面の抉られたあと、それと鏡夜の残像だけ。

 

「……ふ~」

 

どれほど放ったのかはわからないが、鏡夜は動きを止めると、再び呼吸を整える。それと同時に、鏡夜を中心として風が暴風となって吹き乱れる。

 

「あっ……」

 

荒れ狂う暴風の中で佇む後ろ姿の鏡夜。黒い髪は乱れ、流れていた汗は一瞬で吹き飛ぶ。引き締まった筋肉は、しなやかさを保ちながらも力強さを放っている。

 

その鏡夜の姿に、私は胸の奥がこう……キュンってした。なんでかは知らないけど。

 

視線を外せず、鏡夜の姿を見ていると、鏡夜は息を吐きながら空を見上げる。そして、腕を腰の辺りまで引き絞ると――――――

 

「ッ!?」

 

認識できないほどの速度で拳が振られ、強大な妖力と霊力が混ざった物が、光の道となって天を貫いた。

 

雲は裂け、鳥たちは一斉に飛び立っていく。地面は揺れ、恐ろしいほどまでの爆音が耳を貫く。

 

その姿に、私はまた胸の奥がキュンとした。視線は鏡夜から外せないし、何より外したくないと思っている自分がいる。

 

体中から汗を流した鏡夜は、再び天を見上げて笑顔を浮かべたあと、こっちに向かって歩いてくる。

 

「ッ!? えっと、隠れないと!」

 

こっちに向かってくる鏡夜に、思わず入口の近くにある岩陰に隠れてしまう。

 

何故か心臓はバクバクと脈打ち、私の持っている鏡夜の着物を異様に意識してしまう。

 

ああ、ああ~! 鏡夜の匂いが! 香りが! 私の鼻を……! うわああ、ちょっと、心臓が壊れそう!

 

岩陰からこっそりと鏡夜の姿を見ると、鏡夜は入口の前で止まり、入口を見上げる。……何したんだろう? 

 

「……萃香、そんな岩陰何かに隠れなくてもいいよ」

 

ッ!? どうして気づいたの!? 完璧に隠れられてると思ったのに。

 

「あ、その、おはよう、鏡夜」

 

「おはよう、萃香。体の方は大丈夫? 昨日、かなりの酒を飲んでたけど」

 

「あ、うん。ちょっと、気持ち悪いけど大丈夫だよ」

 

若干緊張しながら出て行くと、鏡夜は笑顔を浮かべながら挨拶してくれる。

 

……どうしてだろう、鏡夜の笑顔が格好良い。それに、心臓の鼓動が恐ろしい位高鳴っている。呼吸も速いし、顔もあっつい。どうしてどうして? どうしてこうなるの?

 

「そっか、それじゃあ、なかに戻って他の奴らを起こそうか」

 

「あ、でもその前に、コレ……」

 

私は持っていた鏡夜の着物を渡そうと、鏡夜に差し出す。本当は鏡夜に返したくないけど。

 

しばらく、鏡夜は私の差し出した着物を眺めたあと、受け取った。

 

「……なあ、萃香」

 

「どうしたの?」

 

「コレ、欲しい?」

 

そう言いながら差し出してきたのは、さっき私が渡した鏡夜の着物。

 

……って、え? いや、どうしてそうなるの!? でも、まあ、欲しいかどうかで聞かれれば、ちょっと欲しいかも。

 

「い、いや別にいらない……よ?」

 

「そう? 欲しそうな顔してたけど?」

 

「第一、私がそれ貰っちゃったら、鏡夜着るものなくなるじゃん」

 

「まあ、何とでもなるよ……で、コレ欲しい?」

 

再び着物を差し出してくる鏡夜。

 

「……そ、そこまで言うなら、もらってあげないこともないよ?」

 

ソッポを向きながら、差し出された鏡夜の着物を受け取る。

 

さっき隠れた時に思ったんだけど、やっぱり鏡夜の着物からいい匂いがする。それはもう、本当に私好みのいい匂いが。

 

男の鬼達のような汗臭さは微塵も感じない。むしろ、私達みたいないい匂いだ。……一体どうやってこんないい匂いにしたんだろう?

 

そっと着物をたたみ、抱きしめるように持ち、鏡夜の近くによる。

 

「出来るだけ、大切に扱ってくれよ?」

 

「うん……大切にするよ」

 

再びギュッと鏡夜の着物を抱きしめてから、上半身裸の鏡夜の横を歩き、一緒に洞窟の中まで歩く。

 

 

 

そこから、幾日か経ったあと、私たちが用意した新しい着物を着た鏡夜は洞窟から去っていった。

 

私達と打ち解け、中の良かった鏡夜が去ることに、私達一同は落ち込んだが、また会えることを期待しながら、笑顔で見送る。

 

そういえば、鏡夜が去るまでに、村から屈強な男が来たが、村には危害を加えないことを鏡夜がすぐに説明し追い返す。別に、私達は強い者と戦いだけだったからね。鏡夜と戦えただけで、もう満足。だから、あの村にはもう用は無い。

 

そんなこんなで、鏡夜が去ったあと、私は自分の寝床で鏡夜から貰った着物を抱きしめながら横になっていた。

 

「心の中にぽっかりと穴があいた気分。鏡夜がいた時はこんな事はなかったのに……ハア、どうしたんだろう、私」

 

この気持ちのことを考えながら、ぶつぶつと独り言を呟く。そのせいだろうか、後ろから近寄ってきた人物に気づかなかったのは。

 

「ほほう、萃香。そりゃあ、あんた、その気持ちは恋ってんだよ」

 

「勇儀……」

 

横になりながら、後ろを向くと、そこには大きな盃を持った勇儀が立っていた。

 

「よっこいしょっと。萃香、あんた鏡夜のことが忘れならないんだろう?」

 

「……うん」

 

忘れられない。鏡夜が去ってから、どれほど経ったのかは分からないけど、その間、鏡夜の事を忘れたことなんてない。

 

私の解答聞くと、座っている勇儀はやっぱりといった感じで苦笑いを浮かべ、盃に入っている酒を飲む。

 

「うん、完全に恋しちゃってるねえ」

 

「……恋。これって、恋……なのかな?」

 

「そりゃあ、勿論。それが恋じゃないってんなら、なんだってんだい」

 

「恋……恋か」

 

そりゃあ、何度か自分は鏡夜に恋してるかなあと思ったことはあったけど、やっぱりこれって恋で合ってただね。

 

胸の奥がキュンってしたり、鏡夜以外のことが考えられなかったり、鏡夜の事を考えると顔が真っ赤になったり……。

 

「ま、恋じゃないって思うんなら、そう思えば良さ。考え方は人それぞれ。萃香が恋じゃないと思うなら、そりゃあ恋じゃないんだよ」

 

「……勇儀。分かったよ、この気持ち」

 

鏡夜の着物を抱きしめながら、私は勇儀をまっすぐ見つめるように見据えながら座る。

 

「なんだい?」

 

「これは……恋だよ。私は、鏡夜に恋してる」

 

 

 

「ん……夢?」

 

いつの間に眠っていたのだろうか? ……ま、それは置いといて、昨日、昔の事を思い出していたせいか、懐かしい夢を見たなあ。

 

勇儀と話したあの後、私は鏡夜の嫁になると決意したんだよねえ。でも、久々にあった鏡夜には、二人の妻が! どうしよう、出遅れたよ。

 

……ま、妻がいても、私が鏡夜を好きだって気持ちは変わりませんがね!

 

神社の屋根に寝たままのせいで、陽の光が思いっきり当たって眩しい。その眩しさを、なんとか堪えながら体を起こすと、私の上に何かが掛けられていた。

 

初めて触る感触だ。黒くて柔らかいけど、なんかサラサラしている。着物とはまた違った感触だ。

 

……あれ? この匂いってもしかして。

 

「あらら、バレちゃいましたか。でもまあ、もう少し経ってから、会おうね」

 

掛けられていた物を抱きしめながら、私は体を霧状にして、この幻想郷中に霧となって霧散した。

 

「……鏡夜」

 




口調が若干おかしいかもしれませんが、ご了承ください。似せる努力はしているんですが。
それと、活動報告の方で、アンケートをとっているので、答えてくれると嬉しいです。

感想、批判、アドバイス、誤字報告、お待ちしております。
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