少女と錬金術と異世界と   作:蜂蜜れもん

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今回はいつもより投稿遅れましたね。
と言っても普通これくらいなのかな?

これから徐々に忙しくなるので更に投稿ペースが遅くなることが予測されます。
というかぶっちゃけ受験生です、はい。

それでは今回のお話をどうぞ。


六話 異世界初採取、ときどき雑草

「錬金術で道具を作って欲しいって…」

 

突然のダクネスの依頼に困惑の表情を浮かべるフィリス。

作って欲しいものが何かはまだ知らないが、何にせよ現状では錬金術は出来ないのだ。

急に錬金術の依頼をされてもどうにも出来ないだろう。

 

「ダメ……なのか?」

 

ダクネスは不安そうな表情でフィリスを見つめる。

 

「えー、その…、そもそも錬金術の為の道具が全然揃ってないから出来ないんですよ」

 

フィリスは素直に現状を伝える。

このどうにもならない状況を知れば、ダクネスも諦めてくれるだろう。

僅かに罪悪感に襲われたフィリスだったが、これも仕方のない事である。

と、そんな事を考えていると、ふとダクネスが口を開いた。

 

「なら、道具があれば錬金術が出来るのだな?」

 

「え?あ、はい。多分大丈夫だと思いますけど」

 

「何が必要なんだ?」

 

「えっと、まず錬金釜が必要…」

 

「よし、私が金を出そう。今すぐ買いに行くぞ」

 

そう言ってダクネスはフィリスの腕を掴み足早に歩き出した。

 

「ちょっと待ってください!買うって言ってもそんなっ……⁉︎そもそも錬金釜は色んな所に行って探しましたけど、どこにも見当たりませんでしたよ?」

 

リアーネがダクネスに引っ張られるフィリスに助け舟を出す。

その言葉に振り返ったダクネスの視線の先にいたクリスも、肯定するようにコクコクと頷いていた。

 

「そうか…、なら鍛治スキルを持っている人の所に……。よし、武具屋に行くぞ」

 

「ちょちょちょ、ストーップ⁉︎ダクネスさん落ち着いて‼︎」

 

フィリスの嘆きも虚しく、ダクネスは再び歩き出した。

 

 

そんな彼女に連れられるままやってきた武具屋の中。

そこでダクネスはとんでもない事を言い出した。

 

「突然ですまない、特注で大きな釜を作って欲しいのだが」

 

「「「っ⁉︎」」」

 

ダクネスの突飛な発言にフィリス、リアーネ、クリスの三人は目を丸くした。

 

「釜を?一体どんな釜なんだ?」

 

「フィリス、どういう釜が必要なのか教えてくれ」

 

フィリス達が驚いている事なんて気にも留めないで、ダクネスは武具屋のおじさんと話を進めて行く。

 

「どういう釜が必要って…、えと、人が入る程の大きさで、直径が大体…、あ、そうだ!」

 

ふとフィリスは手元からソフィーの手帳を取り出す。

そこには錬金釜についてイラスト付きで記されていた。

 

「デザインはこんな感じです」

 

そう言って武具屋のおじさんに手帳を手渡すフィリス。

その手帳を見たおじさんは不思議そうな顔をした。

 

「見た事ない文字だな…。だがデザインは分かった。直径とか深さをもう少し教えてくれ」

 

「えっとですね…」

 

そうして錬金釜について話し込むフィリスを満足げに見つめるダクネス。

 

「あの、これって本当に釜を作ってもらうんですか?」

 

「そうみたい…だね。お金はダクネスが出してくれるんじゃないかな?」

 

「本当ですか?大体特注なんて相当お金が必要になると思いますけど」

 

リアーネとクリスはダクネスの方を眺めながらそんな事を話していた。

正直、急展開すぎてついていけていなかった。

 

「あいよ、それじゃあこれだと七十万エリスと言った所か。払えるかい?」

 

「な、七十万エリス⁉︎」

 

あまりの値段の高さに軽く目眩すら覚えるフィリス。

しかしダクネスは平然とした顔で更に驚愕する内容を言い放った。

 

 

「百万エリス支払おう。その代わり明日中に出来ないか?」

 

 

「「「「は⁉︎」」」」

 

期せずしてダクネスを除き、その場にいた全員の声がハモった。

 

「いやいや、無理言うなよ嬢ちゃん!明日までってのは流石に厳しいって!」

 

おじさんは手を横に振ってダクネスの無茶振りを断る。

が、ダクネスは尚も冷静に言い放った。

 

「百五十万エリス」

 

「よし分かったおじさん頑張っちゃうぞい」

 

「頑張っちゃうぞい…じゃないですよ⁉︎本気なんですか⁉︎」

 

フィリスの突っ込みを聞き流し、武具屋のおじさんはダクネスと固い握手を交わした。

普通ならこういう時、リアーネがそこで待ったをかけるのだが、あまりの展開に彼女も呆然と目の前で起きた出来事を眺めているだけであった。

 

「よし、フィリス。次の所へ行くぞ」

 

「え?次⁉︎」

 

「まだ必要なものはあるか?」

 

「あるにはありますけど…」

 

「何だ?言ってみろ」

 

「えっと…フラスコとか試験管とか、他にも……というかそれらがあっても錬金術を出来る部屋がないし…」

 

ダクネスに流されるまま、ついついフィリスはそれに応じてしまった。

 

「よし、片っ端から行くぞ」

 

ダクネスはそうして再びフィリスを連れて店をあとにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ま、まさかここまでやるとは……」

 

 

フィリスは手元の紙を見ながら呟いた。

結局あの後、ダクネスの怒涛の勢いに抗えず、様々な店を巡った。

かつての世界で、錬金術の際に使用していた道具はほぼ全て買い揃え、リアーネとクリス、それにダクネスまでもがその両手に買い物袋を提げていた。

そしてフィリスも右手には買った道具が入った買い物袋が、左手には土地売買の際の契約書が握られていた。

 

「不動産屋が取り扱ってる賃貸物件を、まさか買うなんてね…」

 

リアーネもフィリス同様、ダクネスの奇行をただただ見つめるしか出来なかった。

 

「ふむ、一通り揃ったようだな。後は明日になって錬金釜が完成すれば錬金術が使えるのだな?」

 

ダクネスはフィリスにそんな確認を取ってきた。

 

「あ、はい……じゃない‼︎どうしてここまでしてくれるんですか⁉︎と言うよりどうしてここまで出来るんですか⁉︎ダクネスさんって何者なんですか⁉︎」

 

フィリスはうっかりまたダクネスに流されそうになるのを必死に堪え、今更ながら当然の疑問をダクネスにぶつける。

リアーネとクリスもジッとダクネスの方を見つめる。

どうやらダクネスの口から答えが出るのを待っているようだ。

 

「どうしてと聞かれても、作って欲しい物があるからだが」

 

「作って欲しい物のためとは言え、普通ここまでしませんよ。それに、あれだけの財力があるなら欲しい物も簡単に手に入るんじゃ……はっ⁉︎ヌルヌルの触手とか作れませんよ!」

 

「ち、違う‼︎それも興味はあるが今はそれ以外に必要な物があるのだ‼︎」

 

やっぱり興味はあるんだと皆が軽くドン引きしている中、ダクネスは御構い無しに続けた。

 

「私には今、とある危機が訪れているのだ。具体的には伝えられないから、これ以上の詮索はしないでくれ」

 

ダクネスの真面目な表情に、流石に真剣な空気を感じたフィリスもまた、真面目な表情で応答する。

 

「……分かりました。それでどんな物を作って欲しいんですか?」

 

その言葉を聞きダクネスはパッと明るい表情を浮かべた。

 

「そうか、引き受けてくれるか!それなら、人を眠らせたりでも気絶させたりでも何でもいい。何回も使えて、あまり人を傷つけずに無力化出来るような道具を作って欲しい。最悪、多少なり手荒な物でも構わない」

 

そんなダクネスの発言を聞き、フィリスだけでなく、その場にいたリアーネとクリスもまた怪訝そうな、それでいて咎めるような視線を送る。

だがダクネスも皆の思っていることを察しているようで。

 

「決して悪意がある訳ではないのだ。言っただろう、あまり人を傷つけずに無力化したい、と。だから、どうか何も聞かずに依頼を受けて欲しい」

 

そう言って頭を下げた。

 

「……分かりました、やってみますね。それで、いつまでに作ればいいんですか?」

 

ダクネスに根負けしたフィリスはとうとう諦め、依頼の話をしだした。

 

「ありがとうフィリス。それで具体的には六日後まで完成させて欲しいのだが」

 

「六日後までですね、分かりました。それじゃあやってみますね」

 

*****

 

それから全員でダクネスに買ってもらった家まで行き、荷物を置いた後、クリスとダクネスとは別れた。

 

リアーネは宿にチェックアウトをしに行き、一人取り残されたフィリスは家の中を軽くウロついた。

その家は豪邸のように大きい訳ではないが、かといって小さい訳でもなく、リアーネと二人で過ごすには充分すぎる位の広さを誇っていた。

最近まで空き家だったようだが、定期的にこの家の元管理人が掃除をしていたらしく、中は思ったよりも綺麗である。

また、最低限必要な家具も揃っており、今日からでも住めそうだった。

ベッドルームにはちょうど二つのベッドがあり、そのシーツは一切のシワなく綺麗に敷かれていた。

台所の方へと行くと、調理がしやすい大きさのシンクがピカピカに磨かれており、その付近には立派な食器棚が置いてあった。

 

その後も家の中を探索したフィリスはだが、未だ釈然としないでいた。

 

「何でダクネスさんはあんなにもお金を持っていたんだろう?」

 

ダクネスに連れられ必要な物をほぼ全て買い揃えた頃には、出費はおよそ一千万エリスを悠に越していた。

まぁその内の殆どがこの家を買うのに使われた訳だが。

しかし、そこまでの大金を持つなんて普通はあり得ない話であり、更にはそれだけの金があるのなら、他人を無力化出来るものなんていくらでも手に入るのではないだろうか。

 

「うー……、やっぱり考えても分かんないや。本人に聞いてみる……のはダメだよね。詮索しないでって言ってたし」

 

これ以上は考えても無駄だと判断したフィリスは、今日買ってもらった物の整理を始めた。

 

「これはここで、これはこっち。それからこの道具はここの棚にっと♪あ、そう言えば依頼されたものの、何を作ればいいのかな?」

 

ふとダクネスからの依頼について思案する。

他者を傷つけずに無力化出来るものなら何でも良いと言われたが、それにしたって色々な方法で無力化する事が出来るだろう。

一体何を作れば良いのかは完全にフィリス任せなのだ。

とりあえず依頼内容に合った道具がないか、ソフィーの手帳をパラパラとめくりながら考える。

 

「うーん、あっちの世界での戦闘で使ってた敵を弱体化させる道具とかで良いのかな?でもでも、大抵が毒とかあるから、毒は発現させないように作んなきゃだよね。あ、『そよ風のアロマ』でも良いのかな?」

 

『そよ風のアロマ』とは、フィリスがかつての世界で使ったりしていた回復アイテムである。

このアイテムが発する安らぎの香りは、興奮状態を落ち着かせる効果がある。

実際にフィリスは、喧嘩しているカップルを見かけた際『そよ風のアロマ』を使い二人を落ち着かせ、仲直りさせた事があるが。

 

「でも敵を落ち着かせたらやっぱりダメだよね」

 

ダクネスは他者を無力化したいと言っていた。

その他者と言うのは、ダクネスにとって恐らく『敵』なのだろう。

どういう訳で無力化させたいのかは知らないし、その敵と戦ったりするのか、或いはその敵から逃走するのか、それはフィリスにとっては知り得ない事だ。

しかし、そのどちらにせよ相手を落ち着かせ冷静にさせるのはマズい事だろう。

オマケに『そよ風のアロマ』はあくまで回復アイテムである。

敵を冷静にさせ、体力まで回復させてやる義理はないだろう。

 

「となると今の所、一番良さそうなのは暗黒水かな?」

 

暗黒水とは、相手に毒を与え、尚且つ眠らせるアイテムである。

また、作り方によれば毒を与えるのではなく、相手を弱体化させる効果に変わる。

今回は敵の無力化が目的のため、毒などを与えて殺すなどという選択肢は一切無い。

そのため毒の効果を敵を弱体化させる能力へと変化させ、尚且つ強烈な眠りを与える効果はそのままという非常に難しい事をしなければならない。

 

「それでもこの世界で初めての依頼だもんね。気合い入れて頑張んなきゃ。よーし、絶対成功させるぞー!」

 

フィリスはやる気に満ち溢れた声で声高に宣言した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それでダクネスさん。私の道具を使うときの状況がどんな風なのか教えてもらえると助かるんですけど。戦ったりするんですか?」

 

翌朝、フィリスは再びダクネスとギルドで合流し、必要な情報を聞き出していた。

リアーネとクリスも同じ席に座っており、朝食を食べていた。

 

「別に戦ったりする訳では無い。ただ逃げるだけだ」

 

「逃げるだけ…ですか」

 

「そうだ、因みに敵は複数。味方は…その時は恐らく私一人だろう。一人で大勢から逃げ回るのだ。極力敵の無力化をして逃走出来るようにしたい」

 

ダクネスは事細かに予測している状況を説明しだした。

何故そんな状況になるのか、どうしてそんな事が分かるのか。

それは依然としてフィリス達には分からない話だが、それについては詮索しない約束だ。

誰も事情を聞こうとはせず、ジッとダクネスの話を聞いていた。

 

「それじゃあ足を止めたり、遅くさせたりでも良いんですか?」

 

「あぁ、それでも充分助かるよ」

 

「そうですか…、それならやっぱり何とかなりそうかな」

 

ダクネスはフィリスの言葉に頷き、フィリスもまた、ダクネスの言葉に頷く。

 

人を傷つけずに無力化するとなると、フィリスには眠らせる位しか思いつかなかったが、今言ったような事でも良いのなら選択肢は相当広がる。

昨日フィリスが思いついた暗黒水は確かに今回の依頼にはうってつけの道具ではあるが、いざ作るとなるとその制作難度は中々高い。

 

オマケにここは異世界。

 

知らない材料ばかりのこの世界で、かつての世界でやってた通りに錬金が出来るとは限らない。

もちろん暗黒水以外の道具も上手く作れる保証はない。

全てが未知数ゆえに、選択肢は多い方が良いのだ。

 

「所で例の錬金釜はいつ頃完成するのかな?」

 

クリスは朝食を食べ終え、水を飲みながらそんな事を聞いてきた。

 

「確か今日中に作るって言っていたわよね」

 

その言葉にリアーネも相槌をうつ。

 

「それに関してだが、ギルドに来る前に様子を見に行ったら既に完成していたぞ」

 

「「「え⁉︎」」」

 

三人は驚きの声をあげた。

 

「もう完成したって早すぎませんか⁉︎」

 

リアーネは当然のツッコミを入れ。

 

「あのおじさん気合い入りすぎでしょ⁉︎どんだけがめついのさ⁉︎」

 

クリスは武具屋のおじさんをディスり。

 

「ホントですか⁉︎すごい…、どんな風になってるんだろう?楽しみだね、リア姉‼︎」

 

フィリスは期待に満ち溢れていた。

 

「それでどうやってその釜を運ぶのか聞いたのだが、どうやらそれは考えてなかったようだった」

 

「「「え⁉︎」」」

 

またもや三人の声がハモる。

しかし今度は全員同じ事を考えていた。

 

おじさんアホだなぁ_______と。

 

「だから運搬料を払うからフィリスの家に届けるよう頼んでおいた。一人当たり五十万エリスで、十人がかりで運ぶそうだ」

 

「運搬料高っ⁉︎制作費を上回ってるじゃないですか…」

 

フィリスが呆れたようにツッコミを入れるなか、今度はダクネスがフィリスに質問を投げかけた。

 

「もうそろそろ家には釜が到着している頃だろう。これで錬金術とやらが出来るようになっているはずだが、材料とかは揃っているのか?」

 

「今はまだ一個も材料はありませんね…。だから、今日採取に行こうかなと思ってたんです」

 

フィリスは昨晩、リアーネと相談して今日材料の採取に行こうと話していたのである。

リアーネもフィリスの言葉にコクコクと頷いていると、ふとクリスがある提案をしてきた。

 

「へー、採取かぁ…、なんか面白そうだね。あたしもついて行って良いかな?」

 

「え?ホントですか!助かります!」

 

フィリスはもちろんクリスの提案を快諾した。

土地勘もあまりなく、この世界の素材についても詳しく知らないフィリスにとって、クリスのように案内人になり得る人材は非常に心強いのだ。

 

「その採取に私も同行させてもらえないだろうか?」

 

ふとダクネスもクリス同様そんな提案をしてきた。

 

「え?ダクネスさんもですか?」

 

「あぁ、元々は私が依頼した事だしな。魔物と遭遇したらその時は私が盾となり皆を守ろう」

 

そう言うダクネスの表情は、いつもの様に魔物にズタボロにされる事を妄想した頭のおかしいドMの表情……ではなく、いたって真面目なものであった。

 

「うーん、うん、分かりました。それじゃあよろしくお願いしますね、ダクネスさん」

 

フィリスは笑顔で承諾した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おーい、こんなのはどうかなー?」

 

遠くでクリスの声が聞こえる。

その手にはカエルの粘液が詰まった瓶が握られていた。

 

 

あの後ギルドを出た四人は、共に街の外へと採取に出掛けていた。

 

 

先程からクリスは様々な材料を持ってきてくれる。

この世界の植物やら動物に詳しいのか、持って来てくれるものは実に多種多様で、それらを迅速にかき集めるその姿は、採取に慣れているフィリスから見ても大したものだった。

 

「ありがとうございます、クリスさん!それも持ち帰りますね」

 

フィリスはクリスの元へ駆けて感謝の言葉を述べる。

と、ふとダクネスもそこへやってきて。

 

「フィリス、こんなのはどうだ?」

 

「それは……雑草ですね。これで六回目です」

 

クリスとは対照的にダクネスは植物に詳しくないのか、先程から雑草しか持ってこない。

最初こそもしかしたら使えるかもと受け取りはしたが、ただの雑草が大量にあっても仕方ないので、今ではダクネスがせっせと摘んできた雑草はそこら辺に棄てている始末である。

 

「そ、そうか…、すまない……」

 

ダクネスは申し訳無さそうな顔で答える。

因みにダクネスは同じ事を繰り返すうちに、次第に目に見えて肩を落とすようになった。

本人としては頑張っているつもりなのだろうが、どうしても空振りに終わってしまうのだ。

だがまだ諦めていないのか、ダクネスは再び材料を探しに行った。

 

「フィリスちゃん、近くの森でこんな物を見つけたわ」

 

背後から近づいてきたリアーネが持ってきたのは、ヘドロの様な液体と、毒々しいキノコや植物だった。

 

「こんなのもあるんだ。このキノコとかは結構使えるかも。リア姉、このキノコを採った付近にもっと生えてると思うし、もしかしたら別の種類もあるかもだからもう一回行って来てもらえる?」

 

「分かったわ、フィリスちゃん」

 

フィリスの指示を受け、リアーネは再び森の中へと向かって行った。

それぞれが様々な場所で採取する中、フィリスはというと鉱石の声を聞こうとしていた。

 

フィリスには生まれつき、鉱石の声を聴ける能力があるのだ。

 

彼女の故郷のエルトナは、岩をくり抜いたような所にあるので、鉱石採取が盛んである。

そのため鉱石の声が聴けて、その鉱石の場所が分かるフィリスは、錬金術に触れるまではよく長老に頼まれて鉱石拾いの仕事をしていたのだ。

その能力をここでも活かそうと試みるフィリスだったが、一つだけ障害があった。

 

「どうしよう…、あんまり声が聴こえない…」

 

ここはフィリス達の世界とは違う世界。

向こうの世界の鉱石の声が聴けても、こちらの世界の鉱石の声は未だ聴こえていなかった。

がしかし。

 

「声は聴こえないけど、それらしい音は薄っすら聴こえる…かな?」

 

先程から鉱石の声を聴こうとしているフィリスには、確かに何かしらの音は届いていたのだ。

その音がする方へ向かって右へ左へと、あちこち歩き回るフィリス。

そうしてフィリスが到着したのは、大きな崖壁の所だった。

そこへ辿り着くと、先程までの音がより一層大きくなった。

 

「色んな所から音がする…。よぉし、まずはここだね!」

 

色々な音が聴こえている中、最も近い所にある音の発信源の前に立つと、おもむろに杖を振った。

本来ならピッケルを使ったりするのだろうが、生憎そんな物は持っていない。

そういう時、フィリスは大抵杖で地道に岩を削っていくのだ。

杖が壊れないように慎重に、それでいて力強く岩を削っていけるのは、そんな作業にも慣れてしまっているからだろう。

汗を流しながらも岩を掘り進めていくと、そこには淡い水色をした鉱石の塊が見えてきた。

 

「はぁ…はぁ…、これは?……わっ⁉︎冷たい!」

 

フィリスがその鉱石に触ると、ヒンヤリとした感触が感じられた。

 

「これ…ハクレイ石みたい…」

 

ハクレイ石とは、フィリスのよく知る鉱石の一つで、ヒンヤリとした冷たい鉱石なのだ。

またハクレイ石は『レヘルン』と呼ばれる氷の爆弾を作る際などに用いることができる鉱石でもある。

 

「レヘルン…レヘルン……、あっ!『レヘルン』で床を凍らせれば足止めになるかな!」

 

そんな事を閃いたフィリスは、周囲の岩を掘って埋まっていたハクレイ石のような鉱石を取り出した。

 

「よぉし、この調子でどんどん掘っちゃおう!」

 

フィリスは杖を片手に採掘作業を再開した。

とその時、ダクネスがこちらに向かって走ってきた。

その手には何か握られているようだった。

 

「フィリス、こんなのを見つけたんだ。これは錬金術に使えないだろうか?」

 

「雑草ですね。使えますけど要りません」

 

*****

 

「リア姉、クリスさん、結果はどうだった?」

 

「あたしはそれなりに採取できたと思うよ。珍しい花に珍しい草。蚕とかもいたし、色んな木の枝とかも拾ったし、カエルの粘液も採ったしね。それから綺麗な湧き水も組んできたよ」

 

「私はフィリスちゃんに頼まれた通り、色んなキノコを集めてきたわ。ちょっと臭いけど、ヘドロみたいな怪しい液体も少し汲んだわね。まぁ使えるかわからないけれど」

 

再び合流したリアーネとクリスに対し、成果を聞くフィリス。

二人ともそれなりに採取出来たようで、フィリスもその報告を聞き満足そうに頷いた。

 

「うん、それだけあればいくつか道具は作れそうだね」

 

「所でフィリスちゃん、そっちはどうだったの?何やら大荷物だけど」

 

リアーネがフィリスに問いかけると、フィリスは「フッフッフッ」などと言いながら、持っていた大きな麻の袋の中身を見せた。

 

「じゃーん!こんなに鉱石が採れちゃいました‼︎」

 

「おぉ!」

 

フィリスがドヤ顔で披露した大量の鉱石に、クリスは感嘆の声を漏らした。

そこには淡い水色の鉱石だけでなく、情熱的な赤色をした鉱石や、夕陽を浴びて輝く黄色の鉱石など、様々な鉱石がゴロゴロと入っていた。

 

「さすがはフィリスちゃんね。姉として誇らしいわ」

 

リアーネはデレた声でフィリスを褒め出す。

久々にリアーネのシスコンが姿を現した瞬間であった。

 

「いや〜、それ程でもあるよ〜」

 

「あるんだ…」

 

満更でもないフィリスにツッコミを入れるクリス。

そんな三人の元に、ダクネスが大量の植物を抱えてやってきた。

 

「はぁ…はぁ…、フィリス。これならどう」

 

「雑草ですね。八回目です」

 

「(´・ω・`)」

 

ダクネスの言葉を遮り断言したフィリス。

ダクネスはその場でうずくまった。

 

「なぜだ…、どうして私は雑草しか持ってこれないんだ…」

 

目に見えて落ち込むダクネスに、クリスが助け舟を出す。

 

「ま、まぁダクネスも頑張ったんだしさ。気を落とさなくていいよ。それに、これだけの材料を運ぶのは骨が折れるしさ、ダクネスも荷物持ち手伝ってよ」

 

「あ、あぁ。そうだな。この際荷物持ちとして役に立つしかないからな…」

 

ショボくれながら荷物をもつクルセイダーと、そんな彼女に苦笑を浮かべる三人。

 

こうしてその日の採取は終わったのだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「錬金釜だ‼︎私がよく使ってた錬金釜と同じ釜だ‼︎」

 

家に帰ると、そこには(ダクネスが)依頼しておいた錬金釜が家のど真ん中に鎮座していた。

 

「すごい…、確かにフィリスちゃんが使ってた錬金釜にソックリね」

 

「へぇ、これが錬金釜か。なんかホントにそれっぽい雰囲気が出てるね」

 

リアーネとクリスも鮮やかな金属光沢を放つそれを見て、口々に感想を述べた。

そんな様子を満足げに眺めていたダクネスは。

 

「それではフィリス。私はもうそろそろ帰るから、後は頼んだぞ」

 

そう言って採取してきた材料を床に置き、帰ろうとした。

 

「はい、任せてください!」

 

フィリスはそんなダクネスに向かって頼もしい事を言った。

 

「それじゃあ、あたしももう帰るかな。じゃ、またね」

 

クリスもそう言い残し、材料を置いて家をあとにした。

二人を見送ったあと、フィリスは錬金釜に向き直り、腕を伸ばして気合たっぷりに宣言した。

 

「久々の錬金術だぁ♪よぉし、今から色んな道具作っちゃうぞー!おーーー‼︎」

 

「フィリスちゃんフィリスちゃん。まず大衆浴場に行って、それからご飯を食べに行きましょう」

 

今日一日で汗をかきまくり、土などで身体が汚れた状態で声高に宣言するフィリスに、リアーネは待ったをかけた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ホントに……ウォルバク様は一体どこにいるんだ?」

 

日が暮れて、美しい星空が広がる中。

 

 

『そいつ』はアクセル付近の草原に降り立っていた。

 

 

「うーむ、ここもハズレか?いや、もう少し探してみるか」

 

漆黒の肌に筋骨隆々の大柄な体格、黄色い瞳に禍々しい角と牙に大きな羽。

それはまさしく『悪魔』と呼ぶに値する姿をしていた。

真夜中に佇むその巨体は、見る者全てを震え上がらせるような、凄まじいオーラを放っていた。

 

「森の中とかも探して見るか…。…………ん?何だこれ?」

 

そこには、大量の雑草が不自然に山積みにされていた。

悪魔がそれを不審に思い、その雑草の山を漁ってみると。

 

「これは……変な瓶だな。まぁ一応貰っておこうか」

 

悪魔を模したような瓶が、そこには埋まっていた。




ホントは依頼を成功させる所まで書きたかったんですが、相当長くなったのでここいらで区切ります。
アイテムとか設定とか作り方とか、色々調べてたら結構時間かかっちゃいましたね。

それではいつもの新語解説いってみよー

そよ風のアロマ…回復アイテム。それなりに使えると自負している。

暗黒水…そこそこの強さを誇るアイテム。名前からして強そう。

レヘルン…氷の爆弾(何言ってんだ俺)

ハクレイ石…冷たい石。レヘルンなどの材料になる。

鉱石の声…実際にある設定。フィリスの師匠であるソフィーは、鉱石だけでなく素材全ての声が聴こえる。らしい。我々プレイヤーは、正直具体的なことはあまり分かっていない、と思う。
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