ぶっちゃけゲームやってる方でないとチンプンカンプンになる可能性が高いかと思います。
もっと俺に説明力があれば……
気を失ったリアーネを抱えたフィリスは、扉の前に落としたダクネスからの報酬を回収し、家の中へと入った。
寝室にリアーネを運び込んだ後は、リアーネの怪我の様子を確認した。
「酷い……全身に痣ができてる。頭も強く打ったみたいだし、何よりこの左腕……折れてる、よね」
そこまで確認したフィリスはとりあえずの応急処置をする。
まずは頭の怪我の処置に取り掛かる。
生憎ガーゼが無いので、フィリスはまだ使ってない綺麗なタオルを持ってきて直接止血する。
その後別のタオルを濡らして絞り、リアーネの頭に乗せてアイシングをする。
次にキッチンからまな板を持ってきて、骨折部にあててタオルで固定する。
まな板は少々大きいような気もしたが、この際固定できればなんでも良い。
左腕を固定した後は隣にあるフィリスのベッドから枕を持ってきて、その上に左腕を乗せ心臓より高い位置にする。
それからは『医者いらず』を惜しみなく使い、全体に処置を施していく。
「とりあえずこんな感じで良いかな?」
フィリスはいつの間にか頬を伝っていた汗を拭いながら一息ついた。
元いた世界を旅していた際、万が一の時に備えてリアーネに応急処置の仕方を教わっていたのだが、まさかこんな所でそれが活かされるとはフィリスは思ってもいなかった。
「覚えてて良かった…。それもリア姉のお陰なんだけどね」
フィリスはそう言うと寝室を後にし、錬金釜の前へとやってきた。
「『神秘の霊薬』は…ドンケルハイトが材料に必要だったよね…。今の所ドンケルハイトの代わりになるような材料は無いし、そもそも作った事もない……あ!『ラアウェの秘薬』とかなら出来るかな?『生命の蜜』ももしかしたら出来るかも…?」
『神秘の霊薬』、『ラアウェの秘薬』、『生命の蜜』とは、いずれもが強力な回復アイテムである。
そう、フィリスは錬金術でリアーネの為に回復アイテムを作ろうとしているのだ。
強力な回復アイテムを使えば、数ヶ月かかるような骨折でも、数日あれば完治させる事が出来るのだ。
なお、今までフィリスが作った中での最高傑作は、アングリフがフィリスを守る為に受けた相当深い傷を、たった一日で治す程であった。
因みに実際にその効果を受けたアングリフは「気持ち悪い」と言う感想を言ったが為に、ふさがった傷口をフィリスに思い切り叩かれていた。
「それじゃあ早速使えそうな材料を探さなきゃだね」
そうしてコンテナの中に入れてある材料を確認するフィリス。
しかし、その中身を見たフィリスは顔を青ざめさせた。
「使えそうな材料が、殆どない…」
ダクネスからの依頼の際、様々な事を確認する為に手当たり次第に錬金術を行なったのだが、それにより材料が相当減ってしまっていた。
一応なんとか使えそうな材料もあるものの、フィリスが作りたいのは『強力な』回復アイテムである。
品質や錬金成分に気をつけなければ、ちょっと良く効く程度の物しか出来ないのである。
どうしたものかと思案していると、フィリスはふとある事を思い出した。
「そうだ、ウィズさんだ!ウィズさんに手伝ってもらおう!」
今日会ったウィズが言ったことを思い出したフィリス。
『もし何かお困りな事がありましたら、その時は力になります』
それを言われた時は、正直そんな機会あるのかなと思っていたが、まさに今日がその時であった。
「リア姉、もう少しだけ待っててね…」
フィリスはポツリとそんな独り言を零すと、家を飛び出し、ウィズの店へと走っていった。
*****
「ウィズさん!助けてください!」
「ひゃっ!…って、フィリスさんじゃないですか。どうされたんですか、こんな遅くに。何か買うんですか?」
店に突入するなり大声を上げたフィリスに、ウィズは可愛らしい悲鳴を上げた。
「商品は別に要りません。それよりも、助けて欲しいんです!」
「い、要らないんですか……。えと、それで助けて欲しいって、どうされたんですか?何かあったんですか?」
ウィズはフィリスの救援に応じる気があるらしく、事情を聞いた。
フィリスは今の状況をかいつまんで説明した。
その説明を受けたウィズは、少し険しい顔つきになっていく。
「そうですか…フィリスさんのお姉さんが……」
「はい、それで回復アイテムを作りたいんですけど、錬金術で使う為の材料があまりないんです」
「錬金術…?」
フィリスから聞く初めての単語に首をかしげるウィズ。
だが、フィリスはそんなウィズの疑問を流すように続けた。
「錬金術については今は話してる時間無いので省きますね。それで、外に材料を取りに行きたいんですけど、リア姉を置いて長い間外にいるわけにも行かないので、私が出かけている間リア姉の看護をしていて欲しいんです」
「リアーネさんの看護ですか?」
ウィズの確認にコクと頷くフィリス。
それを受けたウィズは優しく微笑んだ。
「分かりました。リアーネさんの事は任せてください」
「……ッ!ありがとうございます‼︎」
フィリスの依頼を快諾したウィズに、フィリスは感謝した。
この店での仕事とかもあるだろうに、こんなに親切にしてくれるウィズにフィリスが軽く感動していると。
「どうせ店にいても特にやる事無いですしね」
「ア、アハハ…そうですか……」
感謝の気持ちが台無しである。
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「この大きな釜は?」
「錬金釜ですよ。それを使って錬金術をするんです」
「へ〜、錬金術がどういったものかは知りませんが、こんな大きな釜を使うんですね」
フィリスはウィズにリアーネの看護をしてもらう為、ウィズを家へと迎え入れていた。
早速ウィズが錬金釜に興味を持ち出したが、今それを説明している時間すら惜しいフィリスは、最低限の説明だけをしながらウィズを、リアーネを寝かしている寝室へと案内する。
「これは…確かに酷い怪我ですね…」
リアーネの容態をみたウィズは深刻そうな顔でそう言う。
「ウィズさんはいざという時の対処とか、そういったことは出来るんですか?」
「はい。自分で言うのもなんですが、私これでも元は凄腕のアークウィザードとして名を馳せていたんですよ?冒険の中で怪我をした時とかも応急処置とかしっかりやってましたし」
「そうですか、ならリア姉の事、お願いしますね」
ウィズの答えにホッとしたフィリスは、そのままウィズにリアーネを預けて寝室を出た。
そして、ここ最近で色々と試作した道具の中から、使えそうなものをあらかた鞄に詰めると、とあるアイテムを持って再び寝室に戻る。
「フィリスさん、それは?」
ウィズはフィリスが手にしているそれを見ながら質問してくる。
「これは『そよ風のアロマ』という道具なんです。錬金術で作った回復アイテムで、私が出かけている間ここで焚いていて欲しいんです」
「『そよ風のアロマ』…ですか。焚いてるだけで効果があるんですか?」
「はい…といってもあまり品質は良くないので、効果は薄いと思いますけどね」
そこまで言うと、フィリスは持っていた複数の『そよ風のアロマ』をウィズに渡すと、今度こそ外へ出るべく扉の前までいき。
「それじゃあウィズさん、すぐに戻ってくるので、それまでの間よろしくお願いしますね」
「はい、いってらっしゃい、フィリスさん」
ウィズに見送られる中、フィリスは家を飛び出し街の外へと走って向かった。
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太陽が完全に沈み、満点の星空が儚げに地上を照らす中、フィリスは足早に門の前までやってきた。
昼間は冒険者や行商人などがひっきりなしに行き交っていたこの門も、今となってはその面影も見られなくなっていた。
守衛の人は夜でもしっかりいるようだが、なんだか眠たげな表情で外を見つめていた。
フィリスはそんな門を潜り抜け、街の外へと繰り出した。
外に出てすぐの平原をひたすら歩き、フィリスがやって来たのは街近くの森の中。
生い茂る木々が、夜空からの星明かりを差し込ませまいとしているかのように蓋をしており、足下がよく見えない。
しかし元の世界で夜の冒険をしょっちゅう繰り返していたフィリスは、慣れた感じでスタスタと森の中を歩き、質の良い薬の材料を探していた。
のだが。
カサッ
「ひゃっ⁉︎ななな何⁉︎何の音なの⁉︎」
ただの木の葉が落ちる音であったのだが、フィリスは酷く混乱しているかのようにパニクった。
ここはあくまでも異世界。
知らない事だらけの異世界で夜に冒険など、フィリスにはやはり相当な恐怖を抱かせる訳である。
「って、驚いている場合じゃないよね。早くリア姉の為に薬の材料を探さなヒッ⁉︎」
今度は木の枝に引っかかったフィリスは、再び恐怖の悲鳴を上げる。
「く、暗くてよく見えないからね。幾ら慣れてるからと言っても、木の枝に引っかかる事もあるよね。うん、あるよね」
誰も居ないのにそんな言い訳をしだすフィリス。
こうでもしないと、恐怖を抑える事が出来ないようだ。
「あ、これ使えるかも。ってコッチにもある……。もしかしてこの辺りは、この植物の群生地なのかな?」
恐怖と闘いながらも森の中を進んでいくうち、フィリスはとある植物の群生地を見つけた。
それは、紫色の花びらをつけた可愛らしい花だった。
その花は一見普通の花のようだが、じっくり見ていると、その紫紺の花びらに吸い込まれるような、そんな感覚がした。
「何でか分からないけど、なんかこの花、薬の材料にぴったしなような、そんな気がする…」
フィリスは直感でそう感じていた。
フィリスの先生であるソフィー曰く、「素材の声」なるものが存在するらしく、その素材が錬金術でどのような道具になりたいかを聴く事が出来るらしいが、フィリスにはそんな芸当はまだ出来ないでいた。
が、フィリスも極稀に何となくであるが、フィリスが聴ける鉱石の声に似たようなものを感じる事が今までにもあったのだ。
言葉で言い表せないが、直感がそう示している。
今回もそんな事を感じていたのだ。
「もしかして、これが素材の声なのかな?………うーん、やっぱり今の私にはよく分からないけど、この花は少し多めに摘もうかな」
そう言うとフィリスは、森の中にポツンとある紫色の花の群生地の中、品質の良いものを厳選し採取していく。
一本、また一本と花を摘んでいく内、気づけば採取した素材を入れる鞄がそれなりに埋まってきていた。
「っと、流石に摘みすぎたかな?とりあえず、これだけあれば薬の材料はもう十分だよね」
そうしてそこでの採取を終えたフィリスは、今度は街の近くの湖へと向かっていった。
フィリスが今回作ろうとしている『ラアウェの秘薬』は、その材料に"ワームフィッシュ"と呼ばれる魚が必要となってくる。
"ワームフィッシュ"と言うのはフィリスの元いた世界の魚で、薬としても非常に優秀な効果を誇るそれは、乾燥させる事でより高い効果を発揮する事が出来るのだ。
「ワームフィッシュって面白い口だったよね。むーってしてて、しっぽもくるくるしててー」
何を言っているのか分からないだろうが、ワームフィッシュというのは一言で言うとタツノオトシゴのような姿をした魚である。
とはいえこちらの世界にもワームフィッシュがいるとはフィリスも思ってはいなかった。
だが、それに代わる魚が採れればとは考えていた。
幸いな事に、錬金術で色々と試作した中に『つりざお』があったのだ。
錬金術で作られたそれは、探索用アイテムとして元の世界でも愛用していたものである。
「よーし、いっぱい釣るぞー、おー!」
花の群生地から歩く事数十分、目的地の湖に到着したフィリスは、持ってきていた『つりざお』を構え、仕掛けをつけたのち、それを湖に垂らす。
夜空の月明かりを反射している湖のその水面は非常に穏やかで、仕掛けを垂らしたポイントを中心に、波紋が全体へと広がっていった。
糸を垂らした事により僅かに揺れた水面だが、それ以降は待てども待てども何ら反応はなく。
「うーん、この湖って、もしかして何も生息してないのかな?」
星空に照らされている湖は、目に見えて汚く、とても水質が良いとは思えないものだった。
それでもめげずに糸を垂らし続けるフィリス。
時にはエサを軽く揺らし、撒き餌でいるかどうかも分からない魚を誘い、それでも駄目な時は釣り場を移し_______
そんな事を繰り返すも未だ釣果はゼロであった。
「ちょっとこれは時間かかり過ぎだよね…。仕方ないから、ここは諦めて別の素材を…」
と、そこまで言った時だった。
ポチャン
ふとフィリスが垂らしていた糸が強力な力で引っ張られた。
「うわっ⁉︎え、もしかして、かかった⁉︎ってか重っ⁉︎」
エサに喰らい付いたそれは、フィリスがかつて体験したことのない力で糸を引き、フィリスごと湖に引きずりそうであった。
が、フィリスだって負けてられない事情があるのだ。
フィリスは何とか踏ん張りながら、咄嗟に片手を離し、『ドナーストーン』を取り出す。
片手を離した際思い切り湖の方まで引っ張られ、足が湖に浸かりそうになったものの、何とか間に合ったフィリスは『ドナーストーン』を持ったまま、再び両手で『つりざお』を引いた。
二方向からとてつもない力で引っ張られている『つりざお』は、今にも壊れそうな程反り返っていた。
恐らく錬金術で作られたものでなければ、とっくに壊れていただろう。
『つりざお』を引きながらも月明かりで何とか見える糸を辿り、エサに喰いついているやつが居るであろう場所を推測していく。
「よーし、いっくよー!」
姿の見えないそいつの位置の予測をし終えると、フィリスは手にしていた『ドナーストーン』をその地点目掛けて投げつけた。
瞬間。
バチィン
と。
『ドナーストーン』が着水した地点を中心に電撃が湖全体へと広がっていく。
「力が弱まった!」
相手が糸を引く力が急速に弱まっていく。
フィリスはそれを機に全力で『つりざお』を引っ張った。
そうして段々と姿を現してきたのは。
「え、何これ……ワニ⁉︎」
"ワームフィッシュ"とは程遠い凶悪そうなモンスターであった。
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「うぅ、重い……、釣りは最後にしとけば良かった……」
結局あの後、陸へと引き上げたワニのようなモンスターに様々なアイテムを使い、完全にトドメを刺してから、縄でその口を縛りズルズルと引きずって居るのだが、その余りの重さにフィリスはつい愚痴を零していた。
「一応こうして持って帰っているけど、本当に使えるのかな?」
せっかく苦労して手に入れた貴重な素材(になるかどうかは分からないが)、無駄にしたくはないのだが、こうも重いと運ぶ気力がなくなってきてしまう。
「でも生命力は凄かったし、どうにか使えるかな?『クラフト袋』をマトモに喰らってからも抵抗を続けてたもんね」
フィリスは少し前の湖での出来事を思い出す。
最初は『クラフト袋』を一発喰らわせれば何とかなると思っていたが、これが中々しぶとい相手であった。
その後『小悪魔のいたずら』を使い弱体化させた所で杖で思い切り殴ってみたものの、やはりまだ倒れることはなかった。
最終的にフィリスは奥の手として『フラム』をワニに投げつけたのである。
『フラム』とはいわゆる爆弾の事で、『レヘルン』や『ドナーストーン』などとは違い、純粋に爆発する道具である。
その『フラム』を使い、ようやくこのワニは永い眠りについたのである。
「えっと、残りは(神秘の力)カテゴリのアイテムだね」
フィリスはワニを引きずりながら、必要な材料について思案する。
(神秘の力)とは、アイテムをカテゴライズ化する際の、一種の分類先である。
もっと分かりやすいもので言うと、(食材)、(植物類)、(水)、(鉱石)などが例えとして挙げられる。
因みに先程採取した紫の花は、最低限(植物類)にカテゴライズされるだろう。
もしその花が薬になると言うのであれば、(植物類)に加え、(薬の材料)という物にもカテゴライズされるはずだ。
このように素材のカテゴライズに関しては、複数のカテゴリーを含む場合がある為、どれがどれだかについては、実際に錬金術で使ってみないことには分からないのである。
そして今、フィリスは正に(神秘の力)カテゴリーの材料を探しているのだが、(植物類)や(鉱石)と違い、その分類基準は目に見えて分かるようなものでは無いので、先程からフィリスは悪戦苦闘を強いられているのだ。
「確か、あっちの世界では"プニプニ玉"も(神秘の力)にカテゴライズされてたよね。と言うことは、それに似た魔物も似たような材料になるのかな?」
フィリスの言う"プニプニ玉"というのは、フィリスの世界における魔物、「プニ」が落とすドロップアイテムである。
「プニ」の特徴としては青や緑など、多種多様な種類の「プニ」が存在し、大きさは基本的に小さめで丸っこい魔物である。
その体は"プニプニ玉"を中心に水で出来ており、いわば"プニプニ玉"が心臓のようなものである。
「まぁそんなモンスターが、都合よくこの世界にいるわけないよね」
フィリスがそんなフラグになるような事を言った途端。
ガサガサッ
「ひゃっ⁉︎」
突如として木の上から聞こえたその物音に驚くフィリス。
恐る恐る見上げると、そこにはプニに似た何かが存在していた。
「い、い、居たぁぁぁぁぁぁ!」
木の上に居たそれはフィリスの目の前に降り立つ。
その姿は多少の差異こそあれ、プニにそっくりで。
「スゴイ…"プニプニ玉"っぽい何かが中心に見えるよ!」
フィリスの思い描いた通りの謎の生物の登場に、フィリスは喜びを隠せなかった。
「よく見たらこの木の上に沢山いるね。よーし、『フラム』でまとめて吹き飛ばしちゃおーっと!」
フィリスがそんな物騒な事を言って取り出したのは、先程ワニのようなモンスターにトドメを刺したそれと同じ物だった。
ガサガサガサッ
木の上のプニもどき共が一斉にフィリスに襲いかかる中、フィリスは落ち着いてそれを回避すると、そいつらの中心地は目掛けて『フラム』を投げつけた。
次の瞬間、目の前のプニもどきは爆発の威力で死散し、後には"プニプニ玉"のような、彼らの核とも言えるべき物がそこら中に落ちていた。
「やった、大漁だ!」
フィリスは上機嫌でそれらを集めると、街へとその帰路を急いだ。
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「ぜぇ…はぁ…、戻りましたよ、ウィズさん」
長い道のりをとてつもない重量の物を引っ張りながら帰ってきたフィリスは、息を切らしながら家の中へと入っていった。
「あ、おかえりなさい、フィリスさん…ってえぇ⁉︎何ですかそのワニ⁉︎」
「あぁ、湖で釣りました」
「釣ったんですか⁉︎」
ウィズは色々と聞きたそうにしているが、話は後だと言わんばかりにフィリスはウィズにリアーネの容態を聞く。
「それで、私が出かけている間にリア姉はどうでしたか?」
「リアーネさんなら今も安静にして眠ってらっしゃいますよ。気を失っているというよりかは、普通に寝ているような気もしますね」
その言葉を聞き、フィリスは寝室へと向かう。
そこには最後にフィリスが見た時よりも、大分落ち着いた様子のリアーネが寝ていた。
「怪我の具合は……、あれ?思ったよりも大分治ってる?」
「えぇ、小さな傷などは、あらかた治ってしまったみたいですね。後は頭部の怪我と、左腕の骨折ぐらいですね」
そんなウィズの言葉にフィリスは首を傾げる。
確かに『医者いらず』の効果はそれなりのものだと思うし、『そよ風のアロマ』だって焚いてはいた。
しかし『医者いらず』でも全ての軽傷の部分を治せていたわけではないし、『そよ風のアロマ』だってその効果は微々たるものの筈。
それがなぜここまでの効果を発揮したのだろうか?
いや、或いはウィズが何かをしたのか_______
「ウィズさん、リア姉に何かしました?」
「えっ?いや、別に何もしてませんよ?ドレインタッ……体力や魔力を相手から吸い取ったり与えたりするような、そんなスキルは一切使ってませんよ?」
「そ、そうですか…」
何かしたらしい。
どうやらこのダメ店主は嘘を吐くのも下手らしい。
しかしその実、内面は非常に優しく穏やかで、困っているフィリスに手を差し伸べてくれた。
そのドレインなんたらとか言うものは聞かれたらまずいものなのか、それはフィリスには知り得ぬことであったが、今はただただウィズに感謝するしかなかった。
「ウィズさん、ありがとうございました」
「えっ、いえ、私はべ別に何もしてないですですよ?」
目に見えて狼狽えるウィズを微笑ましく思いながら、フィリスは採取してきた素材を釜の近くに持ってくる。
「えっと、今からその錬金術……と言うものを行うんですか?」
「はい、見ていきたかったらどうぞ」
フィリスはウィズの相手をしながら素早く錬金術に取り掛かる。
時刻は日付が変わり、最早誰もが眠りについている頃だろうか。
フィリスは本来の『ラアウェの秘薬』のレシピを思い出しながら、まず『中和剤・緑』を錬成していく。
『ラアウェの秘薬』のレシピには『中和剤・緑』は直接関係はなく、作ろうと思えば今すぐにでも作れるのだが、フィリスは少しでも完成した際の効果を高めようと考えていた。
『中和剤・緑』の材料として、採取してきた紫の花から、【回復力増加】系統の特性を持つ物を選んで調合していく。
特性というのは、同系統の物を組み合わせて調合させる事で、より強力な特性となるのだ。
今回の場合で言えば、【回復力増加】と【回復力増加+】の二つの特性を持つ花を材料にすることで、それらが組み合わさり【大きな回復力】という特性へと昇華した。
完成した『中和剤・緑』に特性の【大きな回復力】をつけ、それを材料に(水)カテゴリの道具である『ピュアオイル』を作成する。
『ピュアオイル』はその材料に中和剤を要するのだ。
作成した『ピュアオイル』に先程の【大きな回復力】の特性をつけると、フィリスは再び『中和剤・緑』の作成に取り掛かる。
今度は同じ要領で、作った中和剤に【強烈な回復力】と呼ばれる特性をつける。
そして、それを材料に『ピュアオイル』を作成し、その特性を引き継がせた。
そうして完成した二種類の『ピュアオイル』を材料に、再び『中和剤・緑』を作成する。
【大きな回復力】と【強烈な回復力】、この二つの特性を組み合わせると、【究極の回復力】という最高峰の回復力を誇る特性へと昇華するのだ。
また、『中和剤・緑』のレシピとしては、(水)カテゴリの材料が二つ、(植物類)カテゴリの材料が二つである。
(水)カテゴリに今の『ピュアオイル』二つを使うとして、残りの(植物類)カテゴリには、更に【回復力増加+】と【回復力増加++】を持つ花を使い、【強烈な回復力】を改めてつける。
【究極の回復力】と【強烈な回復力】を引き継がせた『中和剤・緑』を材料に、今度こそ『ラアウェの秘薬』の材料とする『ピュアオイル』を作成。
そこまでやってから、ようやく『ラアウェの秘薬』の錬金に取り掛かる。
フィリスは掻き集めてきた材料の中から、慎重に使用するものを選びながら、釜の中へと投入していく。
見知らぬ材料や、勝手の分からない物もあったが、錬金術は順調であった。
これも材料の声というものなのだろうか、今のフィリスは、捕獲したワニなどの錬成成分は分からないものの、何をどうすればいいのかが何となく分かっていた。
「おぉ……」
ウィズが感嘆の声を上げる中、フィリスは的確に錬金術を進める。
「『ピュアオイル』には特性として【究極の回復力】と【強烈な回復力】がついてるから、あと引き継げるとしたら残り一個だよね」
そう、特性というのは、一つのアイテムにつき三つまでしかつける事が出来ないのだ。
『ラアウェの秘薬』が完成した際に、今の二つの特性を引き継ぐとしても、まだ枠は一つ余っている。
当然フィリスは、その枠も無駄にする気はなかった。
「『ラアウェの秘薬』のレシピの中に、確か(薬の材料)が二つ必要だったはずだから…」
その事を確認したフィリスは、摘んできた紫の花から、それぞれ【回復力増加】と【回復力増加+】の特性を持つ物を選択すると、それを釜の中へと入れる。
これにより、錬金術が終われば【大きな回復力】へと昇華しているはずだ。
もしこれが成功すれば、元々強力な回復力を誇る『ラアウェの秘薬』に、【究極の回復力】、【強烈な回復力】、【大きな回復力】の三つをつけ、かつてない程の回復アイテムが完成することになる。
「フィリスさんフィリスさん、何だか釜の色が変わってきましたよ?」
ウィズの視線の先にある釜の中、確かにそれはウィズの言う通り変色し始めていた。
が、釜の色が変色したからといって毎回爆発する訳ではない。
「あはは、大丈夫ですよ、ウィズさん。これは……成功する時の色ですから……」
フィリスはこの色に見覚えがあった。
爆発する時の前兆である禍々しい色……ではなく、会心の出来だったときに度々お目にかかる、見るものを惹きつけるような鮮やかな色であった。
だがフィリスは、そんな色になっても気を抜かず釜の中をぐるぐると掻き混ぜる。
そして_______
「ふぅ………完成だぁぁぁ‼︎」
「きゃっ⁉︎ちょ、いきなりどうされたんですか?」
突然大声を出したフィリスにウィズは驚きの声をあげた。
しかしそんな事は御構い無しというように、フィリスは釜の中から完成したそれを取り出すと、真っ先に寝室へと向かった。
いつの間にか窓の外は明るくなっており、カーテン越しに差す陽の光が優しく寝室内を照らしていた。
焚いていたはずの『そよ風のアロマ』も、キャンドルが完全に燃え尽きており、香りが薄くなっていた。
そんな部屋の中、未だ眠り続けているリアーネの横にフィリスは立った。
「…リア姉、お待たせ」
ただ一言、フィリスはそう言うと、リアーネの口元へと『ラアウェの秘薬』を運び_______
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……ん………んん、あ…………ここ…は?」
目が覚めるとそこは、未だあまり見慣れない天井が広がっていた。
「……眩しい」
カーテンの隙間から差し込む陽の光をもろに顔に受け、寝ぼけ眼を腕で覆い被せようとするが。
「腕……重い…」
思うように動かない左腕。
「そっか……、確か折れたんだっけ」
段々と意識が覚醒してきたリアーネは、ひとまず体を起こし、思うように動かない左腕を見て………。
「_______っ、そうね、確かにこれは重いわけね」
一切腫れがない、健康的な肌色をした左腕が、まな板に固定されているのを見て、リアーネはクスと笑った。
そんな左腕のすぐ近く、リアーネのベットに腕を置き、そこに顔をうずめて眠るフィリスが居た。
「すぅ……すぅ……」
穏やかな寝息を立てるフィリス。
リアーネはそんなフィリスの頭を撫でながら、自分が気を失う直前、フィリスに言ったことを思い出していた。
『……ゴメンね、悪いんだけど……あとの事はお願いね…………』
「あとの事…お願いして良かったわ」
リアーネは僅かに声を震わせながら、そうポツリと零した。
いかがだったでしょうか?
個人的にはかなり誤字脱字が多い様な気がします。
なので自分で見直して色々と直していきます。
ところで今回は大量に新語が出ましたね。
ということでざっくりと説明していきますよ。
神秘の霊薬…回復アイテム。超強力。
ラアウェの秘薬…回復アイテム。相当強力。
生命の蜜…回復アイテム。結構強力。
フラム…爆弾。割と初期のアイテム。
ワームフィッシュ…(魚介類)カテゴリの魚。タツノオトシゴっぽい。
プニ…雑魚モンスター。ド○クエのスライムっぽいやつ。
プニプニ玉…プニが落とすアイテム。何故か(神秘の力)にカテゴライズされてる。
つりざお…つりざお。
中和剤・緑…(水)と(植物)から作れる。結構便利。
ピュアオイル…調合アイテム。(水)カテゴリな上に、材料として中和剤が必要な為、今回の小説のようなループを繰り返し強い特性を引き継がせれる。
回復力増加…特性の一種。
大体こんな感じですかね。
説明書いてないのもありますけどそこは追い追い書いていきます。
錬金術はゲームだともっと時間かかるものなんですけど、まぁそこは目を瞑って下さいm(__)m