童貞のまま30歳になったらTSして本物の魔法使いになりました   作:いつのせキノン

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ごめんなさい!!

 

 猪肉はほぼ豚肉って感じだった。悪くない。味付けは濃い目。まぁ育ち盛りの少年らがほとんどだったし、濃くて当然って感じだろう。

 

 昼飯を食べ終わり次の場所へ移動する。なんでも、宿泊施設に案内してくれるとか。

 寝床があるのはありがたいんだけど、「さっき言った通り金なんてないよ」とウルフくんに伝えると「今は立て替えておくから将来返してくれ」とのこと。利子もないので万々歳だ、甘えさせてもらおう。

 

 そんな訳でウルフくんの言う宿場に来た訳だが……ここの中世ヨーロッパレベルの文明からすれば、どう見ても大貴族とかが泊まるであろうホテルっぽいところだった。

 

「……場所間違えてない?」

「いや、合ってる」

「も、もっと安くて暖かい寝床とシャワーがあるだけでもいいんだけど……?」

「心配いらない。全て完備されているし、警備もここなら万全だ」

「……ぶっちゃけ無職無銭が人に金借りて泊まるようなとこじゃないよね?」

「認識はかねがね合ってるが、将来のことを考えれば大丈夫だ。高給取りになることが約束されているようなものだし」

「……やっぱりオレってこの街で働くこと大前提の約束させられてるよな」

「逆に聞くが、貴方はここ以外の町で暮らしていけるのか? 通訳の問題もあるし、それこそ問題は山積みだと思うが」

「……仰る通りで……」

 

 ウルフくんがいなきゃ間違いなく途方に暮れて露地裏ホームレスだ……。そして寝てるところを他のホームレスに囲まれて寄って集られて薄い本状態に……!!

 

「一人で顔を青くしてるとこ悪いが、早く入るぞ」

「あぁっ、待ってくれってばっ」

 

 ウルフくんと二人、先を行く彼があまりに堂々としてるモンだから制止もできず、駆け足でついて行く。今のオレの救世主、離れる訳にはいかない。

 ここでも周りからの視線が痛い。訓練所とは違って貴族っぽい格好の人が多くて、何かさっきとは違う視線に感じる。訓練生たちの視線が羨望だとするなら、この視線は下心が多分に混じってるような……。

 

 視線に関しては無視を決め込んでウルフくんの背中を追った。

 鏡のように磨かれた大理石で造られたホテルは、オレが見た限りは完全に貴族ご用達の超の付く高級ホテルだ。

 まず客層の全てが映画でしか見たことないような装飾の多いドレスとかを着ていた。

 更に、ホテルの受付やホテルマンは全て執事とメイドだ。クラシカルで落ち着いた雰囲気で、皆一様に綺麗だった。イケメンや美女しかいない。どうなってんだ。

 

 受付に向かい、手続き関係は全部ウルフくんがやってくれた。オレはと言えば精々同意書のサインを書いたくらい。まぁ受付の説明聞いてもわかんないし助かった。

 

 色んな視線に敏感になりながら案内されて、最終的にやってきたのはウルフくん曰く一番小さい部屋だった。

 

「一番小さいのに部屋がいくつもあるって……」

「貴方が一番安いところで良いと言ったからな。部屋が複数あるのは貴族ならデフォルトだ」

 

 貴族感覚がわからねぇ……。広すぎて寧ろ何にそんなスペースを使うのやら。

 

「取り敢えず、しばらくはここを拠点にしてもらう。落ち着いてからは自分で好きなところに行ってもらって構わないがな」

「……ホントにいいのか? オレに見合ってなくない?」

「鏡を見てから言ってくれ。貴方のような存在を蔑ろにする訳にはいかないんだ。これでも精一杯譲歩してるつもりなんだが……。本来なら部屋のグレードはもっと上を提案されていたんだ。少しくらいは贅沢した方がいい、貴方は貧乏性なのかよくわからないが、謙虚が過ぎる」

 

 視線を横に投げて肩を竦めるウルフくん。

 視線の先には大きな鏡が壁に取り付けられていて、オレの姿がよく見えた。

 グラマラスなラインが浮き出る男物のスーツ。黒地に銀のメッシュが入ったサラサラのロングヘア。整った顔立ちとその中で輝く金の瞳。

 

 ……確かに、見た目のレベルは非常に高い。オレもこんな美人は見たことも聞いたこともなかった。

 

「……美人だと敵が多くて困るな」

「……あまり大勢の女性がいるところで言ってほしくはないセリフだな……」

 

 そう言う意味じゃねぇよ。

 

「では僕はここで失礼するが、今日は部屋を出ないようにしてくれ。基本的なことは部屋内で全てできるようなってるはずだ。あとは食事についてだが、使用人に適当なものを持ってこさせるようにしている。部屋のベルが鳴ったら取りに出るといい。それと、使用人は基本部屋には入らないよう伝えてある。貴方は言葉がわからないからな」

 

 その方がいいだろう? というウルフくんの言葉に一も二もなく頷く。ウルフくんがいない状態で他の人と話すなんて無理だし。

 

「明日の昼頃になれば上から具体的な指示が来ると思う。一応僕が仲介人になるから、その時に詳しいことは説明する。それまでは部屋にいてくれ。他、何か質問や聞いておきたいことは?」

 

 聞かれて、パッと思いつくことは特になし。大丈夫だ、と首を横に振った。

 その後、ウルフくんは退室。だだっ広い部屋にオレだけが取り残された。

 

「……無駄に眩しい……」

 

 一人になって部屋全体を見て回り気付いたが、調度品が多い。部屋は金の装飾や明るめの色合いの壁紙な度があって、確かに高級感は半端ないんだが、オレには過剰過ぎる。

 寝室、リビング、専用の調理場。一番小さいのにスイートルームだ。やはり一般人のオレとは感覚が違いすぎる。

 ……うん、落ち着かないし別の場所に移るのは決定だな。

 

「じゃ、風呂にでも入るか」

 

 見たところ、浴室もあった。中は八畳くらいの広さで、バスタブとその他石鹸がいくつか。タオルも無駄に広い脱衣場っぽいとこに完備。ありがたいけど物と物の距離が遠くてオレには若干効率悪くて不便だなという感想が浮かぶ。

 バスタブには常にお湯がはってあるらしい。凝ったアンティーク調の蛇口からお湯が出続けて、溢れた分はそのまま垂れ流し。贅沢なモンだ。

 シャワーもあるらしく、天井のところにシャワーヘッドらしきものが。けどお湯を出すためのスイッチはない。どうしろと……。

 そこから少し離れたところには腰くらいの高さの柱が立っていて、上には幾何学模様が刻まれている。

 ……すっごい怪しい。模様は魔法陣っぽいけど。

 あれか、これをいじればシャワー使えるとかか?

 

「……ウルフくんあたりに聞いときゃよかったな……」

 

 まぁもう遅いんだけどさ。

 あれかな、魔法陣に手をかざせば出るとか? はは、そんな漫画とか映画みたいな設定が。

 

「うわっ」

 

 出た。魔法陣に手を重ねるようにしたらぴゃって出た。

 

 ……なるほど、科学でまだ再現しきれないところは魔法で代用すると。

 文明レベルを見ても交通は馬車が基本なところからセンサなんて便利な物はないと見える。その辺りを魔法で代用できるっていうのは強みなんじゃないかな。

 

 けどそうすると魔法に頼り過ぎて科学の発展が遅れるんじゃ……。

 

「……ってオレが心配しても意味ないか」

 

 知ってても技術を持ってないオレじゃあ如何ともしがたい。ここは天才様たちにお任せするのが一番だ。

 

 

 

 変な考え事は打ち切ってさっさと汚れを洗い流すことにした。

 一日駆け回ったり転んだりしてきた割には何か綺麗だ。スーツも土やら何やらが何も付いてなかったし、オレも汚れがそんなに無かった。

 何でだろ……炎が燃やしてくれたとか? だったら便利すぎだよな、オレの魔法。

 

 

 

 さて。

 

 さて。

 

 ……さて。

 

「……あぁ、そうだった」

 

 風呂に入ろうと脱衣場でジャケットを脱いで、ズボンのベルトを外したところで気付いた。

 

「……いいのか……? いいんだよな……?」

 

 オレは、今は、女だ。自分でいうのもアレだが、絶世の美女だ。

 ここで服を脱ぐとなると、初めて女体を直視してしまう訳なんだが……。

 いや、初めてというか……、確かに映像とか画像とかは見たことある。随分とお世話になったのは確か。

 けど流石に直視は……うん……。

 

「こ、ここでチキってどうする……!!」

 

 流石に一生風呂に入らないのはダメだろ。

 そう、これは仕方ないこと、仕方ないことだから……!!

 

「……ふぅぅぅ……よしっ」

 

 覚悟を決めて、ズボンを脱ぎ、ネクタイを外し、ワイシャツを……脱ごうとして一度手が止まるが、目をつぶってボタンを全て外した。

 

「ひぃぃっ……」

 

 み、見えない……いやっ、自分の身体とは言え流石に直視は何というか……!!

 

 ワイシャツを脱ぎ、男物のパンツを脱ぎ、裸になった。

 でも目を閉じたままで周りが見えん……。見えないことには移動もできない。

 

 ……そうだな、取り敢えず隠そう。胸と、股間の辺りを……。

 

「っ」

 

 は、生えてない……。

 左手には肌の感触のみで、毛の感触は一切ない。

 

 右手は胸の方に持っていく。と、むにゅっと柔らかい弾力。

 ……やっぱり結構デカいよな……。

 大きいと……その、さきっぽが隠れてるかどうか……。

 

「んっ……。……っ!?」

 

 不意に、右手に少し硬い感触があって、同時にぴりっとした感覚が全身を駆けた。口から変な声が出る。

 

 いや、いやいやいやッ、なんで変な声出してんだオレは……っ!!

 あ、でも、多分、隠せた……はず。

 

 薄っすら目を開けて、鏡を見る。

 

 鏡に写ったのは、局部だけを手で隠した、物語の中にしかいないような美女。

 出ているところは出て、引っ込むところは引っ込む。少し手が動くだけで胸は形を変えて、そこからきゅっとしまったウエスト。ヒップはハリがありながら無駄な肉はないし、そこから伸びる足は細すぎず太すぎず、扇情的だった。

 

「…………う……」

 

 ……何だろう……背徳感……?

 

「……ごっ、ごめんなさいっ……!!」

 

 オレのバカ!! 自分の体見て変な気を持つやつがあるかってんだ!!

 慌てて風呂場に飛び込んで、台に手をかざせばシャワーからお湯が降り注いだ。

 

「……反則だろ。いや反則だって……直視できねぇ……」

 

 シャワーに当たりながら、自分の体を見ないようにする。

 脳裏には鏡で見た自分の姿が鮮明に焼き付いている。

 元男だからこそ……いや、まだ中身は男のはずだからわかるんだが、アレはヤバい。多分、男だったら理性が飛ぶ。かつてのオレだったら秒で襲う自信があった。

 

 

 けど、けどだ。

 

 恥ずかしいけど、()()()()()()()()

 

「……勃つモンもなきゃそんな感じなのかな……」

 

 下品な話だけど、女の体に対してさっきは性欲が掻き立てられらなんてことはなかった。と言う事は、男としての感性を失ってしまってる? アレがついてたなら、興奮していたのか?

 

 ……わかんねぇ。

 

 裸になるのは恥ずかしいし、他の人の裸を見るのも……かなり抵抗がある。

 自分の体なのに、他人の体のような……まだオレの感覚がズレてるってことなんだろうか。

 その内慣れるのか? オレが女であるということに。

 

「………………………………………………………………、」

 

 ……いや、ダメだろ、それは。

 オレは今は女だけど、男のはずだ。元の世界に戻れば、またきっと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミズチと別れ、僕は帝都中心部へ足を向けた。

 

 帝都コーラルは中心に王城があり、東門と西門への横に伸びる大街道を起点に街ができている。

 

 今回向かうのは帝都中央の騎士団運営所だ。

 騎士団は中央と東と西に部門が別れており、西はモンスター討伐が主要任務で、東は帝都内警らや護衛、中央は騎士団の運営に関わる業務を取り仕切っている。

 僕は元々西部騎士団に配属されていたが、通訳の仕事なども兼ねる内に中央騎士団へ出向という形になった。個人的には事務仕事をやる方が割に合っているので、いっそのこと所属を移したいくらいだ。

 

 それは今は置いておき。

 ともかくとして騎士団運営所だ。僕が普段から出入りしている職場であり、ここでは事務仕事を主に起こっなっている。

 今日ここに来た理由は、もちろんミズチのことについて。

 彼女の持つ魔法のポテンシャルがとんでもないことは知っての通りだ。

 今朝の試験内容は既に通達済みで、上はかなり驚いてるに違いない。

 

 予想だが、帝都は全力でミズチを囲いに行くだろう。あの魔法なら、間違いなく帝都の力になる。純粋な戦力として、更には国力として。

 

 昨今、魔法使いを国がどれだけ抱えているかが国のステータスになりつつある。

 魔法は希少な力ながら確かに文明を発展させているし、最近はその傾向が顕著に現れている。

 ここでミズチを帝都に迎え入れられれば、コーラルは更に力を伸ばすだろう。

 

 問題があるとするならば、彼女の出自だ。

 彼女は自身の身分を証明するものを持っていなかった。異国の者だとしても、あの質の高い服を着れる文明の者が身分証明書を持たないというのはあまり考えられないからだ。

 見た目はどう考えても異国の位の高い身分の者だ。彼女が勝手に国を飛び出して来ていて、何も後始末もしないままコーラルに入ってしまえば……仮に向こうにバレた時の対応が難しい。

 彼女程の魔法使いをそう簡単に手放すとは考えにくいし、追手が来ている可能性だって視野に入れないといけない。

 

「…………問題は山積みだな」

 

 一度思考を打ち切って深呼吸をする。歩きながら一人で考えても意味はない。また会議で出ることだろうし、その時は他の者もいる。僕より頭の回る人もいるんだから、そっちに考えてもらえれば良いか。

 

 ぼんやりとそんなことを考えながら昼過ぎの大街道を行く。

 昼間であるため人通りも多く、大街道沿いの市場からは客を引き込もうと大勢の店主達が声を張り上げていた。それに興味を惹かれ多くの人々が所狭しと商品に目を配る様子が見える。

 

「……急ぐか」

 

 いつも通りの光景に一つ頷き、更に歩く速度を上げた。

 

 

 

 しばらくして、城下の周辺。人通りは幾許か減り、先程の賑やかさとは一転、どこか厳かな雰囲気が漂っている。

 これも当たり前のことで、ここら周辺は基本的に毎日騎士団の者が集まっている場所だ。そして王城付近ともあって警備は厳重になっている。ピリピリしているのも仕方のないこと。

 

 騎士団運営所は王城南部付近にある。石造りの大きな五階建ての建物がそれだ。

 中に入ると文官騎士達が今日も慌ただしそうに動き回っていた。入口の受付で身分証を提示し、自分に割り当てられた部署のある区画へ向かう。

 

 途中すれ違う何人かと挨拶を交わして三階へ。

 階段を登るに連れて、三階は更に忙しさの空気が違うのがわかってきた。どこか重い雰囲気がある。

 

「来たね、KK。待ちくたびれてしまうところだったよ」

「遅れて申し訳ありません、リーダー」

 

 三階では僕がリーダーと呼ぶ男が待っていた。ひょろりと高い身長とフレームの細い眼鏡をかけた、いかにも事務員と言った感じの人物だ。

 

「早速だが会議を開きたい――んだけど、そうも行かなくなった。KK、君に会いたいという人がいらっしゃっている。まずはそっちの対応を頼むよ」

 

 客人が? と僕は聞き返す。特に心当たりがないからだ。

 基本的に客人の方が来られる場合は事前に連絡がある。そういった手順を踏まないといけないルールになっているからだ。

 しかし、それをすっ飛ばしての客人……かなりど偉い人物の可能性が……。

 

「えっ、と、リーダー。そのお客様とは?」

「聞いて驚け、KK。()の大魔法使い“アマテラス”様だ」

 

 …………は?

 

「はぁぁぁぁぁっ!?」

 

 僕は思わず、素っ頓狂な越えを上げて仰け反る他なかった……。

 

 

 

 

 

 

TSロリverのDTTS魔法使い、見たい?

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