童貞のまま30歳になったらTSして本物の魔法使いになりました   作:いつのせキノン

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おひさしぶりです。


初めての謁見

 

 中世欧州の見どころと言えば、やはり建築物か。とりわけ、大きな城なんてのは文化を代表する建造物だ。

 

「……はぇぇ……すげ……」

 

 馬車を降りて、ギクシャクしながら案内された控室らしき場所。王族御用達と言わんばかりの調度品が並べられ、掃除も行き届いて埃一つ積もってない。高級げな椅子やらテーブルやら……大理石の床も光沢を放っていて、一般庶民のハートを持つオレからすれば息苦しさがすごい。今すぐ逃げ出してビジネスホテルに駆け込みたい気分だ。

 

 対面にはウルフくんが座っているけど微動だにせず。沈黙したまま目を閉じて瞑想してるようにも見える。

 

 …………寝てる?

 

「言っておくが寝てないぞ」

「ほぁっ!? エスパー!?」

 

 心を読まれた!? 実はウルフくんも魔法使いなのでは……っ!?

 驚いて固まっていると、ウルフくんは呆れたと言わんばかりに大きな溜息を吐き出して目頭を揉み始めた。

 

「……貴方は考えてることが表情に出過ぎなんだ。ポーカーフェイスくらい身につけていてほしい」

「む、無茶言わんでって……オレは庶民だぞ? 底辺リーマンが営業で交渉なんざ務められるわけないんだからさぁ……。表情の読み合いとか知らねぇし……」

「テーヘンリーマンが何かはわからないが……それにしても顕著が過ぎる。子供でもそこまで顔には出ないぞ」

「オレって子供以下なの……?」

「現状ではね」

 

 辛辣すぎるぅ……。泣きたい。

 

「何かこう、コツとかない?」

「コツと言われても、表情を動かさないようにする、としか言いようはないけど……。まぁ、幸いにも貴方は言葉が直接伝わるわけじゃない。特に対策も何も必要ないかもしれないね」

 

 ほんとにぃ……? 下手に秘密が漏れたら誰が責任とるのさ、上司もいないのに。

 

 ……………………オレだよなぁ……。

 

「……保険に入りたい」

「何の心配をしてるんだ貴方は……、」

 

 呆れ顔のウルフくんがジト目を向けてきた。保身くらいさせてほしいってことだけど、そんな保険あるのか……?

 

 なんて、冗談混じりの会話の途中。

 不意に扉がノックされ、メイドらしい使用人の女性が入ってきた。

 

 で、何を言ってるかはわからなかったけど、ウルフくん曰く謁見の準備が整ったらしいので移動だそうだ。

 

「こっ、こここここ心の準備がまだなんどすがッ!?」

「変なことを言ってないで行くぞ」

「いけずかぁ!? 待ってくださいよぅ……っ」

 

 

 

 

 

 とにかく城内部は豪華絢爛だ。シャンデリアとか絨毯とか絵画とか、もう目も当てられない。オレの給料何年分で事足りるんだってレベルだ。

 控室を出て廊下を進み、徐々に広々とした通路が増えてくる。多分、玉座が近いからなんだろうなぁ、とか。謁見っていうくらいだし、色んなお偉いさんが来るんだろ?

 

 あぁ、胃が痛くなってきた……。朝は軽めだったから吐くまではいかないけど……。

 

 ウルフくんが並んで、一度立ち止まったのは大きな大きな木製の扉の前だ。明らかに他の扉とは装飾が違った。十中八九、玉座の間の入口だ。

 使用人が何やら説明してるっぽいけど、緊張と、そも言葉が理解できないおかげで何も聞こえない。音が遠い。やばい。すごい、もう、あの……泣きそう……。

 こういう時に頼りになるウルフくんは従者ムーブ中で喋る気ゼロなんだよなぁ!! ちくしょう、もっと日本語喋れる人増えて……。

 

 変なことを考えてるうちに、扉がゆっくりと開き始めた。

 同時に、目に飛び込んでくるひろーい空間。

 中央に奥へと続く赤い絨毯左右に聳え立つ幾本の大円柱の存在感たるや。

 何やら豪華な衣装に身を包んだ者たちもいる。貴族や王族だろうか……。それに屈強な衛兵たちもずらりと並んでいる。剣を佩いているようで、不敬をはたらいたら一瞬で斬られそうな、ピリピリした雰囲気だ。

 

 そして何よりも、最奥。

 数段登った所に備えられた豪華な玉座と、そこに座る小さな人影。

 

 ……マジだ。マジで、幼女が、座ってる。

 

 それだっつうのに、あの女の子が、この空間で、最も威圧感というか、オーラを纏ってるのがわかる。

 他企業の社長とか、取締役とか、本当に優れた人間が持つオーラを、あの子が……。

 

「――――ミズチ」

「っ、お、おぉ」

「進むよ」

 

 短く、隣から聞こえてきたウルフくんの声で慌てて我に返った。そうだ、ここは言うとおりにしないと……最悪、死ぬ。物理的か社会的か、どっちかはわかんないけど。

 今の自分が滅茶苦茶ギクシャクした動きなのが理解できるくらい固いのがわかってるんだけど、どうしようもできない。たぶん、顔も引き攣ってる。もっと表情をやわらかくだな……。

 

 やがて止まるようウルフくんから合図があって、跪くよう言われた。初めてだよ人前で跪くなんて……。王様とかの前に出るのも初めてなんだけどさ。

 

「――――rAkEdAmIUttIni、mImAEtEkIU」

「っ……」

 

 ゾクリ、と、肩が震えた、気がした。舌足らずで、言葉なんて欠片も分からないってのに、言葉一つの重さが違う。これが、国のトップに立つ人間ってやつか……。

 

「……で、何て言ってるん?」

「貴方は空気を読まないな……“よく来てくれた”とのことだよ」

 

 わざとじゃないよ、ほんとだよ……。

 

「『せいほうからわざわざやってきた、と。ながたびのとちゅうにコーラルへたちよってもらえるとはじつにこうえいなはなしじゃ、マモリ・ミズチ』」

「あー、はは、いや、どうも……」

「『ふむ、みためにはんしてこのようなばはなれておらぬか?』」

「……はい、なにぶん、初めてなものでして……」

「『きぞくではないのか? ではますますおもしろいっ!! ただびとがまきょうをこえてやってくるとはいやはや……』」

 

 舌足らずな喋り方をするような声音だが、ギラギラ光る目に射抜かれて肩身が狭い。なんで幼女があんな目をできるってんだ……?

 

「『して、マモリ・ミズチよ。おぬしはなぜせいほうからはるばるコーラルへまいった? おぬしほどの魔法使いが、よもやしゅっぽんするとはおもえぬ』」

 

 …………そう言えばどう説明するんだ。異世界転移しましたなんて言って信じてもらえるのか?

 いやそんなワケがない。オレもいきなりそんなこと言われたら「こいつ頭沸いてんのか?」ってなる。

 

「『恐れながら陛下、私からご説明をさせていただけないでしょう』」

「『ほお……、ケント・K・ウルフ。おぬしのはつげんをきこうではないか』」

 

 一瞬言いあぐねたところ、すかさずウルフくんのフォローが入った、っぽい。何言ってるかはわからん。

 

「『推測にはなりますが、マモリ・ミズチは古代文献より“特異漂流者(ミグラント)”ではないかと思われます』」

 

 ウルフくんが何かを口にした瞬間、ざわりと微かに、脇に控える人らがどよめいた。何か重要なことを伝えてる……?

 

「『記憶の混濁、“特異漂流者(ミグラント)”特有の強大な魔法出力……報告書が既に回覧されているとは思いますが、特徴は一致します』」

「『うむ、なるほど。しゅつじふめい、いくあてもなくとつぜんあらわれたきょうじゃ、たしかにそのかのうせいもある。じゃが、それだけか?』」

「『……他国のスパイ、という路線でしょうか』」

「『しかり。マモリ・ミズチの魔法はべつじげんのはかいりょくをほこる。わがくににしばられず、あらゆるこっかが魔法使いをほっしているが、マモリ・ミズチほどのものをあそばせるはずがなかろう?』」

 

 つい、と。

 ウルフくんに向けられていた視線が、またオレを貫く。

 何だろう、冷や汗が止まらない。何言ってるかはわからんけど。

 

「『確かに、その可能性も昨日は考えていました。しかし、“アマテラス”様にお会いしたことで、その可能性は潰えたと、私は考えております』」

「『ふむ、きかせよ』」

「『“アマテラス”様を前に虚言は意味をなしません。そして、あらゆる事象を予期する“アマテラス”様が、マモリ・ミズチの謁見を許した。陛下の前にスパイを呼び出すなど言語道断。“アマテラス”様はマモリ・ミズチが帝国に危害を与えないと判断した。私はそう捉えています』」

「『ゆえに、か。…………だ、そうだ、“アマテラス”よ』」

「『…………はい。私も、その騎士と同じ見解です。マモリ・ミズチは、“特異漂流者(ミグラント)”であると断言できます』」

 

 玉座の斜め後ろ、黒装束に身を包んだ、妖艶で綺麗な女性も頷いた。

 彼女が“アマテラス”様なんだろうか。ウルフくんから聞いた特徴と外見が一致する。

 

 帝国最高、いや、大陸最高と呼ばれる魔法使いが、“アマテラス”。

 何十年も前から帝王の側近として帝国に仕え、国の発展に大きく寄与してきた重要人物。

 彼女に嘘は通用しない。なぜなら、彼女はすべてのヒトの心を見透かしているから。

 

「『うむ、うむ。“アマテラス”がそういうのならばまちがいなかろう。カカカッ、それはなんともつごうがよいっ!! マモリ・ミズチよッ、たんとーちょくにゅーにいうが、コーラルでくらすのはいかがか? おぬしほどの魔法使いならばさいこーきゅーのもてなしをよういするとちかおう!!』」

 

 幼女陛下が満面の笑みで、何かを言った。びしっ、とこちらを指差して。

 

「……ミズチ。貴方の処遇の話だ。陛下は貴方を帝国で保護し面倒を見てくださる、と仰られた」

「そりゃあ願ったり叶ったりだけど……タダじゃないんだろ?」

「事前に説明した通り、魔法使いとしての働きを求められるだろう。けれど、貴方ほどの魔法使いを無下にはしないはずだ。今の貴方なら大臣相当以上の待遇が約束される」

 

 なんじゃそら、高待遇が過ぎないか……?

 いやしかし、帝国ならばウルフくんもいて通訳をしてくれそうなので比較的未来は明るい。ここで話を蹴って外に行くよりはずっと安泰だ。

 

 …………って言うか王様自ら面倒見てやるって大々的に言ってるのに拒否するのはそれはそれで不敬なのでは……?

 

「おっ、お世話になります……っ!!」

「『うむ、そのへんじをまっておった!! ではあらためてつげるとしよう。――――わが帝国、帝都コーラルへようこそッ!! おぬしをせいだいにかんげいしよう、ミズチよッ!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして、オレは晴れて帝都で暮らしていくこととなった。

 何かトントン拍子で話が進み過ぎな気もするし、途中王様やウルフくんが何のやり取りをしていたのかはさっぱりだけど……。

 

 

 

 まぁ、食住はどうにかなりそうだし、いいかなって。

 死ぬよりはましだと、そう思いながら……。

 

 

 

 

 

 

TSロリverのDTTS魔法使い、見たい?

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