あ! やせいのダイナソーがとびだしてきた!   作:いぶりがっこ

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最終話「この胸に、闘魂ある限り」

「無敵でいくぞォーッ!」

 

 

 あ! やせいのグリフォンが とびだしてきた!

 

 力強い雄叫びを上げ、グリフォンマスクが高らかとポストを蹴り上げた。

 推定体重120kgを超すマッスルモンスターの躍動感あふれる跳躍に、観客席から驚愕交じりの歓声が一斉に上がる。

 

「高い! 何と言う脚力なんだッ!

 この跳躍力はまさしくルチャブル・リブレ!

 ひこう/かくとうタイプのみに許された空戦の真骨頂かッ!」

 

「い、いやしかし、いくら何でも不味いわい!

 敵は幅広のブロードソード持ちじゃぞ!

 バカ正直に真正面から突っ込むヤツがあるか!?」

 

 スグルの言葉に呼応するように、リング上のシシオウが動いた。

 迫り来るとりポケモンの巨体目がけ、厳つい鋼鉄の大剣を油断なく振りかざす。

 

「サイレェン……」

 

「甘いぞ! その技は既に見させてもらっている」

 

 やせいのグリフォンの からみつく こうげき!

 

 大剣が放たれる瞬間、グリフォンが手にした外套を思い切り投げ付けた。

 迫り来る剣がマントと絡み合い、回転力が殺される。

 勢いを失った剣は竜巻を起こす事も手元に戻る事も無く、そのままマットの上を滑り抜けて行く。

 

「う、うまい! これはグリフォンの作戦勝ちだ。

 単調な動きでシシオウを誘い、たった一手で厄介な大剣を封じてしまった」

 

「ぬぅ」

 

「女々しいぞシシオウよ!

 リングにはリングの流儀と言う物があるのだッ!」

 

 やせいのグリフォンの まきつく こうげき!

 

 一瞬の交錯、反撃に移ろうとしたシシオウの太い腕を、いち早くグリフォンが捕らえた。

 両腋で挟み閂に極め、真っ向正面から向かい合う。

 互いに腕を使えぬ千日手ともいうべき体勢だが、しかしとりポケモンには両手より恐るべき固有の武器がある。

 

「トウアァーッ!」 

 

 やせいのグリフォンの つつく こうげき!

 

 たちまち猛禽の鋭いくちばしがシシオウを襲った。

 眉間を穿たれ僅かに呻く対主に、なお執拗なグリフォンの追撃が迫る。

 

「ウヌ」

 

「シシオウよ!

 YOUのように見事な大胸筋を持つ者が凶器攻撃に頼ろうなどと笑止千万! 

 YOUのマッスルが泣いているぞ!」

 

 やせいのグリフォンの つつく こうげき!

 

「鍛え上げた筋肉(マッスル)以外の何かに頼りを置く……。

 そんな性根がこのような迷いを生み出すのだッ!」

 

 やせいのグリフォンの つつく こうげき!

 

「さあ、(ネイキッド)になるのだチャンピオン!

 同じリングに居合わせた強者どうし、存分に筋肉をぶつけあおうではないかッ!」

 

 やせいのグリフォンの つつく こうげき!

 やせいのグリフォンの つつく こうげき!

 やせいのグリフォンの つつく こうげき!

 やせいのグリフォンの つつく こうげき!

 

「グゥオッ!?」

 

 きゅうしょに あたった!

 

 狙い澄ました荒鷲の一突きが変態的なマスクを捉えた。

 ビギン、と音を立てて眼鏡に亀裂が走り、さしものシシオウも堪らず動いた。

 グリフォンのホールドを腕力で強引に振りほどく。

 

 プロレスラーのクラッチをパワーで切る。

 凄まじいドーピングに支えられた獣神武闘会(ポケモンコロシアム)の帝王ならではのパフォーマンスであるが、その焦りにも似た強引さがらしからぬ隙を生じさせた。

 帝王の両腋が開いた。

 一流のポケモンレスラー相手に、絶対に犯してはならぬ醜態であった。

 

「ダァーッ!」

 

 やせいのグリフォンの たいあたり!

 

 すぐさまグリフォンは体を沈めてタックルいった。

 その太い上腕筋でガシリと腰部を捕え、サイドに回りながら捻じりを加えて巻き上げる。

 

「行くぞ! 獣神武闘会!

 これこそが本物のプロレスだッ!」

 

「……ッ!」

 

 やせいのグリフォンの そらをとぶ!

 

 あっ、と観衆が驚く間に、両雄の巨体が高らかと天空に舞い上がった。

 ツイストが巨大な竜巻(ハリケーン)を呼び、もつれあう肉体がマット目がけて降下を始める。

 

 

「 ジ ャ ス テ ィ ス ハ リ ケ ェ ――― ン !!!! 」

 

「~~~~ッッ!?」

 

 

 ドワォッ!

 

 

 爆音が炸裂し、衝撃がビリビリと獣神タワー全体を震わした。

 濛々と立ち込める粉塵の中に、人々が必至で目を凝らす。

 ゆらり、砂煙の先に隆々とした筋肉が立ち上がる。

 

「ダアァァーッ!」

 

 晴れた視界の先で高らかと人差し指を掲げ、逞しいくちばしが咆哮を上げる。

 対し、帝王、シシオウはカポエラーの如く天地逆転した姿で、上体を半ばまでマットにのめり込ませて突き立っている。

 象徴的な光景に、たちまちわっ、と歓声が爆発した。

 

『あぁ~っ!?

 決まったッ き、決まりましたッ!!

 突如としてリングに現れた謎の伝説ポケモン・グリフォンマスク!

 すさまじい必殺技(フェイバリットホールド)であの獣神武闘会の暴君からダウンを奪いましたァ――ッ!』

 

「な、なんという力強い必殺技なんじゃ!?

 ジャスティスハリケーンじゃとォ!?

 テ、テリーッ、あやつの正体は、まさか……!」

 

「あ、ああ、間違いない。

 かかりの呼吸、技の入り、そしてかくとうポケモンの常識を超える跳躍力。

 技自体が放つ輝きの違いこそあれど、アレは間違いなくゼツメツハリケーン!!

 だとしたら、あの必殺技を使える者は、このカントーにただ一人!」

 

「そ、そんな、あやつがあのダイナソーだと言うのか?

 しかし、あのくちばしは誰がどう見たってとりポケモン!

 しかも種族やタイプどころか、ポケモンレスラーとしての属性まで変わっておるではないか!?

 一体あのリング上で、何が起こっていると言うんだ!」

 

「 メ ガ シ ン カ じゃッ!!」

 

「「「 メ ガ シ ン カ ッッ!!?? 」」」

 

 とうとう矢も楯も堪らず、ポケモン学会の権威・オーキドはかせが解説に乱入した。

 驚きの声を上げる周囲の面々を見渡しながら、目ざとく実況のマイクをひったくる。

 

「メガシンカ、ここカントーでは未だ馴染みのない言葉かもしれんが、

 広い世界には戦闘中の極限下において、一時的に潜在能力を開放し、

 その種族に秘められた真の姿へと変身するポケモンがいると言う。

 し、しかしメガシンカは未だカントーのポケモンたちの間では確認されていない未知の現象!

 だとしたら、あのダイナソーと言う種は、一体ドコから来たと言うのじゃ!?」

 

「メガシンカ……、そ、そうか!

 カントーにおけるとりポケモンは、いずれもが古来の恐竜を祖として進化した種族。

 連戦に次ぐ連戦で疲弊した肉体と、シシオウと言う過去最凶の敵を目の前にして、

 ダイナソーの生存本能は急激に環境への適応を始め、

 そして今ッ、とうとう悠久の歴史をも超越する進化を遂げたと言う事なのか!?」

 

「そ、それじゃあ……、

 グリフォン、ほ、本当にあなたがダイナソー、なの……」

 

 驚愕と興奮に揺れるリングサイドで、ポツリ、と少年が戸惑いがちに囁いた。

 グリフォンはどこか寂し気な瞳で、こくりと一つ頷いて見せた。

 

「……すまない少年。

 今はまだメインイベントの最中、全てを説明している余裕はない」

 

「…………」

 

「だが、一つだけキング・オブ・ダイナソーに誓おう。

 YOUとあの恐竜王との間に交わされた約束は、このグリフォンマスクが引き継ぐと!」

 

「キ、キング!」

 

 バッ、と諸手を広げた力強い勇者の出で立ちに、再び会場に熱が疾った。

 どこかしら完全な悪玉(ルード)になりきれれていなかった恐竜王に対し、今のグリフォンは神々しいばかりの善玉(リンピオ)の輝きに満ち溢れていた。

 

「テ、テリー、今の奴のスタイルは……」

 

「ああ、まるで全盛期のカイリキー・ゴッチ。

 心・技・体、ポケモンレスラーが備えるべき素養の全てが光となって、

 あの威風堂々たる立ち姿から溢れてくるようではないか」

 

「グリフォーン!」

 

「グーリーフォン!」「グーリーフォン!」「グーリーフォン!」「グーリーフォン!」

 

 期せずして、会場の一角より歓声が上がった。

 長きに渡るポケモンプロレスの冬を乗り越えた観衆たちの叫びが、やがてグリフォンコールとなって人々の心を一つにしていく。

 

 ……が、どうした事であろうか?

 

 肝心のグリフォンは、リング中央に埋没したままのシシオウに対し、フォールにも行かず動きを止めてしまっていた。

 歓声がやがて、次第に戸惑いへと変わり始める。

 

「ど、どうしたと言うんじゃ?

 グリフォンのやつ、なぜトドメを刺しに行かないんだ……?」

 

「いや、何か様子がおかしいぞ。

 あるいは、トドメにいけないのではないか」

 

 ざわざわと戸惑いの声が溢れかえる中、やがてグリフォンは構えを解き、シシオウの下半身をピシリと指さして叫んだ。

 

「さあ、戦いはいよいよクライマックスだぞ!

 茶番を止め、YOUもいい加減に本当の姿を曝け出したらどうだ」

 

「HA HA HA HA HA――」

 

 次の瞬間、マットの深く奥底から、くぐもった変態的な笑い声が会場へと轟いた。

 驚く間もなく、シシオウがそのサッカーボールのようなグローブをマットに突き立て倒立し、太い上体が何事も無かったかのようにズボリと抜ける。

 

「流石は伝説の名を冠するとりポケモンだな。

 この短期間のコンタクトで、我が肉体の秘密に気が付くとは」

 

「こちらは全力のジャスティスハリケーンだったのだがな。

 肌を重ねた瞬間に直感した、鎧の下に隠されたYOUの本当のパワー。

 次の一撃では、YOUを打倒するにはまだ足りない……、とな」

 

「……非礼を詫びよう、強き者よ」

 

 珍しく神妙な口調で、シシオウがアーマーの留め具へと手をかける。

 次の瞬間、サッカーボール級のグローブからは想像もつかない器用さで留め金が外れ、金色の甲冑がドズン! とばかりに大地を揺らした。

 

「ゲェーッ! なんじゃ、あのやたらめったら重そうな鎧は!?」

 

「信じられん……。

 あの怪物は、あれだけの重量のハンデを纏いながら、

 ダイナソーを一方的に攻め立てていたというのか!?」

 

「……我自身、久しく忘れてしまっていたのだ。

 シシオードーを開き、宿敵と呼べる存在を失って幾星霜。

 この鎧は今や我が肉体の一部となっていた。

 こうして素肌を夜風に曝すのは、果たしていつ以来の事であったか……」

 

 しみじみと感慨深げにシシオウが呟く。

 やがて、異変が始まった。

 強靭な帝王の大胸筋が、ピクン、ピクンと痙攣を始め、やがて、ボゴンボゴンと全身の筋細胞が膨らみ始めたではないか!

 

「ハアァァァ―――!」

 

 やせいのエビワラーの ビルドアップ!

 

「ゲゲェーッ!?

 シシオウの肉体は一体どうなっとるんじゃ!

 あれは前の階のハワードが使っていた『鋼霊身』とか言うヤツなのか!?」

 

「い、いや、違う……!

 あれは、あれでは、まるで!」

 

「マッシングじゃ!?」

 

 シシオウの変調の正体に気付いたオーキドはかせが、悲痛な叫び声を上げた。

 

「マッシング!?

 一体何の話なんです、はかせ!」

 

「先に話した通り、彼、シシオウの肉体は、考え得るドーピングの限りを尽くして作られたもの。

 万人に一人の奇跡的なドーピング耐性と、あらゆる苦痛と困難を乗り越える不屈の精神。

 結果、彼は生物の限界を乗り越え、際限無く成長を続ける最強の肉体を手に入れた」

 

「ウー! ハー!」

 

「気付いたか、シバくん。

 成長を止めない肉体とは、奇跡と呼ぶにはあまりに邪悪な、より重篤なる病に過ぎん。

 膨れ続ける筋細胞は関節も骨格も押し潰し、やがて内臓を直に圧迫する所となるじゃろう」

 

「ウー! ハー!」

 

「そ、そうだったのか……。

 あの頑強に過ぎる黄金の鎧は、内側からの筋肉の成長を抑えるための拘束具。

 自らを青銅の像の中に封じていたのも、強者との究極の一戦……、

 己が命を捧げる死に場所を求めての事だったのか」

 

「もはやサイドンは投げられた。

 ああなってしまっては彼の異常成長は抑えられない。

 後はもう肉体の限界が来るまで、阿修羅の如く暴れ狂うのみ……!」

 

「に、逃げるんじゃァ、グリフォーンッッ!?

 これ以上、ヤツの心中に付き合ってはイカンッ!」

 

 ギャラリーの必死の叫びに対し、グリフォンはただじっ、と諸手を広げ、相対する敵のみへと意識を集中する。

 

「ふっ、生憎と私は勇者なのだ。

 リングの上に立つ以上、子供たちの希望を摘み取るワケにはいかんのでな」

 

「見事な覚悟だ、勇者グリフォンよ……」

 

 きゅっ、とリングシューズがマットを擦る。

 みちみちと膨れ上がっていく巨体をピーカブーに畳み、帝王の殺気が目の前の一点へと研ぎ澄ましていく。

 空気が凍る。

 瞬きのタイミングすらをも静止する。

 高まる緊張感が、爆発する次の一瞬を、その瞬間を待ちわびる。

 

「ダイナマァーイ」

「……ッ」

 

 やせいのエビワラーの マッハパンチ!

 

 衝撃は横から来た。

 耳許への囁きと共に視界が廻り、それでグリフォンは眼前から敵が消えている事に気が付いた。

 更に寸毫遅れてダメージが雷鳴の如く全身を焼き、無敵の肉体が成す術も無くたたらを踏む。

 

「グァ」

「ダダダダイナマーイ!」

 

 頭を振って打点を追うも、捉えられたのは右方向に消える黄金の踵のみであった。

 だがツキはあった。

 防御が間に合わずとも、右半身を滅多撃ちにされる事に対する覚悟だけは間に合った。

 

「ダッダダダダダダダダダダダダダダダイナマーダダダダダダダイナダイナダイナマーイ!」

 

 やせいのエビワラーの マッハマッハマッハマッハマッハマッハマッハマッハ!

 

「ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……」

 

 マッハマッハマッハマッハマッハマッハマッハマッハマッハマッハマッハ!

 

 見えないサッカーグローブがでんこうせっかの如く矢継ぎ早に飛んでくる。

 でんこうせっかと違うのは、仕手がピカチュウのような愛玩動物ではなく、一撃一撃にロケットずつき並の威力があると言う事実だ。

 インドぞうならばゆうに3ケタは死んでいるだろう。

 だが、覚悟を決めたプロレスラーの肉体の前には、もはやインドぞうなど比較対象に値しない。

 

「~~~~~~~ッ」

「キィーングフック! キーングバディ! キィーンリバー! キィーングスマーッシュ!」

 

 メガトンメガトンメガトンメガトンメガトンメガトンメガトンメガトンメガトンメガトン!

 

 打たれるしかない。

 

 最強のプロレスラーが負けた。

 

 屈辱が五臓六腑を焼き、昼夜の別もつかぬ悪夢の果てに『彼』が辿り着いた結論がそれだった。

 

 蹴りを縛られ、投げを縛られ、寝技を、関節を、凶器を頭突きを体当たりを爪を牙を縛られ。

 自縄自縛の果て、ただ拳の最速のみを追及し続けた拳闘士の裔。

 ゼネラリストたらねばならぬレスラーには到底辿り着けぬスペシャリストの境地。

 

 だが、たとえ防御が間に合わずとも、覚悟さえ光よりも早く間に合ったならば――。

 それだけでプロレスラーは、次の一瞬を取り繕う事が出来る。

 故に『彼』には必要だった。

 ありとあらゆる窮地を瞬時に察知し得る獣の嗅覚が。

 降り注ぐ隕石すらをも弾き返せるほどの、己が筋肉への絶対信仰が。

 伝説よりも確かにこの地上に実在した、6500万年史上最強の遺伝子が。

 

 ここは、リングだ。

 かつてのあの『見えざる連撃』を、よもや超ヘビー級の肉体で繰り出す異端が存在しようなどと考えもつかなかった。

 などと、今さら泣きごとが許されようハズもない。

 とみに近年の医療技術、機械工学の発展は、このパンチの如く早く弛まない。

 今頃はあの男の鉄の拳も、この帝王のアッパーの高みにまで到達しているのやも知れない。

 

 ならばやはりツイている。

 プロレスの神様は、まだ私を見捨ててはいなかったのだ。

 記憶を失い彷徨い歩いた異郷の終着駅に、あの日に舞い戻るための試練が待ち受けていた。

 

 骨が軋む。

 内臓が捩れる。

 筋細胞が炎を噴く。

 紅い。

 焼け付く。

 全てが紅に染まって行く。

 閃光が走る。

 むせる。

 星が墜ちる。

 満月が紅く濡れていく。

 熱い。

 拳。

 揺れる。

 何が。

 後は?

 消える。

 音が。

 深く。

 後は

 閃光

 あ、

 後

 

 

『 ガ ァ ア オ ォ オ オ オ ォ オ オ オ オ オ オ オ ォ ォ !!!! 』

 

 

「――!」

 

 やせいのグリフォンの げんしのちから!

 

 割れんばかりの大絶叫が、グリフォンマスクの急速な覚醒を促した。

 決着、そのハズだった。

 偶然か、あるいは?

 もつれにもつれたグリフォンの脚が、はかいこうせんにも等しいフィニッシュブローの照準をちょっぴりだけずらした。

 必殺のアッパーはくちばしを僅かに掠め、フラつく巨体はダウンを拒むかのようにシシオウの脇腹に縋りついていた。

 千載一遇。

 大腿筋が、大臀筋が、腹直筋が、大胸筋が、広背筋が、僧帽筋が、三角筋が、上腕筋が――

 グリフォンをしてグリフォンマスクたらしめて来た全身の筋肉が直列繋ぎに覚醒する!

 

「スウウゥウゥぅゥうゥプァアアアァアァァァアぁあアァァ―――――」

 

 やせいのグリフォンの そらをとぶ!

 

 会場中のプロレスファンの雄叫びを、瞬く間に足の下へと置き去りにした!

 タマムシの風が雄達の巨体を吹き抜けていく。

 血に濡れて紅に染まった満月目掛け、二個の筋肉が一直線の風となる。

 

「で、でたッ!!

 あれはダイナソーの必殺技・スーパーゼツメツハリケーンじゃ!

 アレをあの高度から決めさえすれば、いかな伝説ポケモンとてゼツメツは必至じゃい!」

 

「いや! まだだッ!

 ここは屋外、どれほどに加速しようとも、相手を叩きつけるための天井が無いッ!!

 グリフォンの肉体はもはや限界ッ

 ここでクラッチを切られれば、あべこべに大地に捻じ伏せられるぞ!!」

 

「見事だ! 伝説の勇者グリフォンマスクよッ!

 ならば我も帝王の威信に賭け、全身全霊を以てこの両腕を外してくれよう」

 

「負けるなァ!! キングゥ――――ッッ!!!!」

 

「ガルルルォ――――ッッ!!」

 

 やせいのグリフォンの たきのぼり!

 

 肉体が勝手に動いた。

 グリフォンの中に宿るやせいが、その真価を露わにした。

 全身が捩れて回転を始める。

 回転が更なる加速を生む。

 やせいの直感。

 恐竜王、キング・オブ・ダイナソーの置き土産。

 際限無く加速する二頭の体は、やがて風を切る音さえをも置き去りにする。

 

「なッ!?」

 

 気付いたか、しかしもう遅い。

 テリーの認識には誤りがある。

 この一見広大な夜天にも、実は見えざる『壁』があり『天井』がある。

 ポケモンの可能性に限界は無く、しかしこの世界を取り巻く物理法則に限界は来るのだ。

 

「ビィイイイィイ――――――ッグゥッッ!!!!」

 

 

 パンッ!

 

 

 遥か上空で、乾いた破裂音が響き渡った。

 驚く間もなく一拍遅れの衝撃波が到達し、見上げる観衆の肌をビリビリと叩きつける。

 

「グオオオッ!? な、なんじゃあっ!?

 一体上空で何が起こっていると言うんじゃ!!」

 

「ま、まさかこれは……! 超音速(ソニックブーム)ッ!?」

 

「音速じゃとォ! 何を言っとるんじゃテリー!?」

 

「推定時速100km/hのジャスティスハリケーン!

 そこに野生の恐竜パワーと、極限状態の肉体が生み出すT.O.P.を加えたならば。

 通常の2倍の脚力に、通常の2倍の回転速度、更に通常の3倍の回転時間ッ!

 100×2×2×3=1200km/h!!

 そこから加速する上腕を天空目がけて繰り出せば、指先の速度は実にマッハ1ッ!!

 標準大気中の音速1225km/hを理論上超える事となる」

 

「お、音速……、そこを超えると何が起こると言うんじゃ!?」

 

「音の『壁』に激突し、ソニックブームが発生する。

 グリフォンの奴は、音の壁を天井に見立て、シシオウの体を超音速で上空に叩きつけたんだ」

 

「音速の壁、そ、そんな事をしては……!」

 

「ピジョットの成体の最大飛行速度は一説にマッハ2を超えるとも言われているが、

 何より、初速と加速度が違い過ぎる。

 あの勢いで音速の壁に激突して、無事でいられる生物など存在するものかッ!」

 

「見て! 二人の体が」

 

 テリーJrの指さす先で、もつれ合う二頭が糸の切れた凧のようにくるくると舞い踊る。

 高高度からの落下が加速を生み、大気摩擦で両雄の巨体が赤く燃え上がる。

 

「……フォッ フォォ―――――――ッルッッ!!!!」

 

 やせいのグリフォンの ゴッドバード!

 

 覚悟。

 腹を括るまでの一瞬の猶予の差が、二頭の明暗を僅かに分けた。

 文字通り尻がヒトカゲな窮地にあって、それでもグリフォンの両腕は敵を捕えて離さない。

 さながら燃え損なった隕石の如く、二頭の体がリングへと落ちる。

 

 

 ――ドワオォッ!!

 

 

 爆撃が、獣神タワー全体を震わした。

 鉄塊が空に舞い、粉塵が撒き上がり、ひしゃげたリングが床版諸共に階下へと崩落する。

 阿鼻叫喚の悲鳴の中、だいもんじスープレックスの面々が、グリフォンの姿を求め声を荒げる。

 

「おおっ! 見ろッ あそこじゃあっ!」

 

 蒙々と立ち込める粉塵の先、落下して歪んだマットの上にその影はあった。

 常軌を逸した死闘の果て、二人の体はまるで折り重なるように……!

 

 否!

 

 フォールだ。

 グリフォンの両腕がシシオウの胸板を押さえつけ、その両肩がいびつなマットに触れている。

 

「……ワンッ!」

 

 気が付いた瞬間、誰かが叫んでいた。

 今は団体対抗戦のクライマックス。

 居合わせた者は老若男女問わず熱心なポケモンプロレスファンばかり。

 第一発見者が誰であったとしても、このカウントは必然であっただろう。

 

「ツー!」

 

 会場中の誰もが叫んだ。

 分かっている、こんな事はただの茶番だ。

 それでも叫ばずにはいられなかった。

 善悪も団体も超越し、今日という日を戦い抜いた全ての戦士たちの魂のために。

 

「スリー!」

 

 中継を見ていたカントーちほう一億六千万のポケレスファンが叫んだ。

 けたたましいばかりのゴングが打ち鳴らされ、大歓声がタマムシシティの夜天を焦がす。

 

「……こ、これが、大文字風車固め(ファイヤースープレックス)、堪能させてもらった」

 

 体を起こしたグリフォンの元に、満足げな漢の声が届いた。

 変態的なマスクがパリン、と砕け、月光の下、澄み切ったエビワラーの青年の瞳が露わとなる。

 

「気が付いていたか。

 流石に海千山千の獣神武闘会代表、タフな体をしている」

 

「HA HAHA、

 だ、だが、それもここまでだ……。

 ピークを超えた俺の肉体は、後は静かに崩れゆくのみ」

 

 エビワラーの若者は力なく笑い、見下ろすグリフォンに神妙な表情を作ってみせる。

 

「止めを刺してくれ、伝説のとりポケモンよ。

 最期にお前のような雄ポケモンと戦えた事を誇りに思う」

 

「生憎だったな、獣神武闘会の帝王。

 やせいの掟に生きるキング・オブ・ダイナソーはもう死んだのだ。

 今の私は、プロレスに青春を捧げた一介のベビーフェイスに過ぎん」

 

 青年の言葉を意にも介さず、グリフォンは静かにそう言い放つと、足もとに落ちたマントの埃をゆっくりと叩き始めた。

 

「……かつて、私は遠き故郷(セカンドサウス)で、YOUのような力の殉教者と立ち合った事がある。

 あのような見事な筋肉を作り上げた強敵(とも)を、二度も失うのはあまりにも寂しい」

 

「情けをかけるつもりなのか……?

 バカな、ここで万が一にも俺が生き延びたならば、

 また何度でも、同じ地獄を繰り返す事になるぞ……」

 

「それだけの減らず口が叩けるのならば、復帰の方も問題あるまい。

 YOUたち獣神武闘会のせいで、今のカントーは善玉も悪玉も人材不足だ。

 次に会う時は、せいぜい今宵のようなビッグ・マッチを期待したいものだな」

 

「この……、プロレス、バカめが……。

 良いだろう、今日の所は、我々、獣神武闘会の、負け、と、いうこ、と……」

 

 青年の言葉が徐々にか細くなっていき、やがて完全に意識を手放した。

 たちまち駆けつけたポケモンセンターの医師たちが、手際よく搬送の準備にかかる。

 

「必ずこのリングに還って来い、『慧毘我羅(エビワラー)』のシシオウよ。

 YOUと決着をつけたがっている戦士もいるなだからな」

 

 遠ざかる青年の姿を見送りながら、独り言のようにグリフォンが呟く。

 ちらりと傍らに視線を送ると、ひのまるハチマキのサワムラーが無言で頷き返して見せた。

 

「キングゥーッ!」

「……っと!」

 

 不意に頭上から響いた明るい声に、グリフォンはすぐさま我に返った。

 たちまち上階から降って来た無邪気な少年を、太い両手で難なく受け止める。

 

「フッ、満身創痍のマイマッスルに対し、随分と手荒い歓迎だな。

 だが少年、私はもうキング・オブ・ダイナソーでは無いぞ?」

 

「ううん! 違うよ!

 たとえTレックスじゃなくったって、グリフォンはこのカントーのキングなんだ」

 

 そう言ってジュニアは白い歯を見せ、手にしたピカピカのベルトをグリフォンへと差し出した。

 

「これは……」

 

「キングの守り抜いた、DMSのヘビー級王座だよ。

 これだけじゃない、PMCと、残りの三団体のベルトだってキングの物さ」

 

「王者……、私が……」

 

「早速巻いて見せてよ! キング!

 カイリキー・ゴッチ以来、十数年ぶりの統一王者なんだ!

 カントー中のポケレスファンが、キングの誕生を祝福してくれるよ」

 

 無垢な少年の言葉に対し、グリフォンは一瞬、眩いばかりのベルトへと手を伸ばしかけ、しかしすぐに首を振って、ジュニアを地上へと下ろした。

 

「すまない少年。

 今の私にはそのベルトを、腰に巻く資格が無いのだ」

 

「え? な、なんでだよキング!?

 なんで今さらそんな事を言い出すのさ?

 このベルトを守り抜くために、キングは今日まで命がけで闘って来たんじゃないか!?」

 

「それは……、私がポケモンでは無いからだ。

 そもそも私には、ポケモンプロレスの世界に入門する資格が無かったのだ」

 

「……え?」

 

 きょとん、と目を丸くしたジュニアに対し、グリフォンは階上のギャラリーをぐるりと見渡し、諸手を広げ高らかと叫んだ。

 

「みんな、聞いてくれ!

 グリフォンマスクは伝説のとりポケモンなどでは無い!

 このカントーから遥か遠き故郷、サウスタウンからやってきた覆面レスラー、それが私だッ!」

 

「「「 な、なんだってェ――ッ!? 」」」

 

 グリフォンマスクから告げられた意味不明のカミウングアウトに、たちまち会場がスピアーの巣を突いたような騒ぎとなる。

 

「な、ななな、何を馬鹿な事を言っておるんじゃグリフォン!

 プロレスラーとは言えただの生身の人間が、

 インドぞうをも持ち上げるポケモンたちとマトモに渡り合えるワケ無いわい!?」

 

「い、いや! そう言えば聞いた事がある。

 このカントーの人間たちの中にも、恐るべき超常の身体能力を秘め、

 俗に『スーパーマサラ人』などと呼称される異能生存体が存在すると。 

 なるほど!

 もしも彼が伝説獣のマスクの上から恐竜のオーバーマスクを被っていたと言うのならば、

 試合中の謎の変身にも説明が付く!

 メガシンカなどと言うオーキドはかせの戯言を信じるよりは、よっぽどに自然ッ!!」

 

 テリー・ロヂャースの渾身の説明を前に、ギャラリーの混乱が少しずつ収束していく。

 このカントーで、ピカチュウを連れたスーパーマサラ人の噂は、それほどまで目撃情報に事欠かない都市伝説となっていたのだ。

 

「キングが人間……?

 そ、そんな、どうしてなのさ?」

 

 当然のように戸惑いの声を漏らすジュニアに対し、グリフォンはマスクの奥に悲しげな瞳を隠して静かに頷いた。

 

「……本当にすまない、少年よ。

 このカントーに漂着した当時、私は本当に記憶を失っていて、

 内に隠したマスクの事など憶えてもいなかったのだ。

 あの頃の私は本当に自分がきょうりゅうポケモンなのだと思っていた。

 いや、そう思いこもうとしていた、と言うべきだろうな。

 全ては私の臆病さが招いた過ちなのだ……」

 

「過ち? ど、どういう意味?」

 

「敗れたのだ、私は。

 そして敗北の恐怖から逃げ、偽りの仮面で己を隠した挙句、

 記憶喪失にかこつけ、苦い屈辱の過去を1・2の……、ポカン!とばかりに忘れようとした」

 

「……負けた? 嘘、キングが……?」

 

 いやいやと首を振るうジュニアの肩をそっと叩き、グリフォンが力強く次の言葉を紡ぐ。

 

「事実だ。

 この世界に完全無欠の戦士などと存在するものではない。

 ……だが今宵、私はこうしてリングに還って来た。

 YOUのおかげだ、少年」

 

「…………」

 

「YOUや、YOUのようなポケモンプロレスを愛する人々の声援が、

 再び私にこのマスクを被り直す勇気をくれたのだ。

 ありがとう少年、YOUのおかげで私は再び戦場へと飛び立てる」

 

「行っちゃう……、の?」

 

「ジュニアの言う通りだ、Mr.グリフォン。

 どうかもう一度考え直し、我々のグレンタウンに留まってはくれないか」

 

「……テリー」

 

 ジュニアの寂しげな言葉を引き継いで、いつの間にか階下へと降りて来たテリーが、グリフォンマスクに右手を差し出す。

 

「ポケモンだの人間だのと、そんな垣根は今の我々には関係ない。

 この荒廃したカントーポケレスを再興するためには、

 技術やノウハウよりも、強いハートを教える事が出来るトレーナーが必要だ。

 グリフォンマスク、今の君以上に相応しい男はいないと確信している」

 

「…………」

 

「だいもんじスープレックスのトレーナー、引き受けてくれないか。

 そうしてくれればジュニアも歓ぶ」

 

 差し出された熱い右手を、じっ、とグリフォンが見下ろす。

 しばしの沈黙。

 しかし、やがてグリフォンは諦観の吐息と共に、ゆっくりと首を横に振った。

 

「気持ちだけ受け取って置こう、テリー。

 残念だが、私は故郷にプライドを取り戻しに行かねばならない」

 

「プライド……、リベンジマッチ、か?」

 

「この地に斃れたダイナソーの亡霊が、今もまだ、マイマッスルの中で燻っているのだ。

 今一度、私は己の過去と向かい合う事で、あの恐竜王の弔いを果たさねばならん」

 

「そうか……、寂しくなるな」

 

 清々しいグリフォンの決意に対し、テリーもあっさりと右手を下ろした。

 勝てずとも強さを証明し、多くの観客を魅了する事が出来るのが本物のプロレスラー。

 しかしプライドを失えば、輝きはたちまちくすんで消える。

 人とポケモンの違いはあれど、そんなレスラーの心の機微を知る男であった。

 

「キング!」

 

 意を決し、ジュニアがグリフォンの大きな背に向け声を上げた。

 

「キング、いつかきっと、もう一度……、会えるよね」

「ああ、勿論だとも!」

 

 ジュニアの問いに力強く応え、そしてグリフォンはクチバシの端に意地悪な笑みを見せた。

 

「そうだな、フフ。

 その時は、少年の育てた団体統一王者ポケモンに対し、

 無制限一本勝負のエキシビジョンと洒落込みたいものだな?」

 

「えっ?」

 

 どきり、とジュニアの心音が跳ね上がった。

 もじもじと両手を擦り、年相応の不安げな瞳をグリフォンへと向ける。

 

「……できるのかな、僕に?

 あのダイナソーみたいな、最強のポケモンレスラーを育てる事が……?」

 

「できるさ、できるとも!」

 

 グリフォンの指先が、トン、とジュニアの胸を叩いた。

 ピクン、と一つ少年の体が昂り奮える。

 

「そうとも、YOUの胸に、闘魂ある限り!」

 

「……うん!」

 

 少年が、溌剌とした瞳でグリフォンの期待に応えて見せた。

 グリフォンは満足げに一つ頷くと、再びマントを羽織って大観衆へ向けて叫んだ。

 

「応援ありがとう! カントーちほう一億六千万のポケレスファンの諸君!

 YOUたちの愛が、勇気が、マイマッスルに再び立ち上がる力をくれたのだ」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「私は必ず帰ってくる。

 いつかまた、今日のような最高の一夜をすごそうではないか!」

 

「グゥーリーフォ――――ンッ!!」

 

「ひとまずはさらば! ダァアアァ――ッ!!」

 

 

 やせいのグリフォンの そらをとぶ!

 

 

 大歓声の中、再び伝説のとりポケモンが鮮やかに宙を舞った。

 燦々たる満月の中に男のシルエットが吸い込まれ、みるみる小さくなっていく。

 

 

「グーリーフォン!」「グーリーフォン!」「グーリーフォン!」「グーリーフォン!」

 

 

 一つの闘いは終わった。

 砕けて歪んだリングの上に、勝者のいないカントーの夜天に。

 ただ勇者を讃える人々の熱狂のみがこだまする。

 

「……あのグリフォンマスクの事だ。

 おそらくはたちまちキング・オブ・ファイターズとやらの頂点に立って、

 再びこのカントーちほうに舞い戻って来る事だろう」

 

「ダディ」

 

「ジュニアよ、うかうかしている時間は無いぞ。

 お前もそろそろ旅立ちに相応しい年頃だ。

 ポケモンプロレスマスター、本気で目指して見るか?」

 

「もちろん! ポケレスマスターに僕はなる!」

 

 父親の問いかけに対し、グレンの炎を宿した瞳で少年が叫んだ。

 王座が消え、灰塵となったカントーポケレスの荒野に、人々の情熱が火種となって燻り始める。

 

 人々の大歓声は、いつ果てるともなく続いていた。

 

 恐竜王の眠るマットに、帝王の去ったタワーに、勇者の消えた月夜に。

 

 

 そしてまた、ここカントーに、新しいポケモプロレスの朝日が昇る――!

 

 

 

 

 ――数年後。

 

 

 カントーちほう最大のポケモン学会の権威、オーキドはかせが、自らの研究の集大成となるデータバンクを公表した。

 後に『ポケモンずかん』と呼ばれるそのデータには、カントーの自然に住まう在来種とその進化形はもちろんの事、バリヤードやカモネギと言った地方のトレーナーたちが持ち込んだ外来種、かせきのDNAより甦った古代種やポリゴンのような人工種、果ては伝説の三鳥や謎多き幻のポケモンに至るまで、実に151種類に及ぶ膨大なデータが収録されており、今世紀最大の研究発表として大いに世間を湧かせる所となった。

 

「はかせ、このポケモンずかんのリストには空欄が二行ありますが、

 これは何か意図的な作為があって残したものなのでしょうか?」

 

 とあるレセプションの歓談の場で、ジョウトから来た不躾な記者が思い切ってはかせに尋ねた。

 

 周囲から忍び笑いがこぼれる中、オーキドはかせはどこか困ったように頭を掻いて、

 

「ああ、うん、まあ……。

 今後、わしのずかんが更新されるかどうかは、DMSの新社長次第、かなあ?」

 

 などと、意味不明な台詞を嘯いたと言う。

 

 

 

 団体対抗戦特別試合

 

 キング・オブ・ダイナソー(DMS)✖-〇『慧毘我羅(エビワラー)』のシシオウ(PMC)

 

 試合時間:5分12秒

 フィニッシュホールド:アースチョッパー(死亡)

 

 

 グリフォンマスク(DMS)△-△『慧毘我羅』のシシオウ(PMC)

 

 試合時間:8分12秒

 ※DMSサイドの規定違反による無効試合

 

 

 

 

 

 




No.___

 グリフォンマスク

 分類:ゆうしゃポケモン
 高さ:  2.1m
 重さ:118.0Kg

 タイプ1:ひこう
 タイプ2:かくとう

 ドわすれ
 つつく
 ちきゅうなげ
 そらをとぶ
 
 たいこのいでんしを いろこくのこす
 たくましい とりポケモンの ゆうしゃ
 じぶんのことを にんげんのなかまだと
 すっかり カンちがい している


 
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