あ! やせいのダイナソーがとびだしてきた! 作:いぶりがっこ
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ヤマブキシティに居を構え、今日のポケモン総合格闘界の中心に立ったこの新興団体は、長らくの格闘ファンたちにもとって興味の対象であった。
ポケ格の世界は一日にして成らず。
総合格闘技とは、膨大な学問であり、ノウハウの塊である。
腕っぷしだけが取り柄のやせいのポケモンが、一朝一夕にカントリアン・ドリームを成し遂げられるような甘っちょろい戦場では無い。
いかに旧かくとうポケモン道場を母体としているとは言え、斜陽のロートルたちに何が出来ようものか?
ならば、昨日まで全くの無名であったニューフェイスは、果たして何処から現れたと言うのか?
その答えもまた、今日の団体抗争戦で遂に明らかとなりつつあった。
第四試合、クチバのアンダーグラウンドを取り仕切るやくざポケモン『鬼ドリル』のヤマザキ。
そして今、とうとうそのヴェールを脱ぎ捨てた団体社長、ゴルダックの『覇我亜怒』
いずれもが裏社会に精通し、人語を介する異能のポケモンたち。
彼ら獣神武闘会が、表世界の練習生達とは別のポケ材ルートを確保しているのは今や明らかであった。
「フフ、だがならばとて、団体社長御自らがリングにお出ましとはな。
いや、YOUにも少しばかりプロレスの機微が分かって来たと言う事か」
「ふむ、何やら不満そうな口ぶりではないか、恐竜王よ」
「正直な所、な。
しょせん一介のみずポケモンに過ぎぬYOUのグラップリングに疑問を感じている」
ネクタイを緩め不敵な笑みを見せたハワードに対し、大袈裟に肩を竦めてダイナソーが応じる。
彼の内心の不満も尤もである。
ポケモンプロレスは己が肉体一つを頼りにドラマを描くエンターテイメント。
一介のみずポケモンに過ぎぬゴルダック相手では勝負は明白。
本人の資質を越えた所で、肉体面で如何ともし難い種族の壁が立ちはだかる。
「それで、ここからどう言ったアングルを見せてくれると言うのだ?
よもや、この狭いフロアーでさいみんじゅつを試そうと言うのではあるまいな?
……ハリケーンアッパーのジョーに仕掛けたように!」
「それも面白そうな余興ではあるが……、
同じ脚本ばかりでは観客たちも興醒めしよう。
そこで……、こう言う趣向はどうかな?」
「!?」
にっ、と口端を歪めたハワードの右手の水かきの上に、ボッ、と蒼い炎が灯る。
それを見たダイナソーの背筋を、たちまち戦慄が駆け巡った。
「レップゥケーン!」
てきのゴルダックの ソニックブーム!
刹那、裂風が大地を疾った。
丹念に磨かれた木目の床を切り裂いて、殺意の刃が一直線にダイナソーへと迫る。
「おっ!? うおおおおおおおっ!?」
回避の暇も無かった。
交差した両腕から鮮血が走り、120kgもの巨体が容易く吹き飛び、タマムシの夜景を望む防弾ガラスに容赦なく叩きつけられる。
「ダイナソー! 無事か!?」
「クソッ! いきなり何をしやがるんじゃこの野郎ッ!?
仮にもポケモンかくとう団体の代表が、磨いた己の肉体以外に頼るなどと……」
「待て……、スグル。
こいつはタダの真空波ではない……!」
いきり立つスグルを片手で制し、ダイナソーが体を起こした。
頭を振るい、不敵な嘲笑を向けるハワードを忌々しげに見上げる。
両腕に走る熱戦と激痛が、恐竜王の脳裏にいつかの街角での死闘の記憶を思い起こさせる。
「これは……、気だ!」
「ホウ、よもや貴様が気功の世界を知っていようとは、
成程、6500万年のキャリアとやらもブラフでは無いか」
ダイナソーの憤りに対し、どこか感心したようにハワードが嗤う。
気功。
馴染みの薄いオカルト言語の登場に、ギャラリーも思わず互いに顔を見合わせる。
「うん? 気功……?
オーキド博士、彼らは一体何の話をしているんでしょうか?」
「ウム、気、気功、か」
傍らのタケシの問いかけに対し、ポケモン界の権威オーキドはかせは、少しばかり困ったように言葉尻を濁らせた。
「元来、ボクシングやパンクラチオンのような西洋渡りのポケモンかくとうぎは、
長い競技史の中で合理性を求めて発展してきたと言われておる。
体を動かす最適な
対し、東洋由来の
医術も、食も、房中術も、薬学も、戦術論も、政治も、哲学も、自然科学も、神秘学も……、
全ては気、生命エネルギーのコントロール法を根底とする膨大な学問なんじゃ」
「ウー! ハー!」
「ああ、そうじゃともシバくん。
現代のかくとうポケモンたちの中にも、はどうだんやきあいだまと言った、
気功術に根ざしたひっさつわざを修めるたつじんポケモンが存在する」
「ウー! ハー!」
「そう……、確かにそこなんじゃよ。
ここカントーちほうにおいては、気功術に精通したポケモンなどは存在しないハズ。
だとしたら、あのダイナソーやゴルダックは、一体どこから来たと言うんじゃ?」
「ウー! ハー!」
かくとうポケモン使いのパイオニア、してんのうのシバも疑念のあまり三戦する。
ちらり、とギャラリーのざわめきを横目にして、ダイナソーがふはっ、と鼻息を吐き出す。
「と、まあ、ポケモン学会の権威は煩わしい噂話をしているようだが、
我々ポケモンレスラーにとって、重要なのはただ一つ。
かくとうぎ最強を目指すポケモンは、気功使いを避けては通れんという事よ!」
「ま、待て、ダイナソー!
何というか、ヤツは危険だッ!?」
「フフ、死に急ぐか恐竜王」
ゆらりとダイナソーが身を屈めた瞬間、何か形容し難い妖気がぐにゃりと空間を歪めた。
かざしたハワードの両手から再びオーラが揺蕩い、ぞくぞくと戦慄が背筋を駆け抜ける。
「ダーボゥ……」
「マングロォーブッ!」
「裂風……、ムッ!?」
刹那、いち早くダイナソーが動いた。
ゆったりとした低姿勢から一転、力強く大地を蹴った。
飛び跳ねた巨体の真下をびゅおん!と裂風が走り抜け、その眼前に、無防備なあひるポケモンの喉笛が迫る。
「や、やった!? さすがはダイナソー。
ハワードのヤツは必殺技を撃ち抜いてスキだらけだ!
両手のひっかく、顎のかみつき、どちらを避けても致命傷じゃい!」
「い、いや……!
迂闊だぞダイナソー! そいつは、何かがおかしい!?」
ニマア
テリーの言葉を肯定するように、ハワードが口端を邪悪に歪める。
瞬間、微笑がダイナソーをすり抜け、その視界に急速に床板が迫ってきた。
「おっ!? おおおお!」
「ナイスファイ!」
やせいのゴルダックの あてみなげ!
たちまち鈍い音がフロアに轟き、受け身を取り損ねたダイナソーの頸椎に120kgが乗る。
視界が白色に染まりちかちかと揺れる、その上なおも執拗に太い水かきが咽輪に迫る。
「立て」
頭上からの声と同時に、凄まじいばかりの膂力で巨体を吊り上げられた。
驚く間もなく視界が再び暗転する。
「出直せィ!」
やせいのゴルダックの かみなり!
衝撃と同時に閃光が爆ぜ、青白い稲光が一斉に大地を走った。
大気が震え、会場から一拍遅れの轟音と悲鳴が上がる。
「か、かみなりじゃと!?
この室内で、そ、それもあやつめ、でんきポケモンでも無いクセに」
「先ほどの裂風に続き、この落雷……!
気功術とやらを極めた者は、気象をも制するというのか」
ごくり、とテリーが生唾を飲み込む。
静まり返った御法神のフロアーに、大の字となった恐竜王の焦げる匂い。
誰一人、声を上げられなかった。
凄まじいポケモンかくとうマイスターの秘儀の前に言葉を失っていた。
「……思えば、この一巻の秘伝書が全ての始まりであった」
沈黙の場内に、不意にぽつり、と独白が響いた。
見ると、上等な背広の内ポケットから抜かれたハワードの右手には、古めかしい巻物が一つ握られていた。
「クチバの港に流れ着いた一巻の書物。
これがただ一介のコダックに過ぎなかった私の運命を変えた。
そこに転がっているトカゲは、6500万年を生き抜いた帝王などと嘯いていたようだが……。
下らん! 人類の飽くなき探究心は、僅か四千年にしてあらゆる野性を克服したのよ」
「書物、人類の探究心……?
気功術の奥義を記した秘伝書の存在が、でんせつにも等しいポケモンを生んだというのか」
「ふっ、賢しいなテリーよ!
そうだ、この八極聖拳を極めし者は、地上のあらゆる武を極めし者。
時は流れた!
このハワードは『
「
何という傲慢な、しかし、確かにそれも認めざるを得ない」
「ハァーッハッハッハッハッ! ……Die yobbo!!」
ハワードの高笑いがフロアーに響き渡る。
無念であった。
かのとりポケの使う秘奥技は、ここカントーのあらゆるポケモンかくとうぎを超越していた。
ここまでの階段を血反吐を吐く思いで上り詰めたダイナソーの戦いは、全くの徒労であったと認めざるを得ないのか?
「……解せぬ、な」
ぽつり、と不意に呟きがこぼれた。
ハワードの哄笑が思わず止まる。
見れば、ダイナソーが相変わらず仰向けのまま、奇妙に澄んだ瞳をハワードへと向けていた。
「死にぞこないめ、まだ息があったか」
「YOU、それだけの力がありながら、なぜ今日の今日まで黒幕に徹していた?
六騎士を使い卑劣な罠を張り、なにゆえここまで回りくどい手を打たねばならなかったのだ?
YOUの技があれば、立ちはだかる障害を振り払う事など造作も無いハズだ」
「下らんな、命を張るなど下等なねずみポケモンのする事よ」
ニマア、再び口元を吊り上げ、ハワードが手にした巻物を内ポケットへとしまう。
「教えてやろう、所詮は生き延びるための術を選べぬのがやせいのポケモン。
だが支配者は、富も、権力も、部下も、全てをこの水かきに収める事ができる」
「…………」
「お前のように命を賭ける者ほど、罠に掛けるのは容易い。
支配者はリスクを冒さぬ。
労せずに果実を手にする、生態ピラミッドの頂点に立つ者の真の姿とは思わぬか?」
「……ならば、迂闊にもマイマッスルの前に立ちはだかってしまった時点で、
YOUはすでに支配者とは呼べぬなあ!」
減らず口と血反吐を吐き捨て、ダイナソーが震える肉体に活を入れた。
ゆっくりと立ち上がる対主の姿をハワードがいかにも煩わしげに睥睨する。
「下郎めが、その体でまだやろうと言うのか?」
「ヌハッ!
裂風だの落雷だの、その程度の神羅万象は6500万年前に攻略しておるッ
マイマッスルがこの世で恐れるものはただ一つ、隕石のみよッ!!」
「脳筋が。
ククク……、貴様の信仰するマッスルとやらはつまり……、こういう事かあッ!?」
てきのゴルダックの ビルドアップ!
「あっ!?」
「ああ……」
「ああ――――っ」
「うおお―――――っ!!」
突如、雄叫びを上げるハワードの全身が個々の生物のように膨張を始めた。
大胸筋が、腹直筋が、後背筋が、大腿筋が、
ハワードの体を作るあらゆる筋肉が、ボコッ、ボコォッ、と膨らみはじめ、一張羅のスーツをバリバリに引き裂いて巨大化していく。
「ふしゅるう……」
そして、覚醒が終わった。
規格外の大型とりポケモンと化したハワードの肉体は、2mを超すダイナソーを悠然と見下ろすほどの巨体へと成長していた。
「奥義・鋼霊身!」ニマアッ
「…………」
百戦錬磨のダイナソーも、この時ばかりは目の前の威容に言葉を失った。
青ざめた恐竜王を眼下に収め、ハワードが嘲るように笑みを送る。
「これが気の究極だ、ダイナソー。
あらゆるゼツメツの危機を乗り越えて磨き上げたという貴様の筋肉も、
気功の達人たちの世界においては児戯に等しい!」
「ぐっ」
「6500万年、くだらぬ努力を重ねたものだな」
「馬鹿な、バカなッ!?
古文書頼みの付け焼刃の肉体相手に、マイマッスルが遅れをとるモノかぁーッ」
やせいのダイナソーの メガトンパンチ!
怒声を吐き出し、風を巻いてダイナソーが走った。
唸りを上げる剛腕が正確に相手の顔面を捉え、ビリビリと衝撃が会場を震わせる。
会心の一撃、観衆の目にはゴルダックの首がぶっ飛ぶほどの一撃が入ったように見えた。
だが……。
「フッ」
「!?」
てきのゴルダックには こうかが ないようだ……
「この愚か者めがぁーっ」
てきのゴルダックの たたきつける こうげき!
「うおおおーっ!?」
強烈なハンマーブローに大地が震え、ダイナソーの体が板の間に叩き付けられた。
羽目板がぶっ飛び、恐竜王の肉体がヒキガエルのように土台にのめりこむ。
「ぐ……、おお……」
「己と相手の力量差も見極められんとは、やせいが聞いて呆れるな」
小さくため息を吐き、痙攣するダイナソーの肉体をハワードの水かきが引きずり起こす。
「もはや、私が手を下すまでもあるまいが……。
私の手をここまで煩わせた貴様には、相応しい死に方が用意してある!」
てきのゴルダックの しめつける こうげき!
ハワードの巨体がガチリとダイナソーをリバース・フルネルソンに捕らえた。
やがてエアブレーン・スピンの要領で回転が始まり、舞台中央に猛竜巻が出現する。
てきのゴルダックの はねる こうげき!
「ムオッ!?
ハワードのヤツ、ま、まさか……!」
「逃げろダイナソー、脱出するんだッ!!」
「やめてえええええええ―――――ッッ!!」
「さらばだキング・オブ・ダイナソー!
この獣神タワーにその身を墓標と刻めェ―――ッ!!」
ゼ ツ メ ツ ハ リ ケ ー ン !!
瞬間、爆音がフロアー全体に炸裂した!
一瞬遅れの衝撃波が突き抜け、守護者たちの像が弾け飛び、衝撃で窓ガラスが一斉に割れる。
風が吹き、立ち込める粉塵を攫っていく。
視界の晴れた室内に在ったのは、地に臥した恐竜王を睥睨する帝王の姿。
闘いは終わった。
その場にいた誰もがその光景を即座に理解した。
「……ゼツメツハリケーン、か。
ふっ、フハハ! 面白い。
安心しろ恐竜王よ、この技、秘伝書の端にでも刻んでおいてやるとしよう!」
ニマアッ、と口元を歪め、ハワードが傍らの審判にゴングを鳴らすように指示を出す。
いや、出そう、と視線を外した。
その瞬間、ぞ わ り、と思いもよらぬ戦慄が彼の背筋を駆け抜けた。
「なっ!?」
反射的にフロアの端に飛び退いて後背を振り返る。
そこでは既に、ダイナソーが何事も無かったかのようにその身を起こしていた。
「ヌハ! 何を怯えるタマムシの帝王よ?
ふいうちの一撃で相手を倒すような無粋はせぬぞ」
「貴様……、な、なぜだ?
あのゼツメツハリケーンを受け、なにゆえに貴様は立ち上がれると言うのだ!?」
「フハハ! マタドガスが自分のどくで死ぬものかよ?」
「あ……?」
「フン、気功術とやらはともかく、レスリングの方はとんだ素人のようだな。
着地の瞬間、私がYOUのフックを外し、
万全の受け身で衝撃を和らげたのに気が付かなかったか?」
「あの一瞬で、ま、まさか……?」
「さて、茶番はこれでお終いだ。
そろそろYOUが自慢とする、
「あ……?」
突然のダイナソーのリクエストに対し、思わずハワードの口から疑念が零れる。
そんな相手の反応を気にも留めず、なおも恐竜王が捲し立てる。
「鋼霊身とは、己が体内に満ちた気を外に向けて解き放つ技。
先ほどからYOUの使っているパンプアップなど所詮は序の口。
八極聖拳の達人が使う時、そのマッスルは黄河を呑み込み泰山をも砕くと言う。
まさしくはクライマックスに相応しい奥義、で、あろう?」
「あ……? あ……?」
「……その反応、やはりYOUは秘伝書の主では無かったようだな」
「秘伝書の、主、だと?
さ、さっきから貴様は一体、なんの話をしておるのだ?」
狼狽する帝王の顔と手にした古い巻物を、ダイナソーが交互に見やる。
その瞳の内に、僅かに憐憫の色が宿る。
「YOUのおかげで、以前よりもはっきりと思い出せてきたのだ。
なに、とある街のバーで聞いた、くだらぬお伽噺の一節よ。
究極の拳技を修めた秘伝書は、三巻に分かたれ世界へと散った。
秘伝書は最強の男を求めて各地を流転し、
その全てを手にした者は地上の全てを得る事が出来る、とな」
「あ……?」
「お伽噺がお伽噺に過ぎぬのか?
あるいはまだ、その時では無いという事なのか。
いずれにせよそのザマでは、YOUは帝王の器ではないようだな。
たかだか書物を一つ紐解いた程度で、筋肉の持つ可能性を忘れてしまったYOUは……」
「だッ 黙れェ―――ッ!!」
胸中の不安を打ち消すようにハワードが叫んだ。
掬い上げる右の指先に、再び蒼い炎が灯る。
「レップゥケーン!」
てきのゴルダックの ソニックブーム!
大地を走る裂風が、ダイナソーの正中線を真直ぐに抜いた。
真空の刃は恐竜王の肉体を一閃し、瞬く間に両断するかに見えた。
「フンッ!」
だが、ダイナソーが自慢の腹筋を一固めすると、たちどころに風は凪ぎ、微弱な燐光を残して拡散してしまった。
「……以前、YOUと同じような技を使う少年と出会った事がある」
「あ……?」
「技も肉体もまだまだ発展途上で、戦士と呼べるような実力者では無かった。
だがあの瞳……、本物のおおかみポケモンの餓えた瞳の色に、私のキャリアは殺されたのだ」
「あ……? あ……?」
「YOUは違うな、YOUの瞳は上を向いてはいない。
世界を知らず、己が机上の空論で満足してしまったポケモンの拳など、
マイマッスルは怯みはせんわっ」
「ふ、ふざけるなッ!?
たかだかショープロレスの世界の王者如きが、本物の帝王に敵うものかァ!?」
てきのゴルダックの ソニックブーム!
「うおおおおおおおおおおおおっ! ウィンドストームッ!!」
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
てきのゴルダックの ソニックブーム!
心中の恐怖に突き動かされるかのように、ハワードが己の切り札を切った。
右に左に撃ち放つ裂風拳の乱打。
暴虐の嵐が吹き荒れる。
気功術を持つ者と持たざる者の絶対的な隔世。
もはや反攻は不可能、ダイナソーは防御を砕かれ蹂躙されるのを待つのみ。
……にも拘らず観衆には、詰み筋に入ったハズのハワードが追い詰められているように見えた。
「ガオ!」
果たして、恐竜王はゆっくりと歩き始めた。
吹き荒ぶ暴力の嵐に怯みもせず、一歩一歩、大地を踏みしめ敵へと迫る。
「あれは……、あれはまさか、ジャストディフェンスかッ!?」
「知っているのかテリー!?」
「ああ、見ろ、ダイナソーの肉体を。
裂風が直撃する度に、彼の周りに青白い燐光が灯るのが見えるか」
テリーに言われ、傍らのスグルもよくよく目を凝らす。
確かに彼の言う通り、敵の技を受ける度に、ダイナソーの体の周りに、微かに暖かい光が灯るのが見えた。
「うむ、あ、あの光が一体なんだと言うんじゃ?」
「ダイナソーは敵の気弾をただ受け止めているワケではない。
敵の技に呼吸を合わせ、いなして拡散させている。
そうして周囲に溢れ出した気を体内に取り込み、己のエネルギーに変えているんだ。
ハワードは動揺のあまり状況に気が付かず、ダイナソーの罠にどっぷりと浸かってしまった。
裂風拳を撃つ度にハワードは消耗し、対してダイナソーは少しずつ力を取り戻している」
「そ、それがダイナソーの不死身の正体と言うワケか……。
し、しかしヤツの技の母体はプロレスでは無かったのか?
対気功術用の防御法など、アイツは一体ドコで学んだというんだ?」
「恐らくは……、経験!
6500万年にも及ぶ死闘とキャリアが、ダイナソーの本能に技術をもたらしたに違いない」
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!??」
恐怖。
ついにハワードはその身の動揺を隠しきれなくなっていた。
膨大な気の嵐の中、とうとう互いの息遣いが聞こえる距離にまでダイナソーは迫っていた。
「ショープロレス……。
認めよう、私が身を置く舞台は確かに、互いの命を奪い合うような真剣勝負の世界ではない」
「ぐううう、な、ならばなぜッ
貴様は本物の気を前にして、こうまで立ち向かう事が出来る」
「本物だとッ!?
ふざけるな! YOUの必殺技とやらが本物などであろうものか!」
「あ……? あ……?」
「わかるまい!
ありとあらゆる『本物』が集まるあの街で!
達人たちの『本物』のストリートファイトが繰り広げられるあの街でッ!
最強の勇者を演じ続ける重責と覚悟が、どれほどのものである事かッ
本物と闘った事の無いYOUには理解できまいッ!」
「お……、おおおおおおおおおっ!?」
てきのゴルダックの たたきつけ――
「ガァオオゥッ!!」
やせいのダイナソーの ロケットずつき!
「が……っ」
きゅうしょに あたった!
ハワードが両腕を振り上げた瞬間、真下から跳ね上がった恐竜王の石頭がアゴを捉えた。
大きな嘴に亀裂が走り、文字通り気の抜けたハワードの五体が高らかと上空に打ち上げられる。
「待っていたぞーっ この瞬間をッ!!」
やせいのダイナソーの ロケットずつき!
「がああああああっ!?」
ダイナソーの第二射が火を噴いた。
落下速度が痛烈なカウンター効果を予備、ドテっ腹に浴びたハワードがくるくると上空に舞う。
「こいつは大事な仲間を倒されたテリーの分だーっ!」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
やせいのダイナソーの ロケットずつき!
「こいつは真剣勝負を汚されたジョーの分だーっ!」
「ぬごあああああああああああああああああっ!?」
やせいのダイナソーの ロケットずつき!
「こいつはテリーJrの悲しみの分だーっ!」
「ぐげえええええええええええええええええっ!?」
やせいのダイナソーの ロケットずつき!
頭突き、合わせて五発。
幾度も幾度も上空に突き上げられ、ボロクズのようになったハワードに合わせ、ダイナソーが深々と体を沈める。
「さあ思い知れ、タマムシの帝王よッ!!
全国一億六千万人のポケレスファンの心の痛みッ
正義の鉄拳……、もとい! やせいのいかりをその身に受けるが良いッ!!」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」
「ティーラァ――モォッ サードレッドカルノガオォオオォォ―――ッッ!!!!」
やせいのダイナソーの すてみタックル!
とうとう恐竜王のクライマックスが火を噴いた。
120kgの全身全霊を全身に受け、ハワードのベクトルが水平に変わる。
6500万年の圧倒的筋肉が柱を砕き、力士像を砕き、遂にはブ厚い防弾ガラスをブチ破る。
「ううおおおおおおおおおおおおおぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~」
シップウケーン
哀れハワードはヤマブキの空へ。
悲しみの断末魔はカントーの風に掻き消され、やがて静寂が当たりを包んだ。
なお余談ではあるが、彼はその後担ぎ込まれたポケモンセンターにて『
・
・
・
カン! カン! カン! カン!
高らかとゴングの音が室内に響き渡り、満員の観衆たちの拍手喝采が溢れ返った。
闘いは終わった。
長きポケモンプロレス受難の時代が終わりを告げ、カントーの新時代が産声を挙げたのだ。
『お聞きくださいこの大歓声!
感動と祝福の嵐がヤマブキの夜景を燃やしております。
DMSとPMCの長きに渡る死闘と因縁が、遂に今宵、清算の刻を迎えました。
だいもんじスープレックスの新たなスターとなったキング・オブ・ダイナソー。
この素晴らしい勇者の力に牽引され、
ここカントーちほうには新たな名シーンが刻まれていく事でありましょう!』
「ダイナッソー! ダイナッソー! ダイナッソー! ダイナッソー! ダイナッソー!」
「ダイナソー、よくぞここまでやってくれた!」
「お前さんこそ真のポケモンレスラーじゃい」
「キング! 本当にありがとう」
割れんばかりのダイナソーコールの中、だいもんじスープレックスの面々が駆け寄って次々に激励の言葉をかける。
だが、この熱狂の中心であるハズのダイナソーの顔は、どこか浮かない。
「本当に、これで全てが終わった、のか……?」
「おいおいおいおい?
今更なにをトボけた事を言っとるんじゃダイちゃんよう?」
「団体戦の全てを消化し、獣神武闘会のあくまポケモン六騎士は全滅した。
代表のハワードまでもがポケセン送りとなった今、これ以上なにがあると言うんだ」
「だが、ヤツは、ハワードは本物のかくとうポケモンでは無かった」
「本物?」
「獣神武闘会の海千山千のクセ者たちを率いる器ではない。
ヤツは一体、ドコであの秘伝書を手に入れた?
意図的にヤツに力を与えた黒幕がいるのではないのか……?」
「キング……」
傍らのジュニアが、物憂げな恐竜王の背中をさするように手を伸ばしかけた……、その時!
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「な、なんじゃ一体、この揺れは?」
「じ、地震だと、こんな時に」
「いや、違う! これは……!」
てきの????の じしん!
歓声がたちまち悲鳴に変わった。
獣神タワーが恐怖に震えていた。
言い表し難い焦燥感が、直感的に真実を告げる。
これは、気だ。
先ほどのハワードの放った風や雷のように、何者かの放つ強力なオーラが、人為的な鳴動を引き起こしているに違いなかった。
「ガオ! 震源は上だッ!
このタワーの屋上に、凄まじい闘気を秘めた漢ポケモンが潜んでいるに違いない!」
ダイナソーの叫びに合わせて鳴動が止み、不気味なぐらい重苦しい剣気が溢れ始めた。
静寂の中、デスクの後ろのシャッターがゆっくりと開き、屋上へ続く階段が姿を現す。
「正真正銘、ファイナルラウンドへのお誘いのようだな。
ドコの何ポケモンだか知らぬが……、面白い!」
「ま、待て、ダイナソー、待ってくれ!?」
鼻息も荒く踏み出そうとしたダイナソーの前に、傍らのスグルが慌てて立ちはだかった。
「ダイナソー、これ以上の闘いはもう必要ないんじゃ!
団体対抗戦はワシらの勝ちだ。
上にいるのが何者だろうと、もう、ウチの興業を邪魔できるヤツはおらんわい」
「スグル……。
だが結局、ハワードのヤツは傀儡に過ぎなかったのだ。
ここでこの邪悪な気の持ち主を叩いておかねば、獣神武闘会は必ず蘇る。
全ては元のメタモンに戻ってしまうのだぞ?」
「ワシだってわかっておるワイ、そんな事はッ!?」
ダイナソーの説得に対し、涙を振り絞ってスグルが叫んだ。
「そうだ、この凄まじい闘気。
あのハワードを凌ぐバケモノが屋上に待ち受けているのは素人にだって分かる。
そんな強敵を前にして、お前は今のボロボロの体で何をしようと言うんじゃ」
「スグル、YOUは……」
「当面の危機は去った、今日はもうそれで良いではないか?
これ以上ワシらのために、お前さんを危険に曝したくは無い!
もうこれ以上、お前さんは体を張らんでもいいんじゃッ!!」
「…………」
スグルの必死の説得を前にして、ダイナソーの瞳に、僅かに穏やかな色が浮かんだ。
が、すぐにダイナソーはぶるぶると頭を振るい、重っ苦しい空気を鼻息で吹き飛ばした。
「スグル……、優か……。
ヌッハハ! YOUはプロレス団体のトレーナーしては、少しばかり甘さが過ぎるな」
「ダイナソー、お前」
「だが、共同戦線はここまでだ!
ここから先は私の闘い、私のワガママでやらせてもらう」
「待って、キング!」
最終決戦の舞台へ向かう恐竜王の背に、ジュニアが張り裂けんばかりの声をかける。
ダイナソーはちらりと振り返り、わずかに口元を歪めて答えた。
「ジュニアよ、心配は無用だ。
YOUが捕まえた地上最強のかくとうポケモンの実力を、特等席でよく見ておくがいい!」
「キング……」
「さあ、ファイナルラウンドも無敵で行くぞォ――――ッ!」
あ! やせいのダイナソーが とびだしていった!
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団体対抗戦最終試合
キング・オブ・ダイナソー(DMS)〇-✖『
試合時間:42分42秒
フィニッシュホールド:ティラモサドレッドカルノガオー(死亡?)