深紅の女帝と漆黒の帝王   作:鎖麗

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女帝の過去

そう あれは

あの日私を助けてくれた彼を

好きだと思ったのが 始まり

 

 

ーーーーー数年前

 

 

「いやっ 離してっ」

 

路地裏に私の声が響く

 

私を押さえつける男たちは 皆

下品な笑みを浮かべ これから起こるであろう

事が 楽しみで仕方がない とでも言うように

目をギラギラさせて笑っていた

 

「おいおい おじょーさん

大人しくしてたほうがいいぜ?

痛くされたくないだろ?」

 

ギャハハハハっと笑った

 

ああ 嫌だ 嫌だ

 

こんな男たちに私を奪われるなんて 死んでもごめんだ

 

そんなことを思っている間にも

私は服を破かれ 下着も外されそうになっていた

 

気持ち悪い きもちわるい キモチワルイ

 

私に触れないで その汚い手で

 

そして パチン と音がして

サラリと私の 下着がポトリと地面に落ちた

 

「ヒューー いい体してんじゃん! おじょーさん!」

 

あ…ああ …あああ

 

「だ…誰か」

 

「ん? なんか言った?おじょーさん」

 

そう言ってくる男の瞳は 欲に塗れていて

 

「…誰か助けてえええええ!!」

 

私なりの大きい声で叫んだ

 

慌てたように 男たちは私の口を塞いだ

 

そして 次の瞬間

 

ドガッ という鈍い音がしてその音に

ついていくように ガハッという

私を押さえつけている男のうめき声が聞こえた

 

「何だ!てめえは!」

 

「部外者は引っ込んでろ!」

 

「お前殺されてーか!」

 

様々な男たちの罵声

 

もしかして 私のことを誰かが 助けてくれた?

 

助けてくれた人のほうを

見ようと上を向いた瞬間

 

「まだ こっちは見ちゃダメ」

 

そう言ってきた人は

 

「怖いから 目つぶってな?」

 

そう言うと ゆっくりと 男たちの方へ行き

彼らをさっきの男のように殴り倒していった

 

その姿をジッと見ていた 私

 

不思議と怖いとは感じなかった

 

ただただ 凄い

 

それしか 思い浮かばなかった

 

全員が倒れた後 彼が私のほうに歩いてきて

そっと手を差し出してくれた

 

その手に吸い込まれるように 手を合わせると

グイッと結構強い力で 立たせてくれた

 

「…あ…ありがとう」

 

私がつぶやくようにいって

彼の方を向くと彼は優しく笑ってくれた

 

そして 照れたように 自分のパーカーを脱いで私に着せてくれた

 

そういえば私 上半身裸だったじゃんめっちゃ恥ずかしいっ

 

これが 私と彼の出会い

 

その数日後が高校の入学式

そこでまた彼と会った

暗くてよく分からなかった彼の顔は

とても王子様フェイスだった

 

焦げ茶色のサラサラな髪

優しげなたれ目気味の目

 

王子様というまでもなかった

 

彼と再会してから数週間

私はその数日で彼が好きになった

 

でも彼にお姫様がいることを知った

だから 諦めてた

私は 友達と彼はお姫様と

楽しい学校生活を送ると思ってた

 

「好きだよ 付き合ってください」

 

その一言で私の送ると思っていた学校生活は 無くなった

 

そしてその言葉を吐き出した瞬間

お姫様は 絶望した

 

それから 私と彼 八王子 蓮(れん)の恋人生活が始まった

 

そのことは すぐに 学校中に広がった

 

みんなが祝福してくれた

 

嬉しかった 夢だと思うほどだった

 

私の王子様 運命の人だと思った

 

でも それはちがった

 

私たちが付き合い始めてすぐだった

 

お姫様が いいえ 七星 愛姫(あいき)さんの

様子が可笑しくなった

 

具合が悪くなりやすくなって 泣きやすくなった

 

私は嫌な予感した でも蓮を信じてたから

 

でも…

 

「ごめん これから登下校は愛姫とする」

 

私の願いは簡単に打ち砕かれた

私はその寂しさを埋めるために 友達と

よく一緒にいるようになった

 

でも それもすぐに終わる

 

ある噂が流れた

 

「知ってる? あの聖那って本当は八王子くんと付き合ってないんだって」

 

「マジで!?」

 

「なんか セフレとか聖那が言ってるだけみたいな」

 

「嘘! 二人のこと祝福してたのに…」

 

「ね〜!…それでさ、クラスで聖那のこといじめようって事になってんだけど…」

 

「やっちゃう?」

 

「やっちゃおっか!」

 

「「あははは!!」」

 

それからは すぐだった

 

私と昨日まで笑いあってたはずの友達が

今じゃ軽蔑するような目を向けるクラスメートに変わっていた

 

一人の親友を除いて

 

私の親友 佐藤 瀾(なみ)

ボーイッシュなショートヘアを明るい茶色に染めていて

なんていうか…今時の子?

結構 正直なさっぱり美人

 

私はそんな瀾が大好きだ

 

そして 私の名前は 北條 聖那(せつな)

 

そんな生活が三年間続いた

 

今は屋上

 

「あんたさー マジでここから出てってくんない?」

 

はあ? あなたが私を呼び出したのでしょう?

 

「ていうかさー セフレの分際で愛姫と蓮のもとに

割り込まないでくんないかな」

 

割りこむ? そんなことをした覚えはないわ

 

こんなことを いつも 朝いわれる

 

最後には 必ず 腹を殴って帰る

 

あっ それと 蓮と七星さんの登下校も見せられて 諦めさせようと してる

 

ホント めんどくさいことをしてくるわよね

 

私が諦めると思う?

 

私の想いはそんなに 軽いものじゃないわ

 

「蓮 おはよう」

 

そう 私が微笑むと

 

「おはよう」

 

そう言って 頬にキスをしてくれた

 

その時 見えた後ろにいる七星さんが見えた

 

瞳は潤んでいて 頬は涙が出ることを 拒むように

蒸気している

 

…ホント お姫様よね

 

「うわっ 見てよ

魔女が また 愛姫の前で ベタベタしてる」

 

「うっざ! 愛姫のどこがそんなに嫌いで

嫌がらせしてんだよ」

 

 

…そんな会話が聞こえた

彼女たちは 私が過去に友達と呼んでいたクラスメートたちだ

 

私はこの学校では 魔女と呼ばれている

 

お姫様のものであるはずの王子様を

汚いやり方で奪った 最低 最悪な魔女

 

そういう意味らしい

 

ふっ 笑っちゃうわよね

 

そんなこんなで もう夕方

蓮にいつもより早く来て欲しいと言われ

30分早く家を出て 待ち合わせ場所に向かった

 

そこにいたのは 蓮じゃなくて

 

「ああー! やっと来たよ〜」

 

「…北條さん」

 

お姫様御一行

 

「なんで 七星さんが…」

 

そう 言った私の目は と助けてとでもいうように

蓮の姿を探していた

 

ああっ 嫌な予感がする

 

今すぐここから逃げ出したい

 

「えっと…私 北條さんに言いたいことがあって…」

 

そう言って でも 躊躇うように 目を揺らしていた

 

「ほらっ 早く言っちゃいなよ!」

 

「蓮だって 可哀想だと思うでしょ?」

 

二言目の言葉を聞いて決めたように

私を見た北條さんの瞳は

見たことがないほど 正義感に溢れていて

私は知らないうちに 後ずさっていた

 

「あの! 北條さんって

蓮と付き合ってないんですよね?

それに 他にも 彼氏がいるって聞きました

そんなことをしないで下さい

蓮が可哀想!

もしも 蓮が一番じゃないなら

私の蓮を返して下さい お願いします!」

 

そう言って頭を下げてきた

 

何を言ってるの?

 

他にも男がいる?

付き合ってない?

何の根拠があってのこと?

 

いつものように 黙って終わるのを待とうと思っていたら

 

「安心してよ ちゃんと蓮に確認してから来たんだから」

 

ニヤリと口角をあげ 笑った女の言葉は

私を地獄に落とす悪魔の囁き

 

な…何を…言って…

 

そう呟いた私の瞳は 酷く動揺していたのだろう

自分でも 瞳が揺れているのがわかった

 

「ホントのことだよ …ねっ 蓮?」

 

え? そう言って視線を後ろに向けた女の

視線につられるようにして 女の後ろに視線を向けた

 

「…蓮?」

 

蓮は確かに女の後ろにいた

でもいつもの優しい 瞳じゃない

これは周りの人間たちと同じ視線

軽蔑の目と少しの悲しみが入り混じった瞳

 

…、待って 嫌だ 嫌だよ

 

違うよね 嘘なんでしょ 夢かなんかなんじゃないの

だってこんなのありえないんだもん

 

そうだよね 蓮

 

「…お前には失望した 俺にはお前だけだったのに

お前には 違ったんだな」

 

そう言って私の肩を強く強く押した

…いや 突き飛ばした

 

私の体はコンクリートで出来ている壁にぶつかった

 

ドンッと音がしたあと

 

私の頭に衝撃があたった

 

…嘘でしょ?

 

ダラリと私の左側に 何かが大量につたった

目を開けていられない

 

そっか 私だけだっただったんだね

信じていたのは わかった ちゃんとわかった

 

「ふふふっ ふふっはは あはははははははっ」

 

何だかおかしい もう 全部がおかしくて笑ってしまう

笑いが収まった私の瞳には 涙が浮かんでる

 

これは笑いすぎてしまったせいで出てしまったもの

 

絶対に悲しいとかそんなんじゃないから

 

…絶対に違うから

 

「ふふっ いいこと教えてあげようか 蓮

私が処女じゃない理由

私ね そこにいる 女の子たちに倉庫に閉じ込められて

犯されたんだよー?

毎日 毎日 学校に来ると殴られるの

二年の頃一番酷かったのは

包丁を 肩に刺された時だったかなぁ

あれは 痛かったなぁ〜 ふふっ」

 

そう言った私

今の言葉に呆然とする蓮

首を振ってそんな訳ないと否定する七星さん

顔を真っ青にして 焦っている女たち

 

くるりと踵を返した

 

「じゃあね? 王子様 お姫様

いつまでも いつまでも お幸せに

ハッピーエンドで終わることを 願っているわ」

 

そう言ってその場を離れた

 

いつの間にか 頬は真紅の血でベトベトで

ある意味良かったのかもしれない

 

だって 血が無かったら私の本当の 血が見えてしまうでしょう?

 

 

家に近づいた頃だった

 

救急車のサイレンや慌ただしい音が聞こえて来た

 

…何かしら

 

まあ 私には 関係ないことだわ

 

そう言って 私の家へと向かった

 

でも 音が歩くたびに大きくなって…

 

なんて今日は厄日なんだろう

 

「あっ 見てよ 聖那ちゃんじゃない?」

 

「…不幸中の幸いね あの子自身は助かったけど… 両親は…」

 

「ちょっと 聞こえちゃうわよ!」

 

何もわからない

 

私が着いた家は 黒焦げで 元の形をとどめていなかった

 

そろそろっと家に近づく

 

誰かの止めるような声が聞こえたけど 無視して家の

…黒焦げの家に入った

 

「ねぇ いるんでしょ? お母様 お父様 何で

こんな物騒なことしてないで 早く出て来て欲しいのだけれど…

どこにいるのかしら 」

 

黒焦げの柱のようなものに触れると 手のひらが黒くすすれた

 

「ねえ 出て来るまで私 ずっと呼び続けるわよ」

 

頬に乾いた血の上から何かがつたった

 

「いやあっお父様 お母様ああああ!!」

 

 

 

 

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